我が魂は真紅の眼と漆黒の龍と魔導少女 作:0・The Fool
「なぁ、士。ちょっといいか?」
休日、川に釣竿を垂らしている俺に十代が声をかけてきた。
「何? 十代?」
「リスペクトってなんだろうな? この前のデュエルの時、士は別に禁止カードを使っていた訳じゃないのに、リスペクトに反するって理由で反則負けにされそうだったし。
俺さ、どんなデュエルでも楽しいんだけどさ、鮫島校長が割り込んで来たのだけ、楽しくなかったんだ。」
十代は苦痛な表情を見せていた。
「十代。デュエルは楽しいか? っと。」
俺は十代に答えるより前に問いかけてみた。その時魚を引いたので、魚を引き上げ、釣り針を抜いて、クーラーボックスに放り込んだ。
「え。当たり前だろ?デュエルは楽しむものだし。」
「なら答えは簡単だ。お前の苦痛はデュエルが楽しいって気持ちを否定されたからだ。」
釣り針に餌をつけながらの俺の答えに十代は黙って耳を傾けていた。
「リスペクトは尊敬するって意味だ。
デュエルが楽しくてもケチがついたデュエルが楽しいと思うか?」
「…じゃあ、なんでオベリス・ブルーの人達は鮫島校長の判断に喜んでいたんだ?」
「それは簡単だ。自分達に被害が無いからだ。十代。花火は好きか?」
「あ、あぁ。見てて飽きないし楽しいけど。」
「それじゃあ、その火花が危険なのも?」
俺の問いに十代は首を縦に振る。
「人間って時に残酷な物でね。対岸の火事を娯楽に捉えてしまう面もあるんだ。」
恐らくは、サイバー流がもて囃されてるのは、攻撃力4000、パワーボンドとリミッター解除も合わせれば攻撃力16000という素人にもわかりやすいステータスで惹きつけ、リスペクトという大衆受けしそうな言葉で味方を増やしたんだろう。たまにリスペクトという言葉に疑問を持つ者が現れても、そいつをリスペクト違反者という形で断罪して正義の味方みたいな錯覚させたんだ。
「あくまでもコレは俺の考え方だ。実際は違うかもしれない。」
俺の言葉に十代は何かを考えるかのようにその場に佇んでいた。
○ ○ ○
宿題も終わらせ、さて、寝ようと思った所でPDAがなる。とって見たら、翔が映し出された。
「士さん。夜分遅くに申し訳ないっす。明日武藤遊戯さんのデッキを見れるッスけど、今から見に行きませんか?」
「別に構わないよ? じゃ、後でね?」
翔にそう返して、着替え、財布にデュエルディスクとデッキを持ち出した。
「よ。お待たせ。」
翔達と合流して薄暗い展示スペースを歩いていく。それは良いけど、雪乃と香奈美はひっつかんでくれ。歩きにくいし、柔らかくて大きな果実が二の腕辺りを挟んでるし、明日香や翔がにらんでるし。
「ペペロンチィィィーーーノォォォ!!!!」
そんな叫び声が聞こえ、身構えたがすぐに叫び声が誰の物か気づいた。というかあの独特の叫び声はクロノスしか考えられない。
駆けつけてみると、思った通り、クロノス先生がいて展示ケースが割られていた。
「あぁ!! 無いッス!! 遊戯さんのデッキが無いッスよ!!」
「まさか、教師ともあろう人が窃盗なんて、見損ないました!!」
「ヒィッ!! ち、違うノーネ!!」
皆に疑われ青ざめるクロノス先生。そこに手をさしのべる予想外の味方。
「クロノス先生が犯人のわけないじゃん。鍵持ってるはずだし。」
「そ、そうなノーネ!! 鍵を持ってるノーネ!!」
「じゅ、十代! 精神科に受診しろ!!」
「どうした?」
「頭を使う十代なんて十代じゃない!」
「それ失礼だからな!」
俺の言葉にツッコミを入れる十代。
「それはともかく、早く見つけださないと。」
「手分けして探そう!」
「って、あ。ちょっと!」
十代の発言に皆解散した。
○ ○ ○
「えっと、こっちか。」
俺は小型機械の案内の元、デッキ泥棒を追いかけた。
「君がデッキ泥棒なんだな?」
黄色い制服を来たラー・イエローを来た生徒は俺を見て笑みを浮かべた。
「その通りだ。良くわかったな?」
「単純な話だ。君が盗んだデッキは発信機付きの偽物だ。」
「何!」
俺の言葉に男は驚いていた。
「後はその発信器を追跡するだけ。簡単だった。
それと、まだ間に合う。クロノス先生達に謝罪とデッキは返しておけ。お前がやった事は窃盗に器物損壊だ。」
「断る! 俺はこのデッキで最強になるんだ!」
「他人が作ったデッキを盗んでも最強になんてなれない。余計な罪を背負いこむだけだ。」
「うるさい! 最強の女帝のお前に俺の何がわかる!」
逆切れか? 最近の若いのはすぐ切れるな?
「なら、デュエルだ。俺が勝ったらデッキは返して、クロノス先生達に謝罪しろ。
後、俺は男だ。」
「いいだ…ろ…?」
デッキをセットしたラー・イエローのデュエルディスクからエラー音が鳴り響いた。コレは制限、禁止カードの使用を警告する為の物だ。
「そのデッキは禁止カードに認定されてる。」
呻きながらデッキを取り替えた。
○ ○ ○
『
「俺のターン! ドロー! 手札から魔法カード天使の施しを発動! 3枚ドローして2枚捨てる! カードを2枚セットしてモンスターをセットしてターンエンド!」
士ライフ4000 手札3枚
伏せカード2枚
伏せモンスター1枚
「ワタシのターン! ドロー! 手札から魔法カード
アンティークデッキか。というかほとんど物まねのレベル高いな。
「このカードは手札のLV2以下の機械族モンスターを特殊召喚出来るノーネ!
機械巨人の正拳が伏せモンスターを破壊して俺のライフを削った。(士ライフ4000-3000+800=1800)
「見習い魔術師の効果発動! このカードが破壊された時、レベル2以下の魔法使い族モンスターをセット出来る! 水晶の占い師をセット!」
「だが、コレで終わりなノーネ! アンティークギア・ゴーレムで、そのモンスターを攻撃!」
機械巨人の正拳が伏せモンスターを殴ろうとして、
「墓地からネクロガードナーの効果発動! このカードを除外して攻撃を無効にする!」
魂の障壁に阻まれた。
「1枚セットしてターンエンド!」
士ライフ1800 手札6枚
伏せカード2枚
伏せモンスター1枚
アンティークギア・ゴーレムATK3000×2体
伏せモンスター0枚
伏せカード1枚
物まねクロノスライフ4000 手札3枚
「俺のターン! ドロー! 水晶の占い師を反転召喚!」
水晶の占い師が場に現れると2枚のカードの絵柄が水晶に映し出された。1枚目は魔法カード、
「水晶の占い師の効果によりサウザントナイフを手札に加え、見習い魔術師をデッキの一番下に置く! 伏せカード発動! 漆黒のパワーストーン!このカードに魔力カウンターが3個乗る! そして、奇跡の復活を発動!魔力カウンターを2個取り除いて墓地からブラック・マジシャンを特殊召喚!」
「くっ! 来たノーネ! しかし、アンティークギア・ゴーレムの方がまだ攻撃力が上なノーネ! 1体は倒せてももう1体は無理なノーネ!」
「手札から速攻魔法ディメンションマジックを発動!水晶の占い師を生け贄にブラック・マジシャンガールを特殊召喚!」
『ハアァ! ヤァッ!』
フレアが舞い降りた時放った魔力弾がアンティークギア・ゴーレムを破壊した。
「さらにサウザントナイフを発動! アンティークギア・ゴーレムを破壊!」
ブラック・マジシャンが投げたナイフがいくえにも分身して機械巨人を切り裂いた。
「2体でダイレクトアタック!」
「マダなノーネ! ブラック・マジシャンに収縮を発動!」
黒魔導師の師弟の攻撃を耐えきる物まねクロノス。(物まねクロノスライフ4000-2500÷2-2000=750)
「カードを3枚セットしてターンエンド!」
士ライフ1800 手札1枚
伏せカード3枚
漆黒のパワーストーン(魔力カウンター2個)
伏せモンスター0枚
ブラック・マジシャンATK2500 ブラック・マジシャンガールATK2000
伏せモンスター0枚
伏せカード0枚
物まねクロノスライフ750 手札3枚
「ワタシのターン! ドロー! 手札から魔法カード、ダブルサイクロンを発動! ワタシとシニョーラ沖田の魔法トラップカードを1枚破壊するノーネ!」
物まねクロノスのカードが俺のブラフのミラーフォースと、ギアタウンを破壊した。
「ギアタウンが破壊された事で
さらに死者転生を発動するノーネ! 手札のアンティークギア・ソルジャーを墓地に送って、墓地のアンティークギア・ゴーレムを回収するノーネ! 最後に手札から魔法カードアンティークギア・ファクトリーを発動! 墓地からレベル2のアンティークギア2枚、レベル4のアンティークギア・ソルジャー、レベル8のアンティークギア・ゴーレムを除外することで手札のアンティークギア・ゴーレムのレベルの倍になり生け贄の必要がなくなったノーネ!」
その宣言に姿を現す機械巨人。
「アンティークギア・ゴー「ストップ!」
…なんなんだ?」
いきなりストップをかけられ巣に戻る物まねさん。
「バトルフェイズに入った瞬間、マジカルシルクハットと強制終了を発動。この2枚のカードにデッキから2枚のトラップカードとブラックマジシャンをセットして、バトルフェイズを終了する。ただし、シルクハットモンスターは破壊され、シルクハットモンスターにした荒野の大竜巻でアンティークギア・ゴーレムは破壊される。」
その解説と共に突風でバラバラにされる機械巨人達。
「ターンエンドなノーネ。」
士ライフ1800 手札1枚
伏せカード0枚
漆黒のパワーストーン 強制終了
伏せモンスター1枚
ブラック・マジシャンガールATK2000
物まねクロノスライフ750 手札0枚
「俺のターン! ドロー! ブラック・マジシャンを反転召喚して2体でダイレクトアタック!」
黒魔導師師弟の攻撃が今度こそ物まねクロノスのライフを0以下にした。
○ ○ ○
「また、負けた。」
「コピーデッキが悪いわけじゃない。だが、真似たデッキには君自身の思想は反映されないそんなデッキを使いこなすのは無理だ。」
ポツリとつぶやく少年にそう指摘した。
ぱちぱち。
「ナイスファイトだったノーネ。シニョール神楽坂。」
「クロノス先生。」
いつからそこにいたのは知らないけど、クロノス先生がそこにいて拍手を送っていた。
「ごめんなさい。アナタの苦悩に気づかなかったノーネ。教師として恥ずかしく思うノーネ。」
クロノス先生は神楽坂に土下座して謝罪する。
「顔を上げてください。俺だって先生に相談すれば良かったのにしなかった挙げ句、デッキを盗んでしまったのですから俺が悪いんです。」
神楽坂はそう言ってデッキを返却した。
SIDE 鮫島
「さて、武藤遊戯さんのデッキを見に行けるまたとないチャンスです。これも教師の特権です。」
ドアを開けた私を出迎えたのが、割られた、展示ケースだった。
「こ、これは!」
思わず硬直した時、
「泥棒! 何やってるんですか!」
私の背後から鮎川先生が声をかけていた。
その後駆けつけた警備員により捕まり、処罰を受けそうだったが、神楽坂君の説明により解放してもらった。