因縁なのか?それとも報復のためか?
否。
戦うに値するからだ。
その日の放課後、俺は鈴とセシリアと共に特訓するためアリーナに来ていた。
「ねぇ、鏡夜?ISで模擬戦する前に久々に組手しない?」
「そうだな、鈴とは毎日だったからやるか」
「(ま・・毎日?)」
セシリアにとって二人が仲良さ気に話しているのは気に入らなかった。
好意を向けた相手と話したいというのは恋する乙女としては当然の考えだ。
「それじゃ・・・行くわよ?鏡夜」
「来い、鈴」
その言葉と同時に二人は組手を始めた。
「・・・」
「・・・」
ゆったりとしたスローペースで二人は攻撃を繰り出しては捌き、流れるように続けている。
「(とても美しいですわ、まるで舞踏を観ているようで)」
セシリアは二人の組手に見入っていた。踊りというのは見たことがない訳ではない。
しかし、目の前で行われている武の舞がセシリアには心の底から美しいと感じたのだ。
「・・・」
「・・・」
互いに礼をすると鈴と鏡夜の二人はいつもの感じに話を始めた。
「はぁ、久々にやったけど鈍ってるわね。何箇所か当たってたもん」
「この組手はずっとやれる訳じゃないからな、鈍るのも無理はない。俺も当てられている。本気で当たってたら胸骨が折れてる所だ」
どうやら組手の反省だったらしく、ウォームアップも兼ねていたようだ。
「さ、次はISよ!」
「お待ちなさい!ISの訓練のお相手はこのわたくし、セシリア・オルコットでしてよ!」
「何よ、鏡夜は私の為に時間を空けてくれたのよ!」
「わたくしとの特訓のためですわ!」
「「ぐぬぬぬぬ・・・!!」」
また修羅場だ、こういう時は。
「まずはセシリアから頼む!鈴はさっきの組手で集中力が切れてるだろ?セシリアとの特訓の後に鈴との特訓をお願いしたい」
スパッ!っと俺が決める事だ、ちゃんとした理由もを組み込まないとこの二人は納得しないだろう。
これでどっちからでもなんて言った日には八つ当たりで二対一になりかねない。
「うー、確かに私は集中力が切れちゃってるから無理ね」
「わかりましたわ、鏡夜さん!」
鈴は渋々納得し、セシリアは笑顔で返事をした。
「(今回はわたくしの勝ちですわ)」
「(勝ち誇ってんじゃないわよ!なんちゃってお嬢様!)」
女同士の戦いは収まっておらず、熾烈を極めていた。
「ふう、流石に連続の特訓は応えるな」
鏡夜は水筒を取り出し、器に入った卵を飲む。
「あ、アンタ…アスリートみたいな事してるのね?」
いつの間にか来ていた鈴は卵を飲む所を見ていたらしい。
「ん?ああ、まあ・・な」
「鏡夜、変わったわね、昔は熱くて暴走しがちだったのに」
鈴は鏡夜の隣に座ると壁に背を付けた。
「色々あってな・・・」
「それだけ?だって・・・苗字まで変わってることが色々って」
「今は話せない、今はな」
「わかったわ、話す時が来たらちゃんと聞かせてね?気になるから」
いつもそうだ、コイツは物事をハッキリ主張する割に気遣いも上手い。
こんな優しさを出されたら大抵の奴は落ちるだろう。
だが、俺は・・・。
「ああ、わかった」
「それと、中華料理くらい作ってあげるわよ?//」
「結婚の申し込みみたくなるのは勘弁な?そこまで考えはしてない」
「な、何言ってんのよ!バカ・・・//」
鈴は真っ赤になりながら俯いた。
「鈴、俺はクラス対抗には出られない。でも試合は見てるから安心しろ」
「ええ、一夏には負けないわ!」
鈴は立ち上がると眩しい笑顔とともに闘志を秘めた目をしていた。
◇
そしてクラス対抗の当日、俺はアリーナの最前列にいる。
一夏と鈴の対戦が一回戦からあるということで見に来ていた。
「この試合だけは見ておかないとな」
とは言うものの。
「あ、あれって、一組の雨宮鏡夜君?」
「二人目の男性操縦者の?」
「クール系らしいわよ」
「でもたまに熱血だって」
などなど噂がすぐに流れてるために気苦労している有様である。
「(それに、妙な胸騒ぎがする。一体何だ?)」
試合が始まる時刻寸前となったので俺はアリーナに視線を戻した
「鏡夜さん」
「セシリアか」
セシリアに隣を確保しておいて欲しいと言われ、本当に良いのか?と思いながらも確保しておいた席に座った。
「どう見ますか?一夏さんと鈴さんの試合」
「どちらも接近戦がメインではあるが、鈴が何を繰り出してくるかによるな」
「なるほど、わたくしもそう思いますわ」
セシリアもIS操縦者、試合となれば自分が戦っているイメージをしてしまうのだろう。
そして、試合開始のブザーが鳴った。
開始と同時の奇襲を兼ねた鈴の初撃を一夏は受けきり、間合いを取った。
「アンタの試合、ビデオで観させてもらったわ。確かに雪片のバリアー無効攻撃は驚異的よ」
一夏は一瞬だけ俺を見たが俺はどこ吹く風だ、対戦相手の研究なんて当然してくるだろうし。
俺はそもそも干渉していない、対戦相手の情報を自分で掴んでいる鈴には余計な世話をしたくなかったからだ。
俺の一方的過ぎる信頼かもしれないが。
「でもね」
鈴はニヤリと不敵に笑い、
「雪片じゃなくても攻撃力の高いISなら絶対防御を突破して本体に直接ダメージを与えられる、もちろんこの
「くっ!(鈴の攻撃、流れるように仕掛けてきて捌きにくい!なら!距離を一旦取って)」
一夏は距離を取ろうと後退しかけたその時。
「甘いっ!」
甲龍と呼ばれたISの肩部がスライドし、中心が光ったと同時に一夏は地表に叩きつけられた。
「がはっ!」
それを見ていたアリーナの観客は沸き立ち、鏡夜は驚きも含めた口笛を一瞬吹いてしまった。
「(ヒュ~♪)なんだ今のは?衝撃か?」
「ええ、衝撃砲ですわ。空間自体に圧力をかけることで砲身を生成し、余剰で生じた衝撃を砲弾にして撃ち出したのですわ…」
明るかった声がなりを潜め、鏡夜は真剣な顔で衝撃砲を見ていた。
「接近戦で真価を発揮する訳か、俺にとっては相性が悪いな」
「鏡夜さんと?確かに、鏡夜さんの武装のほとんどが接近戦ですものね…」
「ああ、間合いを外す為に使われたら厄介極まりない。ダメージというおまけ付きで間合いを外されるのは致命的だ」
鏡夜は待機状態である自分のISであるブレスレットに触れた。
試合は最高潮に盛り上がっていたが、それを壊す乱入者が現れた。
アリーナシールドを撃ち破り、それは中心に立っていた。
「会場内に所属不明のISが出現!」
山田先生の声に会場は騒然となっていた。
「セシリア、会場のみんなの誘導を!」
「え?」
「早くしろ!混乱してからじゃ遅くなる!」
俺は声を荒らげ、誘導を促した。
「は、はい!鏡夜さんは?」
「俺は楽しんでた物を邪魔されたからな」
そう言いながら鏡夜はゆで卵を取り出して食べるとドライバーを装着すると同時にISの翼を展開し乱入者のISが開けた穴からアリーナへ飛び込んだ。
「鏡夜!」
「鏡夜兄!」
「・・・楽しみを邪魔しちゃダメだろ?怒りに身を任せるのはよくない」
そう言いながら、鏡夜はドライバーの左グリップを捻った。
「アマゾン・・!」
「きゃっ!」
「うお!」
二人変身時の衝撃波に目を閉じた。
「なによ、あれ・・あれが鏡夜なの?」
「!鈴!!」
鏡夜は乱入者が鈴に向けて攻撃しようとしているのに気づき、抱きかかえ回避したが肩に掠ってしまった。
「ぐあっ!」
「あ・・・」
「鈴、此処に居てくれ」
鈴は
「来い、乱入者」
鈴を降ろし、乱入者に向けてクイクイと指を動かして挑発した。
「!!!!!」
乱入者は鏡夜を見た瞬間、ビームを放つと同時に接近戦を仕掛けてくる。
「ぐっ!」
「!!!」
同族嫌悪しているかのように乱入者は鏡夜に接近戦を仕掛けつつ、一夏や鈴に対してはビームを放ち、近づけさせなかった。
「くそ!鏡夜兄の援護にいけねえ!」
「鏡夜を倒すまで近づけさせないつもりね。あれ?ねぇ一夏、気づいてる?」
「ああ、妙に機械じみてるな。あの動き」
「無人機はありえない、でも」
「その可能性は高いな」
「行くか!」
「うん!」
一夏と鈴は同時に乱入者へと攻撃するが、的確に防がれてしまい。
更には間合いを取られてしまった。
「一夏ぁっ!」
「え?」
突然の声に振り向くとそこは放送室であり、箒がマイクを持っていた。
「男なら、そのくらいの敵に勝たなくてなんとする!!」
箒の声に反応した乱入者はすぐさま箒のいる放送室へビームを放った。
「マズイ!!」
「箒ィ!」
一夏が叫ぶがその後に信じられない光景が一夏と鈴の目の前に現れた。
「グアアアアア!ガハッ!バカ・・・が」
そこには箒に向けて放たれたビームの直撃を受け、落下していく
「鏡夜ァァァーーー!!」
鈴は全力で鏡夜のもとへと向かい、助け起こす。
「ねぇ、鏡夜!しっかりして!!」
「・・・・」
鈴の呼びかけにも反応しなかった。
何故なら直撃によって致命傷に近い傷を負い、意識を失っているからだ。
「よくも鏡夜兄を!!絶対に倒してやる!」
一夏は雪片を乱入者に向けて構え、戦闘に入った。
「そ、そんな・・・」
箒は放送室で座り込んでしまっていた。
一夏の為だと思い、喝を入れるために放送室へと侵入した。
その結果、嫌悪している相手に命を助けられ、その相手が重傷を負ってしまっている。
「わ、私は一夏の為に・・」
愛する人の為にと思った行動が、結果的に重傷者を出してしまう結果であった。
「うおおおおお!こいつを受けろおおおおお!」
鈴の援護を受けつつ、一夏は
「これで!終わりですわ!!」
いつの間にかセシリアもIS展開状態で来ており、一斉射撃を無人機に撃ち込んだ。
「こんなもんじゃ足りねえ!これは鏡夜兄の分だぁあああ!!」
一夏は無人機に刃を突き立てて、完全に機能が停止するまで突き続けた。
「鏡夜!」
「鏡夜さん!」
「鏡夜兄!!」
鈴、セシリア、一夏の三人は重傷を負った鏡夜を運ぼうと手助けし合っていた。
「早く保健室に!」
「急げ!」
山田先生と千冬も慌てた様子で保健室を開けるよう指示していた。
〈BGM Armour Zone〉
◇
「千冬姉、鏡夜兄は?」
「織斑先生だ。手当ては終わったが意識はまだ戻ってない」
保健室にて会話しているふたりだが、学校で私的な呼び方をした時に殴られているはずの会話も今は意気消沈していた。
保健室に運び込まれた鏡夜は手当てのかいもあって一命は取り留めたが意識不明で目を覚まさなかった。
保健室の外では逆に言い争いが起きていた。
「箒さん、どうしてあのような事を?」
「わ、私は一夏に喝を入れようと」
「その結果に対して鏡夜が重体じゃない!アンタの身勝手な行動で負傷者が出たのよ!!」
セシリアは腕を組み、鈴は箒を睨んでいた。
「私は何も間違っていない!」
「ふざけんじゃないわよ!!人一人を重体にさせておいて関係ないと言い張るつもり!?」
「アイツが、鏡夜が勝手にやったことだ!」
「箒さん、今の言葉、わたくしも頭にきましてよ!」
二人は箒に詰め寄ろうとしたその時、保健室の扉が開いた。
「保健室前で騒ぐな、馬鹿者共」
千冬が出てきたところで言い争いは止まってしまった。
「鏡夜はしばらく目を覚まさんらしい、お前達も早めに戻るようにな?」
そう言うと千冬は廊下を歩いて行った。
一夏も出てきたが顔に覇気がなかった。
「一夏!どうしたのだ?男ならしゃきっとしろ」
箒が話しかけ、元気にさせようとするが。
「うるせえ!鏡夜兄があんなになってるのに元気なんか出せっかよ!」
そう言うと一夏は走っていってしまった。
「一夏!」
箒は一夏の後を追って保健室前から離れていった。
「一夏さん、鏡夜さんの事ひどく心配していましたわね」
「アイツはシスコンでブラコンだからね・・・苦労してたそうよ」
セシリアと鈴にもいつもの覇気がなかった。
「目を覚まされますわよね、鏡夜さん」
「あの姿を見た後だと抵抗あるけど、鏡夜は鏡夜よ。きっと目を覚ますわ」
保健室で眠る鏡夜は静かに回復の時を待ち続けていた。
まるで、獣が傷が癒えるのを待ち続けるように。
次回!Armour IS Zone
「今日から転校生が来ます」
「ご挨拶だな」
「認めるものか!」
「僕は・・・」
第五話 交点~Intersection point~