モンスターハンター 紫煙の狩人 第二回アンケート実施中   作:蜘蛛の意図

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かなり遅くなってしまいましたが、やっとできましたので投稿します


ヘタレ女ガンナー、楽観的アイルーに教えられる、そして紫苑の荼毘、浅く深い因縁を断つ

「はぁっつはぁぁは、はぁあはぁ、はあぁぁ、はぁぁ、ぁあはあ………」

 

「はぁ、はぁ、……ふう、ここまでくればとりあえずは大丈夫ですにゃ」

 

ここは、ベースキャンプ。モンスターが入ってこれないような狭いスペースにある狩人にとっての完全な安全地帯である。テノアとユカリは全力疾走で憤怒の轟竜から逃げてきたのだ。

 

「っっううううう!!」

 

しきりに過呼吸を起こしながら肩を上下にしていたテノアが急に口を抑えると草むらの方に向かい口から胃の内容物ををほとんど吐き出した。また彼女の近くから恥水の水音も聞こえ、小さな湯気もでてきていた。いつもの彼女なら羞恥心で身を焦がすような目に合っていただろうが今の彼女にはそんなものに回す余裕などどこにもなかった。

 

「(何なのよ、何なのよあの化け物は?!!祭りの見世物で見た闘技場の飛竜やさっき戦ったナルガクルガとは次元が違う!!一歩も動けなかった、もし、『紫苑の荼毘』がいなかったら、私一人だったら……!!)」

 

眼を見開らき激しく呼吸を繰り返すテノアの姿を見ながらもユカリは声をかけることができなかった。自分の何度かシエンの狩りについて行ったことがあるし、その中でティガレックスに遭遇したのも今日が最初じゃない。でもあそこまでの凶暴性を持っていた個体にあったことはなかった。それは龍歴院によって公開されている轟竜の二つ名個体『荒鉤爪』と同等かそれ以上の力だった。ここまで取り乱すのも無理はない、とユカリは考えた。

 

「……テノアさん、とりあえず落ち着いたらこのままクエストをリタイアして早く古代林から撤退するにゃ。そして………ギルドナイトや猟団、龍歴院に応援要請をお願いするにゃ」

 

と、テノアに近づきながら言った。吐瀉物や尿の臭いが近づく度に強くなっていくがそんなことは気にしてはいられない。憤怒の轟竜のあの常軌を逸した異常性。あれはもはや一般の飛竜レベルを飛び越え古龍レベルに限りなく近づいていると考えたられるので、ベースキャンプすら危険な可能性すらある、今すぐ彼女を逃がし応援のハンターを呼ぶべきだと考えたのだ。ある程度のところまで行きと、テノアが自分の体液で汚れた大地を見ながら呆然とつぶやいた

 

「私……自分がみんなと比べて……優秀なハンターだって思ってた……いや思い込んでた。みんながパーティでやってた………中型鳥竜種狩猟の依頼だって、私一人でできて、た。自分より、上の世代には、劣っていたとしても……同世代では私は、相当上だって驕っていた……。でも、今日で……良く、わかった…………!!私、弱いんだって………!!」

 

「そ、それはしょうがないにゃ!!轟竜関係の依頼はベテランのハンターだって受けたがらないにゃ!!経緯はどうであれあなたはそれを受けた、その勇気はすごいことにゃ!!」

 

声を震わせ嗚咽を混ぜながら言葉をぶつ切りにしながらしゃべるテノアをユカリは必死になだめようとする。しかし、それがむしろトリガーになったのか大粒の涙が彼女の頬を流れた。

 

「そして!私の自分自身を見ない弱さのせいで!!『紫苑の荼毘』を、シエンの足を引っ張った!!!私さえいなければ、あいつは自分のペースで狩りをできたはずなのに!!!」

 

「それは…………!!」

 

違う、とすぐに反論することができなかった。なぜならそれは自分が一番よくわかっているからだ。あのような状態だったらいつものシエンは受け流し防御ではなく絶対回避【臨戦】とブラストダッシュⅢを併用したカウンターで悠々と迎撃していたはずだ。しかしそれをしなかった。それはなぜか、答えは簡単だ。

 

自分たちが、重い足枷がついていたからである。

 

「そして、私たちは、私は!!あんな化け物の前にあいつを置いて行った!!私がなりたかったハンターは、シラユキお姉ちゃんは絶対にそんなことをしないのにぃ!!!」

 

最後はほとんど叫びのような声を出し顔中を涙と鼻水で濡らして泣き続けた。ユカリはゆっくりと彼女の前に移動し彼女の頭をその小さな胸で抱いた。

 

「………汚いよ、今の私」

 

「関係ないにゃ。ねぇテノアさん、昔ご主人が言っていたことなんですが、『ハンターに最も必要なものは何かわかるか』って聞いてきたことがあったんですがその時、あの人はこういったのですにゃ。…………『それは、人一倍の恐怖心だ』……って」

 

「…え………?」

 

「怖いもの知らず言われている人たちとか、そういう感情がない人たちっていうのは基本的にハンターとしての人生は長くないにゃ。逆にハンターとして成功する人は人一倍の恐怖心があってもそれを飼いならせる人こそがハンターとして長くその力を使うことができる、とも言ってたにゃ。そういう意味ではテノアさんは才能があると思うにゃ」

 

正直に言うとそんな実感はテノアは全然持つことができなかった。結局自分は彼の言った通り何の役にも立つことができなかったのだから。そんな感情を読み取ったのかユカリは言った。

 

「それにご主人なら大丈夫にゃ。敵モンスターが今まで確認されてないほど怒り狂ってる、行動パターンが全然違う、どんな攻撃をしても決して怯まない、そしてそんなモンスターに対して先制攻撃をとることができなかったーーーーーたったその程度でやられるようならあの人は今日まで生きてないにゃ」

 

そして、ユカリが見ているであろう方向をテノアも見る。おそらくシエンと憤怒の轟竜が殺し合っている場所を。

 

「でも、狩りにそして大自然に絶対という言葉は存在しないにゃ。万が一のためにも応援をお願いするにゃ。確かこの近くの安全地帯に剣聖連合の駐屯地があったはず、早くお願いするにゃ」

 

「……うん!!わかった!すぐに呼んでくるから待ってて!!」

 

顔を拭い生気を取り戻した目でユカリを見ながら彼女は答える。そして立ち上がると飛行船が止まっているところまで走って行ったその後ろ姿は先ほどまでの恐怖心や後悔は存在していなかった。決意に使命に帯びた姿だった。その後ろ姿が遠のいていくのを確認すると、ユカリはふぅぅぅぅと息を吐いた。

 

「いやぁ慣れないこと言うのは疲れたにゃぁ~。さて、僕はきちんと役目を果たしたにゃ。あとはあなたの番ですにゃ。ご主人」

 

 

どぉんどぉん!!ザッシュザッシュ!!がきぃぃん!!

 

かつてキャンプエリアがあったことを想像させるここエリア5では無数の砲撃音と斬撃音、そして鋭い物同士がぶつかる特有の音が鳴り響いていた。テノアたちを逃がしてからまだおよそ10分と経っていないのにシエンと憤怒の轟竜辺りは凄惨を極めていた。毒の砲撃によってついた無数の焦げ跡。途中で乱入したと思われるサブクエストターゲット、十数体のマッカォの死体に埋もれた大地。そのすべてがこの戦いの苛烈さを表していた。

 

『ごぉぉぉぉぉああああああああああああ!!』

 

屍と爪痕の大地をお構いなしに憤怒の轟竜は突進攻撃を繰り返す。当然シエンはこれを盾を使って受け流し防御をしようとするが最初の時のような完璧に攻撃をいなす防御ではなくほとんどギリギリ直撃をかわすようないつ当たってもおかしくない限界寸前の様子だった。もっともそれはしょうがないことである。10分もの間どこに逃げようとも自分を執拗に攻撃し続けるためほとんど武器の整備も体力の回復もできない極限状態を維持し続けていたのだから。しかも一発一発がほとんど即死レベルの一撃、手を少しでも抜けば上半身と下半身が離れ離れになっても何の不思議でもない。しかもこの轟竜は通常種とはまるで違う特性を持っていたのだ。それは、

 

「(…チぃ!!あの攻撃能力ももちろん脅威だがあのモンスターでも異常としか言えないあの回復能力!!あれが一番厄介だ!!毒で攻撃してもあんな簡単に体内解毒されてしまうのでは意味がない!!くそ、オルトリンデロゼの劇毒はゲリョスやギギネブラさえ毒状態にできるっていうのに……!!)」

 

憤怒の轟竜が持つその再生能力だった。モンスターは基本的にそのすべてが再生能力を持っている。たとえ目を叩き潰され失明しようともトサカをかち割られ尻尾を切断されたとしても寝て長時間休養をとればよっぽどな致命傷じゃない限り傷を完治させることができる。しかしこの轟竜はその次元が違った。どれだけ傷をつけようともそこから煙を出しながらまるで液状の生物でもいるかのように傷が塞がっていく。憤怒の轟竜が力むたびに表面の血管から鮮血か吹き出るがその傷もすぐに治っていってしまう。ほとんどシエンからハンターたちから見たら悪夢としか言えないようなモンスターだった。

 

「………ふぅ。これはいよいよ、こちらも賭けに出るしかないようだな………!!」

 

甲冑の中でシエンがつぶやくと武器を納刀しポーチの中に入っている煙玉を地面に3つほど投げつけた。すると着弾した部分から煙がモクモクと出てき、エリア5全体が煙に覆われた。視界はほとんど白一色となったが憤怒の轟竜は毒の臭いを嗅ぎシエンを追おうとする。がしかし、

 

ぽんっ!!

 

『ガぁぁぁああ?!!』

 

突然、彼の周りに刺激臭が広がった。まるでモンスターの糞を凝縮したようなすさまじい臭いが鼻いっぱいに広がった。それはこの霧に乗じてすぐさま接近したシエンが投げたこやし玉というアイテムなのだがそんなことは憤怒の轟竜には関係ない。自分の母を殺ししかも自分に糞を投げつけてくるこの狩人に対する憤怒はもはや限界すらも飛び越えた。憤怒の轟竜は後ろに跳ぶと前足を思いっきり地面に踏ん張りそして鳴り上げた。

 

破滅の咆哮を。

 

 

轟竜ティガレックスは飛竜種であるがリオレウスやリオレイア、ライゼクスやグラビモスのようなブレス攻撃をする器官が存在しない。しかしその代りに咆哮を上げるための声帯器官がそれらに比べて極めて発達し、強力である。それこそ、近くにいる生物ならそれだけで殺せてしまうほどだ。それがもし怒りによってパワーアップしているとなるともはやその威力はすさまじい。結論だけを言うと

 

三個もの煙玉によって作られた煙霧はあっさりと散らされ近くにいたシエンはエリア8へと続く崖の近くまでふっとばされていた。あの瞬時に楯を展開していたおかげか倒れてはいなかったが肩で呼吸し体も限界に近そうだった。その様子を見て憤怒の轟竜は確信した。自分の勝ちを母の仇を打てることを。

 

『ぁぁぁぁがぁぁぁぁああああああおぉん!!!』

 

憤怒の轟竜は雄叫びを上げながら猛突進する。自身の勝利を信じて、母の無念を晴らすことができると信じて、

 

 

 

罠も何も、一切疑わず。

 

 

 

 

バチバチバチっっっっっ!!!

 

『ぐぅぅぅぅぁああああああああ??!!』

 

先ほどまでシエンがいた場所を踏んだ瞬間身体が突然痙攣し始め動きを止めてしまったのだ。わずかに動く眼球を何かを踏んだと思われる右の前足を確認する。するとバチバチを電気を発生しているものを踏んずけてしまっていた。そう彼は知らず知らずにシビレ罠にかかってしまったのだ。

 

「やっと、決定的な隙を見せたな………!!」

 

シエンはガンランスを展開するとそれを逆手に持ち直し、大きく息を吸ってフォームを整えながら、

 

ガンランスを、狩人の魂である武器を、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一直線に憤怒の轟竜めがけて投げつけた。

 

『っっっ!!??』

 

麻痺で動けなかったこともあるがそれでも仰天した。自分のただ一つの獲物を投げてくるなど、想像もしていなかったからである。彼らの位置はほぼ正中線上にあったため当然それは憤怒の轟竜の頭部、正確には口の中から下あご、喉頭にかけて深々としかし槍の部分が突きでない程度に刺さった。すさまじい激痛と毒による鈍痛が同時に襲いかかる。だがしかし、まだだった。

 

シエンの、死そのものの狩人の本気はここからが本番だった。シエンは楯に手早く特殊な処置を施し小さなスイッチのそうなものが楯の持ち手の部分にスイッチのようなものが出てきた。そしてそれを親指で思いっきり押した。その瞬間

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大爆発と肉が内側から爆ぜる音が鳴り響いた。

 

限定狩技『龍撃爆槍』。それはガンランスの達人のみが使える、狩人としての誇りを捨てた最凶最悪の諸刃の一撃。

 




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