我が魂は真紅の眼と漆黒の龍と魔導少女   作:0・The Fool

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感想いただきました、レキサンドラ様、ペチンノ様カイナ様、竜羽様、並びにこのお話を読んでくださる皆様ありがとうございます。


デュエル29 デッキの魂

「にしても、質の悪い話だな。」

 

 包丁の音がリズミカルに響く中、十代が呟いた。

 

「十代も気づいたのか?」

 

 俺の問いの意味が分からなかったらしい、早乙女が首を傾げた。

 

「えっと、何の話?」

「最初からレイを留年させる気なんか無かったって事。」

「小中学校を簡単に留年出来ないだろうね。」

「え? でも、担任の先生が留年もありうるって。」

 

 まだ、言葉のマジックに騙されてる?

 

「ありうるって事はあるかもしれない。1%でもその可能性があるだけの事だよ。」

 

 俺の指摘に早乙女はハッと息を呑んだ。

 

「でも、先生はなんでそんなことを?」

 

「単に留年の話をちらつかせてやる気を促そうとしただけだろうぜ。飴と鞭の両方があってやる気がでるし。

それより、早く食わないと冷めるぞ?」

 

 十代の指示にカレーを食べようとしたところでハッと気づいた。

 

「十代って料理出来たんだ!」

「そこまで驚くことか? 両親が共働きで家にいない事が多くて安上がりな自炊してたら、色々作れるようになったんだ。」

 

 なるほどと納得しながらカレーを一口。

 

「美味しいですけど、スープっぽいのとなんか酸っぱい味がします。」

 

 後から来る酸味に眉をしかめる早乙女。スープっぽいのは水を入れすぎたからドロっとせずにサラサラしているんだろうけど、酸味は? もう一口カレーを食べてその正体に気づいた。

「トマトの酸味か。」

「大正解。トマトを煮ながら潰して果汁を使ったんだ。」

 

 こうすると、トマトの果汁の分、水量が増えて水っぽくなる。

 

「そうなんですか。トマトカレーも美味しいです。」

 

 どうやら、早乙女からも好評らしい。十代手作りカレーに舌鼓をうった。

 

 ○ ○ ○

 

「早乙女君。急にお呼びしてすみません。」

 

 デュエルアカデミアに到着した途端、PDAがなり、出てみたら鮫島校長からの呼び出しだった。それに対して不安を覚え、早乙女に同行して今に至るというわけだ。

 

「それはいいですけど、なにがあったんですか?」

「早乙女君。君はコントロール奪取のデッキを使うのですね?」

 

 どうやら、十代とのデュエルを誰かに見られてたらしいな。

 

「リスペクトに反するのみならず、プロのデュエリストを育成するこの、デュエルアカデミアの育成方針に反します。そのデッキを封印して下さい。」

 

 などとふざけた事をのたまう鮫島。

 

「鮫島。そのデュエルアカデミアの育成方針に反するのはコントロール奪取が一方的に相手のモンスターを奪い殴るのが一般受けしづらいからか?」

 

 プロのデュエルはモンスターの殴り合いが華だし、観客はわかりやすい方を好む。

つまり、鮫島はリスペクトに反してるし、コントロール奪取は観客が見てもわかりづらいだろうし、何よりも華がないから止めなさいって言いたいわけだ。

 

「早乙女。どうしたい? デッキを封印したいか?」

 

 俺の問いに早乙女は静かに首を横に振る。「俺もデッキを封印なんて話は反対だ。

デュエリストにとってデッキはその人の魂みたいなもんだ。

リスペクトに反するとかいう口実で禁止カードでもないカードを使わせない事こそがリスペクトに反する行為だと思う。」

「し、しかし、コントロール奪取は観客に受けが悪いですし。」

「それも大丈夫だと思う。早乙女のデッキは恋する乙女と乙女カウンターを利用したコントロール奪取だけど、コントロール奪取するには多量にダメージを受ける必要がある。そんな負けやすいデッキで勝てたらすごいワクワクすると思う。」

 

 俺の言葉に鮫島は最終提案を出した。

 

「なら、デュエルアカデミアらしくデュエルで決着をつけるのはどうでしょう?

勝てたら、この話は無かったことにします。

なお、今回のデュエルに関しては私は何も言いません。」

 

 想定外にサービスのし過ぎだ。何か裏がある気がする。だとはいえ、ここでゴネたところで後が面倒だ。

 

「わかった。早乙女もそれでいいな?」

 

 早乙女が頷いたのでその場は解散になった。

 

 ○ ○ ○

 

 どうやら、俺の予想が現実になったようだ。青い服を着た人物で埋め尽くした観客席を見てそう判断した。

「コントロール奪取を扱う異端者なんか軽くひねり潰してやるよ。」

 

 オベリスク・ブルーの藻部栄太郎が早乙女を見下して言った。

 

 ○ ○ ○

 

決闘(デュエル)!』

 

「俺のターン! ドロー! ゴブリン突撃部隊を攻撃表示で召喚! ターンエンド!」

 

栄太郎ライフ4000手札5枚

伏せ0枚

ゴブリン突撃部隊ATK2300

 

「ボクのターン! ドロー! ボクは手札から黄金の天道虫(ゴールデン・レディバク)を見せてライフ500回復させる! 恋する乙女を攻撃表示で召喚!」

 

 早乙女のフィールドに可愛らしい容姿の少女が現れた。

 

『攻撃力たったの400の雑魚モンスター!』

「そんな雑魚モンスターなんか蹴散らしてやるよ!」

 

 みんなが罵声の声をあげる中、早乙女は怯えを見せながらも、デュエルを進行させる。

 

「さらにカードを2枚伏せてターンエンド!」

 

「俺のターン! ドロー! 俺は、ゴブリンエリート部隊を攻撃表示で召喚!

バトル! ゴブリンエリート部隊で恋する乙女に攻撃!」

 

 鎧に身を包んだゴブリン達が突撃する瞬間、

 

「リバースカードオープン! 立ちはだかる強敵! チェーンでレインボーライフを発動! 手札1枚を捨てる変わり、このターンのボクへのダメージは回復として加算される! さらに立ちはだかる強敵の効果で、そっちのモンスターは恋する乙女に攻撃しなければならない!」

 

 レイの言葉にゴブリン突撃部隊が恋する乙女に攻撃をする。(レイライフ4500+2300+2200-400-400=8200)

 

「恋する乙女は戦闘では破壊されず、恋する乙女に攻撃した事で乙女カウンターがゴブリン突撃とゴブリンエリート部隊に乗るよ。」

 

(酷いわ! 酷いわ!みんなして私一人をぼこるなんて!)

 

 涙目の恋する乙女に顔を紅くするゴブリン達。

 

「カードを2枚伏せてターンエンド!」

 

栄太郎ライフ4000手札3枚

伏せ2枚

ゴブリン突撃部隊DEF0(乙女カウンター有り) ゴブリンエリート部隊DEF(乙女カウンター有り)

 

恋する乙女ATK400

伏せカード0枚

レイライフ4500手札3枚

 

「ボクのターン! ドロー! 手札の黄金の天道虫(ゴールデン・レディバク)を見せてライフ500回復! キューピッド・キスを恋する乙女に装備!

恋する乙女でゴブリン突撃部隊を攻撃!」

「ざけんな! リバースカードオープン! 最終突撃部隊! 全モンスターは攻撃表示になる!」

 

 栄太郎のフィールドに翻ったカードの効果により、ゴブリン達が攻撃表示になり、ゴブリン突撃部隊が迎え撃とうとするがその攻撃をかわしてゴブリン突撃部隊の1体とキスした。(レイライフ8700-2300+400=6800)

「キューピッド・キスの効果発動!このカードを装備したモンスターが戦闘によりダメージを受けた時、そのモンスターのコントロールを得る!」

 

『ゴブリン突撃部隊A様。お力をかしていただけますか?』

 

 恋する乙女のお願いにゴブリン突撃部隊の1人がフラフラと恋する乙女に近づく。

そのとたん、仲間からブーイングの嵐をプレゼントされた。

しかし、ゴブリンが一声鳴くと、顔を見合わせたゴブリン突撃部隊達が一斉に早乙女のフィールドに駆け寄る。

 

「ゴブリン突撃部隊でゴブリンエリート部隊に攻撃!」

 

 早乙女の宣言にゴブリン突撃部隊がゴブリンエリート部隊に向かって突進した。(栄太郎ライフ4000-2300+2200=3900)

『コントロール奪取!』

『リスペクトに反する外道!』

 

 早乙女の行動に外野が騒ぎ立てるが宣言通り何も言おうとしない鮫島。

 

「静まれ!!」

 

 俺の叫びに観客が沈黙した。

 

「禁止カードでもないカードを使う事があたかもルール違反みたいに言うのを止めろ!」

 俺の喝にみんなが静かになった。

「ありがとう。士さん。カードを1枚伏せてターンエンド!」

 

栄太郎ライフ3900手札3枚

伏せ1枚 最終突撃部隊

恋する乙女ATK400 ゴブリン突撃部隊ATK2300

伏せカード1枚 キューピッドキス(恋する乙女に装備)

レイライフ6800手札2枚

 

 

「俺のターン! ドロー! 手札から死者転生を発動! 手札のモンスターを墓地に送り、墓地のモンスターを手札に加える!」

 

 そう宣言しながら、ゴブリンエリート部隊を回収する藻部。

 

「そして、リバースカードオープン! リビングデッドの呼び声! 蘇れ! 絶対服従魔人!」

 

 カードの効果により、嫌そうな感じで墓地から召喚される魔人。

 

「でも、その魔人は手札もフィールドもそれ1枚の時しか攻撃出来ないよ。」

「言われなくてもわかってるぜ!! コイツは単なる使い捨ての駒だ!」

 

 あ。魔人が嫌な表情の訳がわかった。自分を好いてる以前にただの駒としかみなさない相手を気に入れない。カードは相手を選べない。同情するよ。

 

「絶対服従魔人を生け贄に偉大魔獸(グレートまじゅう)ガーゼットを生け贄召喚!

コイツの攻撃力は生け贄にしたモンスターの攻撃力の倍になる! 絶対服従魔人は攻撃力が3500だから攻撃力が7000だ!

そして、二重召喚を発動! 効果により、俺はもう1度通常召喚出来る! 俺はゴブリンエリート部隊を通常召喚!」

 

『攻撃力が7000と2200!』

『これならあの異端者でも、勝てないだろ!!』

「ガーゼットで恋する乙女に攻撃!」

 

「リバースカードオープン! 和睦の使者! 戦闘ダメージを無効にする!」

 

 恋する乙女を攻撃するつもりだったらしいその攻撃は使者が張ったバリアにより防がれた。

『ウフフ♪』

 

 恋する乙女は攻撃失敗した後、ガーゼットにウィンクした。

 

「クソ! これでターンエンド!」

 

栄太郎ライフ3900手札3枚

伏せ0枚 最終突撃部隊 リビングデッドの呼び声 偉大魔獸ガーゼットATK7000(乙女カウンター有り) ゴブリンエリート部隊ATK2200

 

恋する乙女ATK400 ゴブリン突撃部隊ATK2300

伏せカード0枚 キューピッドキス(恋する乙女に装備)

レイライフ6800手札2枚「ボクのターン! ドロー! ボクは手札の黄金の天道虫(ゴールデン・レディバク)を相手に見せライフを500回復させる!

そして、手札から魔法カード、壺の中の魔術書を発動! 全てのプレイヤーは3枚ドローする!

藻部さん。1つ教えます。」

「ふん。雑魚の足掻きが醜いことか?」

 

 ニヤリと笑う藻部に早乙女は静かに首を横に振った。

 

「ううん。そうじゃなくて切り捨てられるカード達の痛みをだよ?

手札から魔法カードエネミーコントローラーを発動! 恋する乙女を生け贄に、ゴブリンエリート部隊のコントロールを得る!

…ごめん。」

 

 早乙女の謝罪に、恋する乙女は首を横に振り、自ら墓地へと消え去った。

 

「そして、黄金の天道虫(ゴールデン・レディバク)を攻撃表示で召喚!

そして、マジックカード発動!」

 

 フィールドに召喚された天道虫は自ら、藻部のフィールドに行く。

 

「強制転移の効果でボクは黄金の天道虫(ゴールデン・レディバク)とそっちのモンスター、偉大魔獸ガーゼットを交換!

さらに死者蘇生を発動! 墓地の絶対服従魔人を攻撃表示で召喚!」

 

 4体のモンスターに並ばれ、ライフが0になることを悟ったのだろう。体がふるえている。しかし、どうやら、早乙女はそれだけではすますつもりがないらしい。

 

「さらに、ハッピーマリッジをゴブリン突撃部隊に装備! この効果は、ボクのフィールドにコントローラーが相手のモンスターの攻撃力分だけ、装備モンスターの攻撃力がアップする!」

 鬼か。早乙女のフィールドにいるモンスターは全て相手のモンスター。アップする数値は3500+2300+2200+7000=15000でゴブリン突撃部隊の攻撃力は17300。こうなると、絶対服従魔人が戦闘出来ないのが良かったというべきか。

 

「ゴブリンエリート部隊と偉大魔獸ガーゼットで攻撃!」

 

 ゴブリンエリート部隊と偉大魔獸ガーゼットが攻撃する。黄金の天道虫(ゴールデン・レディバク)の攻撃力は0。ダイレクトアタックと変わらない。(栄太郎ライフ3900-7000-2200+0=-6300)

 

「さらにゴブリン突撃部隊でダイレクトアタック!」

 

 ゴブリン突撃部隊の攻撃にあわせ、皆が突撃した。

 

「ウワァァァァー!!」

 

 その攻撃に悲鳴を上げる藻部。その様は剣客漫画のぼんじゅーるみたいだ。

 

「流石、ソリッドビジョン。攻撃しても不殺だけは守ってるか。」

 

 てか、本当にソリッドビジョンだよな?

 

「イカサマだ! コイツイカサマしてやがる!」

 

 突如、観客の1人が騒ぎ出した。

 

『そうだそうだ! イカサマだ!』

『男らしくないぞ! 正々堂々デュエルしろ!』

 

 その言葉を皮切りに、オベリスク・ブルー生の大半が早乙女を非難しだした。言いがかりをつけて無理やり反則にするつもりらしい。

 

「その辺にしておけ。」

 

 丸藤亮が止めに入る。静かだが、その声がよく響き皆が騒ぐのを止めた。

 

「聞くが、何故イカサマだとわかった時に言わなかった?」

 

 丸藤亮の問いに言い返せない。当然だ。彼自身も根拠があった訳ではなく、言いがかりをつけているだけだから。

 

「イカサマしてるなどと言いがかりをつけるな。人としてどうかと思うぞ。」

 

 丸藤亮の言葉にその男は歯軋りしながら早乙女を睨んでいた。

 

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