「ふぅ、中々上手くはいかないな…シンクロにエクシーズ。早く元の世界に戻って、皆に見せてやりたいな。
その為には…この次元転送装置を完成させなくては…」カチャカチャ…
俺の名前は三沢大地。デュエルアカデミアというデュエリストの養成学校に所属していたデュエリストだ。
何故、
今、俺のいる世界は『精霊界』。デュエルモンスターズのカードの精霊が住む世界だ。
とある悪党を追い詰めたはいいが、その悪党と遊城十代…俺の友人とのデュエルの後、アカデミアごとこの世界に飛ばされてしまった。
そこでも紆余曲折あったのだが、全ての黒幕も倒し、俺たちは元の世界に帰れるはずだったのだが…
俺は置いてかれた。
いや、俺も以前より影が薄くなってきたとか、あまり活躍してないとかあったが…
忘れるってどういう事だ!まるで意味が分からんぞ!
とにかく、そんな訳で俺は精霊界に取り残されてしまった。
行く当てもなく精霊界を彷徨う日々。数々の出会い。赤き龍からはシンクロ召喚を、希望皇からはエクシーズを授かった。
そして今は…
ガチャリ、
「大地?まだやってたの?もう夜ご飯の時間よ?」
「ああ、すまない。今行くよ。」
ドアを開け、夕食の時間だと伝えに来たのは【黒魔導師クラン】。この城の2人いる主の1人。
そう、今は精霊界の魔法の国、その城で世話になっている。
俺は機材やカードを片付け、研究室として使わせて貰っている地下室を出る。
食堂に着くと、既に1人の少女が食事を始めていた。
「あ、大地!先に食べてるよ〜!」
もうお判りかと思うが、彼女は【白魔導師ピケル】。もう1人の主だ。
「あっ!こら!何勝手に食べ始めてるのよ!食事の前のお祈りをみんなでしなきゃダメじゃない!」
「お姉ちゃん黒魔導師なのにそゆとこ厳しーよね〜。」
「白黒以前の問題よ!」
「はははは!ほらクラン、俺たちも冷める前にいただこうじゃないか。」
今は仲の良い姉妹だが、以前は酷かったらしい。顔を合わせる度に口喧嘩からの魔法の撃ち合い。最終的にはデュエルで決着をつけていたそうだ。(だがデッキの相性がお互いにすこぶる悪く、決着がまともに着いた事は無いらしい。)
これには従者の羊執事と兎執事も頭を痛めていたのだが…
ひょんなことから俺は、2人の喧嘩に巻き込まれてしまい、いつの間にか矛先は俺に向き、2VS1の変則デュエルに。
結果は俺の勝ちだったが、2人はタッグを組んだ事でお互い分かり合うことができ、仲直り。やはりデュエルは素晴らしいな!
そんな事もあり、彼女たちに懐かれてしまった俺はそのままこの城でお世話になっているというわけだ。
しばらくして食事は終わり、皆で談笑していると…
「た、大変でございます〜!!」
羊執事が血相を変えて、部屋に飛び込んできた。
「どうしたの?はっ!まさか【ジャックポット7】の効果で負けたの⁉︎」
「そんな瑣末事ではございませぬ!賊が城内に侵入いたしました!」
「はぁ⁉︎衛兵は何やってるのよ!」
「真面目に巡回をしておりました!彼奴は突然城内に現れたのでございます!」
「ふむ、ワープかテレポートか…それだけでは相手が分からないな。」
「ただいま兎執事が追跡しております!私たちも行きましょう!」
俺たちは、羊執事に先導され兎執事の元へと急ぐ。着いた先は…
「兎執事!賊はどこ!」
「皆様!彼奴は地下室へ逃げ込みましたぞ!」
「何!地下室だと!」
「ええ!地下室なら袋の鼠。逃げ場はございませぬ!」
「不味いぞ!地下室には俺が集めた転送系の魔法カードや罠カード、それに俺のデッキとデュエルディスクもあるんだ!」
「…どゆこと?」
「そのカードで逃げられちゃうって事よ!この馬鹿兎!悪化してんじゃない!」
「も、申し訳ありません!」
「くっ!手遅れになる前に急ぐぞ!」
バァン!
「見つけたぞ!」
部屋に入ると、そこにはフードを目深く被った賊が開発途中の次元転送装置を操作しており、
「」ニヤリ
ポチッ!
キイィィィーン!
「なっ!あいつ、起動させやがった!」
そして、装置に入り…
シュバァァァァッッッ!
そのまま消えてしまった。
「くっ⁉︎どういう事だ⁉︎成功したのか⁉︎」
この装置は、ゲートを開くとこまでは出来るものの、出力不足によってワームホールを別次元へ繋げることができず途中で途切れる形となり、そのまま転送すれば、脱出不能の次元の狭間へと落ちていく筈である。
俺はすぐさまコンソールを操作し、状態をチェックする。
「…これは?転送先の座標からのエネルギー供給?そうか!向こう側からもゲートを開き、ワームホールを発生させて足りない距離を補ったのか!」
1人原因を突き止め納得していると…
「大地!大変よ!貴方のデュエルディスクとデッキが無いわ!」
「な、何だって!」
作業を中断し、テーブルの上を確認する。
夕食の後でデッキの調整をしようと出しっ放しにしていたのは失敗だったか…
正直、メインデッキだけならば確かにそこそこのレアカードは入っているが、盗られて絶望するようなカードは無い。
「エクストラデッキも持ってかれたか…」
エクストラデッキには赤き龍と希望皇から授かったシンクロモンスターとエクシーズモンスターが入っている。
確か…
【スクラップ・ドラゴン】
【琰魔竜レッド・デーモン】
【閃珖竜スターダスト】
【月華竜ブラック・ローズ】
【玄翼竜ブラック・フェザー】
【幻獣機ドラゴサック】
その他にもたくさん貰っているが、作りかけのデッキに入っていたのはこの6枚だ。
これらのカードは失くしたらマズイ。再入手は、恐らく彼等に頼めば何とかなるかもしれないが、怒りを買う恐れもあり、何より申し訳ないという気持ちが大きい。
俺は再びコンソールに向き合い、ゲートの状態をチェックする。
「よし…まだ繋がってるな。」
ゲートが正常に繋がっていることを確認し、残されたカードを集め、ケースにしまい上着の内ポケットにしまう。
事は緊急を要する。ゲートが閉じてしまえば二度と向こう側には行けず、デュエリストの魂とも言えるデッキを失ってしまう。
準備を整え、振り返ると、
「三沢様、お行きになられるのでしたらこちらのデュエルディスクを…」
いつの間にか羊執事と兎執事がデュエルディスクを用意してくれていた。
うさぎとひつじ、ピケルとクランをモチーフにしたとても可愛らしいデザインである。
「あ、ありがとう…」
俺は引きつった笑顔でそのデュエルディスクを受け取る。普通のは無かったのか…
「大地!デッキは!」
「私たちを!」
「「使いなさい(使って下さい)!」」
そして、ピケルとクランはそれぞれ20枚ずつ、2人で一つのデッキをくれた。
「それと、エクストラにこれも入れて下さい!切り札です!」
「ああ、ありがとう!」
そして、俺は次元転送装置を起動させ再びゲートを開く。座標はもちろんフードの賊が残したものだ。
「じゃあ行ってくる!」
シュバァァァァッッッ!
「……うおっと!」
次元転送には無事に成功したようだ。だが、地面から僅かに浮いていたため躓きそうになる。
『何やってんのよ!しゃんとしなさい!』
『ふわぁ〜!ここが人間界ですか〜!』
と、何故か聞き慣れた声がする。俺は顔を上げると…
「な!お前ら⁉︎ついて来ちゃったのか!」
ピケルとクランがついて来ていたのだ!
『ついてくるも何も、私たちの依代かつ核であるカードを持ってるのは大地よ?仕方ないじゃ無い?』
「私たちのカード…?」
嫌な予感がした俺はすぐに渡されたデッキを確認する。そのデッキは…
「ピケルクランデッキだと…!!」
まさかのデザイナーズデッキ。中には見たことの無いサポートカードや専用の魔法カードなども入っており、一応はデッキとしての形は成しているが…
「このデュエルディスクにこのデッキ…」
『へへーん!すごいデッキでしょ!自信作だよ!』
「ああ…すごいな…」
これを使ったデュエルは十代たちにはみせられんな…
改めて、俺は周囲を確認する。やけに暗いと思ったが…どうやら夜のようだ。
ポツポツと街灯が灯っており、道も整備され、周囲には木々が茂っている。
木々の向こうにはビルの明かりも見える。
「どうやら大きな都市の公園みたいだな。
ピケル、クラン、賊の居場所を調べる魔法か何か無いのか?」
『そんなの使わなくても、あいつの盗んでいった
『しかもすぐそばに力を感じますよ〜!今がチャンスです!』
「見つけたぞ!」
「アァン!追ッカケテキタノカ⁉︎メンドクセエナ!」
ピケルとクランの案内で向かった先は大きな噴水のある広場。
やつはそこのベンチに座り、俺のデッキを弄っていたようだ。
「ピケル!クラン!」
『『任せなさい(まっかせて〜)!』』
2人に指示を出し、逃げられないように結界を張ってもらう。
「さあ、ここから出るには俺にデュエルで勝つしか無いぞ!」
「ンデ?俺ガ負ケタラ奪ッタモン返セッテ?」
「察しがいいな。さあデュエルだ!」
「ハッ!イイゼ!オ望ミ通リブッ潰シテヤンヨ!」
「「