記録者達が異世界から来るそうですよ?【削除&改訂予定】 作:白結雪羽
出来るだけ書ける物から書いて時間を空けないように、とは思ってるのですが……如何せんうまくいかない。
と言う訳で他の投稿小説に関してもですが、相変わらず不定期が続きそうです。誠に申し訳ない。
出来る限りペース向上の努力はしてみたいと思います。
「本当にもうっ、お願いですから! 皆さんはそろそろ分相応の振る舞いと言う物を覚えて下さい! 幾度と忠言させて貰いましたけど、皆さんが問題を起して怒られるのはジン坊ちゃんや黒ウサギなのですよっ!」
「「「なら良かった」」」
「そうですねー、ってそんな訳無いでしょう!? 少しは反省して下さい!! うぅ……折角の休暇が水の泡なのですよ……」
北の街の象徴、巨大ペンダントランプから強制退去させられた影禍、耀を除く一行は、半時に亘る〝サラマンドラ〟との鬼ごっこの末予定通りの行動を取っていた。現在は、紅焔の都市の一つの目玉とも言える工房街区、そこで待っているだろうジャックの元へ向かっている最中である。その道中、当然のように黒ウサギは三人に説教を垂れていたのだが、悪びれも無く開き直られアッサリ撃沈していた。
「アハハっ、何言ってるの黒ウサギ。休暇は潰して砕いて棒に振ってこそ有り難味が増すんだよ?」
「何だか正しい様な気もしますけど本末転倒も良い所ですよねそれ!?」
「? 何言ってるの、当たり前の事だよ?」
「だまらっしゃいッ!!」
スパアアアアアンッ!! と、小気味良くハリセンが闇邪の頭を叩…………けなかった。悪戯っ子の特有の弧を口許に浮かべた彼女は、黒ウサギお得意のツッコミをヒラリと躱したかと思うと十六夜の陰……彼と飛鳥の真ん中に身を滑らせる。その姿はあまりにも見た目相応で、十六夜と飛鳥はそんな彼女に思わず苦笑を洩らした。
……傍から見たら仲の良い家族御一行である。
と、そんな戯れを繰り広げている一行の先でふと、激しい光と熱風が溢れた。そこは丁度目的地である工房街区の入り口のようで、突然の光景に三人は目を丸くし、嬉々として歩を速める。そして辿り着いた先の景観を視界に収めると、一様に感嘆の息を零した。
視界に広がるのは幾筋にも立ち昇るな火の柱。それは橙であったり、朱であったり蒼、翠、紫であったりと色彩様々なキャンドルガーデン。中世ヨーロッパを模した街並み、その歩廊を飾るステンドグラスにも相まって幻想風景を魅せている。極寒の最中に発展した都市の一角である事がもう信じられない位だ。
髪を揺らし、頬を撫でる心地よい熱風に目を細める闇邪。そんな彼女は今までにない高揚感を覚えていた。
殺戮の為だけに生まれてきた彼女が、殺生意外で覚える快楽。それは彼女自身のギフトに起因するものである。色々と相違点はあるとは言えど、彼女も(雪羽も)一介の創り手だ。今し方覚えた高揚感は紛れも無く共感によるものだろう。
「わぁ~……! え、何これっ……此処って天国?! 天国なの?! 前は全然楽しめる暇なんて無かったけど……アハハっ♪ もう最高最高最っ高!! 何だかありもしない私のインスピレーションがビシビシと刺激されてるよっ! アハハハハっ!!」
工房街区に哄笑が響く。揺れる炎を、宙を漂う微精霊達を、幾多にもその瞳に映る精錬された芸術品の数々を、今にも直ぐに抱きしめて回りそうな勢いで闇邪は駆け出した。
そんな普段以上に違ったベクトルへ箍を外した彼女を後ろで感慨に耽っていた十六夜達は自然と頬が緩……んだが、目的を見失って遠回りを喰らう事は勘弁願いたいので、直ぐに彼女の襟首を掴んで引き止めた。
「うぎゅっ!? っ、ケホッ…ケホッ……!! ちょっ……ケホッケホッ! ……い、行き成り何するの!?」
「あのまま放ってたら勝手に奔走してただろうが。気持ちは大いに共感できるが、俺達は遊びに来た訳じゃねえんだぞ?」
「…………わ、分かってるよ。でも十六夜に言われると何か釈然としない……」
唇を尖らせながらもこれまた珍しく引き下がる闇邪。どうやら先程のテンションは自分でも思う所があったようだ。
と、そもそも彼女がマトモな反省を出来たのかという疑問はさて置き、一行は改めて雑踏の中道を進み始める。途中飛鳥の疑問から霊格についての気になる話へ移りもしたが、それもこの際置いておく。
だが、目的地へと向かう彼らの行く手を再び阻む単語が聞こえてきた。否、正確には十六夜がその単語に逸早く反応を見せたのだ。
その単語とは────〝神隠し〟。端的に言ってしまうと、失踪事件のオカルト的名称の事である。一昔前の伝承に倣うなら、女子供が逢魔時を中心に忽然と姿を消してしまう事象の事を言う。
その神隠しとやらの単語を、都市の人々が焦燥気味に叫んでいた。
「…………神隠しだと?」
「Yes、そのようですね。まぁ、悪鬼羅刹の住まう北側では然程珍しくもないのですが……あの慌て様は少し珍しいですね」
「というと?」
「いえ、北側には対神隠し専門の機関が存在しますから。悪霊の憑依や風の神格者の悪戯、鬼の人攫いや人身売買まで手広くカバーするのエキスパート集団です。彼らの手に掛かれば大抵の神隠しは二、三日で消息が掴めるのですが……」
「うわぁ……北側って結構物騒なんだね……」
神隠しが日常的に起こる都市とは如何な物だろうか? と、少しばかり辟易する闇邪。だがまあ彼女も他人の事を言える質でもないため、平凡な反応をするに止まった。
だがその隣、黒ウサギの話を大まかに咀嚼したのか、十六夜は悪餓鬼の笑みを浮かべた。そして、それに直ぐ目敏く気付いた闇邪も瞳を細め、愉楽そうに笑う。
「つまり何だ。この騒ぎは、そのエキスパートでも手に余る……そんな神隠しだって事か……」
「らしいねぇ~……。ってことで黒ウサギ、自由行動の許可を貰いたいです!」
ド直球に進言する闇邪に、呟きから依然と笑みを浮かべ彼女へと、そして黒ウサギへと視線を移す十六夜。
黒ウサギに集まる問題児二人の視線。彼女が折れ……諦めるのには然して時間は掛からなかった。
「はぁ…………夕方には帰ってきて下さいね?」
一言、溜め息と共に告げる。
その了承に華開いた様子の二人は快く頷き、極めて了解と騒ぎのあった現場へと足先を向けるのだった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「────にゃははっ、悪かったってジン。私居心地悪い空気って苦手なんだよ~。だから……ね?」
「『ね?』じゃないです! あれでは只軋轢が酷くなるだけですよ! 最悪召集会にも影響しかねないんですから、今後勝手な行動は控えて下さい!!」
「はいはいりょうか~い」
間延びした反省の色のヘッタクレも無い絵錬の返事に、先が思いやられるとジンは肩を落とした。
絵錬がサンドラとペストの険悪な状況から逃げ、闇邪達の問題行動の終止を見届けたジンだが、その後ジャックと別れた所で転移で戻ってきた絵錬と合流した。そして勿論ながら彼女の逃走への説教を垂れたのだが、案の定効き目は薄い。漸く、本当の意味で黒ウサギの苦労が身に染みた彼である。
因みにこれは余談であるが、闇邪達の元に黒ウサギが駆けつけていたのはどうやら絵錬が気を利かせて呼んだかららしい。
ほとほと、その気を先程も利かせられなかったのかと呆れるジンであった。
「……頼りないわね。コミュニティの長としてもう少し自力でどうにかする事を覚えた方が良いわよ」
そこに飛んできたペストの辛辣な言葉に返す言葉も無かった。
彼とて自覚はしているのだ。このまま周りに頼ってばかりではいけない。何時か必ず、旗と名を取り戻し、それに恥じぬ頭にならなければならない。何時までも引っ張って貰う訳にはいかないんだと。
「確かに、その通りだ。何時までも黒ウサギ達にばかり任せていられない。僕ももっと確りしないと……!」
「おぉ、その意気だよジン。初陣でボロボロだったペストとの格の違いを見せ付けtゴフッ!!?」
ペストが絵錬粛清に手馴れてきた事は良いとして、改めて決意と意志を奮起させたジンにペストは鼻を鳴らす。けれども、彼が気に入らないわけではない。その彼に向けられる視線は、これから彼の行く末を値踏みするかの様なやや冷たくも何処か期待を孕んだ物だ。
命令権すら適用されない名だけの隷属関係。しかし、それでも……飽きる物ではない。寧ろ面白くも感じる。誇りを失い、全てを未熟な体で背負う彼が、一体何処までいけるのか……。
などと、まるで子供の巣立ちを見守る親鳥のような思想をハッとして振り払う。
ふと隣を見てみれば、何時のまにか復活した絵錬がニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべてペストを見ていた。その心情を見透かしたような瞳が、笑みが、無性に腹正しい。取り敢えず彼女の腹部にもう一度蹴りを見舞った。
「ふんっ」
「ぐふぅ……!?」
幾分かスッキリした。ペストはさっきまでの雑念を頭の片隅に放り、ジンと前もって打ち合わせた予定通り召集会に呼ばれた面子への挨拶回りに向かうよう促す。
ジンも二人の遣り取りには慣れたようで、蹲り震える絵錬に淡々とした声を掛けるとそのまま〝サラマンドラ〟の本拠である大宮殿へと歩き出した。
「うぅ……皆私に冷たいよぉ~……」
────さて、三人が向かう〝サラマンドラ〟の大宮殿だが、その全貌は城と城下町からなる一種の要塞である。上から見ると分かるが、本拠は三層に亘る城壁が囲っており、背後には並々以上に連なる巨峰が存在する。
また、その戦力も強大なもので。少数精鋭の〝ノーネーム〟に反して屈強な亜龍を多く従える組織力を誇っている。中には翼竜の類もいるとの事で、制空権を支配する事も可能。満遍なくそして深く、相手にするとすればこれ程厄介な相手は居ない。
と、もし〝サラマンドラ〟と本気の戦いになったら……という仮想を立てる絵錬。無論、今の所はそんな予定は鐚ともない。それに彼女にとって亜龍〝程度〟の存在に本気を出すまでもない。いや、逆に彼女が本気を出してしまうと箱庭そのものが危ないため出す事は出来ない。無意味な破壊活動を進んでやる程彼女は野蛮ではないのだ。
宮殿前に差し掛かった辺りからジンが何かを思考しているようだが、絵錬は気にする事もなく……ふと、自分達に近付く三つの気配を察知した。その内、一人はついさっき出会ったばかりの、小さいながらその霊格は大きい少女の……
「ジン、真上」
「え?」
絵錬と同様彼女の接近に気付いたペストは、不意に視線を上に向けるとジンに注意を促す。
だがそれは幾分か遅い。ジンが頭上へと顔上げた時には既にローブを纏った人影が間近に迫ってきていた。
……結果、ジンはその人影に対応する間も無く下敷きにされてしまう。首から何やらゴキュン! と致命的な音が鳴った気がするが、取り敢えずは無事なようだ。
「……これほど『空から女の子が降ってきた』なんて美味しいシチュエーションが盛り上がらない事も珍しいねぇ……」
「なに言ってるの?」
「ううん、こっちの話」
押し潰されたジンを平然と見下ろす二人。護衛とは一体何だったのか……と思える。
と、そんな災難に見舞われるジンだが、落ちてきた人影が彼に飛びつき頭を打ったりと不幸は連続した。だがそこで初めて、彼はフードに隠れる相手の顔を認識出来たのか叫びを上げる。
「サ、サンドラ!? ど、どうしたのその恰好?!」
「事件の捜査をしにお忍びで出かけるところ。ジンも────」
そこでサンドラは言葉を切り、無垢な少女の顔付きから剣呑な〝階層支配者〟としての顔付きに変えると傍に控えるペストと絵錬を睨みつけた。それに対しペストは、ばつが悪そうに顔を背けそうになるが、妙な意地が働いたのか毅然とサンドラに視線を交える。
二度目の険悪な雰囲気。だがまたしても、この空気に水を差したのは絵錬であった。
「はーいストップストップ。……えぇと、サンドラちゃん? さっきはその……私達が悪かったって。まぁ、それで、なに? 色々言いたい事とかあるとは思うんだけど……取り敢えず今は急いでるみたいだし。折り入った件は後でと言う事で…………駄目かな?」
「…………いいでしょう」
今度は真面目? に締めた絵錬。サンドラも現状此処でイザコザを起している場合では無いと考えたのだろう。絵錬の提案に承諾の意を示した。
<はふぅ~……シリアスなんて止めて欲しいよぉ、全くもうっ>
<自業自得でしょ。……他人の事言えた義理じゃないけどね>
少々空気が気まずくなってしまったが、事が一時治まったのでジンはホッと息を吐いた。そして改めて、目の前の〝階層支配者〟の少女に苦言を呈す。
しかし何と言うかまぁ、ジンの言い分は純粋な少女の意見に見事にスルーされてしまう。曰く、召集会が迫っているならその前に解決すれば良いとの事。
ジンとしてはそう言う事ではないと余計に頭を抱えたくなったのだが、サンドラの背後に沈黙する二人のローブ姿の人物に意識が移ると、開いた口が彼らについての問いを発した。
「貴方達は、〝サラマンドラ〟の同士ですか?」
返事は返ってこなかった。身長からして自分やサンドラと同い年位。〝サラマンドラ〟の護衛としては少々考え難い。
ジンは途端に訝しげに二人を見つめる。が、サンドラが慌てて彼の考えを否定した。
「べ、別に怪しい二人じゃないっ! 一年位前に仲良くなった二人で……その……ジンにも紹介しようと思って……!」
今さっきの鋭さは何処へやら、一介の少女としての不器用さが表れる。
と、どやらそんなサンドラの様子を見兼ねからか、ローブの一人が溜め息混じりに助け舟を出した。
────だがその