誰が最強トレーナー? 作:ちょこ
「おっはよー、ルーナ」
「こぉん……」
ブルーはテキパキと服を着替えながら、クッションから起き出したロコンに挨拶をする。
それに対し、ルーナは眠そうに返事を返した。
ブルーは、髪をくしで梳かしながら、温めたフライパンに溶き卵を流し入れ、軽くかき混ぜて折りたたみ、真っ白の皿に盛り付ける。出来上がったオムレツの上にケチャップをかけ、フリスビーを投げるかのようにくるりと回しながら宙へと飛ばす。
それをツルでキャッチし、ちゃぶ台に静かに着地させたのは、この家の3人目の住人、フシギダネ。フローラと名付けられた彼女は、ルーナに「食べちゃダメだよ」と注意するように低く鳴き、ツルを使ってルーナを皿から引き離した。
その間に、ブルーはベーコンを大量にと、大盛りサラダを完成させる。それをフローラに運んでもらい、自分は取り皿を何枚か持って居間へ向かった。
キッチン側から順に、サラダ、オムレツ、ベーコンと並べられた大皿。その前に、フローラ、ブルー、ルーナという順で座り、フローラがツルでそれぞれの取り皿に盛り付ける。
ブルーはブラシでルーナの毛を綺麗に梳かし、その後「いただきます」の言葉で食事が始まる。
30分という時間をかけて朝食を食べ終えた3人は、1日の活動を開始させる。
フローラは、食器洗いから始まって家の掃除、洗濯などの家事をこなし、ブルーは畑の植物の水やりや通信教育での勉強、ルーナは畑に面した廊下でひなたぼっこ。これを皆、10時までにきっちり終わらせる。
「よし、今日のやらなきゃいけないことは終わったね! というわけで、今日はトキワに行こう!」
ブルーの言葉で、今日のこれからの予定が決まる。
ブルーは、農作業用のオーバーオールから、ライトブルーノースリーブに赤いスカートに着替え、青い帽子をかぶる。深い青のリュックサックには、ポケギア、マップ、水筒、非常食や防寒具、更にどくけしやまひなおしやきずぐすりなども入れる。
まだ8歳であるブルーは、本来ならきずぐすりなどの回復用の道具はおろか、ポケモンすら所有してはいけないことになっている。ただ、これには例外があり、ポケモンを“ペットとして”所有することは法律で許されている。もちろん、ポケモン協会に申請をした上での事だが。
だが、ブルーはポケモン協会には申請していない。それでも、ご近所さんであるオーキド博士が許している理由は、“ブルーがポケモンをポケモンとして所有しているから”だ。つまりは、彼らはペットではなく、旅する友のような扱いとなっている。これは、とある法律が原因だ。
“ひとり暮らしをしている未成年者は、生活の支えとしてポケモンの所持を許す”
誰か、責任のとれる大人が保証人になってくれる必要があるのだが、ブルーの住むマサラタウンには優しい大人で溢れているので問題はない。
ポケモン所持の制限は3体までであるが、その為にブルーはルーナとフローラと共に暮らしている。———保証人・オーキド博士の条件は、夕食はオーキド家と共に食べることだが。
ブルーたちは何の不自由なく暮らしているが、最近、この両親が遺したただっぴろい家に3人だけじゃ寂しくなってきたのだ。よって、ブルーは決めた。新しい家族を捜そう、と。
最近の日課は、トキワシティやトキワの森をうろつき、新しい家族を捜すことになっている。
ルーナを抱きかかえ、心配性なフローラにツルで手首を掴まれながらマサラタウンを出て、1番道路に足を踏み入れる。草むらに入った瞬間、前も後ろも背の高い草でふさがれ、踏みつけた雑草からは、草特有の匂いが漂う。
草タイプとして、自分の得意フィールドに入ったフローラの案内に従い、どんどん背の高くなっていく草むらの奥へと入っていく。
真夏の太陽を浴びた額から汗がじわりとにじみ、どこかからか聞こえる虫ポケモンの鳴き声の中、何度も水分補給をし、少しずつながら距離を稼いでいく。
フローラのはっぱカッターで野生のポケモンを追い払いながら進むこと、2時間。
ようやく1番道路を出て、トキワシティに到着した。
時刻は12:30。お昼時だ。
適当なファストフード店で食事を済ませることに決め、ハンバーガーショップのミックに入店する。店長オススメのポケバーガーを3つとドリンクをひとつ頼み、テイクアウト用の袋に入れてもらう。
お金を支払って店を出て、向かう先はトキワ公園。噴水で空になった水筒の水を汲み、フローラ用の広い皿に全て注ぐ。ベンチに座ってハンバーガーを食べ、ドリンクを空にしてゴミ箱に捨ててから、トキワシティの店を覗きながらトキワの森へと向かう。
途中でルーナをモンスターボールに戻し、フローラが脇にぴったりと張り付いた状態で、トキワの森へ入っていく。
トキワシティは、汗がポタポタと垂れるほど蒸し暑かったのに、トキワの森に入った瞬間、木が直射日光をさえぎり、涼しくなる。たまに木の葉の間からまぶしい日差しが差し込んでいるが、ほとんどが日陰となっている。
薄暗い森を、フローラの直感で歩き回り、野生のポケモンを見てはビビッとくるものがないか確かめる。そこらへんにいるようなポケモンではダメなのだ。ひと目見て絆を感じ、なおかつ闘志があるイキのいい子が家族として欲しいのだ。
いつものんびりしているルーナも、心配性のフローラも、バトルへの意気込みとやる気はバッチリだ。ブルーはこんななりでもポケモントレーナーを、チャンピオンを夢見、目指している。やる気がない子を捕まえても仕方がない。
「ダネェ、ダネダネ」
「え、嘘、ピカチュウ? 目撃者は少ないのに!」
家族に相応しいピカチュウを発見したというフローラに、ブルーは驚きながらもすかさず交渉に入る場を整えるように指示する。
フローラはピカチュウに向かって鳴き声を上げ、少しその場に留まってくれるよう頼む。ブルーは急いでリュックサックとボールベルトを外してフローラに預け、手ぶらでピカチュウに少し近付いた。
そのピカチュウは、ブルーに警戒心を抱きながらも、話は聞いてくれるようだ。
「こんにちは。私、ブルー。今はまだ子供だけど、将来チャンピオンを目指す者よ。今はロコンとフシギダネしか仲間は居ないけど、旅に出てからは更に仲間を集めてポケモンリーグに出場したいと思っているの。そこで、私はあなたに一緒に来て欲しいと思うの。ただ、バトルを仕掛けて勝ってモンスターボールに捕まえても、そのポケモンと心をひとつにして困難に打ち勝っていくことは難しいかもしれない。だから、私はあなたに交渉に来たのよ。私達と一緒に、頂点を取らない?」
しゃがんで目線を合わせ、出来るだけ誠意が伝わるよう、一言一言に熱を込めて話す。
ピカチュウは少し迷う素振りを見せたあと、戦闘体勢に入った。つまりは———「バトルに勝てたらついていく」ということだ。
フローラを1度モンスターボールに戻し、すぐに繰り出す。ピカチュウが落ちていた小石を拾ってきて、宙に投げた。
小石が地についた瞬間、ピカチュウが素早く動き出した。その名も———でんこうせっか。
フシギダネのフローラが、その攻撃に追いつけるわけがなく、ダメージを受けて宙に浮かぶ。受け身をとって着地し、ブルーは、
「こうそくいどう!」
すばやさを上げさせる。
10万ボルトを受ける間にさらに2回こうそくいどうを積み、準備を整える。
何故攻撃をしてこないのか不思議に思いながらも、ピカチュウはもう一度身体を白く発光させ、でんこうせっかでフローラにダメージを与えようとするが、
「捕まえて!」
こうそくいどうを積んだことによってピカチュウの動きを正確に見出したフローラが、超スピードで近づいてきたピカチュウの身体をツルで掴み、空中へ持ち上げた。
「ピィカ、ピー!!!」
ピカチュウが全力の10万ボルトで攻撃するが、フローラは軽く受け流し、
「エナジーボール!」
至近距離からのエナジーボールをピカチュウにぶつけた。
「はなびらのまい!」
そのままはなびらのまいでピカチュウを連続攻撃し、戦闘不能まで追い詰めた。
地面に下ろされ、のびているピカチュウの口にげんきのかけらを押し込み、回復させる。
フローラの言った通り、このピカチュウは我がパーティにぴったりだった。でんこうせっかもフェイントをかけながら、また攻撃の出し方のクセを悟られないように繰り出していたし、ひとつひとつの動きに無駄がなかった。まさにバトルの天才ともいえる逸材だろう。
回復したピカチュウに、新しいモンスターボールを差し出す。ピカチュウはためらうことなくモンスターボールのスイッチに触れ、中に吸い込まれるようにして入り———
カチッ!
———“ブルーの”ピカチュウになった。
モンスターボールを展開してピカチュウを出し、新しい家族の名前として考えていた言葉を言う。
「———今日からあなたはレオンよ」
あらすじにガチとか書いた割に廃人知識を知らないという悲しい現実。
それでもよろしくおねがいします。