記録者達が異世界から来るそうですよ?【削除&改訂予定】 作:白結雪羽
出来るだけ連投したいのだが、苦手な場面もあるのでその分気移りしてしまう………いけない傾向ですね。
という訳で半ば恒例の言い訳はさて置き、本編の方へ……どぞっ
「はぁあ………雪羽、お姉ちゃんは悲しいです。善悪問わずに命の尊さを重んじ、他の誰よりも諍いを嫌う妹が……まさかこのような品の無い挑発に乗って騒ぎを起こしてしまうなんて」
「………うぅ」
「少しばかり父親譲りに血気盛んな点は否めないにしてもですよ?」
「いや、今の口述全否定だろそれ」
「あの大人しくて可愛らしくて優しくて沸点がピカ一で低くてヤる時は容赦しなかった雪羽は何処に行ってしまったのですかっ」
「後半か物騒ね。でも、どれも的を得てるのが何とも言えないわね」
「兎に角ですよぉ? お姉ちゃんは怒ってるのです。ぉこなのですっ」
「うわ、痛いn(ズガンッッ!!)………」
「あ、ああぁッ、十六夜さん!?」
「私が言いたい事は一つです、」
「ね、ねぇ、お姉ちゃん…………十六夜君が――――」
「何故ヤるならもっと派手にやらかさないのですかっ」
「あ、あれ?! もう色々とおかしいよ!? え? お姉ちゃん!?」
「………。すまないが、そろそろ話を進めても良いだろうか?」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
さて、何処からお話しすれば良いのか分かり兼ねるのですが、取り敢えず事の経緯を説明しましょう。
此処はつい先程開会されました収穫祭の本陣営でして、雪羽と耀さんが何やら騒ぎを起こしたようで急遽ノーネームの皆さんと一緒に集まったんです。私は本来コミュニティに属していない……謂わば部外者という立ち位置なのですけど、雪羽の身内ということで同席を許してもらいました。
私達がやって来てみると、其処には、お互い険しい顔で一触即発の空気を放つ名だけ偉そうな男性と雪羽、耀さん。仲介役と思われるサラさんに隻眼の貫禄が滲み出る男性が居ました。
取り敢えず皆さんが集まったところで、今回の騒動の話を聞いてみたのですが………そこの睨み合っている三人が喧嘩をして、それを隻眼の人が止めてくれた………わ良いのですけど、怒っちゃった雪羽が思わず軽い一撃を入れてしまったそうです。良く見てみるとその人の右腕、少し不自由そうにしてます………随分と加減抜きで打ち込んだのですねぇ? 雪羽が初対面の人にそこまでやってしまうのも珍しい。
それで話は冒頭に戻り、若干一名ほどの尊い犠牲を乗り越えまして、サラさんの判断が……
「おい、勝手に殺すな」
「あらぁ? 十六夜さん、良く御無事で」
「白々しいぞ。ってか本気で死ぬかと思ったんだが……」
「大丈夫ですよぉ。あれでも9割は手加減はしましたから」
「…………」
あれ? 十六夜さんが何とも言い難い表情に。でも口許は微かに笑ってますね………変態?
と、それはさて置きまして。
「サラさん、今回の件ですけど……雪羽の全負担で手打ちという事で」
「意味が分からないよ?! わ、私は………た、確かに手は出しちゃったけど……それでも────」
「ほらぁ、サラさんもお忙しい身ですし。個人的に雪羽はいじm………話しておきたいことも有りますし、」
「虐め!? 今〝虐める〟って言おうとしたの?! ねえっ────カフッ?!」
私の愚妹が少々煩わしいので一旦静かにさせてもらいました。後でお説教ですね。
視線を戻しますと、サラさんが口許を引き攣らせてこちらを見ていました。他の皆さんも同様に……如何かしました?
「そ、その……砂羅殿。此度の件は聞く所両者に非があるとみて不問とだな……」
「? でも、そちらの………………残念な方は納得しないと思いますよぉ?」
「待て貴様! 誰が残念だッ! 誰に口を聞いてると思っているッ!?」
「あ、これは失礼しましたぁ。お名前を聞き及んでいなかったもので、つい勝手な印象で呼んでしまいました」
「き、貴様ァ……!! これ以上私を愚弄するというならそれ相応の────」
「ところでサラさん。そちらの喧嘩を止めてくださった男性は何方で?」
何か残念さんが叫んでいますけど無視の方向で。
すると残念さん、堪忍袋の緒が切れてしまったのか(随分とキレ易いですねぇ)、机をバンッ! と鳴らして私の元へと………
「止めとき若いの。死にとうないなら大人しくんや」
そこで似非関西弁の制止が入りました。声の出は、言わずもがな隻眼さん。彼は優しい、それでいて迫力のある笑みを浮かべて残念さんを見ます。
そんな彼に、残念さんは食って掛りました。
「何ッ……というより貴様。今はそこの〝名無し〟と我ら〝二翼〟の問題の審議を計っているのだぞ。部外者は────」
「あらあらぁ? それでしたら私も部外者ですよぉ? 私、コミュニティには属していませんからぁ。………それで、話を戻しましょう。貴方は一体何方なので?」
あまり話の脱線は、個人的なもの以外は好まないのですよ。
私の質問には、サラさんが答えてくれました。
「この御方は今は亡きドラゴ=グライフの御友人で、連盟のご意見番でもある方で……」
「御意見番? そんな人が如何して此処に居るの?」
飛鳥さんは不信感を漂わせながら隻眼さんを見ます。他の皆さんも、訝しげに彼へと視線を集めました。
隻眼さんは、その様子に困ったように苦笑しますと、和服の袖から……え、と………蒼色のギフトカードを取り出して私達に見せてくれました。そのカードには、〝覆海大聖〟の文字が……
途端、皆さんの顔色が一斉に変わりました。
「ふ…………〝覆海大聖〟の蛟魔王だと!?」
「こ、蛟劉さんが、七大妖王の一人だと言うのですか?」
「まぁ、な。昔はドラコ君やガロロ君をよく世話してやってなあ。その時の恩を今、一時の宿り木として返してもらっとる訳なんよ」
そう言ってケラケラと愉しそうに笑う隻眼さん……改め蛟劉さん。成る程、西遊記の………という事は、他にも六人のご兄弟がいるのですねぇ。私、あまり西遊記については詳しくないので語れる事ないです。
「蛟劉さんですね? この度は、私の愚妹がご迷惑を掛けまして誠に申し訳有りませんでしたぁ」
「や、そんな畏まらんでもええて。急に飛び出してそっちの子に手を出そうとしたのは僕の方やし」
「いえいえ。元はと言えば口汚い挑発に乗って手を出してしまった事が騒ぎを大きくした原因。それに貴方もその腕の怪我………無事で済んでいたかもしれません」
「まあ、確かに手を出したのは少しアカンやろうけど……」
「はいっ。ですので今回の件は私から確りと妹と耀さんにオハナシをしておきますので、それで手打ちということに」
「………あれ? 私も?」
「っ、待て!なに勝手に此方の了承も無く終わらせようとしているッ!! 此方は同士が過剰な重症を負わされたのだぞ!? 然るべき厳罰を与えるのが筋だろう!」
………五月蝿いですねぇ、さっきからもぅ。何なんでしょうねぇそこの馬肉はぁ? 私が円満に締めて上げると言ってるのですからその通りにして下さいよ。今から立食会場のメニュー欄に馬刺しを追加しますよ?
と、そこでまた蛟劉さんが馬肉さんを制止させました。今度は………軽薄な笑みは浮かべてません。
「だから待ちって若いの。────一応聞いておくけど。お前、何処の誰に喧嘩売ってるか分かってるか?」
「? 何を今更。私は〝ノーネーム〟に……」
「阿呆、問題はそこやないし、この場におる子らも関係あらへん。問題わな、白夜王の同士を侮辱した事なんや」
「あらまぁ? 白夜王と言うと……雪羽が言っていた白夜叉さんって方の事ですね。元・魔王様で東側四桁以下に敵なしと謳われているそうで……。その方の同士を貴方は侮辱した訳ですかぁ………これは、大変ですねぇ」
馬肉さんの顔が蒼白になってきました。
そこから蛟劉さんは追い討ちの言葉を掛けていきます。………言っておきますと、私はその同士の方がどのような方なのかは存じません。故に先の台詞はただ乗っかってみただけです。
こうして、蛟劉さんの重い正論の口撃に残念さんは押し黙ってしまい、忌々しげにこちら側を睥睨して部屋を出ようとします。
うーん……少し虐めたりないのですけど、そこは雪羽と耀さんがいますので、此処は良しとしましょう。
────そんな感じで締め括られたかと思いました。不満そうに顔を顰める十六夜さんが残念さんを止めるまでは……
「──……おい、待てよ馬肉。何かってに自己完結してやがる」
「なっ………」
………十六夜さん。私でも馬肉さんと呼ぶのを躊躇っていましたのに……彼は歯に衣着せない少年なのですね。──はい、言いたい事も言わないでウジウジと陰口ばかりを叩く最近の若人に比べて私は大分好感を持てます。雪羽も、陰口は叩かないのですけど、言いたい事を言わない時が多々とあって………本当、見習って欲しいです。
「(お姉ちゃんに本音でぶつかったら、それが物理×10位で返ってくるんだけど…………)」
「<何か言いましたか雪羽ぁ?>」
「<!? な、何でもないよお姉ちゃん……!>」
「<そうですか…………気絶だけはしないように心が舞えて置いてくださいねぇ?>」
「<何する気なの!?>」
雪羽は耀さんの20倍は覚悟してもらうとして、話が少々拗れてきましたね。空気が一触即発です。
十六夜さん曰く、白夜叉さんはそっちの都合。自分たちが譲歩する意味がない、だそうです。彼の瞳は今、憤怒の眼光が閃いてます。
そんな彼を蛟劉さんは呆れたように窘めますが、十六夜さんは、
「ハッ、ふざけんな。じゃあ何か? 公衆の面前で口舌で切りつける事は無罪なのか? 口舌ってのは、刃も無く相手の体に傷も血も流さねえがな、代わりに魂を傷つけ涙を流させる。………俺に言わせれば、その方が悪辣で卑劣、畜生以下のクソッタレだ。ましてや切られた相手が、十歳のガキとあっては尚更だ」
十歳の子というと、
それにしても十六夜さん、とても仲間思いな方ですね。雪羽からは残念な所もあるけど凄くて優し少年、とは聞いていましたが、正に今の彼はその通りです。彼は不器用なせいで周りから勘違いされやすそうなタイプだと思われます。居ますよねぇ、体面的には冷たくても真の心は誰よりも温かいって人……。私も今までに五万と見てきました。俗に言う〝主人公〟と呼ばれる人たちとかですね。勿論例外も居ますよぉ?
十六夜さんの言葉に蛟劉さんも一考しました。如何やら一理あると考え付いたようです。
とすると、どうお互いに決着を付けるべきかですが………二日後に〝ヒッポカンプの騎手〟という収穫祭最大の催しイベントがあるそうなので、その勝敗で付ける事になりました。負けた方は、勝った方に檀上で土下座、と。いよいよ以って、愉しくなってきましたねぇ?
……そうです、私が出てみるのも良いかもしれません。途中にも言った通り私は部外者。彼らの諍いには関わる必要は無いです。でも………掻き回してみたいじゃないですかァ♪
さあ、早速エントリーの申請をしに行きましょう。
私は、一瞬雪羽だけに分かるように笑い掛けると、その場から違和感無く、そっと姿を消しました。
「お姉、ちゃん……。な、何だか大変な事になってきちゃったなぁ…………はぁ」
視点OUT
「────みたいな感じになってるね~」
収穫祭広場の端の席で、絵錬は愉快そうに笑みを浮かべ、そっと淡く光っていた瞳を閉じる。再び瞼を開けると、そこにはいつも通りのエメラルドグリーンの瞳があった。
「……覗きって、悪趣味ね」
そう言い対面に座るペストは興味無さそうだ。彼女は十六夜達が何をしでかそうと実害さえなければ別に構わないと考えていた。
「良いんだよぉ別に~。………それでさっ、如何する? 私達も〝ヒッポカンプの騎手〟に出てみる?」
「いいわよ。興味ないし」
「ん、そう? だったら今回私達は見てるだけか~」
「? 絵錬はそれで良いの?」
「今回はね。偶には見物に回ってみるのも良いかなって。それに………私達姉妹が四人も出ちゃったらシッチャカメッチャカになっちゃうよ?」
「あ、もう貴女以外は全員出るつもりなのね」
「うん。影禍はとっくの昔に申請出してるし、雪羽もその時(了承無し)にね。砂羅お姉ちゃんは……性格上多分出る」
何処か遠い目をする絵錬。その姿はペストに妙な哀愁を感じさせた。一体その砂羅はどんな性格なのか……不穏な想像しか浮かばないペストだった。
「そ。────この祭り、荒れるわね」
「そだね~。というかもう既に凄い事になってきてるよねぇ……」
はむっ、と立食会場で買い込んだ骨付き肉を食べながら、絵錬は舞台へと視線を向ける。そこでは──
「────というわけでッ! 収穫祭のメインゲーム・〝ヒッポカンプの騎手〟の水馬の貸し出しはッ!!! 全員、水着の着用を義務とするッ!!」
「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!」」」」」
「「「白夜叉様万歳!!! 白夜叉様万歳!!! 〝サウザンドアイズ〟万歳ッ!!!」」」
「──尚ッ、専属審判の黒ウサギはッ、審判中は常時ビキニ水着だあああああぁぁぁ!!!」
「「「「「「ッシャオラアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」」」」」」
「「「大正義白夜叉様万歳ッ!!! 大正義白夜叉様万歳ッ!!!」」」
「「「「黒ウサギ水着万歳ッ!!! 黒ウサギ水着万歳ッ!!!」」」」
「フハハハハハハハッ!!! 諸人よ、我を讃えよッ!!! 神仏よ、我を恐れよッ!!! 我こそは不落の太陽の具現ッ!!! 遥かな地平の支配者ッ!!! 〝白き夜の魔王〟・白夜王也ッ!!!」
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!』
──
「「…………」」
暫し沈黙に包まれる絵錬とペスト。
不意に、絵錬がポツリと、
「…………私達も出よっか」
「死んでも御免こうむるわ」
「えー……ペストの水着~、私が見繕って上げるからさ~。ねえねえ、紐なんてd────ぶべらっ!!?」
テーブルを飛び越えてのペストの膝蹴りが見事絵錬の顔を直撃。彼女は顔を真っ赤にした叫んだ。
「絶・対・に・い・やッ!! ってかふざけんな! 蹴るわよ!?」
「け、蹴ってから言わないでよぉ……。アハハ……冗談だから、ね? 普通の、普通のだから……ね?」
「そもそも水着案を撤回しろッ! わ、私は絶対に着ないから」
「…………そっ、か……うん。その……ごめん、ね?」
突然しおらしく涙目で謝罪を口にする絵錬。その様子に思わずペストは「うっ…」と呻いた。
そして、
「…………ふ、普通のなら、別に……いいわよ」
「よしっ! 普通のならね! 普通のなら良いんだよねっ!? うんっ、白夜叉に相談してあの人の思う〝普通〟の水着でも探そっかぁ~!」
ガバッ! と起き上がり、先程まで目じりに溜まっていた粒は何処へやら、眠気上々、満面の笑みで瞳を輝かす絵錬。
もう慣れたもので、ペストは絶対零度の瞳で睨みつけて彼女に脛、鳩尾、後頭部へと流れるような蹴りを放………とうとしたが全て避けられた。
それから一時間弱。アンダーウッドを舞台に、二人の少女の壮絶な鬼ごっこが始まるのであった。