記録者達が異世界から来るそうですよ?【削除&改訂予定】 作:白結雪羽
風呂場の場面は殆ど考察なので書き難いったら無いです。
只でさえ酷い文章構成が泣けてくるレベルになってしますね……
以前、北側は極寒の地の最中ペンダントランプの恩恵があって寒冷を避けていると言った。しかしながら、それでも全体的に他の地域に比べて気温が低い事は変わらず、年間を通して降水量より降雪量の方が多いそうなのだ。とすると、必然的に水資源の確保が困難となってくる。何せ地表に水路を張ろう物なら凍結の恐れがあるためである。
では、北側をここまで発展させた一つの貴重な水資源は何処から来るか? それは至って単純で、都市部の後方に望める巨峰。そこに群生する自然形態が天然の貯水ダムを形成し、地下水脈を通して得ているのだ。が無論、地表よりはマシとは言えただ地下の水道へと流しているだけでは意味が無い。そこで、流石は〝紅焔の都市〟と呼ばれるか、地下にはそこそこの規模を誇る放熱工房が存在するようだ。
────それで、その副産物として、付近の水は天然水から天然湯へと質を変える訳であり、公共利用が可能な温泉施設が造られる事ともなった。
今、〝サラマンドラ〟の憲兵から見付かる前に逃げ果せてきた絵錬達は、そこに甘んじて身を隠しているのだった。
いや、身を隠すにはしこし語弊がある。事実は、子供専用の浴場に逃げ込むことで大人の目を掻い潜ろうという魂胆である。因みに、発案者はサンドラだ。まだ利用可能時間外であるにも拘らず、〝サラマンドラ〟のリーダー特権で番台を丸め込んだ彼女、中々に腹が黒い……もとい肝が据わっている。
しかしながら、まさかの浴場に入る事となったペストは焦燥困惑の様子は一言に尽きた。状況が状況故に、また生来の風呂嫌いも相俟ってやや放心状態である。
だが一つ光明があったとすれば、道中で絵錬との念話について思い出した事だろう。そして、これも完全に忘れていたがジンにも同系等のギフトをアンダーウッドで与えていた事も思い出した。ならば、今直ぐにでも二人に殿下とリンが敵であると、この危険な状況の旨を伝えないと思っている……のだが、問題は二人が事を理解して平静でいられるかが最大の懸念であった。特にジンはコミュニティのリーダーとは言えまだ齢十一の少年である。良くも悪くも駆け引きに向いているかは…………こんな場所で博打に望める筈も無い。それと絵錬においては……絶対に何かやらかす。最悪、何時もの調子でリンと殿下に口を滑らせてしまうかもしれない。そうなれば完全にアウトだ。
解決策の糸口を見つけたペストは、どちらにせよ人的問題のお陰で状況打破が望めないのであった。
「ほらペスト、早く脱ぎなよ~? お風呂嫌いなのは分かるけどさぁ、女の子なら身体を清潔にしないと将来娶って貰えnグフッ!!?」
「五月蝿い。そんな予定は最初から無いわ……」
隣で逆さに胡坐を掻いてフヨフヨと浮かぶ、寝惚け面の腹に肘鉄を入れるペスト。これで何度目か、絵錬のマイペースは本当に腹が立つ。頼もしい時はあるにせよ空気が読めないのは非常に改善すべき点だと彼女は思う。
「……って言うか、何でアンタが此処に居るのよ。こっちは子供専用の筈でしょ?」
「保護者だよ、ホ・ゴ・シャ。子供達だけで何かあってからじゃ遅いじゃん? それに番台の人にも物交渉でちゃんと許可は貰ったよ」
「…………あぁ、そう」
要するに賄賂か。彼女も結構黒い事をする。
でもまぁ、状況的に分離されずに済んだのは幸いだろう。性格はアレでも、その実力は確かなんだから。
とまぁ、緊張感ある話はここまで。取り敢えず今は風呂である。
だがしかし、先程からペストは別の意味で顔を顰めていた。
理由は……傍で漸く足を床に付けた絵錬。着地と同時に、露になっている二つのメロンがタユンッと揺れた。その途端、ペストの無慈悲な蹴りが再び腹へと叩き込まれる。
「ぐふぅッ……!? ぉ、うぅ……ちょ、い、いきなり……何するのさペストォ?!」
「黙れ無駄乳。さっさとその無駄な脂肪取り除いて私の前から失せろ」
「理不尽?! いくらまな板だからっt、ふぎゃッ!!?」
瞬時に話を理解した絵錬の素直な返しに返ってきた踵落とし。何とも悲しい戯れだ。
そう、ここは浴場施設である。当然服を脱がねば風呂には入れない。とすると、絵錬はその豊満な二つの巨峰を成長途中の子供達に晒す事になる訳で……。
リンとサンドラは将来付くかもしれないそれにある種の羨望を向けていたが、受肉している悪霊であるペストからすると将来は不安でしかない。まるで現実は非情であると断言されたような感じである。まぁ事実は来てみなければ分からないにしろ、行き場の無い敗北感は怒りとなって絵錬に向けられるのも仕方がない。
「う、うぅ……理不尽だよぉー、横暴の極みだよぉー……。私が何したっていうのさぁ~」
よく「キョニュー死すべしッ!!」などと、血の涙を流す無い者達が居るが、絵錬達有る者からすればそれ程理不尽に向けられる怒りもないだろう。彼女らとて、好きで大きくなった訳では無い(かもしれない)のだから……。
ペストはリンから目を離さないよう手早くメイド服を脱ぎ、態とらしくメソメソと目尻に手を添える絵錬に付いて浴場へと続いて────
「あ、ジン! 先に入ってたんだ!」
────盛大にこけた。それはもう、思わず絵錬もケロリと泣き止んで感心する程のずっこけっぷりだった。
しかし、今はそれどころではない。今、サンドラの上げたジンの名前。そして、お互いを認識して漸く気付く。
子供専用の浴場。性概念がまだまだ未発達な彼らの憩いの場に、当然男女の区切りなどある筈はなかった。
そして、席からペスト同様ずっこけているジンも、声を上げたサンドラも、ペストも……保護者の立場の絵錬も全員が真っ裸である。リンはちゃんとタオルを巻いていたが、この場の過半数はその裸体を惜しげも無く晒して……
「おろ? やっぱり、子供だから男女共有なんだね~」
「ちょ、待ッ……え、絵錬さん!!?」
ジンは酷く狼狽した。何度も言うが、この場に居る過半数は素っ裸である。そんな中でも、絵錬は誰もが認める女性の羨望を映す体付きをしている。しかもその手にはタオルすら握られていない。
ふとジンの横に視線をずらせば、この状況に一切動揺を見せずリンが殿下の洗髪を任されていた。そしてそれに釣られてサンドラも、幼馴染を昔みたく洗ってやろうとジンへとにじり寄り、彼は顔を引き攣らせて逃走を開始する。もう視界の全てが目に毒とか構っていられなかった。
浴場内が混沌としてくる中、咄嗟にタオルを引っ張って体を隠したペストは酷く混乱する。と、その彼女の手を、未だ羞恥心も感じさせない絵錬がグッと取って、
「さ、ペスト。お風呂嫌いを直すためにも先ずは洗いっこしようね~」
「えっ……!? ……って、違う!! 少し待ちなさい! アンタは絶対にタオルを巻いて! 目に毒にも程があるわよ!!」
「む……目に毒って少し酷くないかなっ。それに、お風呂にタオルを持ち込むなんてお天道様が許しても私は許さないよ!」
「いいから巻けって言ってんのッ!!」
「ぐふぉあッ!!?」
キレが増したペストの回し蹴りが絵錬に炸裂。脱衣場まで彼女を吹っ飛ばすと、急いで人数分のタオル用意して、ジン共々隠す所を隠す! と体を隠させるのだった。
(何で私がこんな事しなきゃならないのよ……!?)
彼女の叫びに答える者は居ない。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
混沌とした浴場が落ち着きを取り戻して数分。歳若い五人の少年少女は、ペストとジンの並々ならぬ懇願の末全員がタオルを巻いて湯に使っていた。でも絵錬に関しては、タオルを巻いて湯船に入るのが相当認可できないのか、タオルではなく水着を着用すると、最後まで抵抗を見せているが……。因みに水着は何処から出したのかと言うと、彼女の外套に付いている服の収納機能付きブローチから引っ張り出してきたのだった。
そんな絵錬だが、ささやかな意趣返しとして嫌がるペストを無理矢理湯船に入れ、空間固定で逃走不可状態にしている。憎憎しい怨嗟の籠もった視線が彼女を射抜いているが、三度も暴力を振るわれたので絵錬も取り合う気は更々無い。
さて、こうして落ち着いた所で彼らは、リンと殿下の偽りの自己紹介を挟んで本題へと移った。
その本題とは、外で十六夜と闇邪が聞き付けていた〝神隠し〟についての事だ。サンドラの話を聞くに、今〝紅焔の都市〟では少々特異な子供の失踪事件が連続して起こっていると言う。これがただの鬼種、悪魔等の化生が起すケースなら北の都市の〝神隠し〟専門の機関の領分であるのだが、どうやら今回の件は彼らに認知できないルールが敷かれているらしい。故に、ルールを認識出来るサンドラが直々に赴こうと言う事になったようである。
ここで、専門機関に認識できない〝ルール〟が気になる所。ルールがあるならば、言わずとも〝ゲーム〟が存在する筈。そして、
「まさか……魔王がその〝神隠し〟に絡んでいるって事?」
「うん。確証は少ないけど、早く対処しておくには越した事はないから」
……と言う訳である。
そこまで話を大雑把に聞いて、絵錬はポケーっとしながらも〝神隠し〟について考えてみる。魔王と言うのは、大抵史上に出てくるような有名所が関係ある。〝主催者権限〟によって行われるギフトゲームは当人の素性を紐解く、言わば歴史の再現。絶対とは言えずとも、世界中に蔓延る名有り共を辿っていけば問題ないだろうと、そう彼女は判断した。
それに……〝
絵錬は片手間に〝神隠し〟の正体は何かなーと考えつつ、サンドラの話を聞いていく。と、どうにも魔王と疑わしい犯人は、現場に文章のような物を残していったらしかった。
『遊手好閑』『虚度光陰』『一事無成』
以上の三つが残されていたようだ。 またその他に、これらの単語の傍には共通した一文字『混』と書き残されてもいたもよう。
正直言って、特別学がある訳でもない絵錬には何の事やらさっぱりだった。ジンが言うには『日々を怠惰に過ごし、何を為す事も無い』と言った意味らしいが、やっぱり分からない。意気込んだ割には一瞬で撃沈していた。
(…………ま、私が悩まなくてもジンが勝手に解いてくれるから別にいっかなぁ~。ハァ……早くドンパチしたい。それか寝たい)
絵錬が完全に考えるのを止めた間にも、話は進んでいく。
でも、ただ聞き耳を立てているだけとなのもツマラナイと、彼女は此処でペストへと念話で話し掛けた。
<ねぇ、ペスト~>
<っ……きゅ、急に何よ>
<……何慌ててんの?>
それもそうだろう。ペストは今の今まで彼女と話の機会を窺っていたのだから。不意打ちで、しかも殿下とリンが手の直ぐ届く範囲に居る状況で話し掛けられれば焦りも慌てもする。
しかし、これはペストにとっては丁度良い。今まで何を躊躇ってたんだ、と思ってしまう位に丁度良かった。
<それでさーペスト。殿下とリンちゃん何だけどさぁ……何時まで泳がしておくの?>
ペストは思わず声を上げそうになった。話の脈絡も関係無しに本題を言われたのだ。仕方ない。
<ア、アンタねぇ……! 気付いてたなら最初から話掛けてきなさいよ!? 一々悩んでた私が馬鹿みたいじゃない!>
<ノンノン、ペスト。情報収集は基本中の基本だよ~? 私とペストは兎も角、ジンにはどうにかして理解してもらわないといけないじゃん? 念話でパパッとやれば良いんだろうけど……そこは念入りにって>
何と、ペストの考えは殆ど絵錬の想定内に入っていたようだ。
必死に殴りたい衝動に駆られるが、此処で動けば今も隙無くペストに無言の重圧を掛けてくる二人に感付かれる。まさか絵錬の機微を心配していたのに、自分が心配の種になるとは……中々に複雑だった。
<ま、今はサンドラちゃんに最後まで付き合ってあげよ? 大丈夫、いざと言う時は……私が殿下とリンちゃんを潰すから♪>
<…………今直ぐには……いいえ。様子見が賢明ね>
<そそ。それに、メインデッュとかデザートは最後にってマナーでもあるよね?>
<あっそ。……あーもう止め止め。もう考えるのも面倒になってきたわ>
遂ぞペストは思考を全て放棄した。考えても、悩んでいても、焦っていても。全てがもう馬鹿らしく思えてきたのだ。今こうして話している間も、絵錬の念話とは別に魔王の目的やらについて並行して口を挟んだりしていたが、それすらも投げ槍になってしましそうだ。だがそれはやっぱり不味いので、話だけは合わせる。
そして最後、ジン達の推察が一先ず終わった。
〝箱庭の貴族〟の集落を滅ぼした魔王が都市の地下深くに封印されているとか言う噂話も挟まったが、話は、魔王(仮)の目的は翌日に訪れる〝枯れ木の流木〟こと蛟劉であるかもしれないとの事で落ち着き、この後は取り敢えず〝神隠し〟の現場をそれぞれ回ってみる事となった。
「あははっ、ジン達ったら凄いね~。年長者なのに頼りにならないお姉さんに比べて、そこまで物が考えられるんだもん」
「いえ。絵錬さんは僕達に足りない力を補ってくれてます。人それぞれ、得て不得手はあって当然でしょう?」
「おっ? もうリーダーってば、嬉しい事言ってくれるねぇ~。うりゃうりゃー!」
褒めてくれたご褒美と言わんばかり、ジンを胸元に寄せて頭を撫で回す絵錬。彼が顔を真っ赤にして抵抗するも悪ノリして更に抱き寄せる。
結局、少々不機嫌になったサンドラとペストが二人係りで剥がす事になったのだった。無論、直後に鉄拳制裁を受けたのは言わずとも、である。
────ほんの一瞬、殿下とリンの目が明確な警戒色を宿した事に、絵錬だけが気付いていた。
次は闇邪と十六夜。動きがある分スムーズに進め……ばいいなぁ。