その少女が求めたのは唯々母の存在であった。無垢な殺人鬼は自身の母を探しながら狂ったように殺戮を続ける。だが少女にその良し悪しは分からない。なぜなら少女は……生まれる前に死んだのだから。
狂者襲来
聖杯戦争の開始が宣言されてから最初の夜、雁夜はキャスターと共に街へと繰り出していた。
「なあキャスター、何かあったのか?どの陣営も最初の2、3日は動かないって言ってただろ?」
「少し状況が変わりました。それに確かめたい事が出来ました」
「確かめたい事ってさっきやっていたニュースの事か?」
雁夜は先程やっていたニュースの内容を思い出す。それは女性が腹から股にかけて切り開かれ子宮を抉り取られた変死体で発見されたというモノである。それだけを見ればただの殺人事件であるが、それが4件起きていて目撃証言も無ければ、女性の共通点も無い、極めつけは……
「どうやって切り開かれたのか、凶器が分からないんだっけ?」
「その通りですマスター。同じ角度で寸分違わず全く同じ切り口で切り開かれていたんです。しかも縛られた……抵抗した跡も無く上の服は無傷のままバッサリと」
「それがサーヴァントによる物だと言いたいんだな」
「はい。しかも最初の犯行が陽がほとんど沈んだ夜……召喚確認から1時間です。聖杯戦争は基本深夜に近い時間から始めるのにも関わらずこんなに堂々と。野放しにしてしまうと今後も被害が増えるでしょう。こんな事をするクラスはおおよそ1つしか無いでしょうから」
「バーサーカー……か」
「相手のマスターがどの様な理由で殺害を命じているのかは分かりませんが、止めておくには越したことは無いかと」
「キャスターはバーサーカーを止めるのに向いているからね。っと着いたね。ここが……」
「最後に事件があった場所です」
警察による黄色と黒のテープが張られた現場では血の跡がこびりついていた。ここに来たのは魔力の残留を確かめる為であった。キャスターが手の平を翳し目を瞑る。そうしていること10秒で解析が終わったのか目を開く。
「私と同じ魔力の反応を感知しました。ほぼ間違いなくサーヴァントによる犯行です」
「そうか。それで辿れるのか?」
「何とかやってみます」
神秘の秘匿が第一である魔術師の間でこんなにもあからさまに殺害されていると聖杯戦争の一時中止も起こってしまう。時間が無いキャスター達にとってそれは最も避けたい事柄である。
魔力を感知しながら辿っていくとそこには5人目の遺体があった。その横にはその女性の子宮と思われるモノを手を血で真っ赤に染めながら持っているボロボロのマントを着けた幼い少女がいた。
「おかあさん……ねえ、あなたがわたしたちのおかあさん?」
「マスター下がって」
「ああ」
相手がバーサーカーである以上問答無用で魅了にかかっている、だがそれでも警戒を解くことが出来ない。ゆっくりと近づいてくるバーサーカーはその子宮を見せながら話しかける。
「ねえおかあさんみて、これがわたしたちのいえだよ。とりかえしたよ」
「……そうですか。よく出来ましたね」
母親の様な優しい声色で近づいてきたバーサーカーに答える。褒められたと感じたバーサーカーはその歩を早める。そうしてキャスターの手が届きそうな距離まで近づき腕を上げて子宮を顔の前まで持ってくる。血の匂いがキツいがそれを気にせずに手を血に染めながら子宮を受け取る。
「えらいですね。よしよし」
「えへへ、おかあさんにほめられた。おかあさんいっしょにおうちにかえろう」
頭を撫でられたバーサーカーは嬉しそうにしながら、おもむろに腰からナイフを取り出しキャスターの服を切り裂く。スカートと下着を切られて下半身を晒すと同時にキャスターの女性器にバーサーカーは吸い付く。
「おかあさん……おかあさん……おかあ……さ……」
性器から流れ出る体液を吸った瞬間バーサーカーの反応が変わる。成仏していくように元気が無くなっていく。キャスターの魔力を吸えば吸うほど体が拒絶を起こすがそれでも止まらない。魅了されたから止めれない。そうして1分も満たない時間でバーサーカーの意識が断たれる。
「この子も悪霊の類でしたか……消えない様に調整しましたがどうしましょうか」
「キャスター大丈夫か!?」
「私は問題ありません。しいて言うなら服が破けてしまいました」
「そうか……無事でよかった。バーサーカーは?」
「気を失いました。浄化による負荷が強かったのでしょうね。それにしても……」
「どうした?」
「この子の記憶を読み取ったのですが、マスターは既に死んでいます……召喚してから30秒で殺されました。それに生前の記憶というモノが1つもありません」
「マスターが死んだ?」
「はい。とは言っても令呪は切り取って持ち運んだ様です」
マントの下のナイフをしまう場所に令呪が刻んである手が筋肉を糸替わりに使って縫い止められている。狂化と精神汚染の解除は完了しているバーサーカーを抱きかかえ雁夜に尋ねる。
「さて、どうしますかマスター。この子を仲間に引き入れますか?」
「そうは言ってもマスターはどうする?キャスターがなるのか?」
「私の魔力をマスターとして流したら消滅するかと。そうですね……桜さんに協力して貰いますか」
「桜ちゃんに!?ダメだそれは!」
「それではマスターがなりますか?魔力の供給は私の魔力をマスターの魔力に変換する形で。戦力が多いに越したことはありません」
「出来るのか?」
「恐らく」
「……この戦争に勝つためだ、何だってしてやるさ」
「そうですね」
例えそれがサーヴァントだとしても子供を戦わせる事になったとしてもである。
なお、その後遠坂家にアサシンが侵入し撃退されたが魔力の供給を行っていた雁夜達は知る由は無かった。
バーサーカーはジャック・ザ・リッパー(幼女)になりました。触媒としてはそこらに無数の子供の死体があるため妥当と判断しました。
アサシンクラスでは無いため気配遮断も無く、狂化&魅了状態のため宝具は縛っているため弱いっちゃ弱いです。
ジャックが浄化で消えないのは完全にご都合主義です。……一応理由を付けるなら消えない程度に魔力の譲渡を抑えていたシャムハトさんの技量という事にしといて下さい。伊達にランクAでは無いのです。
聖母解体の条件の1つである夜と最初の犯行ですが、聖杯戦争の開始は11月とあり、その頃には6時にはもう暗くなり始めていると判断し夜にしました。
さて、次は港での一幕なのですが……ここで1つのルート分岐で原作に近い形で進めるか、原作?何それおいしいの?的な宝具解放ルート(作者的にMSNルートと呼びたい)のどちらが良いのか迷っています。はてさてどっちを書こうか……。