記録者達が異世界から来るそうですよ?【削除&改訂予定】   作:白結雪羽

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混沌祭-その伍-

 白夜叉(お馬鹿)酔っ払い(馬鹿)共の暴走から数時間。流石に24時間ぶっ続けではしゃぐのは無理があったのか、アンダーウッドは少し静けさを取り戻していた。とは言っても、まだ酒や料理を交わす者はまだ大分居るが……

 

 そんな一時のピークが過ぎ去ったアンダーウッド、大樹の天頂に影禍、レティ、リンネは腰を据えていた。

 リンネは髪(=触手)に立食会の品を幾つも持ち食事中。レティは何をするでもなくぼーっと天幕の星空を見上げている。影禍は、いつかレティを誕生させた時に見せた、蒼白の幽光放つ帯を周囲に展開していた。以前もそうであったが、そこには世界に既存しない文字列が建ち並んでいる。

 影禍は瞳を閉じながら、その天球儀状に広がる帯の一部を頭部の周りに通す。そして静かに瞼を上げると、帯びに記された莫大な()()()()()()()()()()()()()、纏め上げていく。

 やがて……5分ほどだろうか。彼女は帯を最後に巻物のように収束させると、溶け込むかのように〝それ〟を消した。

 ふぅ…と一息吐く。

 

 

「これで細かい部分はいいかしら。癪だけど、収穫祭が終わる頃に姉さんに渡しましょうか…………はぁ」

 

 

 影禍は外套の胸元を留めている漆黒のブローチをトンッと軽く叩き、服装を宵闇のネグリジェに換装する。

 

 一応説明しておくと、彼女含め四姉妹(正確には五姉妹だが)の胸元には色は違えど同じ様なブローチが留め具としてあり、彼女らの服装を収納、換装する為の機能が備わっているのだ。基本特殊な外套に、各々の好きな服を着込んでいる彼女らは服装を変える事はあまりしないのだが、やはり気分というものがあるらしい。

 

 彼女はポスンッと、枝葉のベッドに体を預ける。服を換装した際に解けたアキレス腱にまで伸びる髪が、無造作に広がった。

 

 

「────」

 

 

 ふと、影禍の頭に二日後のゲーム、〝ヒッポカンプの騎手〟の事が思い浮かぶ。2、3時間程前に、白夜叉が深夜のテンションなのか普段のテンションなのか判断付かない勢いで決まったルール改定。

 詳しい詳細は既に公言されていて、大きく変更された点は二つ。女性参加者の水着着用の義務化と、個人戦からサポートを三人までのチーム戦となった点。前者は完全に白夜叉の趣味なのだろう。だからと言って影禍が困るほどのルールでもないが……

 

 

「というか、あの場所にもし雪羽が居たら………大荒れだったでしょうねェ……」

 

 

 雪羽があんな煩悩全開の集団を黙って見過ごすはずが無い。しかし、今回は彼らに付が回ってきたのだろう。当日に馬鹿をやらかさなければ、雪羽の制裁が飛んでくる事もあるまい。

 

 

「水着……水着ねェ……。ん、レティの水着は如何しましょ……」

 

「? …………」

 

「あぁ、えぇ。レティの水着よ水着。〝ヒッポカンプの騎手〟に参加するためには必須になったじゃない? サポート側とて例外じゃないみ

 

たいだから……明日にでも見繕いに行ってみる?」

 

「…………、………。…………」

 

「え? まぁ、出来ない事も……無いかしら? ──だったらレティ、ちょっと大人しくしてなさい」

 

 

 影禍は腰を上げると、足元から無数の影を蠢かせて、それをレティの体躯に軽く絡ませていった。そして、レティも同様にその影に意識を集中する。すると、レティのラフな格好は夜の闇に溶けるように解けて別の形────水着を形成しだした。

 ほんの十数秒経つと、レティの装いは歴とした水着となった。蒼色のビキニタイプに、上半身を両腕の先まで撒き付かせたパレオというやや変わったものだ。これは、影禍の影をレティが自分の意思で服の形成を取らせたもので、謂わばこの水着は影禍の影そのもの。必要性は知れぬが、その性能も影禍の影と同等のもの。だが、その所有権はレティに完全に移っている。

 まあ簡単に言うと、影で作られた水着という事になる。何故影なのに黒色じゃないんだとか、そんな事は聞いてはいけない。

 因みに、ビキニ上半身パレオの形状はレティが思い描いたものだ。何故パレオを体や腰に巻きつけるでもなく、丈の短いジャケットみたく纏ったのかは謎でしかない。きっと彼女の趣味なのだろうが……(レティシアとは感性が隔離している為決してレティシアの趣味ではない)

 

 

「………本当にそんな水着で良いの?」

 

「………、…………♪」

 

 

 如何やらご満悦の様子。パレオをブレスレットで固定した状態でその場を一回転するレティ。薄布が靡く様は彼女の元の容姿に相まって

 

中々に綺麗なものだが、やはりというか……違和感がある。

 影禍は形容しがたいレティの感性にぎこちなく「そ、そう……」と納得すると、もうあまり気にしないと思考を切り替えた。

 

 

「さ、後はリンネだけ……――――」

 

「……? エイカ、ドウカシタノ?」

 

 

 リンネを見つめて少考……

 

 

「――――なのだけど。別にいいわね、うん」

 

「………ヨクナイ。マコトニフホンイダヨ。ワタシモ、アレミタイナフク、キテミタイ」

 

「リンネは半実態で良いじゃない。あれなら半分人型を保てるし。ギャラリーの目も気にしなくて良いじゃない」

 

「ム、ムゥ………デモォ、」

 

「嫌なら砂羅姉さんに突き出す」

 

「モンダイナイデスッ」

 

 

 やはり砂羅だけは御免なリンネ。結果的には突き出されるというのに……何とも微妙な延命処置であった。

 

 と言うことで、三人は二日後、満を持して〝ヒッポカンプの騎手〟に出場出来るようになった。まだ水馬の貸し出しが残っているのだが

 

……。そこは影禍、レティの時と同じ手法で行くつもりのようだった。一応水馬を確認しないと再現のしようがないので貸し出し場には赴く予定だ。

 

 

「そうねぇ……折角だから雪羽を弄んでみようかしら」

 

 

 本人の預かり知らない所で被害を被る事となった雪羽であった……

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「飛鳥さん、これなんて如何ですか? 比較的露出も少な目ですし、あっち側のビキニに比べればまだマシな方ですし」

 

「……いえ、充分これも布の面積が、ねぇ…………はぁ、憂鬱だわ」

 

「それに関しては同感なのです……」

 

 

 アンダーウッド・河川敷の放牧場に設けられた水着広場にて、飛鳥と黒ウサギは陰鬱とした溜め息を吐いた。二人の目の前には、選り取り見取り多種多様な水着が陳列している………が、どれも南側出品のためか露出度が凄い。大半はよく見かけるような通常の水着ではある。しかしながら、飛鳥と黒ウサギには他ならぬ悪夢のような光景だった。

 黒ウサギはこの時心底後悔していた。何故自分は表で暴走していた白夜叉様を止めることが出来なかったのか……! と。

 飛鳥は非常に鬱屈としていた。戦後間もない昭和女子の彼女にとって、当時の下着……か、それ以上の布面積の少なさを誇る水着類は、見る分ならまだしも、自分が着るとなるとやはり悪夢でしかなかった。

 

 そんな二人の為と、雪羽は先程から必死に水着の見繕いを手伝っているがしかし、黒ウサギは兎も角飛鳥がどうしても難しいようだ。

 

 

「あ、飛鳥さん。それじゃぁ……これは如何ですか? これならこの薄布で腿のあたりはカバーできると思いますよっ」

 

「肩に胸元に足だって下の方が………やっぱり際どいわよ」

 

「うえぇ!? こ、これ以上ですか……?! え、えぇとっ……そ、それじゃぁ…………」

 

 

 もう他人事とは思えないくらい懸命に水着を漁る雪羽。その後ろ姿を見る飛鳥は、段々と申し訳無い気持ちになってきた。

 と、飛鳥は改めて雪羽の装いを見てみた。何時も着ている外套、これは変わらない。だが、彼女が動く度に覗くその内側は白地を基とした空色のセパレート水着であった。

 そう、彼女は疾うに水着に着替えているのだ。〝ノーネーム〟の中で随一の恥じらいを持つ彼女が。

 無論、気にならないわけなかった飛鳥は、雪羽に尋ねた「恥ずかしくないの?」と。すると、雪羽は、

 

 

「う~ん……。ジィッと見られるのは流石に恥ずかしいですけど、下着じゃないから特には……」

 

 

……との事らしい。思わず呆けてしまったのは仕方ないと思うえる。

 なんと雪羽は、俗に言う〝下着じゃないから大丈夫〟理論が罷り通る子だった。飛鳥には到底理解できない感性であろう。

 

 話を戻そう。――でだ、初心な雪羽がこうして飛鳥のための水着を探してくれているというのに、自分は我が儘を徹していて良いのか? 否、良い筈がない。

 飛鳥は意を決すると、雪羽がキープしてくれていた水着の中から、最後に彼女が選んでくれたモノを手にした。

 

 

「――へ? あ、飛鳥さん?」

 

「雪羽ちゃん、ありがとう。私、これに決めたわ……!」

 

「飛鳥、さん? 何で決死の表情なのか私、疑問なのですけど……?」

 

「もし…………いえ。これ以上、この決意……揺らがせる訳にはいかないわ!」

 

「っ! 飛鳥さんから死地へと赴くような勇姿が……!? ………じゃなくて! あ、飛鳥さん!? 気を確かに持ってくださいっ!? あっ、ま、待って! 着替えのテントはアッチですー!」

 

 

 ………。如何やら飛鳥、決死の際に平常心を置いてきてしまったようだ。だがまあ、こうして滞りあっても第一段階は終えることが出来た。次はヒッポカンプに騎乗する練習あるのみ。基本こちらは飛鳥でもどうとでもなる。それ以上に、飛鳥のギフト〝威光〟を用いれば、ヒッポカンプの能力を最大に活かすことも出来るのだ。サポートも十六夜、耀と充実しているため、そうそう負けはしないだろう。……まあ飛鳥次第だが。

 因みに、雪羽はサポート無しの単騎で挑むそうだ。曰く、彼女の申しでで自分は大丈夫だから飛鳥さんを頼みます、らしい。

 実際、雪羽以下〝白結姉妹〟の実力は〝ノーネーム〟の戦力の半分以上を担っている。必然、反対はなかった……納得は別として。

 

 

「ねえ雪羽ちゃん。この布って腰に巻き付けるのよね?」

 

「………」

 

「雪羽ちゃん?」

 

「へ……? あ、はいっ! す、すみません。パレオですよね? 一応腰じゃなくて体に巻く感じにしても問題はないですよ。腰なら足、体な

 

ら胸元とお臍回りが隠れるようになってますけど、その人の好みによるので飛鳥さんが一番って巻き方をすれば良いですよ」

 

「そうなの? なら……――――」

 

 

 飛鳥は鏡と向き合ってパレオ片手に思案し始めた。その様子を後ろで見守りながら雪羽は、先ふと思い出した疑問点について考える。

 

 

「(〝ヒッポカンプの騎手〟の出場申請……私の名前が最初からあったのって………やっぱり影禍お姉ちゃんなのかなぁ? お姉ちゃんの名前も見付けたから多分そうだと思うけど…………お姉ちゃん、大丈夫かな……)」

 

 

 雪羽はリンネに捕まっていった影禍の心配をする。最初の疑問と心配への至り方が何とも雪羽らしかった。

 

 何はともあれ、明日は収穫祭最大のゲーム当日。参加者の数を見ても、恐らく激しい競い合いになるだろう。しかし、雪羽達は勝敗で〝二翼〟との決着をつけねばならない。気合は十分であった。

 懸念事項としては、不確定要素・思惑が、彼女達の知らない処で渦巻いている事だろうか……

 

──〝ヒッポカンプの騎手〟──その舞台は想像以上の混沌と化す事だろう………………多分。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




正直、グリフィスは入れても入れなくてもどっちでも良かったですね。
彼は規定通り、耀に早々と退場させてられてもらいます。
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