記録者達が異世界から来るそうですよ?【削除&改訂予定】   作:白結雪羽

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五巻最後だからあっさり締めようとしたのだが………
まぁ、うん。察してください




二人の帰郷

 

 

 一頻りに盛況を見せたアンダーウッド・収穫祭。前夜祭で魔王騒動があったり、開始少し前に退廃の何とかとリリの騒動があり、始まってからは様々なギフトゲームで白の姉妹が色々やらかしたり……。兎に角〝楽しかった〟の一言に尽きる。

 

 しかし、そんなお祭り事も今日、最終日を迎えた。

 夜、アンダーウッドは今までの喧騒が嘘のように静まり返っていた。サラの南の〝階層支配者〟の就任の儀が執り行われているからだ。流石にこの荘厳な状況で馬鹿騒ぎを起こす者など居ない。それは白の姉妹とて例外ではなかった。

 大樹の天頂を遠目に、雪羽、影禍、絵錬、砂羅、リンネの五人は丘の上にいた。〝ノーネーム〟のメンバーとは別行動、恐らく彼らは地下都市の広場に居るだろう。

 

 

「………静かだね~」

 

「絵錬、もう少し気の利く言葉は無いのですか? この空気に子供みたいな感想を持って如何するのです」

 

「良いじゃん良いじゃん固い事言わないでさ~」

 

「二年間、肺炎で嬲り………弄りますよぉ?」

 

「二つとも酷くない?!」

 

 

 なんてオーバーなリアクションを取りつつも、絵錬は先日収穫祭で手に入れた蒸留酒を喉に通す。空間把握は得意でも空気を読む事は出来ない絵錬だった。まあそれは此処に居る全員に言えることではあるが……

 

 

「………。ユキハ、ダイジョウブ?」

 

「う……うぅ……もう私……グスンッ、お嫁にいけない……」

 

 

 声を押し殺して蹲る雪羽。昨日の衆人観衆のど真ん中に真っ裸で放り出されてからというもの、ずっとこの調子だった。もう勢いで命を投げ捨てかねない位のダークなオーラを放っている。

 あのアンダーウッドを揺らしたサービスシーンだが、絵錬の申し訳程度の良心のお陰で雪羽の知人意外の記憶は砂羅と影禍が何とかしてくれた。裏を返せば〝ノーネーム〟等の一行にはバッチリ記憶されてしまっているが、これ以上雪羽の傷口に塩を刷り込むような事は……

 

 

「フフフ、これで何十回目かしらねェ? いい加減慣れたら如何なの」

 

「慣れたくなんか、ないよぉ…………」

 

「良いではないですか雪羽。貰い手は居るでしょう?」

 

「………アー。ヒロk――――」

 

「っ、ち、違うっ!! あ、え、うぅ……ち、違わないけど……違っ、」

 

「羨ましい……とは思わないけど、何だか嫉妬しちゃうわぁ」

 

「あらぁ? 影禍も父様には随分熱が入ってるではないですかぁ?」

 

「…………」

 

 

 影禍は砂羅の影を掌握した。いつぞやチラッと出たが、絵錬に使った体内の影の掌握だ。彼女が持ち得る最も単純で簡素な暗殺術。

 しかし、殺気の籠った所業と睨みにも砂羅は動じない。冷や汗一つ流していなかった。寧ろ、影禍に向ける笑みがより一層深まった。

 

 

「……直情的な妹は嫌いですよぉ、私?」

 

「っ……あ、あら奇遇ね? 私も鬼畜外道の捻くれた姉は嫌いだわ」

 

「…………ドッチモドッチ」

 

 

 リンネがボソリと呟くが、それが聞こえない二人ではない。弄る側の耳は、正に地獄耳と言っても差し支えないのだ。

 忽然と二人の言い合いが止まり、気付けばリンネは前後を捕らえられていた。

 

 

「ヒッ……!?」

 

「「何か言った/言いましたぁリンネ?」」

 

「アハハ、いってらっしゃ~い」

 

 

 絵錬はブラブラと手を振りリンネを連行してく砂羅達を見送った。

 すると、丁度アンダーウッド全域が再び熱を帯びて震えた。大樹の天頂を見てみると、サラが凄まじい炎熱と熱風を逆巻いていた。彼女の居る少し離れた丘上までその熱風は及び、夜の肌寒い空気を払拭していった。今此処に、新たな〝階層支配者〟が誕生した瞬間だった。

 

 

「おぉ~。時代の夜明けを見てるみたいだね~。アハハ、お酒が進む進むよぉ」

 

「ぅ……うぅ……」

 

「ほら雪羽~、何時までもいじけてないで。お姉ちゃんが慰めてあげるから、こっちに来なよ」

 

「…………グスン……うん」

 

 

 絵錬の胸を借りて黒歴史を必死に忘れようと努力する雪羽。ヨシヨシと彼女の頭を撫でる絵錬は、珍しく雪羽のお姉さんって顔をしていた。…………彼女も一端を担いでいたとか、そんな事は気にしてはいけない。

 

 そんなこんなで一つ二つ三つと騒動のあった収穫祭は終わりを告げる。何時も通り彼女達が引っ掻き回して、でも何だかんだで史実通りに終わっていく。今回も……()()()はそれなりの数となった。だが、それは表の役者に気付かれることはない。だって、それが〝記録者〟の〝ファーストコンタクト〟での暗黙の礼儀だから……

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 収穫祭から数日。雪羽達は〝ノーネーム〟の本拠・広間で、砂羅の見送りをするということで集まっていた。

 砂羅が箱庭に滞在すると決めていた期間は一ヶ月内、これ以上は諸事情で無理が生じるのだ。まあ、彼女達姉妹が三人も共に居る、って時点で結構無理があるのだが。そこは彼女達、事情などガンスルーである。

 

 

「それではぁ皆さん、此れからも色々とご迷惑をお掛けしてしまうと思いますが、うちの妹達を御願いします」

 

「あ、い、いえ! 此方こそ、雪羽さん達には大変助けられていますから、」

 

「その分厄介事もそれなりにありましたよね?」

 

「…………そ、そんなことないですよ? ふぎゃっ!?」

 

 

 少し吃った黒ウサギ。そんな彼女のウサ耳を影禍が横から影で引っ張った。

 

 

「今の間は何かしら黒ウサギ? それと如何して疑問系なのかしらっ?」

 

「ちょ、ちょっとお待ちを影禍さん!? 黒ウサギの素敵耳を引っ張らないでと以前からッ、」

 

「フフフッ。今日の夕食は兎鍋なんてのも良いかm――――ぐふぅッ!?」

 

 

 影禍が吹っ飛ばされた。やったのは勿論……砂羅だ。清々しすぎて逆に底冷えする笑みを浮かべて影禍の腹に衝撃波を飛ばした。特殊な手加減はしたようで、壁に叩きつけられたものの其処に損傷はない。

 十六夜達は砂羅の容赦無い行動に表情を引き攣らせていた。雪羽は気の毒そうに影禍を一瞥した……が、余り親身に心配すると巻き添えを喰いそうなのでソファで萎縮している。因みに絵錬は隣で寝ている。

 

 

「……と、このようにご迷惑をお掛けしてしまうので、その時は遠慮無く殺っちゃってください~」

 

「実の妹に残す台詞じゃないわね……」

 

「気にしないで下さい。──さてと、長々と語らいでお時間を取らせてしまうのも申し訳有りませんねぇ。それでは、私はそろそろ…………の前に、」

 

 

 一同に背を向けた砂羅は一度振り向き、好戦的に微笑みながら────

 

 

()()()()、お姉さんからの餞別です。私と────ギフトゲームをしませんか?」

 

 

────露骨に誘った。問題児一行の眉がピクリと動いた。

 

 

「あ、勿論嫌なら結構ですよぉ? まだまだ未熟故力及ばずにプライドを圧し折られる度胸が出来上がっていないのなら。一応皆さんは挑戦的と聞き及んでいますが、何事も得て不得手、無謀と勇気は別物、です」

 

「お、お姉ちゃんっ……」

 

「それと、もし承諾戴いた場合は、うちの妹達……絵錬は休眠中ですから五人で掛かってきなさい。お姉さんなりの優しいハンデです♪」

 

「さ、砂羅さん……?! そんな明から様にに挑発などされては…………ぁ」

 

 

 黒ウサギは砂羅の無謀ともとれる挑発に肝を冷やしたが、遅かったようだ。後ろの問題児四人組(影禍は何時の間にか復活)は顔に陰を落とし、尋常じゃないプレッシャーを放っていた。一六夜と影禍に至っては殺気が混じっている。

 

 

「……ハハッ。そこまで言われたらなぁ、此方としても退くわけにはいかねだろ……!」

 

「えぇ……貴女も、そんなに慢心して……後で泣きを見ても知らないわよ?」

 

「………潰す」

 

「フフ、春日部さん。潰すなんて甘いわ……徹底的に嬲り殺す……!!」

 

「ちょ、ちょっと皆さん!? 影禍お姉ちゃんも、って言うか何で私まで?! ね、ねえってばぁ!?」

 

 

 雪羽の叫びも虚しく、五人は殺る気満々だ。黒ウサギも途中から何とか制止しようと試みるも、四人の射殺されんばかりの眼光に縮こまってしまった。

 

 殺る気に満ち溢れた一同に視線を巡らせた砂羅は、聖母の如く、悪魔の如く口元を緩ませる。

 そして、六人の前に個人間で執り行われるギフトゲームの〝契約書類(ギアスロール)〟が現れた。単対多という変則的な形ではあるがあくまでも個人的な扱いなようだ。

 

 

『ギフトネーム名〝星子の戯れ〟

 

・ルール説明:

 ・1対5の変則決闘(デュエル)形式を執る

 ・十六夜、飛鳥、耀、影禍、雪羽の五名が白結砂羅に敗けを認めさせた場合、または五名が戦意を喪失した場合のみ決着。

 ・勝者側は敗者側に対して命令を一度だけ強制できる。

                         』

 

 

 契約書類に目を通した少年少女五人は、

 

 

「………決着条件が大雑把だが、これはどちらかが「参った」って言った時、それで良いのか?」

 

「えぇ。有り体に受け取って貰えればそうですねぇ」

 

「オーケー。あくまで個人ゲームだ。ルールとしてはこんなもんだろ…………今更怖じ気付くなんてのは認めねえからな?」

 

「ふふ、まさか。私としては、貴方達の実力の差を知りながら向かってくる姿勢に不安しかありませんよぉ? ………まさか、そう言った趣味をお持ちで?」

 

「残念ながら俺にそんな性癖は無い。あるのは寧ろ雪羽の方だろ」

 

「わ、私にそんな被虐的趣味なんてありませんよ!?」

 

「今雪羽の性癖なんて如何でもいいわ「良くないよ!!」ヤるなら早く殺りましょう」

 

 

 ………。――――荒廃した地に一陣の風が吹く。此処にタンブルウィードの一つでもあれば西部劇を彷彿とさせるものだが、無い。というかあっても邪魔だから必要ない。

 開けた未復興の敷地にて、六人は向かい合う。問題児組は既に準備万端で、十六夜は何時もの特攻姿勢、飛鳥はディーンとメルンを従え、春日部は光翼馬の装甲を、影禍は殺気溢れる影に柄無しの刀を、雪羽は黒白の二槍を手に持って。

 雪羽は深く溜め息を吐いた。何でこんな事になってしまったのかな……? と。

 

 

「最終確認だ。これはガチで良いんだな? 生憎、今の俺は手加減できねえぞ」

 

「えぇ構いませんよぉ。私も、以前の教訓を生かしまして、そこそこ本気に、手加減させていただきますからぁ」

 

「………。実力が見合ってる分腹立たしいわね」

 

「フフ、安心しなさい飛鳥さん。先ずは関節潰して地に伏せてもらった後に地獄を見せるから……!」

 

「何処で安心すれば良いのか分からないのだけれど、取り敢えずそれだけは止めなさいね?」

 

「あらあらぁ? ……それでは、始めましょうかぁ。餞別の────お戯れを」

 

「「「ッ!?」」」

 

 

 ズウゥンッ! と地鳴りがその場に轟いた。まだゲームは始まってはいない。今のは………砂羅が(リミッター)を2つ外した際に起こった()()()()だ。

 お淑やかに両手を前にして粛然と立つ砂羅。その笑顔と立ち居振る舞いはまるで聖母のよう…………鬼のような威圧感を放ってはいるが。本日二度目、十六夜達の表情が引き攣る。影禍も、ここは冗談抜きに余裕などかましていられない様だった。そんな中、拍手が二回響く。決闘開始の合図だ。十六夜達は、数秒の思考放棄から強制的に引き戻された。

 

 

「フフフ………フフフフフフっ。さァ、ゲーム開始です。皆さん、頑張って下さいねェ……!!」

 

 

 数秒後。彼らを、天則と言う名の嵐が猛威を振るったのだった────

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「只今戻りましたぁ~」

 

「ん、お帰りなさ…………はぁ、今度は何をやらかしてきたの?」

 

「そう溜め息を吐かないでくださいよ、母様。少し……面白い子達と戯れてきただけです」

 

 

 聳え立つ本棚の迷宮のあるその書斎にて、砂羅は母様と呼ぶ一人の少女に微笑みかけた。対する少女は、あまりにもキラキラと砂羅が清々しい様子なため、思わず眉間を押さえた。浮かんできたのは、同情の念。

 パタンと、読んでいた本を閉じ、彼女に向かい合った。

 

 

「…………そう。可哀想に………はぁ……。それで、影禍達の様子を見に行ったんでしょ? 調子は?」

 

「ふふ、変わらずでしたねぇ。変わらず────愉しんでいましたよぉ」

 

「どうせ馬鹿な事も仕出かしてるんでしょ。全くもう………」

 

「それが私達ではないですか母様ぁ。母様も、人の事は言える質ではありませんよぉ?」

 

「………そうね。はぁ……もういい。弥記に集めてきた物、渡してきなさい」

 

「あらぁ、そうですねぇ。ふふ、それじゃあ…………母様、溜め息ばかり吐いてますと、幸運値が下がってしまいますよぉ?」

 

「それはないって事は貴女が一番理解してるでしょっ。いいから、さっさと行きなさい」

 

「はいは~い」

 

 

 コツコツコツ────。ドアへと離れていく音を横耳に、少女は……やはり溜め息を吐いて、静かに読書へと戻っいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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