記録者達が異世界から来るそうですよ?【削除&改訂予定】   作:白結雪羽

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好き勝手動けるキャラほど、原作の重要キャラのお役を奪いそうになってしまう


混沌祭-その捌-

 

 樹海の分岐路の内、当たりかどうかも怪しいほどの細い河を選んだ雪羽達だったが、運に恵まれたのか然程悪路と言うわけでもなかった。河幅もそこそこあり、水馬二頭分の広さは十分に確保できる。只、其処は樹海に巣食う幻獣達の縄張りでもあったようで、彼らは襲いくる獣の群れを往なしながら猛進していく事となった。

 

 

「ハアァッ!」

 

 

 雪羽が腕を振り下げる。それに呼応するように、光のカーテンを放射するキューブ・アインス。その幕に弾かれ、飛鳥を死角から襲おうと迫っていた幻獣の霊群は水面へと消えていく。

 殺生を好まない雪羽としては、先程から防ぎの一点張り。しかし、手にすれば強力な武装となるキューブも、場が不安定な水馬の上遣い辛いゆえ、防御形態はとても重宝するものだった。その方法も光を介するという応用性が利く物で、三人は飛鳥の貴重なギフトを温存しつつ順調に折り返し地点へと向かって進んで行く。

 

 

「マジで反則だなそのギフト。構想、構築を放って不特定の理想へ具現するとか、何だか俺がオマケみたいに思えてくるな」

 

「そ、そんな事ないですよっ。私が庇いきれない所を十六夜君がカバーしてくれるんですから。とても助かります」

 

「そのカバーする箇所が実質少ないわよね。……本当に、そのギフトに頼らないって言った決心が揺れそうになるわ」

 

「もういっそ傾いちまえば? ヘタなプライドでこれから先命拾いするより利口で堅実な判断だろ。もし決断を曲げたとしても、それはお嬢様の意志だ。俺達が如何こうしようってもんじゃないしな」

 

「……考えておくわ。それより、今はレースに集中しましょう。雪羽ちゃん、仮面の人の状況は?」

 

「あ、はい!」

 

 

 雪羽はアインスでの防衛への意識を分割し、ツヴァイの方に意識を向ける。その際に防ぎ損ねた霊群らは、十六夜が投石で対応した。

 2、3秒後、雪羽はツヴァイとの交信から意識を戻し告げた。

 

 

「大丈夫です! フェイスさんも幻獣にやや進路を妨害されてるようで、このまま行けば私達の方が先に到着できるかと思います!」

 

「分かったわ! 皆、()()()()よ!」

 

 

 飛鳥の〝威光〟により一行のスピードが上がった。霊格の問題で作用し難い点は否めないが、無理に逆らわなければ十六夜と雪羽にもちゃんと効果があるようだ。十六夜は、体の底から力がやや底上げされている感覚に感嘆しつつ、飛鳥のギフトを今以上に昇華出来ないものかと模索してみる。────その時、

 

 

「? …………ッ、飛鳥さん! 左に逸れて下さい!! 十六夜さんも対岸に跳んで! 早く!?」

 

「「っ!!」」

 

 

 唐突に焦燥を孕んだ雪羽の叫びが、二人の鼓膜を打つ。その尋常じゃない様子に慌てて指示に従い、雪羽も急いで手綱を右に切った………次の瞬間。彼らの今さっき居た位置を赤褐色の巨大な鞭状のモノが襲った。あとコンマ三秒でも遅かったら、危うく捕まっていたかもしれない……

 思わず目を見開く十六夜と飛鳥だったが、十六夜は切り替えが早かった。瞬時に辺りの比較的強大な気配を探り当てると、手に持った石を後方の樹海の陰へと力の限りに投擲した。ソニックブームを起しながら狙いに着弾した石は、爆撃さながらのクレーターを生み出す。だが、其処に気配の姿は無く………否、姿はもう彼らの前に表していた。

 彼女は如何いった理屈か、河面を滑るように移動し、三人の背を追い縋る。しかしながら、一行はその技よりも、その人物に驚いた。

 

 

「う、嘘でしょう……?!」

 

「ハッ! こりゃまた面白い奴が出てきたなオイ!?」

 

「リ、()()()!? えっ、まさか参加してたの?!」

 

 

 雪羽がその少女の名を叫ぶ。それに、粗くなったローブを靡かせ猛追するリンネはコクリと頷いた。

 そんな彼女の姿は、彼らが以前であった時とは大分違っている。本来少女の腕があった部分に覗くのは、先に襲ってきた巨大触手を何本にも枝分かれさせた異形の腕。また、髪も不自然に伸び蠢いており、背中からは昆虫と鳥類の間を取ったような奇形にして六対からなる巨翼。そして、アメジストに怪しく輝く左目。一言で言うなれば………非常に不気味だ。

 

 飛鳥は背後に迫る異形に、以前邂逅したマッチョの群れとは別の恐怖を感じた。

 

 

「な、何なのよアレぇっ!? え、何? アレがリンネの正体なの?!」

 

「あ、いえ。あれは半実態ですよ? 実態は人型じゃなくなってアレの十数倍はおっきくなります」

 

「おお、かっけえなそれ! 頼めばなってくれるか!?」

 

「頼むなッ!! ていうか雪羽ちゃんは平気なの?! あんな……あんなっ……!?」

 

 

 ベクトルは違うが興奮状態の二人。飛鳥は完全な生理的にアウト状態で、十六夜は形態があることにロマンを覚えたようだ。

 飛鳥は必死に手綱を掴み、もう涙目でヒッポカンプを走らせる。その間もリンネの猛攻は続くが、十六夜は小石を補充し片っ端から触手を粉砕していく。雪羽も、相手がよく知ったリンネだからか、アインスで押しあ消すのではなく全て細切れにしていっている。寧ろそうでもしないとやってられない現状なのだが……

 

 

「オトナシク、トマッテ……!」

 

「無理だよ! 影禍お姉ちゃんからの指示なんだろうけど、それだけは聞けない! 飛鳥さんっ。もう少しで森を抜けますから、気を確かに保って下さい!」

 

「言われなくても分かってるわよ!」

 

 

 やがて、水上で熾烈な攻防を繰り広げる彼らの視界が一気に開けた。やっと樹海を抜けたのだ。

 しかし、開けた視界も山頂から落ちる滝の瀑布によって良好とは言えなかった。

 三人はこのまま追撃をおいそれと受けるわけにも行かないので、十六夜と雪羽は地形把握を瞬時に行い、山頂へと向かう回り道へと素早く滑り込んでいった。リンネは………幕府の起こす霧に阻まれたからか、彼らの警戒網から姿を消した。

 

 

「………撒けたの?」

 

「まだ分からないです。相手はリンネですから、そう簡単に見失うとは思えないですし………もしかしたら先に回り込まれてるかもしれません」

 

「先回りか……。アイツって水上を走ってたよな? 水に関係するギフトでも持ってたりするのか?」

 

「あ、いえ。リンネは活動場所を選ばないんですよ。だから余程過酷な所じゃなければ変に適応するんです」

 

「……何だそれ?」

 

 

 いよいよ以って謎が深まるばかりだ。姿から人間ではないという事は容易に分かる。だが、何故そんなモノと家族中なのか?彼らについて未だ細かい詮索を掛ける事が出来ていない以上蟠りが尽きない。

 十六夜と飛鳥は何とも言えない消化不良感を感じるも、今は先ず何処からか強襲を仕掛けてくるやも知れないリンネの警戒に徹した。

 

 

 一方その頃。現在暫定トップの雪羽達の攻防にヒートアップしていた会場だったが………スクリーンに映る光景にシン…と静まり返っていた。正確に言えば、一同唖然としていた。実況の黒ウサギでさえ、実況を忘れて思わず目を剥くほど……

 ラプラスの小悪魔が映し出すスクリーンには見失ったリンネが映し出されていた。彼女は山頂を目指して先程同様水面を滑るように駆けている。……水面と言うのは少々語弊があるかもしれない。正確には────

 

 

「……絵錬、少しいいか?」

 

「ん~、どったのレティシア?」

 

「いや、な? 私の目に狂いが無ければ……彼女は()()()()()()()ように見えるのだが……?」

 

「あー、大丈夫だよ。レティシアの目は異常なしだよぉ」

 

「あっちはあから様に異常だけどね。絶対おかしいでしょアレ。河川と違って纏まっている訳じゃないのよ?」

 

 

 よくアニメーション等で滝の描写はまるでそこに壁があるかのような感じになる事が多いが、現実はそう甘くない。山頂に近い方ならまだマシだが、半ば越えた辺りからは霧状になってくる。一応瀑布の名の通り一枚布に見えなくも無いが、走るとなると話が変わってくる。あ、いや、そもそも走ると言う事自体ありえないのだが……

 

 

「アハハ~、気にしちゃ駄目だよペスト。ペストはさー、私達が足で地を歩いている事に一々疑問を持つの?」

 

 

 ようは、考えるなということだろう。ペストは、もう出鱈目には慣れたのか追究はしなかった。

 それからおよそ数秒後、会場は一斉に我に返ったように沸いたのだった。

 

 

「ツイタ」

 

 

 ズッパァアアアァァァァアンッ!! と激しい水飛沫と共に滝を登りきったリンネ。多少飛沫で濡れはしたが、リタイヤに為る基準は超えていない為問題ない。

 雪羽達はまだ到着していないようだが、直に来るだろう。それよりも、リンネは山頂に広がる景色に目が行った。

 

 

「………。ナンデ、ヤマノウエニ()()ガ?」

 

 

 常識的に考えてなら先ず信じられない。しかし鼻腔を擽る潮風はまさに〝海〟のものだった。

 色々と気にはなるが、リンネは取り敢えずその疑問を放置。彼女の目的は、参加者の足止め又は脱落させる事。ただ影禍のこと、〝ノーネーム〟のメンバーが簡単に沈むはず無いと見越しての余興とでも考えての事だろう。

 

 

「────ハハ、流石は箱庭の世界! 仮説は立ててたが、まさかマジで山頂に海があるとは思ってなかったぞ!」

 

「凄い、水平線がちゃんと見えます……! 私、山の上の海なんて初めて見ました!?」

 

「ヤハハッ、普通は見ねえよんなもの! ハハハハハ!!」

 

 

 壮大な大海原に沸き立つ二人。

 そんな中飛鳥は、海面に立っている海樹と思われる樹々を、そしてそれを前に立ち塞がるリンネに険しい表情をする。

 

 

「二人とも、感慨に浸るのは後にして」

 

「っと。全く、おちおちと楽しんでもいられないな」

 

「っ、十六夜君、飛鳥さん! フェイスさんがもう近くまで来てます! このままだと追いつかれて────ッ!」

 

 

 三人の元へ赤黒い大刃が振り下ろされた。雪羽は慌ててアインスで弾き砕いた。

 視線を前へ向けると、先程より物騒な形状の触手? を展開するリンネが、此処は通すまいと気迫で語ってくる。

 こうしている内にも、フェイス・レスが物凄い速さで近付いて来ている。

 

 

「………飛鳥さん、先に行って下さい。リンネは私が止めておきます」

 

「! 雪羽ちゃッ…………分かったわ。十六夜君、行きましょう!」

 

「了解、っと!」

 

 

 十六夜と飛鳥はリンネを迂回するように実の成った海樹へとヒッポカンプを走らせる。無論、それをリンネが赦す筈ない。牽制と捕縛用の触手が一斉に二人に襲い掛かる………が、

 

 

「………!」

 

「リンネ、貴女の相手は私です。フェイスさんも入れて、ここから邪魔はさせないっ!」

 

 

 雪羽はヒッポカンプから跳び立ち、触手を纏めて薙ぎ払った。彼女もまたリンネと同様に水面に着地する。彼女らの違いとしては、雪羽の足元には幾何学模様の小円陣が展開している事か。

 

 

「……これは、少々厄介ですね」

 

 

 と、此処でフェイス・レスが一行に追いついた。だが、既に場は一触即発状態。隙を見せれば何時脱落させられてもおかしくは無い。

 雪羽は二刀の槍剣を手に持つ。ルール上なら、全身が水中に沈んだ訳ではない為落馬扱いではない。けれど、騎手である以上彼女はこの場を離れる事は規定に反してしまう。故に、後は十六夜と飛鳥に任せるつもりなのだ。

 懸念事項としては、未だ姿を見せていない影禍。もし彼女と十六夜達が万が一、コミュニティの同士など無用でリタイヤされかねない。

 

 ────その懸念は、以外にも早く訪れてしまった。

 

 

「──あら、なんだか随分と賑やかね? てっきり差を付けられちゃったかと思ったわ」

 

「ッ、お姉ちゃん……!」

 

「はぁーい雪羽。三日ぶりね」

 

 

 妖しい笑みを携える影禍。その傍にはレティが就いている。

 現状、飛鳥達は既に果実を手にし、雪羽、フェイス・レス、影禍は未獲得。名だけなら〝ノーネーム〟と〝ウィル・オ・ウィスプ〟と非常に有利な盤面。しかし、影禍は不安定要素。実質三つ巴状態だ。

 

 

「やばいな……。展開としちゃあ面白いが、正直笑えねえ。お嬢様が脱がされる覚悟があるなら仮面の来たルートを逆送すれば良いが────」

 

「絶対嫌よ!? 脱がされるなら死んだ方がマシだわ!」

 

 

 飛鳥は断固として譲る気は無い。果てさて、如何したものかと十六夜は考える────時間はまたも無いようだった。

 

 その場に介する一同は異変を感じる。いや、もう異変は起きていた。微かから徐々に大きく揺れる地に、強まってきた波風。十六夜と飛鳥が警戒する中、雪羽、影禍、フェイス・レスはその異変の根源を察した。

 雪羽は身に覚えのある感覚を肌で感じ、影禍はその強大さに壮烈な笑みを、フェイス・レスは僅かに焦りを感じる。

 

 そして、滝の下を根源とした異変は、大きな水柱と共にその姿を現した。大河と滝の圧倒的水量を逆流させる絶技を為してみせた隻眼の

彼、

 

 

「いやあ、参った参った! 寝坊したらこんな時間になってもうた。無理矢理捻じ込ませて貰ったのに、白夜王には悪い事してもうたなぁ…………て、なんや。結構豪い事になってるなぁ」

 

 

 この先日、雪羽、耀とグリフィスの喧嘩を止めた〝覆海大聖〟こと蛟魔王。気さくで胡散臭い、それでいてあの時のような優い雰囲気を持たない彼は、今にも混戦一歩手前の状況に苦笑いした。

 

 

「(これは………成る程? 確かに白夜王の言ってた通りになるかもしれんなあ)」

 

「こ、蛟劉さん!? (不味いです不味いです! これは本格的に不味いですよぉっ……!?)」

 

「蛟劉? (何だか胡散臭い男ね………………へェ? あの蛟魔王なの、彼。フフ、良いじゃない良いじゃないっ。最高に愉しくなってきたわぁ)」

 

 

 一触即発の状況はさらに悪化。さて、彼らが如何動くのだろうか……

 

 

──レースは中盤を通過──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁて、準備は整いましたぁ。選手の皆さん、〝ノーネーム〟の皆さん。そろそろ私も動きますよぉ? ふふ、ふふふふ────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




あとニ、三程度で五巻は終わりですかね、
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