記録者達が異世界から来るそうですよ?【削除&改訂予定】   作:白結雪羽

77 / 90
最近投稿が疎らになってきましたね。
本当、申し訳ないです……。



南の次は北とさ

 

 

 

 南の魔王襲撃騒動や、その後恙無く執り行われた収穫祭が終わりを告げて早一ヶ月とちょっと。〝ノーネーム〟が他のコミュニティと同盟を組む事になったり、白夜叉が仏門を返上して〝階層支配者(フロアマスター)〟から辞退し、変わりに蛟魔王こと蛟劉がその座に就いたりエトセトラと……随分移り変わりの激しい物であった。

その中でも別段と気に掛かかるのは白夜叉の階層支配者からの辞退、それとその原因となった――――北東南における同時魔王襲撃だろう。

 実は魔王としてのレティシアのゲームが強制的に開始されていた時とほぼ同時刻、北側と東側でも別の魔王が出現していたのだ。白夜叉曰く双方とも無事終息は出来たよう……なのだが、その陰に何やら良からぬ陰謀が渦巻いてる事が知れたらしい。詳細はハッキリとしていないが、首謀はどうにも魔王の同盟――――〝魔王連盟〟なる物らしい。

 無論、自分達の領地や下層に居る傘下のコミュニティを守る義務を有する〝階層支配者〟達はこの現状を黙って見過ごす訳にはいかない。なので、近々北側の都市で対策召集会が開かれるようだ。

 

 

 

 ――――と言うのが一週間位前の話。召集会はもう間近に迫っており、ついでに言えば魔王を二度も退けた〝ノーネーム〟もそれに呼ばれていたりする。

 今現在、〝ノーネーム〟には絵錬とペスト、蛇神の白雪姫とレティシアの四人しか戦闘員が居ない。黒ウサギを含めて雪羽達六人は、会議前の打ち合わせをするため三日前に〝サラマンドラ〟の五桁の領地――――『煌焔の都市』に赴いてしまったからだ。

 因みにレティシアと白雪姫はメイドと言う役柄とコミュニティの守衛の為に残っており、絵錬は純粋に一ヶ月以上も寝ているから、ペストはそんな彼女に付いて残っている。

 

 それで、今レティシアを除く三人はと言うと、新しく開墾した農園区の田園に稲の苗を移植している作業の真っ最中だ。だが案の定、例によって例の如く絵錬は、不機嫌面を隠そうともせず腰を折って作業に勤しむペストの上でただ見ているだけであった。寝起きなのだろうか普段以上に寝ぼけ眼が深く見える。

 

 

「ふあ~ぁ……ふぅ……。ほらほらペストぉ~、後少しなんだからそう不機嫌にならないのぉ……」

「…………」

 

 

 ペストは一度作業を止め、額に青筋を浮かべながら絵錬を一瞥。そして田園に被害が及ばない程度に加減をした(但し殺意は濃厚な)黒死の風で彼女を田園の外に吹っ飛ばした。

 

 

「うみゃ~~」

「え、あ、ちょっ!?」

 

 

 棒読み声の悲鳴を上げて吹っ飛んだ絵錬は、狙いすましたかの様に監督をしていたジンを下敷きにした。しかもその拍子に、彼女の豊胸が押し付けられる形で……(明らかに空中で体勢を変えていたのは触れないでおく)。

 

 

「~~~~っ!!?」

「うん? あ、あははっ。もうジンったら~、年甲斐もなく積極的だねぇ?」

「――――はぁっ! ち、違いますよ!! これはどう見ても事故でしょう?!」

 

 

 全く以てその通り。だが、世の中事実なんて当事者の意見よりも第三者の反応で大抵決まってしまうのが悲しい現実である。

 

 

「…………ジン君」

「最低最悪変態女の敵ね……愉快だわ」

「だから事故だって! リリも……って言うかペスト!? もしかしなくても君のせいだよね?! 故意でやったよね?!」

「そんな事ないわリーダー。精々その牛乳に埋もれて愉快に死になさい……だなんて、これっぽっちも思ってないから」

「僕に何か恨みでもあるの?!」

 

 

 ジンは必死に弁明しようとするが、リリの純粋に悲しそうな視線と確信犯(ペスト)の辛辣な言葉に撃沈。せめて今の体勢から脱け出そうとする物の、此方にも居た確信犯(絵錬)が楽しそうにホールドするので逆に深みに嵌まってしまう。

 

 この後、もがくジンの傍らで〝ノーネーム〟の食事の派閥についてペストと白雪姫とリリの間で一悶着があり、本拠からレティシアが止めに来るまで中々に混沌とした場が続くのであった。五人とも(何故かジンまで)説教を受けたのは……まぁ言うまでもないかもしれない。

 

 

「全く、今日も(・)厄日だわ……」

「あははっ。『も』を強調するあたり聡いんだねぇペスト。んー……何がそんなに不満なの? 毎日賑やかで楽しくない?」

「えぇ毎日賑やかで仕方無いわねぇ……なら何でだと思う? 今此処でジックリと話し合ってみましょうか? えぇ?」

 

 

 絵錬の部屋、作業着からどうしてか着なくてもいいメイド服を着替えたペストは、威圧的な笑みを浮かべて絵錬の胸ぐらを引き寄せた。今一度、どっちが主でどっちが従者か解らせてあげようかと言わんばかりに……相当お怒りである。

 しかしまあ相手はマイペースに定評のある絵錬。どんなに威圧的に胸ぐらを掴まれようと、暢気に笑って受け流すだけ。そんな彼女にペストも怒る気力すら消え失せてしまい、沸き上がる苦労の絶えない万感にソッと溜め息を吐いた。

 

 

「全く……調子狂うわね……」

「あはは、頑張れリーダー♪」

「……殴っていい? ねえ、殴っていいわよね?」

「わぁっと暴力はんた~いっ。アハハハハっ!」

 

 

 ……疲れる。だけど……悪くはない。

 何とも言い難い想いを改めて馳せるペストであった。

 

 と、少し話は変わって、二人は今日の午後からの予定について話し始めた。その内容は、雪羽達が先に向かって打ち合わせをしている筈の〝階層支配者〟の召集会の事である。

 先にその召集会には〝ノーネーム〟も呼ばれていると述べたが、それには勿論コミュニティのリーダーであるジンも行くのだ。それが今日の昼過ぎ、昼食後の予定である。

 そしてペストと絵錬は、彼の側役兼ね魔王連盟に関しての情報提供者として付き添う事になっている。主に前者は絵錬、後者はペストの役目だ。

 因みにペストは最初こそ露骨に顔を顰めていた。何せ数ヵ月前に彼女もその一員も同然の立場であり、少なからず恩もあるのだから。今更古巣に関心のある彼女ではないが、やはり今後の目的も考えるとなるべく黙秘権を貫きたいようである。

 だが幸いにもペストは、ジンに隷属されている訳ではない。あくまでも仮である。つまり黙秘権は充分通せる。必ず反感を買うだろうがそんな物知ったこっちゃない……が、今の極小化した霊格で敵を増やす事は好ましくないため最低限の質疑には答えるつもりである。

 

 

「あ、そうそうペスト。質問されたらちゃんと正直に言わないと駄目だからね? 嘘、良くないよ?」

「…………。そんな義務、私にはないわね」

「む……そっかぁ~………………」

 

 

 まるで狙いすましたかのような絵錬の言葉に怨みまがしい情念を懐くも、顔に出さないよう淡白に返すペスト。そんな彼女の様子に肩を落とす絵錬は、当人にも分かりやすく含みのある笑みを浮かべた。確実に何かペストにとって碌でもない事を仕出かそうと企んでいる笑みだ。それも露骨に示してきているのだから質が悪い。

 ペストは怨み度三割り増しでそんな絵錬を睨みつけ、最終的には一言「……分かったわよ」と渋々了承するのだった。

 言っておくと全てはやはり話さない。ただ最低限の水準を上げるだけだけのつもりだ。

 絵錬の反応からして自分の秘め事は恐らく全てバレているのだから、彼女が会談の席でその点を追究してきたら終わりなのだが…………

 

 

(ま、それは流石に無い…………無いと信じたいわ……)

 

 

 改めて絵錬という謎多き少女に気苦労を感じるペスト、取り敢えず話がどういう訳か胸の話に移っていたので一発拳を叩き込むのだった。

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 時間は少し進んで昼餉過ぎ。絵錬達他、年長組は本拠入り口正面の大広間でこれからの予定の最終確認をとっていた。

 再度確認する事は、ジンと絵錬とペストの三人は〝サラマンドラ〟の治める五四五四五外門の『煌焔の都市』で開かれる階層支配者の召集会に出席。レティシアと白雪姫、年長組他子供達は主力が留守にしている間の守衛――――この二つ。

 主戦力の大半が離れてしまう事はなるべく避けねばならないのだが、如何せん事態が事態である。ここはジンもメイド二人組を信用するしかない。

 まぁ、レティシアは先の魔王襲撃の一件が解決した事でギフトの一部が修繕、白雪姫は隷属された物の神格を持つ身。生半可な相手なら赤子の手を捻る感覚で退けられるだろう。なので、油断は禁物にしろ安心して任せられる。それに万一の事があれば長距離の空間転移が可能である絵錬が助太刀に戻る事も算段に入っているので、尚更磐石の体勢だ。

 

 予定確認も終わり、三人は早速北へと赴く事にした。本来なら境界門を使って行く所だが、今回は絵錬が居るため彼女の力を借りる。

 

 

「――――それじゃ、僕らも行こう」

「オ~ケ~。ほら、二人とも何処でもいいから掴まっててねぇ~……あっ。何なら胸とかお尻とかでmグフッ!?」

「さっさとしろ」

 

 

 例によって絵錬の茶々はペストが物理的に止め、そんな辛辣な対応に絵錬は涙しながら二人の手を取ると、予め測定しておいた北側の座標へ一息で転移をした。

 

 ほんの一瞬の間を空けて、三人を暖かい……をやや超えた熱い風が撫でる。瞬きをすればそこは、もう既に北の都市『煌焔の都市』――――の上空500メートル位の地点であった。

 

 

「――――って何でですかああああああああああっ!!?」

 

 

 空を飛べない哀れなジン少年、心からの叫びである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。