記録者達が異世界から来るそうですよ?【削除&改訂予定】   作:白結雪羽

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以前も何処かで言った気がするけど、最初から飛ばし飛ばしで読んで文体の違いに改めて驚いたのが昨日の事。



宣戦布告

 

 

 

 

 マンドラのサンドラ捜索に付き添い、十六夜と展示会場まで来た闇邪は、一旦二人と別れて殿堂入り展示物の奥の奥を瞳を輝かせながら散策していた。一般客がお目に掛かる事の出来ないこの区画の品々は、雪羽譲りの創作意欲を掻き立てるのだ。

 無論、サンドラも探してはいる。だがある程度の気配察知でこの場には居ない事は分かっている上、その点は十六夜と共有。二人して展示物見たさに口実を思う存分利用しているのだった。

 

 

「あぁ~。やっぱり世界広しと言っても芸術は固執しないんだなぁ。見てて飽きないや」

 

 

 お触り厳禁の精巧な硝子細工を手に取り、惚れ惚れとして見つめる。とてもその姿からは殺戮の申し子など連想できない。ひょっとすると、このギャップが彼女の魅力の一つなのかもしれないと思われる。

 次から次へと展示物を手に取り眺めていく闇邪。時折、気に入ったものがあれば自身の力で創作してみる。が、自分で創ったものはあまり納得いかないのか直ぐに粉砕してしまっていた。係りの人に見つかったら酷く勘違いされそうだ。

 

 そんな感じで通路をユラユラフラフラと歩き続ける闇邪だが、ふと、彼女の中から雪羽の怒声が聞こえてきた。

 

 

『闇邪! マンドラさんにサンドラちゃんを探してって頼まれてるんだから、もっと真剣に探そうよっ』

「えー……」

『えー、じゃないよ! さっき神隠しを追ってた時は良かったのに……』

「あーもう煩いな。何なの雪羽、さっきからグチグチと。別に誰かを殺し回ってるとかじゃないんだから、偶にはゆっくり楽しませてくれたっていいでしょ?

だいたい、その時その時で考えることやる事ぶれっぶれな雪羽が表に出てる方が迷惑極まりないの。『私、殺生はちょっと~』みたいな事よく口にするくせに癇癪起こしては自制が全く利かないじゃん。確かに慈悲深さで言えば私達の中で随一だよ。でもね、餓鬼っぽさで言っても一番なの、理解してる……って、これ言ったの何回目だっけ?」

『……ぅ、ぐすっ……』

 

 

 最終的に返り討ちにあった雪羽。だがあながち闇邪言葉も間違いではないから否定出来ない。

 絵錬も影禍も、目的を持って生まれた闇邪も、雪羽と違って芯にぶれないものがある。確かに、雪羽にも優しさというありふれながらも優れている所はある。でも、それは何処か脆いのだった。

 ただ勘違いしてはいけないのは、闇邪もそんな雪羽が嫌いなわけではないという事。自分を誕生させてくれたという引け目を抜きにしても、彼女は危なげない雪羽を支えたいと思っているのだ。決して口にすることはないが。

 殺戮を目的に誕生した雪羽の別人格。言い換えれば、雪羽の脆い部分全てを守る為の守護人格だ。一時は袂を分かちかけた事のある二人だが、何だかんだ今までやってこれている。何が何で、どんな状況になろうとも、雪羽を裏切ることは決してない。

 

 

「ねー雪羽。煩いから、いじけるなら籠もってからにしてくれない?」

『…………』

 

 

 決して……ない、と思う。

 この二人の関係性は常人には理解できないのはまず、間違いなかった。

 

 

「さぁーてと。そろそろ十六夜の所に戻っかなぁ、見るものは全部見終わったし」

『絶対マンドラさんに怒られるよ……』

 

 

 満足気に呟いた闇邪は、翼をリズミカルに揺らしながら来た道を引き返し始めた

 因みに彼女の翼だが、十六夜に触られたり、詳しく聞かれたり、最終的には出したら出したで仕舞うのも味がないと思ったらしく継続で出しっ放しにしたのだった。

 しかしこの竜に少しでも近づいた状態。実は、闇邪(雪羽)の身体的能力に大きく関わっていて。通常時でさえ十六夜の身体能力に近付けるというのに、この状態では枷を解かずとも彼に近づくことが出来たりする。つまり、今の彼女は色々と強化されている。

 その中には勿論……全ての感覚器も含まれている。

 

 

「『っ────!!』」

 

 

 闇邪(雪羽)は、唐突にハッとした様子で右側へと振り向いた。そこにあるのは通路の壁だが、その延長線上には……闘技場が存在した。

 

 二人が何かを察知し振り向いた直後、会場を大きな揺れが襲った。展示物が棚から落ちてしまう程の揺れ。その上、自然現象の自身でないことは直ぐに理解出来た。

 落下にしそうになった展示物を高速で回収し、定位置に戻し終えた闇邪は、震源地である闘技場へと向かうべく出口へ急いだ。その途中

 

 

「闇邪!」

「十六夜! 今の揺れだけど、」

「残りはマンドラに任せてきた。俺達は闘技場に行くぞ」

「話が早くて助かるよ」

 

 

 ニッと笑みを浮かべる闇邪。だが十六夜はそれには応えず、依然と険しい表情のまま出口へと駆け出した。彼女もそれに続く。

 正直、内心では嫌な予感はしていた。……いや、感覚的に理解していた。家族の誰かに何かがあったと。それはまぁ、あまり気にすることでもないのだが、身内の誰かに異常が起こる程の事態なのは確か。ならば見す見す放置するわけにはいかなかった。

 

 

「んッ……?! あ、ちょっ─────……十六夜さん、ちょっと先に行きますね」

 

 

 今丁度二度目の揺れが起こった時、走る最中不意に変な声を上げた闇邪の配色が黒から白へと変化していった。

 そして、やや焦燥を感じさせる様子で表に出てきた雪羽は、十六夜に一言告げると、彼を置き去りに闘技場の外壁まで一足で距離を縮めた。

 

 

 

 ────そこで見た光景は、酷いの一言に尽きた。

 

 一部一部が戦闘の余波で崩壊した客席、舞台上。

 

 叫び声を上げながら次々と逃げ出していく観客。

 

 ……客席で、全身に擦り傷が見られる耀。

 

 ……同じく客席の瓦礫の中で、致命傷を負っている黒ウサギにジャック。

 

 ……何時も、寝惚けばかりで、人を茶化して、とても自由奔放で、それでも大切だと断言出来る家族。

全身血濡れで、回復しきってない箇所にはまだ生々しい傷が見えるのに、一人の少年と対峙している一つ上のお姉さん。

 

 

 

 ────雪羽の中で何かが切れた。

 

 人らしかった瞳からは白目が消え、球そのものが一つの宝玉の様に変化した。その細腕には竜の鱗が出現し、指先の爪も忽ち鋭利に、硬く伸びた。背中の翼も、彼女の体長超える程に増長した。

 

 今の雪羽は、言い得て半竜の姿に変化してしまった。少からずも竜へと近づいた時に感情が高ぶったがために。過去にも雪羽の感情が高ぶることは何度かあったが、その時はまだ竜化を押さえていた。アンダーウッドの時はまだ事情が事情故に口もマトモに聞けた。

 だが今回は違う。彼女の中に沸いて出た感情は、純粋な怒りだ。何の混じりっ気もない、100パーセントの憤怒だ。

 

 

「…………」

 

 

 言葉を発しないまま、彼女は虚空に四肢を獣の様に付きそして……第三宇宙速度を遥かに凌駕する速度で踏み込んだ。標的は傷だらけの姉が敵意を向けていた白髪の、自分とそう変わらないだろう背の少年。

 

 ギシッ……! 骨が軋む程に拳を握り締めそして、仁王立ちする彼の側頭部へと打ち込んだ。

 

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

 大気が嵐の如く暴れ、轟く爆音と共に無数の瓦礫は宙を舞い、視界の殆どを粉塵が覆い尽くす。

 突如として起こった破壊の衝撃に誰もが唖然とした。一体何が、どうして、誰が起こしたのか。それすら、二人を除いて認知する事も侭成らなかった。

 

 

「き、さま……ッ!!」

 

 

 治まってきた土煙の中。舞台が大きく陥没させたその中心から、殿下の苦悶交じりの声が聞こえた。そして、やがて鮮明になった下の光景を見た客席の者達は、思わず目を疑った。

 黒ウサギと絵錬に一撃で致命傷を負わせ、飛鳥と耀の攻撃すら軽くいなしていた殿下が、一人の少女によって地面に縫い付けられていたのだから。

 あれ程の衝撃を伴う一撃を与えられながら尚五体満足で抵抗を見せられる彼には舌を巻く一方、膂力を持って拘束から逃れようとする所を彼女はビクともしてなかった。

 

 

「っ、らぁッ!!」

「……っ」

 

 

 ふと僅かな隙を見た殿下は、押さえられていなかった足で少女の腹部を蹴り飛ばした。だが彼女は殆ど同様を見せず空中で体勢を立て直すと客席に四肢を付け降り立った。

 

 

「……雪羽ちゃん、なの……?」

 

 

 不意に飛鳥が呟く。

 彼女の反応は尤もで、彼女────雪羽という人物を知る誰もが彼女の豹変振りに動揺していた。

 仲間思いの心優しい彼女が、今は一言も言葉を発さずに化生の身で殿下と対峙しているのだ。動揺するなという方が難しい。

 

 さらにそんな中、間もなく十六夜が闘技場に到着した。到着して、冷静にその場の状況を見渡し、傍に居たジンに尋ねる。

 

 

「……おい、御チビ」

「は、はいっ」

()()をやったのは……アイツだな?」

 

 

 返答は貰わなかった。客席から降り、頭から血を流しながらも泰然とする殿下に相対する。釣られたか、雪羽も十六夜の隣に降り立つ。

 見た目明らかに冷静さは欠いてるのだが、どうやら思考能力は健在らしい。

 そんな彼女を横目に治めつつ、十六夜は再度、殿下へと確認を取るように問うた。

 

 

「コイツがもう手を出しちまったが……一応聞く。黒ウサギ達をやったのはお前だな?」

「あぁ。あの兎も他の奴等も、やったのは俺だ」

 

 

 非常に穏やかな問答。殿下の偽りの無い肯定に、十六夜は「そうか。なら……」とただ一言呟き

 

 

「────駄賃がさっきの一発で足りると思うんじゃねえぞ、白髪鬼……ッ!!!」

「ガッッ……!!?」

 

 

殿下が認識出来る速度を超えた蹴りを、雪羽と同じ側頭部へ叩き込んだ。

 今度は、力だけなら雪羽の一撃を凌駕する蹴りに、殿下の意識も一瞬飛びかける。しかし雪羽同様純粋な怒りに駆られる十六夜はそこからも容赦は無かった。

 悪手にもその場に踏み止まってしまった殿下の万力を込めた抵抗すら無視して、彼を地面へと叩きつけた。その衝撃は、地殻を砕く勢いで地下を、闘技場全域に亀裂と崩壊を奔らせていった。だがまだ猛襲は終わらない。周囲への被害の一切をかなぐり捨てた一撃は、闘技場はおろか付近の郡すらも二次的被害で崩壊させながら急所を殴りつけていった。

 

 

「っ、はぁ……はぁ…………十六夜、さん」

 

 

 被害を受けないようにと咄嗟に空へ退避した雪羽は、十六夜の怒り具合を目の前に少し冷静に落ちつき始めた。

 元に戻った瞳でフッと彼女と同じく空に退避してきた仲間達を見やる。一見すれば絵錬が一番の重傷に見えるがどうやら回復は殆ど済んだようで、今は解れた服に染みた血以外に問題はなさそうだ。耀も、飛鳥を連れて飛べるだけの余力があるので、やはり一番の被害者は黒ウサギと言えた。ジャックに抱えられた彼女はグッタリとして意識を失ってしまっている。鎧に残る陥没具合が彼女の受けたダメージの程を教えてくれる。

 

 

(くッ……)

 

 

 彼女の心に再び激情が沸いてきた。

 しかし、突如ハッとして様子で十六夜に滅多打ちにされた殿下を見る。数度の星をも砕く一撃を身に受けて五体満足でいられることに驚く……よりもその先、彼女はその口許に浮かぶ笑みを決して見逃さなかった。

 

 

(っ、まずいです……!)

 

 

 翼を羽ばたかせ急降下。地上に辿り着く前に殿下を逃すまいと拘束用の光輪を彼の周囲に創造し一気に捕らえようとした。そこに十六夜も同じタイミングで追撃の一撃を迫らせる。

 

 

「……遅い。何をしてたんだ、お前達」

 

 

 ……しかし、二人の一手が届くことは無かった。二つの脅威を前に、殿下は忽然と消えたのだ。

 十六夜の拳が空を切って対象を失った光輪を代わりに打ち砕く。

 

 

「っ、消えた……!? まさか、昼間の野郎か?!」

「ご明察」

 

 

 十六夜の声に、闘技場の瓦礫の上から嘲笑混じりの声が答えた。

 

 三頭の龍がそれぞれの尾を喰らう、円環を示した御旗。それ靡く下に集った魔王クラスの実力者達、魔王連盟〝ウロボロス〟の面々がそこには居た。

 

 

「ありゃま~、敵さん総出で来ちゃったね、っとと。ジ~ン、大丈夫だった?」

「は、はい。ありがとうございます、絵錬さん」

 

 

 小脇に抱えたジンに気を配りつつ、絵錬は地上に降り立つ。そして、何やらこの状況で悠長に談に耽っている殿下、リン達を仰ぎ見た。

 

 

(リンちゃん……意外と切り替え上手いんだね。あの時は心折るつもりでやったんだけどなー……)

 

 

 視線の先で殿下の介抱をするリンを見て目を細める。彼女も、その視線に気付いたのか、チラリと絵錬を一瞥して僅かながら顔を強張らせた。

 折角なので不敵な笑みを返した。

 

 

「……リン。あの男と隣の女……どう見る?」

「っ……情報が少なくて断定は出来ないけど、彼の方は充分にありえるかも。隣の子は〝原典(オリジン)〟候補者じゃないとは思うけど、是非ともこっちに引き入れたいかな」

 

 

 リンの考えに雪羽と十六夜に値踏みするような目を向ける殿下。対する二人は閉口し、睨みを返す。雪羽の手には均衡が崩れた時に対応するためか片刃の刀剣が握られている。

 

 と、ここで。そんな彼らの緊迫した空気などしらんとばかりに絵錬がリンに声を掛けた。

 

 

「やほ~リンちゃん」

「ッ」

 

 

 声を掛けられた反射で新調したナイフに手を掛けてしまうリン。が、絵錬はマイペースな笑みを浮かべ気にせず続けた。

 

 

「……忠告、守ってくれなかったね。折角お姉さんが親切心から言ってあげたのに~。それと殿下も、さっきのは流石に効いたよー。あれ、一歩間違えたら死んじゃってたよ?」

「そこまで傷を治癒しておいて言う台詞か? それに、厄介なギフト所持者に下手な加減したらこっちが足下掬われるだろ。……ま、アンタにはジンと共々ますます興味が増した。ここで取り零すには惜しい」

「おぉう、この期に及んでまだそんな事言うかぁ! 私が欲しければペストかジンに話を通してもらわないとね~」

 

 

 とても敵対者とは思えない会話を二人は交わす。ジンもペストも一触即発な現状で変わらぬ調子の絵錬に気が気でない、向こうも警戒心がさらに上がっているが。

 

 

「そうか。なら────」

 

 

 絵錬の言葉を受け何か合点がいったかのように笑みを浮かべる。またその際、この場から離れた〝サラマンドラ〟の宮殿の方から徐々に近づいてきている複数の火龍に目をやった。

 すると彼は、今度はジンとペストに向き直り、声量を上げ仰々しく

 

 

「────ジン、ペスト! 二人とも、今日は楽しかったぞ! 今日一日の事は忘れない! 例の保留にしていた話、魔王連盟に加盟する事をよくよく考えてくれ!」

「「なっ……!?」」

「……あ、そゆこと。これは、最後にやってくれたね……」

 

 

 殿下の芝居掛かった言葉に息を呑み、絵錬はその狡い機転の良さに呆れ返った。

 彼が声高々に告げた内容。当然ながらジン達が魔王連盟に加入するなど、そんな話が事実なわけない。が、今日一日二人は殿下とリンと共に行動しているのは多くの者が目撃している筈だ。そして今、騒ぎを聞きつけた〝サラマンドラ〟の憲兵達が集まり始めており、彼らはジン達と殿下の関係を知る由も無い。

 

 

「殿下……っ、」

「さっきの分、これで一本取り返させてもらったぞ、ジン。出来ればいい返事を期待したい所だ」

「……。君は……最悪だ」

「ククッ、自覚はあるよ」

 

 

 無邪気な殿下の笑いにジンの張り詰めた気持ちも幾分か緩んでしまう。それと同時に、やられたと痛烈そうに彼を見返した。

 その傍ら、ペストを見つめるリンに絵錬が遮るよう口を開いた。

 

 

「ねぇリンちゃん。リンちゃんは本気で私達が欲しいんだよね? ペストがまた魔王として、君達と一緒に旗本に立つって信じてるんだよね?」

「……嘘偽りは無いよ。私は本気だ。それに、今のコミュニティで甘えきってるペストちゃんに八千万の怨嗟に応えて星の宿命を変えられるだなんて思わない。そんな簡単な話じゃないって、理解してるよね?」

「…………この状況に甘えてるつもりはないし、貴女の野心に応える事はこの先絶対にない。────次に顔を合わせるとしたら、そこは戦場よ」

「って、本人も言ってるし、悪いけどリンちゃんの期待通りにはならないかな。何てったって私が居るんだからっ。────ペストに後悔なんてさせないよ」

 

 

 二人してリンに宣戦布告を言い渡す。絵錬は元より、ペストの声音と瞳にはもう迷いは存在しない。ここに至るまで、数多くの光明を見出せた。少なくともそれは、魔王連盟に組するよりも彼女にとって希望のあるものだったのだ。

 リンはそれ以上口を開くことはなく、スッと背を向けた。それが、彼女の二人に対する答え。二人の意思への肯定だった。

 

 最後の言葉を交わして間もなく、魔王連盟の者達を包むように極寒の吹雪が巻き始めた。

 十六夜も雪羽も、動かない。

 

 

「……十六夜さん」

「…………」

 

 

 雪羽がポツリと十六夜の名を呼ぶ。しかし、彼は返事をせず、ただただ殿下を変わらず睨み付け続けた。

 

 

「そう睨むよ。この決着は後日、必ずつけるさ……必ずな」

 

 

 そう言い残し、殿下達の姿は吹雪に紛れ虚空へと跡形もなく消えていった。

 

 雪羽は暫く警戒を続けたが、完全に敵意を感じないと分かると、徐々に翼を残して元の姿に戻っていった。

 そこでふと、周囲を見渡す。空から降りてくる飛鳥に耀、黒ウサギを抱えたジャック。駆けつけてきた憲兵隊に、先の殿下の言葉を聞いた彼らに囲まれている絵錬達。

 

 

「────影禍、お兄ちゃん?」

 

 

 その場にただ一人、影禍の姿だけが見えなかった。

 

 

 

 




結局最後は殆ど出てこなかった影禍。意味深な感じもするがその真意は如何に……
次話の次話と前々回言いましたが、六巻は次で終わります。あとはアジさんまでテンポよく行き……たいですね。
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