記録者達が異世界から来るそうですよ?【削除&改訂予定】   作:白結雪羽

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問題児最新巻買った。物凄く熱い展開だった。そんでジャックの意志に泣いた。
簡潔に言うならコレに尽きる。

他にもワンサカ気になる所はあるが、そこは次巻に期待してます。
気になる人は書店へ走ろう! 今すぐに!



規格外の余裕

 

 

 

 

「やっほージン。殿下とサンドラちゃんも、さっき振り~」

 

 

 飛鳥の新たな力をまじまじと確認させてもらった所で、絵錬はペストを小脇にさっき闘技場に着いたと察知したジン達の元へやってきていた。此処に至るまで苦労があったのだろうか、若干ジンが疲弊している気がしなくもない。

 

 

「絵錬さん! それにペストも! どうして此処に…………?」

 

 

 唐突に声を掛けられハッとして駆け寄ってきたジンは、ふと小首を傾げた。気になったのは恐らく彼女らと一緒に居る筈のリンが見当たらない事。それを察した絵錬は彼が疑問を口にする前に気の抜けた笑いを零しながら答えてあげた。

 

 

「リンちゃんなら、此処に来る前にどっか行っちゃたよ。なんか神隠しについて気になる事があるとか何とかーって。もしかしたらもう、神隠しの正体掴んじゃってるかもね~、アハハ」

「……それで、絵錬さん達は今まで何を────」

「おいジン、闘技場を見てみろよ。なんだか面白いゲームになってるじゃないか」

 

 

 リンのことはまぁ納得したとして、それまでの絵錬達の行動を想像し肩を落とすジン。そこに、手すりに凭れ舞台上に視線を向ける殿下が横槍を入れる。

 二人はなにやら飛鳥達の考察に入ってしまったよう。小難しい話は絵錬的にお断りなので、折角だし雪羽と十六夜の位置を把握しておこうと気配の検索範囲を都市全域に広げた。

 

 

(うーん雪羽雪羽……十六夜十六夜っと…………おぉ、居た居た、ってあれ? この感じは……闇邪? 何時の間に……)

 

 

 闘技場から少し離れた展示会場に二人を感じた。そして、ここで初めて雪羽と闇邪が入れ替わっていると気付いたようだ。

 

 

(しっかし……組み合わせ的に違和感ないなーこの二人。特に問題起こしそうな所でねぇ……)

 

 

 ふよふよと浮いた状態で手摺に腕を掛けながら、頭の中に展示会場の細かな情景を浮かべる。そうすると、近くにはマンドラの気配も把握できた。サンドラから聞いた話を踏まえると、きっと二人も神隠しの関しての追跡をしていたのだろうかと当たりを付ける。思い返せば、食べ歩きの最中工房街の方面で何か騒ぎがあったなんて噂が立っていたのを思い出した。とすればもう尻尾は掴んでいるのかもしれない。

 

 

「あ、黒ウサギ! それにジャックも!」

(ん?)

 

 

 不意にジンが客席の下に居た黒ウサギとジャックに声を掛けたため、思考に耽っていた絵錬は一旦意識をそちらに向ける。

 三人が階下に下りるのに彼女も絵錬と付いていく。若干一人、サンドラに媚びてる知らない男(ルイオス)が居るが無視することにした。

 

 

「ハロロー黒ウサギ~…えーと、一時間振り?」

「いや、黒ウサギに聞かれても返答に困るのですが……あ、そう言えば絵錬さん。十六夜さんと闇邪さん、あと影禍さんを見ませんでしたか? 十六夜さん達は途中で別れてしまったのですが……」

「あー……影禍なら、ほら、あそこ。闇邪と十六夜は……うん、まだ展示会場に居るね。噂の神隠しでもまだ追ってるんじゃない?」

 

 

 多少戯れているようだが実際その通りである。がまぁ、今頃展示品を見ながら全く関係の無い話にくれているだろうとは思えてならない。

 そもそも北側へやって来たのは魔王連盟についての会談のため。その上神隠しなんて不確定要素が徘徊していると黒ウサギも姿の見えない同士が心配だったのだろう。挙げられた三人がそうそう危うい状況になるとも思えないが、万が一も否定は出来ないのだ。

 絵錬の視線の先で暢気に手を振ってくる影禍の姿を確認し、黒ウサギは変わらずマイペースな彼女に苦笑を返した。

 

 

 

 ────そんな時だった。隣、殿下から不穏な空気を絵錬が感じ取ったのは。

 

 

「……お前……僕と何処かで会った事ないか?」

 

 

 聞こえてきたのはルイオスの殿下に向けられたそんな言葉。

 

 

「そうだな。うちは商業コミュニティだから、〝ペルセウス〟とは商売の中で会ったんだろ」

 

 

 殿下は僅かに表情を揺らしたが、直ぐに微笑を浮かべてそう返した。

 商売コミュニティが商売がらみで顔を合わせることなど当然。時には一度限りの商談だって有り得るとすれば、うろ覚え程度の記憶しか残らないのも当然と言える。

 だが、ルイオスはどうしても脳裏に引っ掛かる事柄があるようだった。

 すると、彼の蟠りを解消するかのように横からジンがルイオスに告げた。

 

 

「ルイオスさん、それって……レティシアさんを買い取った時、じゃないですか?」

「……っ!?」

「っ!」

 

 殿下の、それに後ろで話を聞いていたペストも、ジンの口から出た予想外の言葉に驚愕、驚きを示した。殿下もペストも、まさかジンが一人で敵の正体に行き着いてたとは思わなかったのだ。

 横目で一連のやり取りを聞いていた絵錬は、ニィと笑みを浮かべジンへの個人的評価を高くした。そしてその隣、黒ウサギはジンの言葉を聞くや否やその手に帝釈天の神槍を取っていた。

 

 

「動かないで下さいッ!!」

 

 

 絵錬は「よっ」と体勢を反転させ手摺に手摺に腰掛けた。

 まだ穏やかだった空気は一瞬で一転。サンドラは突然の事態に困惑し、ルイオスは呆気に取られ、ジンと黒ウサギ、そしてジャックは事情を知る者故に警戒態勢を敷いている。

 しかし、一方の殿下は、黒ウサギに神槍を突きつけられていると言うのに至って冷静に、その上笑みを零す余裕すら見せながらジンに疑問を投げ掛ける。

 

 

「なぁ、ジン。後学の為に聞いておきたい。一体何時から俺が魔王連盟だと気が付いた? ペストが教えたとは思えないし、そこの絵錬も俺達の事は告げられてはいないようだが」

「……初めからだよ。ペストは君達と会った時に、〝久しぶり〟って答えた。だけど……君達は何時出会ったんだ?」

 

 

 殿下は口を閉ざし、金の双眸を細めてジンを見つめる。まだ、今の話だけではジンが殿下達の正体に気付いた根拠となりえない。

 今まで表立ってこなかったが、ジンは魔王の使役・封印に特化しているギフト〝精霊使役者(ジーニアー)〟を所持している。これ()の72柱の悪魔を使役していたと伝えられるソロモンに由来するギフトだ。無論、ペストを含めた多くの魔王を使役する事が可能である。

 だが、ジンがペストを使役していない事は既に殿下は把握していた。つまり、主と僕の関係に無い以上ペストの行動を把握しておく事は出来ない筈なのだ。

 

 ……しかし、ただ一つだけ。殿下達も分からない事があった。媒介とする魔道書を失ったペストの新たな媒介である。

 神霊の時に比べ落ちたとは言えどそれと遜色無い霊格。それなりの媒介があって然るべきだった。

 

 

「ペストは今、失った大部分の霊格を補うために絵錬さんとパスが繋がってるんだ。そして、二人はお互いの所在を確実に把握できている。でも、これだけだと僕が直接二人の行動を把握できている説明にはならない」

「そ・こ・で、これが重要になってくるわけよ~」

「……指輪?」

 

 

 絵錬がフラフラと揺らす左手の人差し指、そこには特徴的な文様の刻まれた半透明の指輪が嵌められていた。それがどうしたと思う殿下だが、ハッとしてジンの左手に視線を移す。彼の想像通り、そこには絵錬と全く同じ指輪が嵌められていた。

 

 

「アハハ。今殿下が想像してるの、多分合ってると思うよ? 私とペストは〝ノーネーム〟所属とはいってもねー、一応二人揃って隷属って形なんだよ。で、曲がりなりにも目を離しちゃいけない関係なんだから、誰かが監視してないと~」

「……成る程、把握した。最初から見抜かれていたとは、これはケアレスミス……いや、ジンと絵錬のファインプレーか」

「いやいや~、筋道立てて一から推理してったのはジンだから。私は駒の一つに過ぎないよ」

「そうだな。正直見直した」

 

 

 因みに、絵錬とジンが付けている指輪は()()()()()()()()闇邪が創った意思疎通用のギフトである。ちゃんと絵錬言った昨日も搭載されている、()()()()()()()()渡されたギフトである、殿下にそれを知る術はないが。

 箱庭内では恐らく頭の切れる方の殿下ではあるが、身内ですら不確定要素の塊である姉妹の考察をどう出来ようものか……

 

 

「じゃ、じゃあ……リン、も……?」

「そうだ。騙して悪かったな、サンドラ。俺達はお前達が魔王連盟と呼ぶものだよ」

「っ」

 

 

 殿下の一杯食わされたと肩を竦める態度に、顔色を悪くしたサンドラが彼に問い、彼はそれを肯定した。

 現実を受け止めざるを得ない彼女。その判断は、一秒と満たない逡巡の末に告げられた。

 

 

「〝箱庭の貴族〟様。彼を捕まえておいて下さい。直ぐ戻ります!」

「Yes、お任せ下さい!」

 

 

 堪らず力の入る拳。背けられ闘技場を後にする少女の顔は、今どんな感情を映しているのか……想像に難くは無い。

 

 

「もう一つ教えてくれないか?」

「……何?」

 

 

 彼女の背を至って変わらぬ瞳で追った殿下は、再びジンへと質疑を投げ掛けた。それは、今回彼らが追っていた神隠しについて、ジンが何処まで分かっているのかと言う事。

 その目に映る、子供のそれである純粋な好奇心。絵錬は笑みを消し、通常の寝惚け顔に戻って静聴する。

 

 神隠しの現場に残された中華形の三つの言葉から、その正体が〝未熟な子供の神隠し〟の魔王、混世魔王だとジンは特定。そして、殿下達の神隠しを追う理由、サンドラと接触した理由を総合的に考えていけば……彼らの目的が神隠しを利用してサンドラを神隠しに遭わせる事だと理解できたのだった。

 

 混世魔王が一体どの様な魔王なのか絵錬には知識が足りていなかったが、理解に長けているとは言えない彼女でも概ね想像できる内容だった。

 

 

「マーベラス、大正解だ。まさかそこまで見抜いているとは思いもよらなかった。本当に見直したぞ、ジン」

 

 

 クツクツと笑い感嘆の意を込めて手を叩く殿下。

 その一方で、口を挟まずに話を聞き終えたペストは、まだジンへの驚嘆の意を治められずにいた。

 

 

(サンドラは宮殿から抜けさせられた……神隠しの犠牲者とされるために。ジン……まさか、あの時にはもう答えに辿り着いてたと言うの……?! )

「<ペーストっ。随分驚いてるみたいだけど、流石にジンを過小評価し過ぎてたね。私共々>」

「<っ……えぇ。最初の頃の印象が一人走りしてたみたい。正直、まだまだ未熟だと思ってた……けど、>」

「<うぅん。まだまだ未熟なのは合ってるよ。でも……ジンはジンなりに、頑張ってきたんだよ。アハハ……あとで褒めてあげないと>」

 

 

 絵錬の軽口に思わず頬が緩むペスト。が、状況を再認識し険しい顔で殿下の出方を見る。

 ここまで看破され、本人も認めている以上言い逃れはするわけない。だとしたら実力行使で抜けてくると見てまず間違いない。

 もし絵錬が居なければ、この場の面子だけで目の前の規格外を取り押さえられる筈も無い。規格外には、規格外が居てこそ初めて対等か、それ以上になれるのだから。

 

 

「……殿下、大人しく投降して欲しい。この状況がどうにかなると思う程、君は愚かじゃ無い筈だ」

「ふぅん。投降、ねぇ……」

「下手な抵抗しようとしても無駄だよ~。お姉さんもすっこしだけ本気出しちゃうからねぇ?」

 

 

 遂ぞ笑いを噛み殺すまでの余裕を見せる殿下に、同じく笑みで返す絵錬。彼女は手摺から降りると、四ヶ月前の誕生祭以来衆目に晒さなかった彼女にとって最高の得物。切っ先、刃を共に持たない大剣、カーテナ=ゼロをその手に掴み取った。

 殿下は瞳を細めて、彼女の大剣に宿る絶大な霊格。それと風呂場で横目で確認した彼女のギフトについて頭の中で思考を瞬時に巡らせた。そして……

 

 

「なぁジン。取り引きしようぜ」

「……取り引き?」

 

 

 怪訝に返すジンに今度は満面の笑みで、殿下は告げた。

 

 

「────全員生かして帰してやる。だからジンとペスト、それと絵錬。お前ら三人、俺の軍門に下れ」

 

 

 

 




次の次で多分六巻終了。そのまま七巻のアジさん出てくる所までいったら一旦原作待ちに入ります。

と言うわけで次回、絵錬死す。



…………嘘です。死に〝は〟しません。
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