記録者達が異世界から来るそうですよ?【削除&改訂予定】   作:白結雪羽

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タイトル変更しました。



──魔王復活編──
舞台の底で


 

 

 

 

「フフ。そにしても、黒ウサギのアレは驚いたねェ、まさかウサ耳が消えちゃうなんてさ」

「…………!」

 

 

 声に出来ない叫びか怒号か、普段は表情に乏しいレティが険しい様子で影禍の腕を後ろに引っ張る。だが彼は、全く取り合う事無く与太話を繰り広げ、闇一色に染まる空間、延々と続く螺旋階段を下りていく。

 

 

「あとはえぇと……今頃絵錬達は作戦会議で、雪羽は十六夜君達か黒ウサギと一緒かな~。アハハ、本当にねもう、僕だけ毎回はぶられてるみたいだよ」

「……、…………!!」

 

 

 グッと、レティの掴む力が強くなる。彼女の素体は純潔の吸血鬼であるレティシア、少し本気で掴みかかれば影禍の細腕など簡単に圧し折ってしまうかもしれなかったが、それ位に彼女は彼がこの先に行く事を阻もうとしているのだった。

 しかし影禍は、腕が悲鳴を上げ、万力で引っ張られているにも関わらず歩みを止めようとしなかった。それ所か、場違いな話をおどけながらに繰り広げ、レティの腕を逆に掴み返して彼女と共に螺旋階段をどんどん降りていく。

 

 

「僕達って今までさ? なんだかゲームに対しての嗜好性って言うのかな、それがちょっと偏り気味なのかもねェ。雪羽は得物を使って近接戦ばかりだし、絵錬は柄に無く肉弾戦が多めでしょ? それで僕は……二人みたいな影。飛鳥や耀も新しい力を携えてきてる訳だし、そろそろ僕達も別の嗜好を試してみても良い頃かもね~」

「────」

 

 

 そんな事は聞いていない、今は何より止まってくれと。遂にレティは強硬手段に出た。

 引けぬのならと、影禍を冷たい石壁へうつ伏せに押さえつけ、龍影を蠢かせ彼の首筋へと宛がった。完全な不意打ちにちょっとした悲鳴が聞こえたが、そんな事はお構い無しだった。

 

 

「……あはは……痛いよ、レティ。どうしたの? まさかこんな場所で僕を襲っちゃう程に欲求不満だった? フフ、レティってば意外と押しが強いん────っ」

 

 

 この状況で尚、彼はおふざけにレティを茶化してくる。が、最後まで言わせる前に、影が柔い首筋に少し食い込んだ。チクリと刺すような、まだそんな痛み。それでも、そこからは確かに下へと伝う生温かい感触があった。

 

 ……影禍の顔が、怪しく笑みを深めた。

 その姿は見えない筈。だと言うのに、レティの背にゾクリと嫌な悪寒が奔る。それでも力を抜く事はしなかったが。

 

 

「フ、フフフフ……ねェレティ。君は、何をそんなに恐れているの? そんなにさァ、この奥に僕を行かせたくないの?」

「……っ!?」

 

 

 ハッとして彼女は目を見開き、辺りを見回す。

 そこは、今し方居た筈の古ぼけた螺旋階段ではなく、大きくぽっかりと空いた広間であった。

 〝星海の間〟と、影の中を見通す紅眼がこの場所の名前を捉える。またそれだけじゃなく、正面には一枚の契約書類(ギアスロール)と五つの扉があった。

 

 冷静に認識できたのはそこまで。虚を突かれた唖然としてしまったレティは、突如体をとんでもない力で押さえられてしまった。

 そこで初めて、暗闇の中に一つの明かりが灯った。

 

 

「さぁてと。目標まで後もう少しかな~♪」

「っ!! ……、…………ッ!?」

 

 

 立てたひとさし指の先に紫色の灯火を着けた影禍は、宛らピクニック気分のような調子で、契約書類には目もくれず第五の扉と示された扉へと入っていく。途中に張られていた人払いの呪術も、そんなもの端から無かったかのように素通りして、やがて彼は先程の広間より幾分か小ぶりの部屋へと辿り着いた。

 鼻唄混じりに視線を巡らす。相当な時を何人の侵入も許さずいたためか、道のりと同様に古ぼけた場所。目新しく思うものは特に存在せず、最後に部屋の中央に鎮座する台座に瞳を向けた。

 何かを嵌めるような窪みに、一本の柱。形状的に恐らく旗とかその類の物を飾る為のもの。

 

 

「……フフ、」

 

 

 だがそれよりも、彼は深淵の如きこの地下より更に下。それこそ本当の地獄があるのではと言う程の場所に、〝それ〟を感じ取っていた。

 眠っているのか、それとも瞑想もどきの状態なのか、目立った動きは感じられない。が、放たれる強大な気配は、微かでも充分に感知出来た。ある程度の感覚を通じ得ているレティも、それを把握すると顔色を悪くした。

 

 そんな彼女を愉快気に微笑んで、だけど、安心させるように影禍は聞かせる。

 

「安心してレティ、今これをどうにかしようだなんて思ってないからさ。ちょっとだけ、面白ろそうな物があるなーって見に来ただけだから、ね?」

「っ、…………」

 

 

 動悸を乱しながらも、彼のその言葉に一先ず安堵する。

 レティがレティシアから受け継いだのは何も容姿と恩恵だけではない。彼女の記憶も、人格には影響しない程度の知識として存在している。そしてその中には、この地の更に底に眠る〝それ〟の事も確りとあった。だからこそ、影禍の気紛れには肝を冷やしたし、安堵もした。

 

 最後にもう一度、台座をよく観察すると、影禍は満足そうに踵を返す。レティも影から解放し、彼女に慌しく背中を押される形で部屋を後にするのだった。

 

 

 

 

 

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