記録者達が異世界から来るそうですよ?【削除&改訂予定】   作:白結雪羽

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影禍が飛鳥を〝さん〟付けで呼ぶ事に違和感を覚えてきた……




混沌祭-その漆-

 

視点:雪羽

 

 

 

 白夜叉さんの開始宣言直後、私はヒッポカンプから跳んで此方へと迫ってきた蛇腹剣の刃を、予め創造しておいたキューブ・アインスで防ぎました。それでも参加者の半数以上がやられてしまいました………でも、

 

 

「「「「きゃ………きゃああああああああああああああ!!?」」」」

 

 

 この場に絶叫が響き渡る。私も、思わず叫んだ。

 

 

「なんて事してるんですかフェイスさん!?」

 

 

 フェイス・レスさん。〝クイーン・ハロウィン〟の寵愛者であり、その実力はこの前の魔王とのゲームや狩猟祭の時にある程度把握はしてます。このゲームにおいても、その実力は確実に上位に食い込むでしょう。

 そんな彼女が開始早々――――参加者の水着を引き裂くと誰が想像しますか? しかも肌には一切傷を付けずに水着、男性は服を一片と残さずですよ? 私はこうして反応できましたけど、危うく飛鳥さんが被害を受けるところでした。

 はっきり言います………技術の無駄遣い甚だしいですよ!?

 

 私は定位置に移動してもらっていたヒッポカンプに降り立つと、無事にスタート出来た飛鳥さんの横に並走しました。

 

 

「飛鳥さん! 大丈夫でした!?」

 

「え? ……え、えぇ…………」

 

 

 飛鳥さんの視線の先、前方を駆けるフェイスさんが、まるで切り裂き魔の如く追い抜く参加者の人達の水着をバッサバッサと………

 二つの意味で顔が熱を帯びてきた気がします。

 

 

「……フ、フフフ………」

 

「ゆ、雪羽ちゃん……? (いけない。あの人地雷を踏んでしまったわね……)」

 

『クッ、流石は我が仇敵が選んだ騎士ッ! 血も涙もない冷徹なその判断力と、肌に傷を付けず水着だけを斬り捨てる剣技ッ! 宿敵の臣下なれど見事だと言わざるを得ないッつうかもっとやれヤッホウウウウウウウ!!!』

 

『「「「ヤッホオオオオオオオオオオ!!!」」」』

 

 

 今盛り上がってる人達、あとで全員死け………私刑です。心の底から真っ新に矯正してあげますッ!

 

 

「ハハハハハッ! たくッ……クククッ……くっそ、何だよあの仮面! アイツあんなに面白いやつだったのかよ!」

 

「十六夜さん! 馬鹿なこと言ってないで飛鳥さんのフォロー怠らないでくださいよっ!」

 

「クハハッ、はいはい!」

 

 

 私はキューブ・アインスを残してツヴァイをフェイスさんに追い縋るように水中に潜り込ませました。アインスは攻防用の変幻体、ツヴァイは情報収集用の端末です。いくらフェイスさんでも、水底のツヴァイを破壊することは安全面も考えて不可能なはず……というより、そんな柔に出来てませんから、アレは。

 これで懸念の一つは押さえました。後は………未だに姿の見えない影禍お姉ちゃんだけ。まさか出てないなんて事は無いと思うけど……それに、なんだか嫌な予感がします。

 

 

『現在、トップ集団は五頭! トップは〝ウィル・オ・ウィスプ〟のよりフェイス・レス! 二番手並びに三番手は〝ノーネーム〟より久遠飛鳥、白結雪羽! 以下四番手、五番手は〝二翼〟の騎手達が猛追している状況です!』

 

 

 黒ウサギさんの状況報告によると、あのグリフィスさん達はすぐ後ろ。他にも、最初で半分以上は削られたにしても、十数頭は追いかけてきている筈ですね……。

 後ろは問題ないと見ましょう。取り敢えず、私は念のため飛鳥さんの近くを行く事にしました。

 

 

「おい、お嬢様! 雪羽! なるべく細い道を行くぞ!」

 

「分かったわ!」

 

「了解です!」

 

 

 目の前には鬱蒼と広がる〝アラサノ樹海〟、その分岐路が見えます。私達は、十六夜君の言葉通りにいざという時のフォローが利く細道へと曲折しました。

 ……その際でした。耀さんの姿が何時の間にかどこにも見当たらないと気付いたのは。

 

 

 

視点OUT

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「────ん?」

 

 

 ペストに半ば引き摺られて客席を移した絵錬は、ふと奇妙な感覚に捉われた。それは気のせいとも思える本当に極些細な違和感であった。如何やら司会の黒ウサギも解説の白夜叉も察していない様子……

 程なくして、絵錬はその違和感の正体を理解した。理解して……軽く唖然失笑した。

 

 

「うわぁ………」

 

「……絵錬? 如何かしたのか?」

 

 

 一時、売り子の手伝いの手を止め絵錬の隣の席で競技中継を観賞していたレティシアが問う……も、絵錬は「あぁ、うん。ちょっとねぇ……」と言葉を濁すだけだった。明らかに如何かしているのだが、

 

 

「大丈夫だよ~………見てれば分かるから。あと少しで────一気に盛り上がると思うよぉ」

 

 

 意味深な絵錬の言葉。もう不安しか過らないのだが、レティシアはそれ以上追究はしなかった。

 まだ、異変は認識されない。

 

 

 一方その頃。スクリーンには〝二翼〟のグリフィスと、耀が対峙している光景が映し出されていた。

 雪羽があの分岐路に差し掛かった際、耀の姿が見えなかったのは、樹海の地の利を最も理解しているであろう彼らを戦略的に潰す為だったのだ。今は、彼女の手によって騎手、サポート合わせて8人だった彼等も、残す所騎手の一人とサポートに回っていたグリフィスのみ。

 そして今、二人は最後の一撃を以ってケリを付けようとしていた。グリフィスは、幻獣としての理性を剥き出しにする代わりに全身を龍のそれと変貌させ、幻獣の最高位〝鷲龍〟へと成った。対する耀は、内心たじろぎながらも〝生命の目録〟の系統樹を組み換え、東洋最高位の幻獣――――麒麟を象徴した身の丈倍はあるだろう矛を手にして構える。

 

 一触即発なんて間はなかった。グリフィスは姿を変貌するや否や紫電の閃光となって、耀へと突撃する。耀も稲妻の迸る矛を振りかぶった。

 衝突し合う稲妻の龍角と矛。その衝撃は、周囲を圧倒的力で侵食していく。

 耀は辛うじて、巨人から得た腕力を以って力の限りに押し返していく。

 そして――――

 

 

――ズァパアアアアアアアアンッ!!――

 

 

 激しい河面を叩く音が樹海に響いた。地上に立つのは………一人の少女。

 彼女は、無言で〝二翼〟の残った騎手を一瞥する。無感情を体現したような、興味の欠片も籠っていない視線であった。だが、騎手の戦意を損失させることに事足りないことは無かったようだ。

 〝二翼〟の騎手は、情けない悲鳴を上げ、自ら河へと身を投じた。

 

 

「…………」

 

 

 フワリと彼女は飛翔する。そのまま河面へと近付くと、自身が叩き落とした()()を軽く引き上げて上げた。

 その少女は現状が掴めず、呆然と目の前の彼女――――レティを見上げた。

 

 

「え……あ、レ、レティ?」

 

 

 全身水を被った耀は譫言の様にレティに問い掛ける。しかしまあ、彼女は言葉を発せないという事で、返事は微かな口の動きだけだった。これでは状況が全く理解ない………その時、ヒッポカンプに跨がる一人の少女が二人の許へと近付いてきた。赤い瞳とサイドテールに結った長い黒髪が特徴の彼女――――影禍は、幽玄な笑みを携えながら、へたり込む耀に視線を合わせる。

 

 

「フフ、三日ぶりかしらね春日部さん? 貴女も大分成長したのね。異世界入り当初がまるで嘘のよう。ま、実質まだ一ヶ月弱の付き合いだから偉そうに語ることは出来ないけど」

 

「……影、禍? やっぱり、参加してたんだね。えぇと………これは如何いう状況?」

 

「何だか楽しそうだったからツイ水を差しちゃった。反省はしてないわ」

 

「…………」

 

 

 耀は今すぐ目の前の幼女を河川に叩き込みたい衝動に駈られた。自分の成長を噛み締めて、後ちょっとでその証明の一つを達成できたというのに………〝楽しい〟なんてフレーズのせいで台無し。

 折角格好良く極められる筈だったのに………

 

 

「――なんて、思ってたりしたかしら?」

 

「……影禍は一回、」

 

「人の痛みを知った方が良い、ね。それなら私、箱庭に来てから二度も致命傷を負ってるのだけど?」

 

 

 耀は言葉に詰まった。二回目は知らないが、一回目は間違いなくガルドの時だろう。今更と言うのも酷だが、嫌な思い出を蒸し返すものだ。

 

 

「っと、ごめんなさい。もうモタモタしてられないわ。春日部さん、安心してね? 飛鳥さんはちゃんとフォローするわ。雪羽は……保証できないけど。あと、此処ね、早めに離れておいた方が良いわよ」

 

「? 如何し――――」

 

 

――て? とは影禍の耳に届かなかった。彼女はレティを連れてあっという間に耀の視界から消えていく。

 後に残された耀は、遣る瀬無い気持ちに苛まれながらも、影禍の忠告に従ってアラサノ樹海を後にするのだった。そして彼女は、少しして影禍の忠告の意味を知ることになるのだった。

 

 

 その頃――――戻って観戦席。

 

 

「あぁー……やっぱり、影禍ならやると思った。味方とか関係ないもんねぇ、ホント。でも結果オーライかなぁ……もう少しで()()しちゃうだろうし。飛鳥と雪羽、巧く逃げ切ることだね~」

 

 

 スクリーンに映る影禍とレティの姿を見て気の抜けた笑いをする絵錬。同時に、先程感じた違和感の波が強くなったのを感じた。

 

 

「何だか悪鬼にでも追われてるみたいな口ぶりね?」

 

「ペストは星級(ガイアクラス)の鬼に追いかけられて立ち向かっちゃう人なの? ん、流石は太陽に復讐を誓う災厄の御子だねぇ~。今度、お膳立てで取り計らってあげようか? 今のペストなら………頑張れば一秒は持つよ、きっと~」

 

「…………え、遠慮しておくわ。……ところで、レティシア。貴女大丈夫? 顔色が悪いようだけど」

 

 

 絵錬の若干マジな提案に内心冷や汗が止まらないペストは、話を切り替えさっきから麦藁帽を目深に被って萎縮するレティシアに〝労り〟の声を掛けた。当の彼女だが、さっきレティがスクリーン内に映ってからこの調子なのだ。訳は言わずもがな……アレだ。

 

 

「レティシア様……? 体調が優れないのなら少しう休まれた方が、」

 

「い、いや。私は……だ、大丈夫だ。あ、いや、ちっとも大丈夫ではないが大丈夫なのだっ……!」

 

「レティシア、あの子なら大丈夫だよぉ。眼鏡掛けてるし、髪短いし、影禍の認識阻害も掛かってるし。分かるとしたら正体を確かに認識してる私達だけだよ?」

 

「あぁ、それは影禍からも聞いてる。だがなぁ、はっきり言って心臓に悪いから止めて欲しいんだ……」

 

「そんなに気になるならこのトンデモ姉妹に何とかさせれば良いじゃない。出来るでしょ? それくらい」

 

「前にも言ったかもしれないけど、私は青狸みたいな万能キャラじゃないんだからね……? 出来なくは無いけど」

 

 

 否定はしない所、流石バグ姉妹と言ったところだろう。

 因みにやり方としては、雪羽が記憶・印象操作のギフトを創造するか、影禍が尚謎のギフトを使うかで解決できる。あとは力で黙殺! なんて手もあるが、面倒極まりないないので絶対にやらない。雪羽は論外。

 

 レティシアは、ペストの案にまさかの拒否をしなかった、承諾もしてないが。それ程心臓に悪いのだろうか?

 何にせよ、彼女の寿命の縮む思いも、残す所数十分の辛抱だ。それまでは懸命に我慢してもらうしかない。

 絵錬もペストもさり気無くレティシアを気遣いながら目と意識を競技に移した。

 

 

 

──レースは序盤を通過──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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