Armour IS Zone   作:アマゾンズ

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獣は一度怒りを見せたら相手を倒すまで鎮まることはない。

それが命を奪う事になっても。


第六話 怒り~Anger~

「ガアアアアア!」

 

咆哮を上げながらも鏡夜(オメガ)の手刀や貫手の連撃や腕の刃を絡めた攻撃は休みなく繰り出される。

 

「くっ、俺は…負けられるかよ!!二度もさ!!」

 

一夏も攻撃を捌きながら反撃に転じるが僅かに反らされ、確実な一撃になってはいない。

 

「クアアアアア…!!」

 

鏡夜(オメガ)は右グリップを引き抜くと小太刀を出した。

 

「剣で勝負って事か?いいぜ、やってやる!」

 

一夏は雪片を構え直した。

 

「カハァアアアア…!」

 

構えを直した一夏に警戒してるのか、飛びかかるような事はせずに間合いをとっていた。

 

「攻撃は野性的なのに行動は冷静なのかよ、厄介だな」

 

 

 

 

 

 

 

二人の戦いを目を逸らさず見ていた鈴とセシリアは驚きの表情をしていた。

 

「す、すごい・・お二人は接近戦がメインなのに」

 

「二人のあんな戦い、初めて見たわよ…」

 

一人は剣による堅実な戦い、もう一人はあらゆる接近武器を使いながらも野性的な戦い。

 

性質が違う戦いのぶつかり合いは魅せるのに十分な内容だ。

 

「うおおおおおお!」

 

「カアアアアアア!」

 

一夏が雪片を振り下ろせば鏡夜(オメガ)は小太刀で受け返し、蹴りを放つ。

 

「くっ!」

 

間合いが離れると鏡夜(オメガ)は小太刀を投げ捨て、ドライバーの左グリップを捻った。

 

VIOLENT・STRIKE(バイオレント・ストライク)

 

「クウウウウウウウアアアア!!」

 

鏡夜(オメガ)は走り出し、飛び上がった。

 

「!!零落白夜ァ!」

 

一夏は単一仕様能力を発動し、突撃した。

 

野生のキックとエネルギー体の剣が激突した瞬間に辺りが光に包まれた。

 

「くうっ!」

 

「ま、眩しいですわ!」

 

その閃光に見守っていた二人も目を守るように腕で覆い隠した。

 

「く・・・・」

 

「っ・・・・」

 

ドサッと倒れたのは鏡夜(オメガ)であった。

 

「今回は・・・俺の・・・負けか・・・・」

 

倒れたまま変身が解け、大の字で鏡夜は口を開いた。

 

「勝った・・・?俺が・・?」

 

一夏は信じられない様子で放心していた。

 

「一夏・・・俺はお前の理想を認められない・・だが、俺は俺、お前はお前のやり方で理想を叶えろ」

 

「鏡夜兄・・・?」

 

「ふん・・・独り言だ」

 

そう言って鏡夜は言葉を切った。

 

「ありがとう、鏡夜兄」

 

「・・・・お節介もほど程にしておけ、いつか自分の首を絞めるぞ」

 

二人の会話を終わらせるように戦いを見ていた女性二人が走ってきた。

 

「鏡夜、一夏!」

 

「お二人共、大丈夫ですか?」

 

「ああ、俺は平気だけど鏡夜兄が・・・」

 

「水筒を取ってきてくれ、あれの中身が飲みたい」

 

一夏や二人の心配をよそに鏡夜は何も変わらない様子だ。

 

「水筒って・・・卵が入ってるあれ?」

 

「ああ、今すぐ卵が欲しい」

 

「卵・・・ああ、そういう事ですのね」

 

セシリアは鏡夜の話から要求している物を察した。

 

「少し待ってなさい、取ってくるから」

 

鈴はいの一番に飛び出していった。

 

「あ!先を越されましたわ!」

 

セシリアは一瞬しまったという顔をしたがすぐに戻った。

 

「(ツギハ、タシカメサセテモラウ)」

 

鏡夜の内の檻の中で(アマゾン)は何かを待つように言葉を発していた。

 

しかしそれは誰にも聞こえず虚空へと溶けていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから数時間が経ち、変わりなく寮で横になっている。

 

しかし、俺は一つだけ気掛かりがあった。

 

転校生の一人、シャルル・デュノアだ。

 

着替えの時の反応で俺の中で確信を持っていた、アイツは女性だ。

 

それに本当に男性なら世間的に話題性がもっと高いはず。

 

だが、証拠がない為に言及する事は出来なかった。

 

「俺が考えていても仕方ないことだな」

 

まどろみの中に身をゆだねようとした、その時だった。

 

ドンッ!ドンッ!

 

玄関であるドアをノックする音が響いた。

 

「ん?誰だ?」

 

「鏡夜兄!開けてくれ!俺だよ」

 

どうやら思考していた出来事が起きたらしい。

 

「それで?俺に何の用だ?」

 

「ああ、実はさ。シャルルの事で」

 

一夏の隣にはシャルルが立っていた。

 

「そうか、とりあえず中に入れ。それと一夏、俺と一緒に来い」

 

二人を自分の部屋へと上げると、鏡夜は一夏を連れて外へ出ようとする。

 

「きょ、鏡夜兄!シャルルは一緒に連れて行かないのかよ!?」

 

「良いから来い!すぐに戻るからな。シャルル、ゆっくりしてていいぞ?」

 

「え?あ・・う、うん」

 

いきなり一人にさせられ、シャルルは戸惑いながらも鏡夜の部屋で二人を待つ事とにした。

 

「これが・・・雨宮君の」

 

部屋の中を探し、目的の物であるアマゾンドライバーを見つけるとシャルルはパソコンを開いた。

 

「あれ?でもこれどうやってデータを」

 

カシャッ!

 

「はっ!?」

 

「やはりな、予想通りといえば予想通りか」

 

「あ、雨宮君?それに一夏!?」

 

「鏡夜兄、なんで!?」

 

鏡夜の手にはデジカメが握られていた。

 

「こうしなきゃ、俺の思っていた事が確定にならなかったからな」

 

「でも!こんな事!!」

 

「それで?目的は俺達のデータか?シャルル」

 

「あ、あはは、バレちゃったか。そう雨宮君の言う通りだよ」

 

「それに、お前・・女だろう?もう隠す必要もない。最初の着替えの時に違和感があったからな」

 

「そこまでバレてるんだ、雨宮君はすごいね。そう、僕は女だよ」

 

鏡夜は一夏が騒いでいるのを無視し、座らせるとシャルルから話を聞き始めた。

 

シャルルは実家であるデュノア社がIS開発において出遅れている事。

 

他の国の生産競争に勝てない状態が続いている事を考えた結果。

 

シャルルを男装させ、俺達男性操縦者のISデータを盗む事を命令されたらしい。

 

「シャルル、いや・・・本当の名前は?」

 

「本当の名前はシャルロット・デュノア、お母さんが付けてくれた大切な名前だよ」

 

「え?だってシャルロット・・・には両親が」

 

「僕はね、愛人の子供なんだ」

 

本当の名前を名乗ったシャルル。いや、シャルロットは自虐的な笑みを見せて口を開いた。

 

「なるほど、この命令に失敗すれば強制送還に加え、実家から追い出され、更には刑務所行きという訳になるのか」

 

「そうだね、でも僕にはもう」

 

「それなら何とかしてここに!」

 

「一夏、少し口を閉じろ。お前が騒いだ所で解決にはならない」

 

「何言ってんだよ!シャルルが困ってるのに鏡夜兄は見捨てるのかよ!?」

 

シャルロットを助けようと躍起になっている一夏に鏡夜はため息を吐いた。

 

「助ける前にシャルロットはお前に助けてくれと頼んだのか?頼んでもいない事をすれば余計なお世話だと言われる場合もあるぞ?」

 

「う、それは・・・。でも、このままでいい訳ないだろ!?」

 

「お前はどうしたい?シャルロット。このままこの学園に居たいか、それとも本国に返されるか」

 

「僕は・・・」

 

「ハッキリしろ!お前は人形か!?違うだろ!」

 

「!!」

 

鏡夜の叱咤にシャルロットはハッとし、涙を流し始めると大声で叫んだ。

 

「僕は・・・僕は此処に居たいよ!僕は人形じゃない!みんなと一緒に居たいよ!!!」

 

「やっと本音を出したか」

 

「なぁ、鏡夜兄。何とかしてシャルルを此処に」

 

「・・・・」

 

鏡夜は何か小さな本らしきものを取り出すと目的のページを見つけ、開いた状態にし二人に見せた。

 

「このページの項目でしばらくはなんとかなるだろ、後は行動次第だな」

 

そこには[特記事項第二十一]と書かれていた。

 

「鏡夜兄!これって!」

 

「この学園にいる間は国だろうが、親だろうが干渉は不可能だ。その間に解決すればいい」

 

「雨宮君・・・」

 

「俺はちょっと散歩してくる。話し合いに使うなら部屋は自由に使っていい」

 

「雨宮君、ありがとう」

 

「俺はヒントを出しただけだ、後はお前次第だ」

 

そういって鏡夜は外へと出て行った。

 

「一夏、雨宮君って冷たい印象があるけど優しい一面もあるんだね」

 

「ああ、なんだかんだで助けてくれるしな」

 

 

二人は笑いながら談笑しつつ、これからどうするかを話しを始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日が沈みかけている夕方の空の下を鏡夜は歩いていた。

 

そろそろ夏に入るかという分かれ目だ、日が多少長く感じるのもそのせいだろう。

 

 

「ん?」

 

誰かが騒ぐような声を上げているのを耳にし、鏡夜は近くへと歩いて行った。

 

「何故ですか!何故こんな所で教師など!?」

 

「(この声、転校生のラウラといった奴の声か?)」

 

近くの木に隠れると鏡夜は聞き耳を立てた。

 

「何度も言わせるな。私には私の役目がある、それだけだ」

 

「(織斑先生まで居るとはな)」

 

「このような極東の地で何の役目があると言うのですか!!」

 

ラウラはまるで懇願するように必死で声を上げていた。

 

「お願いです教官!我がドイツで再びご指導を・・・!ここではあなたの能力は半分も生かされません!!」

 

「この学園の生徒達はISをファッションか何かと勘違いしている。そのような者達に教官が時間を割かれるなど」

 

そこから先の言葉をラウラが発しようとした時、一瞬だけ場の雰囲気が変わった。

 

「そこまでにしておけよ、小娘」

 

それは千冬の明確な怒りによるものだった。

 

「少し見ない間に偉くなったな?十五歳で選ばれた人間とは恐れ入る」

 

千冬の言葉にラウラは怯えと同時に震えている。

 

「わ・・・わたしは・・・」

 

「話は終わりだ、さっさと寮に戻れ」

 

「・・・」

 

ラウラは促されるがままに寮の自室へと走りながら戻って行った。

 

「さて、そこの男子。盗み聞きか?」

 

「人聞きの悪い事言わないでください。散歩していたら見かけたものでつい」

 

鏡夜は素直に木の陰から出てきた。

 

「ふん、まあいい」

 

「どうやら依存・・・いや、通り越して崇拝までいってますね?あの様子だと」

 

ラウラの状態を口にしつつ鏡夜は千冬と話を始めた。

 

「困ったものだ。アイツは力こそが全てだと考えている。力だけが総てではないというものを」

 

「過剰に指導しすぎたんじゃないんですか?肉体を鍛える事の指導は最高でも精神的なフォローのは苦手ですからね、織斑先生は」

 

「っ・・・何も言い返せんな」

 

鏡夜の言葉に言葉が詰まったが言えたのはそれだけだった。

 

「鏡夜」

 

「なんですか?」

 

二人きりのせいか千冬は昔の呼び方で鏡夜に呼びかけた。

 

「もし、もしもだ。ラウラと戦う事になったらアイツを倒してくれ。そうしなければアイツは目が覚めん」

 

「それは教育者として?それとも一個人の頼みで?」

 

「どちらも、だ」

 

「贅沢ですね、承りましたよ」

 

千冬の頼みごとを鏡夜は内心でため息をつきながら引き受けた。

 

「すまない・・・」

 

「頼み事は生徒として聞くさ。俺はアンタを憎んでいる、水に流すことはしない」

 

「分かっている。お前の憎しみをわたしは受け止め続けなければならないからな」

 

鏡夜の目は愛憎が渦巻く物に変わり、千冬を見ていた。そんな鏡夜の目を千冬は見つめ返す。

 

「さ、話は終わりだ」

 

「分かってますよ、それじゃ」

 

鏡夜は再び散歩を再開し、千冬から離れていった。

 

しばらく歩いた後、自室に戻るとシャルルと一夏が待っていた。

 

「話し合いは終わったか?」

 

「うん、僕はここにいる。僕が自分で決めたよ」

 

「そうか」

 

「鏡夜兄、俺達はこれからアリーナに行って訓練するつもりだけど、一緒に行かないか?」

 

「構わないぞ、シャルルとも手合わせしてみたいしな」

 

「あはは、お手柔らかにね?」

 

 

シャルルは苦笑して立ち上がると、鏡夜と一夏と共にアリーナへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鈴さん、お手合せ願えますか?」

 

「良いわよ、私も遠距離の相手とは手合わせしたかったし」

 

先にアリーナでは鈴とセシリアが模擬戦を始めようとしていた。

 

「それでは・・・」

 

「ええ」

 

模擬戦を始めようとした矢先に二人の間に砲弾が飛来した。

 

「「!??」」

 

二人が同時に砲弾が飛んできた方向を視線を移すとそこには漆黒のISが立っていた。

 

情報が出されると機体名に[シュヴァルツェア・レーゲン]と表示されている。

 

そしてその操縦者は。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ…!!」

 

「いきなりのご挨拶ね?どういうつもりかしら?」

 

「中国の[甲龍]にイギリスの[ブルー・ティアーズ]か。データ上の方がまだ強そうではあったな」

 

「ああ、そう。その(かこ)に停滞して先に進むのを止めてる人よりマシだと思うけど?」

 

「っ・・貴様」

 

鈴にとっては何気ない挑発だったが、それがラウラの中にある弦に触れたらしく表情を険しくした。

 

「データは所詮データ、先へ目指していけば更新される物。私達は立ち止まってる時ではないのですわ」

 

セシリアもラウラの挑発を流し、自分の言葉を発した。

 

「ふん、所詮は種馬を取り合うだけのメス共にこの私が負けるものか」

 

ラウラは冷静さを取り戻し挑発を返してくる。

 

その言葉を発せられた瞬間、二人の中で弦が切れた。

 

「ふーん、いいわ。ちょっと暴れたい気分だし」

 

「わたくしだけならいざ知らず、歩む事を教えてくれた方を侮辱されるのは我慢なりませんわね」

 

「面倒だ、二人掛りでとっとと来い」

 

「「上等!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アリーナへ向かっていた三人だが鏡夜が突然走り出し、シャルルと一夏はそれを追いかけていた。

 

「どうしたの!?雨宮君!」

 

「嫌な予感に胸騒ぎがするから、急ぐぞ!」

 

「鏡夜兄の勘は当たるからな」

 

アリーナの入口や席はギャラリーでいっぱいになっていた。

 

「悪い、通してくれ!なっ!?」

 

「あれは!」

 

そこにはISのエネルギーが枯渇寸前のセシリアと鈴がラウラの前で倒れていた。

 

「終わりだ」

 

とどめの一撃らしき拳をふり降ろそうとした時。

 

「うおおおおお!」

 

「一夏!あのバカ!先走って」

 

一夏が白式を展開し、零落白夜でラウラに斬りかかったのだ。

 

その一撃はラウラに届くことなく止められている。

 

「ふん・・・、感情的で直線的、絵に描いたような愚図だな」

 

「う、動けない?何でだ?」

 

「消えろ」

 

ラウラがワイヤーブレードによる攻撃を一夏へ仕掛けようとした時。

 

アマゾンドライバーを起動させる起動音が響いた。

 

ALPHA(アルファ)

 

「アマゾン…!」

 

BLOOD&WILD(ブラッド&ワイルド) WI(ワイ・)-WI(ワイ・)-WI(ワイ・)-WILD!(ワイルド!)

 

「くっ!?何だ!?」

 

「うわ!?これって・・・まさか」

 

突然の衝撃と炎にラウラは目を隠しながら後退し、一度同じ現象を見ていた一夏も後ろへ下がった。

 

「怒りってのはある程度過ぎると、頭が冷静になるなんて初めて知ったよ」

 

「な、なんだ貴様!その姿は!?」

 

「(鏡夜兄がマジギレしてる)」

 

「これが俺のISさ」

 

赤い(アマゾン)となった鏡夜は胸元にある自らの傷を撫でるように触れた。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ、お前は・・・・骨まで喰ッテヤル!!」

 

「っ!!!!!!!!」

 

ラウラはゾクリと戦慄とともに冷や汗を背中にかいた。

 

目の前にいるのは人間じゃない、獣・・・それも狙った相手を捕食する猛獣だ。

 

「ふん!全身装甲(フルスキン)だろうが見せかけだけの機体に負けるものか!」

 

ラウラは大声で鏡夜に向かって叫ぶように虚勢と知りつつ罵倒した。

 

「いいぞ?ここで試してやっても」

 

「く・・・!」

 

震えが止まらない。身体が、心が逃げろと警鐘を鳴らし続ける。

 

鏡夜(アルファ)がアマゾンドライバーの左グリップに手を掛けようとした。

 

「そこまでだ!」

 

それと同時に声がした方向に振り向くと、そこにはいつの間にか織斑千冬がおり、近づいてくる。

 

この騒ぎに生徒の誰かが報告し、呼んだのだろう。

 

「模擬戦をするのは構わん。が!アリーナのバリアまで破壊する事態になられては黙認し兼ねる。この戦いの決着は学年別トーナメントでつけろ」

 

「き、教官がそうおっしゃるのなら・・・」

 

「きょ・・・雨宮もいいな?」

 

「分かりました」

 

「では、学年別トーナメントまで私闘の一切を禁止する。解散!」

 

千冬の言葉とともに鏡夜は倒れていた二人のもとへ向かい、一夏とシャルルも追従した。

 

「大丈夫か?二人共」

 

「ええ・・」

 

「きょ・・鏡夜さ・・ん?」

 

「あ、雨宮君?」

 

「セシリア?シャルル?ああ・・・そうか、解除してなかったな」

 

鏡夜はドライバーを外すと元の姿に戻った。

 

「鏡夜兄、とりあえず二人を保健室に運ぼう。シャルルも手伝ってくれ」

 

「うん、わかったよ」

 

「ああ、そうだな」

 

 

 

 

 

 

[BGM・Armour Zone]

 

 

 

三人に手を貸してもらい、保険室に入るとふたりの手当てを始めた。

 

「大丈夫か?二人共」

 

「大丈夫よ、ありがとう」

 

「無様な姿を見せてしまいましたわね・・・」

 

 

二人は手当てを終えると意気消沈したかのように俯いた。

 

「悔しかったんだろ?一方的やられて」

 

「うん・・・」

 

「はい・・・」

 

鏡夜の言葉に二人は納得しながら唇を噛み締めた。

 

「今は休めよ、相棒のためにもな」

 

「鏡夜君の言うとおりです」

 

話の中に突然、山田先生が入ってきた。

 

「お二人のISはダメージレベルがCを超えています。今回のトーナメント参加は許可できません」

 

「っ・・・」

 

「悔しいですわ・・・本当に」

 

鏡夜に影響されたのか二人は悔しさを顔に出していた。

 

「とりあえず・・・ん?」

 

扉の方に視線を向けたと同時に扉が倒れ、中に多数の女生徒が入ってきた。

 

「織斑君!」

 

「デュノア君!」

 

「雨宮君!」

 

皆一斉に目的の男子生徒の前に立つと取り囲んで手を伸ばしてきた。

 

「な、なんだなんだ!?」

 

「ど、どうしたのみんな!?」

 

「一回、落ち着いてくれ!一体何だ!?」

 

「「「これ!!」」」

 

一人の女生徒が見せてきたのは学内の緊急告知文が書かれた申込書だ。

 

「ん?なになに?『今月開催する学年別トーナメントでは、より実践的な模擬戦闘を行うため、二人での参加を必須とする。なおペアが出来なかった者は抽選により選ばれた生徒同士で組むものとする』」

 

なるほど、つまりはタッグマッチ方式になったわけか。

 

俺は一夏の近くへ行き、軽く肘で小突くとシャルルの方を向いた。

 

その意図に気づいたのか一夏はシャルルの近くへ行き。

 

「悪いな、俺はシャルルと組むから諦めてくれ!」

 

一瞬の沈黙の後に女生徒達は仕方ないと行った様子で。

 

「ま、そういうことなら」

 

「他の女子に組まれるよりはいいかも」

 

「となれば・・・あれ!?」

 

残った鏡夜と組もうとした女生徒達はキョロキョロと周りを見回した。

 

 

「「「雨宮君がいつの間にかいない!」」」

 

まるで消失マジックのように鏡夜は姿を消していた。

 

「急いで探せー!!」

 

そう叫びながら残った女生徒達も保健室から去っていった。

 

「やれやれ、やっと行ったか」

 

「鏡夜兄!?」

 

「な、なんでそこに!?」

 

「か、隠れてたのですか!?」

 

「変なとこに隠れてんじゃないわよ!」

 

ベッドの下から出てきた鏡夜にそれぞれが声をかける。

 

「しょうがないだろ、隠れる場所がなかったんだからな」

 

「鏡夜兄、どうすんだよ?ペア」

 

「抽選に任せるさ」

 

「そっか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この時が来た!」

 

 

学年別トーナメント、この戦いの場で倒す相手を思考している。

 

 

「待っていろ、一夏!私があの化物を倒して救い出してやるからな」

 

それは謹慎が解けた箒であった。

 

箒には一夏を助けるという思考しか頭にない、それが周りとの亀裂を生むとも知らずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「抽選の結果は・・・なるほど」

 

[雨宮鏡夜・更識簪]

 

「聞いた話によれば、彼女は整備課や整備室に居るって言ってたから挨拶に行くか」

 

整備課の先輩に居場所を聞き、そこへ向かうと一人の女の子がキーを叩いてプログラムを組んでいた。

 

「少し、いいか?」

 

「誰?」

 

「俺は雨宮鏡夜だ。えっと・・君が更識簪さんかな?」

 

「そうだよ。それで何の用?」

 

どうやらこの子はおとなしく、人と会話する事が苦手なようだ。

 

「学年別トーナメントのペアになったから挨拶に来たんだよ」

 

「そう・・・でも、今は忙しい」

 

「機体は完成してても、プログラムが出来てないのか?」

 

「!!なんで・・それを?」

 

「すまない、覗く気は無かった。組んでいるプログラムが起動用だったからさ」

 

「どうしても起動が出来ないの、何回やっても」

 

どうやら悩んでいるようで俺はデータを見せて欲しいとお願いした。

 

簪は最初、渋っていたが、こちらの起動用データを提供するという条件で区切りをつけた。

 

「なるほどな、これなら俺の機体のデータで起動できる」

 

「本当に!?」

 

「ああ」

 

データを打ち込んでいくと彼女の愛機である打鉄弐式(うちがねにしき)が誕生の産声を上げるように起動した。

 

「!起動した!ありがとう!雨宮君!」

 

「いや、一から機体を組み上げてた簪の方がすごいって。それと俺の事は鏡夜でいい」

 

「わかった、鏡夜」

 

簪は笑顔のまま鏡夜を見ていた。

 

「あらためてよろしくな?簪。いや、それとも更識さんって呼ぶべきか?」

 

「ううん、簪って呼んで。苗字で呼ばれるの好きじゃない」

 

「そうか、なら遠慮なく簪って呼ぶぞ?それとトーナメントのペアよろしく頼む」

 

「うん、よろしくね」

 

 

二人は握手すると笑顔で勝利を誓い合った。




次回!Armour IS Zone

「この化け物め!」

「彼は化け物じゃない!!」

「うあああああああ!」

「生きるってのは誰かに成るって事じゃない、他の命を喰らって自分を作っていくんだよ」

第7話 Imitation~模倣~
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