記録者達が異世界から来るそうですよ?【削除&改訂予定】   作:白結雪羽

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モチベが上がらずズルズルと……
本当、他の執筆中も合わせて申し訳ないです。



造物主達の決闘-セカンド-

 

 

 

 

 

 闇邪が十六夜にちょっとしたカミングアウトをしてる頃。カフェテラスでリンとお別れ(物理)をした絵錬とペストは、暮れ時にも変わらず盛況な往来の中を適当に散策していた。本来なら展示回廊に入っていったジン達と合流でもした方が良いのだろうが、何やら騒ぎが起こっていたのと、絵錬の気分で放っておこうと言う事になったのだった。

 

 

「ねぇ、ジン達を殿下の傍に置いたままで良かったの? リンに手を下した以上、向こうが動くのもそう遅くない筈よ」

「あむっ、ん~♪ ジンなら別に大丈夫でしょ。リンちゃんがさっきの事話しちゃってたら多分危ないと思うけど、あの子って向こう側の策士なんだよね? だったら今下手に事を起こせばどうなるかくらい理解できてる筈だよ~」

 

 

 露店で買ったフルーツパイ数種を堪能しながらペストの懸念を杞憂だと流す絵錬。相変わらず根拠の〝こ〟の字も実感させない返答だが、もう慣れた慣れないとすら思わなかった。

 「……そうね」と、嘆息混じりに話を切り上げ、カフェで買っておいたタルトを口に運ぶ。程よく口内に広がる甘さが何とも事態の緊迫感を忘れさせてくれた。

 

 

「あの騒ぎ……憲兵隊にでも見つかったのかしらね」

「殿下が居るからモーマンターイ。今頃適当に逃げ切って────ん?」

 

 

 ふと絵錬は何かを察知したのか、ペストに有無も言わせないまま一緒に近場の屋上に転移した。

 いきなり転移したためか隣でタルトを喉に詰まらせ咽ているペストは気にせず、幾つかの大型ギフトゲームが開催すると聞いている舞台区画の方に視線を向ける。するとそちらから、何やら一つの人影が近付いて来てた。

 白地の半袖T-シャツにダークブラウンのハーフパンツ。揺れるショートの金髪に恐らく伊達だと思われるメガネ。徐々に近付く、やたら2000年台の若者のラフさを思わせる接近者は、二人の知る人物……何時からだか影禍に変装と称したイメチェン済みのレティ、その人だった。

 何と言うか、案外違和感ないんだなーと絵錬は思った。

 

 

「…………」

「おぉレティ、相変わらず喋れないのは良いとしぐふっ!?」

 

 

 横から鳩尾にペストの意趣返し(裏拳)が炸裂。この二人は自分の表情と言語表現並みに変わりない、そう思うレティだった。

 と、それ以上気に留めもせず、単刀直入に彼女は用件を告げた。

 

 

「……。…………、……………」

 

 

 当然ながら音は聞こえない。読唇術でも習得していれば理解出来るのだろうが、生憎ペストも絵錬もそのような便利なのかどうなのか分からない技能は持ちえてない。だが影禍同様に何故か絵錬はレティの伝えんとしている内容をちゃんと把握出来ているようで。「へー」と相槌を打った。つくづく彼女らが意思疎通の手段が疑問でならない。

 

 

「……何て?」

「あー、うん。面白そうな事が起きそうだから、食べ歩きなんてしてないで闘技場に来いだって」

 

 

 敢えて食べ歩いてた事を何故知ってるのかとは問わなかった。

 

 しかし、それにしてもだ。ペストとしては影禍の言う面白い事には出来れば関わりたくなかった。ろくな目に遭わない事など、手に取るように理解出来たから。

 (けどまぁ……)と、隣のマイペースに視線を寄越してみる。何時の間にか手に持ってたパイ数個が綺麗になくなっており、何時だか見た意地の悪い笑みを浮かべていた。

 瞬間、色々と諦めたペスト。もう魔王連盟だろうがなんだろうが勝手に来ればいいと、段々投げ槍思考になってきた。いや、元から諦めてはいたから加速したが正しいだろう。

 

 

「漸くメインイベントかぁ。これはもう、出遅れる訳にはいかないよね~。

────ん。ジン達も向かってるみたいだし、ナイスタイミング♪ ペストぉ、そろそろ元のお役目をこなそっか」

「はいはい。もう好きにすればいいわ……」

「ほいさー。マスターの了承も頂きましたところで~、二人ともー。一気に飛んじゃうから大人しくしててね~」

 

 

 パチンッと、それっぽく指を鳴らし空間転移。

 一瞬の内に、三人は赤煉瓦の街並みから一転して、観客の歓声に盛り上がる円形闘技場の外壁上に移っていた。

 どうやらまだ此処で開かれるギフトゲームは開始されていないようだが、意に介さずに絵錬は胡座を掻き闘技場全体、念のためにと外まで感覚を研いだ。そして見知った顔を一人一人と見つけていった。

 

 外にはジンとサンドラに殿下が此方へと向かってきている。この場には黒ウサギにジャック(その傍に見知らぬ坊ちゃんみたいな男(ルイオス))、そして彼らとは離れた対極の位置、その小柄な体躯を観客席に紛れ込ませている影禍がいた。

 彼は絵錬達が到着した事に気が付いたのか、僅かに微笑みを向け手を振ってきた。絵錬もそれにユラユラと返す。

 

 

(おぉ、これは役者が揃ってきてるっぽい? 雪羽と十六夜はまだ近くに居ないみたいだけど……ま、直ぐに合流してくるかな)

 

 

 確実に一波乱起きるなー、と感慨に耽りつつ、視線を影禍から闘技場の中央に移す。

 そこに居るのはさっき観客席で見掛けなかった残りの二人、飛鳥と耀。そしてこれまた見知らぬ少女が一人。

 今からこの三人でギフトゲームを行うのだろうが、何やら少女は少しだけ様子が変であった。飛鳥と耀が真剣そのものなら彼女もまたそうなのだが、何処か顔色が悪く怯えのようなものが見て取れる。それにちょくちょくと自身の背後……丁度影禍が居る辺りを振り返っていた。

 

 

(あの子……もしかしなくても影禍に手、出しちゃったのかな……)

 

 

 絵錬は色々と想像してみるが、事実、彼女ウィラ・ザ・イグニファトゥスはゲームが始まる前に手を出す所か二度も金槌もどきで影禍の頭を殴ってしまっていた。空振りに終わったものも含めると三度もだ。仏の顔も三度までとはよく言ったものだと思う。

 昔からの被害者の一人としてか、人知れず絵錬の瞳には同情の色が浮かんでいた。

 やはり、性質の悪さでで言えば姉弟の中でナンバー2の彼に喧嘩を売るものではない。

 

 

「(触らぬ影禍に祟りなしって、おぉ、怖い怖い。……さってと、そろそろジン達と合流しないとかなぁ)ねぇペスト、レティ~……って、あれ? レティは?」

 

 

 隣に視線を戻すと、さっきまで居た筈のレティの姿がない。

 諦めムード継続中のペストは、それに軽く肩を竦めながら足下の影、それから影禍の方を顎で指した。せめて言葉で言ってもらいたかったが、意味は概ね通じる。つまり用が済んだから、到着して間もなく影伝いに帰ってしまったのだった。

 

 

「つれないなぁ。一言くらい言ってくれたらいいのに……」

「……それで、用は何? ジン達は……まだ居ないみたいだど。そっちに向かうの?」

「うぅん。皆順調にこっちに向かってきてるから、わざわざ出向く必要はないよ。着いたらその時に合流すればいいし、それまで飛鳥と耀の奮闘を暖かく見守ってあげようじゃない」

 

 

 そう言って絵錬は、立ったままのペストを自分の膝の上に座り込む形で転移させ、前に腕を回し頭の上に顎を乗っけた。

 完全にくつろぐ体勢で、ペストは抱き枕扱い。見方によれば仲睦まじい姉妹に見えなくもなかった。……頭突きと肘打ちを直後に喰らっていたが。

 

 二人が戯れているところ、舞台の方では飛鳥、耀、ウィラの三人の他、新たにアーシャが姿を現していた。

 どうやらこのギフトゲームの審判を務めるらしく、登場早々会場を沸かせつつプレイヤー三人の紹介を行っていった。ウィラの名を呼ぶ時だけ余計に誇張をして、会場も更にドッと沸いている気がするが、アーシャにとっては同じコミュニティの姉ポジであって、現地の人々にとってはその愛くるしく可憐な容姿に北側最強と名高い彼女だ。贔屓目にしたくなるのも仕方ない。

 だがまぁ、飛鳥も耀もこの程度歯牙に掛ける筈もない。若干アウェーな中、今は二人ともそれぞれから見て二人の強敵の事しか考えていなかった。

 

 舞台上の空気が張り詰め、会場のボルテージが最高潮に達する。

 アーシャはそれを満足気に見渡すと、バッ! と手を掲げ

 

 

『それでは此処に! 〝造物主達の決闘〟の開幕を宣言します!!』

 

 

勢い良く振り下ろすと共にそう宣言した。

 

 

 

 

 

「────お?」

 

 

 この場に誰よりも、逸早く異変に反応したのは文字通り高みの見物をする絵錬だった。最高位の空間系ギフトを所持する彼女だからこそ、視覚の変化が無くとも異変は察知出来た。

 その約3秒後、視覚変化が起き始めた所で耀も異変に気付いた様子で、目に見えて顔色を変化させた。

 

 

「わぁお、いきなりデッカイの来ちゃう?」

「? …………、っ!」

 

 

 絵錬の呟きに舞台上へと目を凝らしたペスト。だがその直後、視界の大半を埋めた蒼炎に言葉を失った。

 

 生死の境界を操る。言い換えるなら、この世とあの世を繋ぐウィラが召喚した地獄の業火〝愚者の炎(ignis fatuus)〟。……否、彼女が今呼び出したのは正しく地獄のそれそのもの。防護ギフトに守られた観客席を他所に、舞台上を悉く蹂躙していく。

 因みに審判のアーシャは、蒼炎が迸る直前絵錬によって客席へ放り込まれていた。

 

 

「こ、これが北側最強の……あの顔で随分とえげつない事するのね」

 

 

 少し物理法則を無視して全てを溶かす巨大な蒼炎の火柱を前に、思わず口許が引き攣る。以前絵錬の見せた災害もどきよりはまだマシにしろ、ペスト自身、以前の神霊により近い力を保持していているとはいえ、無事で済む思えなかった。

 

 

(これじゃあ、いくらあの二人でも……)

 

 

 敗北がどうの以前に、人間がまず耐えられる筈は無い。

 開始から早数秒、ペストは二人の敗北を想った……その時だった。

 

 

「っ!」

「っ、うひゃぁ~これはまた……いいねいいね! ()()()()()ちゃ()()とか、魅せてくるねぇ~」

 

 

 とても信じがたい光景。天幕にまで及んだ火柱が一瞬で凍りつき、次の瞬間には粉々に砕け散ったのだ。

 次に驚ろかされた二人の意識は、降り注ぐ結晶の雨の下、舞台上にさっきまでは存在しなかった鋼鉄の球体へと移る。それはディーンにも引けを取らない程の大きさを誇っていた。

 

 

「────もういいわ。防護を解いて、アルマ」

『了解しました、マイマスター』

 

 

 シン……と静まり返った会場に、飛鳥と、彼女の呼び声に答える別の声が響いた。 

 無機質な球体が脈動を見せる。やがてそれは、波打つようにその姿を変化させそして────雷電を纏った山羊の神獣の姿を現した。

 

 

 

 




今後の記録者の予定ですが、アジ=ダカーハ編は原作が進んだら考えようと思ってます。
とは言いつつ今日、最新巻が発売なわけだけども……

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