Armour IS Zone   作:アマゾンズ

9 / 10
獣が見る夢は休息か、狩りか

何を想うか

それはわからない。


第五話 交点~Intersection point~

「篠ノ之、言いにくいがお前に罰則を与えねばならない」

 

「な、何故ですか!?」

 

千冬の言葉に心底納得がいかないといった表情で聞き返した。

 

「軽率な行動、それによる負傷者の発生。罰則が出るのは当然だろう?」

 

「しかし、あれはアイツが勝手に!」

 

「それによって守られたのは誰だ?」

 

「う・・・」

 

千冬の正論と威圧に箒は言葉に詰まった。

 

「謹慎一週間と反省文50枚だ、その間はおとなしくしてるように」

 

「・・・はい」

 

納得いかない様子で箒はゆっくり部屋を出ていった。

 

「随分と軽い罰ですね?」

 

鈴が毒づくと千冬は額に手を当てたまま話し始めた。

 

「私とてそう思うが、学園からの指示だ」

 

「それならば仕方ありませんわね…」

 

学園からの指示ともなれば、いくら千冬でも逆らうことは許されていない。

 

納得いかなくても納得せざるを得ないのが現実だ。

 

「千冬姉、鏡夜兄は?」

 

一夏は一番の話題を口にした。

 

「今も目を覚まさない、時よりうなされているがな」

 

「そっか・・・」

 

一夏は少し表情を暗くした。

 

「お前達も戻るといい。鏡夜は少しの間、私が看る」

 

「放課後に来て大丈夫ですか?」

 

「大げさなことをしなければな」

 

「分かりました、それじゃ」

 

「行きましょう、一夏さん」

 

「え、でも」

 

一夏はその場に留まろうとしたが近くにいた鈴が首を横に軽く振った。

 

「私達が居ても今は無意味よ、だから行こ?一夏」

 

「わかったよ。千冬姉、鏡夜兄を頼む」

 

「ああ、任せておけ」

 

そう言って千冬は保健室へと向かい、一夏たちは教室へと戻った。

 

保健室には未だに目を覚まさない鏡夜がベッドで横になっていた。

 

「鏡夜・・・」

 

ベッドの隣にあった椅子に千冬は腰掛け、鏡夜の様子を見た。

 

未だ目を覚まさない鏡夜は呼吸は規則正しくしていたが、やはり時折うなされている。

 

『千冬義姉に大切に思われるの、少しでいいから俺に向けて欲しかったよ』

 

千冬は鏡夜が一瞬だけ見せた寂しそうな目と言葉を思い出していた。

 

「鏡夜・・・お前は義理という関係に負い目を感じていたのか?」

 

千冬は鏡夜が本当の姉弟ではない事が追い込んでいた原因ではないかと考えた。

 

「確かに義理ではあったが・・・何も」

 

千冬は自分の手を握り締めていた。

 

「私はもう、行く。鏡夜・・・待っているからな?早く目を覚ますんだぞ」

 

千冬は椅子から立ち上がると保健室から出て行った。

 

「ハラ・・・ヘッタ・・・・ニク・・・」

 

千冬が去った後、寝言のように鏡夜とは別の声で空腹を訴えていたが聞こえることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その、数時間後に鏡夜は目を覚ました。

 

報告を受けた千冬を含めた4人は保健室に来ていた。

 

「鏡夜、大丈夫か?」

 

千冬は真っ先に声をかけ、返答を待った。

 

「大丈夫、それよりも腹が減って仕方ない」

 

「アンタねぇ、あれだけ心配させておいて起きた第一声がそれ!?」

 

「仕方ありませんわね、鏡夜さんは」

 

「鏡夜兄らしいけどな」

 

それぞれが呆れ気味だったが皆が笑顔になっていた。

 

「やれやれ、それで?何を食べたいんだ?」

 

「とにかく肉が食いたい、大量に」

 

「それなら食堂へ行けるか?そこでなら特別に許そう」

 

千冬は教師としての態度を崩さず、食事の許可を出した。

 

「わかった」

 

「肩を貸してあげるわ、寝たきりだったんだからキツイでしょ?」

 

「その通りですわ」

 

「ああ、悪い。鈴、セシリア」

 

「(このぉ、私がアドバンテージを取ろうと思ったのに!)」

 

「(鈴さんの行動力には叶いませんがわたくしも負けませんわ!)」

 

 

女性同士のバトルはまだまだ続いているようだ。

 

 

鏡夜は二人に肩を借りてゆっくり起き上がり、食堂へ向かい始めた。

 

食堂では肉料理の代表格であるステーキを食堂のおばさん達が焼いていた。

 

 

「丁度いい時に来たね、話は聞いてるよ。そろそろ焼き終えるから待ってな」

 

肉の焼ける匂いに鏡夜は今か今かと待ちきれない様子だ。

 

「待たせたね、はいよ。お代わりは言ってくれれば作るからね」

 

「ありがとうございます」

 

腕は動くようなので、鏡夜は自分の力で持とうとしたが持ち上げることが出来なかった。

 

「あれ?」

 

「力が入らないみたいですわね、お持ちしますわ」

 

セシリアはステーキが乗ったお盆を持つと席を確保しに行った。

 

「くっ…(気遣いのアドバンテージ取られた)」

 

肩を貸していた鈴は鏡夜に気づかれないよう一瞬だけ悔しい気持ちを顔に出していた。

 

席に着くと千冬と一夏が座っていた。

 

「なぁ、千冬姉?なんで居るのさ?仕事は?」

 

「問題ない、鏡夜の様子見ということで来ているからな、鏡夜の食事が済めばすぐに戻る。それに織斑先生だ、馬鹿者」

 

そう言って千冬は一夏の頭を軽く小突いた。

 

「痛え!」

 

「相変わらずのやりとりだな?」

 

鏡夜は席に着くと、二人を見て何処か遠くを見るような笑みを浮かべた。

 

「お前も変わってないと思うが?」

 

「そうかもな」

 

そう言いながら鏡夜はステーキを口に運び始める。

 

ナイフとフォークくらいは扱えるくらいの力はあったようで、無心でステーキに食らいついている。

 

「ん?」

 

食事を始めてから千冬が鏡夜に対して違和感を持ち始めていた。

 

ステーキを食べ始め、半分近くまで食べ終える頃には鏡夜の動きが早くなっていた。

 

「鏡夜兄、なんだかさっきよりも食べるの早くなってないか?」

 

「そうそう、まるで怪我する前のようになってるわよ?」

 

「まさか、そんな事ありえませんわ」

 

三者がそれぞれ鏡夜の様子に驚いていた。

 

「いや、その通りだ」

 

それを聞いた鏡夜は腕に巻かれていた血染めの包帯を解いた。

 

そこには傷はなく、滑らかな肌が蘇っていた。

 

「な!」

 

「嘘…だろ?」

 

「信じられない、間違いなく大怪我だったのよ!?」

 

「どうして…ですの?」

 

怪我がなくなっていることに四人は驚愕し、固まっていた。

 

「(そろそろ潮時だ、話すべきだろうな)」

 

自分の身体の変化を見せた鏡夜は自分に起こった事を話す決意を固めた。

 

そんな中、千冬だけが冷静さを取り戻していた。

 

「(タンパク質を求める傾向は空腹、暴走といった他に回復の為でもあるのか)」

 

Armour(アーマー)細胞の事を聞き、千冬の中で半信半疑だった事が氷解していた。

 

「(人間を襲う可能性もあると鏡夜は言っていた、その時は)」

 

千冬は考えを振り払うと立ち上がった。

 

「私はもう行くとする。鏡夜、回復したなら明日からの授業は出席するように」

 

「えー」

 

「するようにな?」

 

「はい・・・」

 

千冬の睨みに鏡夜の拒絶は一刀両断されてしまった。

 

「では、明日の授業でな?」

 

千冬はそう言って食堂から去っていった。

 

「お代わりをお願いします」

 

「はいよ」

 

鏡夜は千冬が去ったと同時にステーキのお代わりを頼んでいた。

 

「なぁ?三人共、明日の放課後、時間あるか?」

 

「急にどうしたんだよ?鏡夜兄、怖い顔して」

 

一夏は鏡夜の真剣な顔が怒っているように見えてるようだ。

 

「私は大丈夫よ」

 

「わたくしもです」

 

鈴とセシリアはすぐに返答した。

 

「三人に話しておきたいことがある、とても重要な事だからな」

 

「わかった、じゃあ俺も放課後を空けとくよ」

 

「悪い」

 

謝りながらもステーキを食うことは止めない鏡夜だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぜ、アイツは私を助けた…」

 

謹慎を受けた箒は自室で鏡夜の行動を考えていた。

 

「アイツにとってあの行動はただのデメリットしかないはず、なぜ助けた」

 

箒はこれまでの鏡夜の行動を思い返していた。

 

敵対者には容赦せず、自分が恩義を受けた相手には恩義を返す。

 

それ以外にも一つだけ気がかりがある。

 

その気がかりとは久々に再会した時に感じた鏡夜の違和感だった。

 

「アイツはあの時、人ではない声を発していた」

 

明らかに人間ではない声、姿は人間ではあるが人間でないもの。

 

「まさか、化物になったのか?それならばアイツから一夏を!」

 

自分が救わねばならない、そんな思いを抱きながら箒は処罰が終わるのを待った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから回復した鏡夜は授業に参加していた。

 

最初は大怪我をしていたという事でクラスメート全員から心配されたが、大丈夫だと言い聞かせたおかげで納得してくれた。

 

それから問題なく日は過ぎて行き・・・。

 

 

「やっぱりハズキ社製のがいいなぁ」

 

「え?そう?ハズキのってデザインだけって気もするけど?」

 

「そのデザインがいいの!」

 

「私は性能的にミューレイのがいいなぁ。特にスムーズモデルの」

 

「あー、あれねー、モノは良いけど高いじゃん」

 

数人の女子がカタログを手に朝から雑談していた。

 

「そういえばさ、織斑君のISスーツってどこのやつ?見たことがない型だけど」

 

「鏡夜君のも全く見たことないよね」

 

話題を振られた俺達は素直に会話に応じることにした。

 

「俺のは特注品だって。男のスーツって無かったからどこかのラボが作ったらしいよ。えーと、確か・・・イングリッド社のストレートアームモデルって聞いてる」

 

「俺も一夏と同じだな。ただ俺は全身装甲(フルスキン)だから伝達重視仕様にしてあるそうだ」

 

 

「ISスーツは肌表面の微弱な電位差を検知することで操縦者の動きをダイレクトに各部へと伝達し、それによってISは必要な動きを行っています。しかもこのスーツは耐久性にも優れていて、一般的な拳銃くらいの銃弾なら止めることが出来ます。ただし、衝撃は消えませんが」

 

 

 

返答を返すと同時に、ISスーツに関して説明しながら山田先生がいつの間にか来ていた。

 

 

「山ちゃん詳しい!」

 

「山ぴー見直した!」

 

女子が山田先生をあだ名で呼びながらも感心していた。

 

「あ、あのー、教師をあだ名で呼ぶのはちょっと・・・」

 

山田先生が優しく咎めようとするが。

 

「えー、いいじゃんいいじゃん!」

 

「まーやんは真面目っ子だなぁ・・・」

 

「ま、まーやんって」

 

「それなら、マヤマヤの方が良い?マヤマヤ」

 

「そ、それもちょっと・・・」

 

「だったら、前のヤマヤに戻す?」

 

「あ、あれはやめてください!」

 

山田先生が語尾を強めて拒絶の意を示していた、よっぽどヤマヤというあだ名にトラウマがあるのだろう。

 

山田先生と女子が話していると千冬が教室に入ってきた。

 

 

 

「諸君、おはよう」

 

「お、おはようございます!!!」

 

千冬が教室に入って挨拶をしたと同時に一瞬でそれぞれの席へと戻っていた。

 

教卓に立つと連絡事項を伝え始めた。

 

「今日から本格的な実践訓練を開始する。各人のISスーツが届くまでは学校指定の物を使うように。忘れたものは代わりに学校指定の水着で訓練を受けてもらう。それすらも忘れた場合は、まぁ・・・下着で構わんだろう」

 

ドゴンッ!と机に頭をぶつけるような音が響いたがそれは鏡夜の座っている机からだった。

 

「どうした?雨宮」

 

「い、いえ、何でもないです」

 

下着姿で授業させるのは流石にダメすぎるだろ!というツッコミは誰もが言いたい事だろうと思い、黙っていた。

 

視線を隣へ移せば一夏もそれはまずいだろうという表情をしていた。

 

「そうか。では山田先生、ホームルームを」

 

「は、はい」

 

連絡事項を終え、授業の前のホームルームが始まる。

 

「ええとですね、今日はなんと二名の転校生を紹介します!」

 

「「「えええええええーーー!?」」

 

「転校生か、しかも二人とはラッシュだな」

 

鏡夜も驚いていたが、冷静な顔を崩さないようにしていた。

 

そうしていると教室に二人の転校生が入ってきた。

 

「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。この国では不慣れな事も多いと思いますが、皆さんよろしくお願いします」

 

「お、男?」

 

「・・・・・」

 

転校生の一人であるシャルルがにこやかに一礼した。

 

一夏を含めたほとんどのクラスメートがあっけにとられていたが鏡夜は観察するように見ていた。

 

 

「きゃ・・・」

 

「はい?」

 

「一夏、耳を塞げ・・・来るぞ!」

 

「え?わ、わかった」

 

鏡夜に促され、一夏は耳を塞ぎ鏡夜もそれに続いた。

 

「きゃあああああああーーー!!」

 

ビリビリビリと教室中に響いたその声は音響兵器と呼ぶに相応しいレベルだった。

 

「きょ・・鏡夜兄・・・」

 

「だ・・・だから・・・言ったろ?」

 

耳を塞いで軽減したがそれでも残響は残っていた。

 

「男子!三人目の男子よ!」

 

「このクラスに!」

 

「美形!しかも守ってあげたくなる系の!」

 

「地球に生まれて良かった~!」

 

「これは予想外だわ!シャルル×雨宮?いや、雨宮×シャルル?それともシャルル×織斑?織斑×シャルルもアリね!いえ、三人まとめて!?」

 

「そ、それは豪華すぎるわ!」

 

「捗る!捗るわぁ!」

 

腐ってる女子のみなさん、もうネタを考えるのは構わないが宣言するのはやめてくれ。

 

「騒ぐな!静かにしろ」

 

「み、皆さん!まだ自己紹介は終わってませんから~!」

 

そう言って山田先生はクラス中を注意した。

 

「・・・・・」

 

もう一人は白のような銀髪に左目には眼帯という異端といえば異端な姿をしている。

 

その佇まいは軍隊映画などでよくやる休めの体勢だ。

 

「・・・・ラウラ、挨拶しろ」

 

「はい、教官」

 

ラウラと呼ばれた彼女は千冬に促され前へ一歩、歩み出た。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

「・・・・・」

 

「あ、あの、以上ですか?」

 

「以上だ」

 

挨拶が終わったと同時にラウラと一夏の目が合った。

 

「(敵意剥き出しだな、助けてやるか)」

 

ヅカヅカと一夏の近くに向かってくる敵意むき出しのラウラを見ながら俺は立ち上がる準備をした。

 

「!貴様が!」

 

一夏の近くへと向かってくるのと同時に、鏡夜は立ち上がり行く手を阻んだ。

 

行く手を阻まれたラウラは鏡夜を睨みつけた。

 

「何をする!?貴様!」

 

「自己紹介が済んだなら指定された席に座るんじゃないのか、お前の席はこっちじゃないだろ?」

 

「どけ!」

 

「退かないな、一夏に用があるならそこから話しかければいいだけだと思うが?」

 

「貴様・・・」

 

「それに俺も怒られる、早く戻ってくれると助かる」

 

「私は認めない、認めるものか。貴様があの人の弟であるなど」

 

ラウラはそう一夏に強く言うと自分の席に座り、目を閉じた。

 

「雨宮、早く席に着け。これ以上は見逃せんぞ?」

 

「失礼しました、織斑先生」

 

返事を返すと鏡夜は自分の席に戻って着席した。

 

「ではホームルームを終わる!各人はすぐに着替え、第二グランドへ集合!」

 

「おい、織斑、雨宮。デュノアの面倒を見てやれ。同じ男子だろう?」

 

「「分かりました」」

 

「君達が織斑君と雨宮君?初めまして。僕は」

 

シャルルが挨拶をしようとしたが二人に止められた。

 

「挨拶は後、今はとりあえず」

 

「急いでアリーナへ向かうぞ!走れ!」

 

そう言って鏡夜と一夏は走り出し、シャルルもそれを追う形になった。

 

「転校生発見!」

 

「しかも織斑君と雨宮君の二人と一緒よ!!」

 

早くも見つかってしまった。まずい、質問攻めはかんべんだ

 

「左は塞がれたな、下の階の右側まで降りるぞ!」

 

「わかった!」

 

「逃げたわ!こっちよ!」

 

「者共!出会え出会えい!」

 

「いつから江戸時代になったんだよ、ここは!」

 

愚痴りながらも走ることは止めない三人だった。

 

「な、なんでみんな騒いでるの?」

 

「それは俺達が珍しいからだろ?」

 

「?」

 

一夏の言葉にシャルルは首をかしげていた。

 

「(女子に騒がれてこの反応、それに男なはずなのに世間の話題にならないのは何故だ?)」

 

鏡夜はシャルルに対して違和感を抱き始めていたが自分の中に押し込めた。

 

「とりあえず、撒いたな。さっさと着替えるか」

 

「そうしようぜ、鏡夜兄」

 

アリーナに到着と同時に鏡夜と一夏はTシャツを脱いだ。

 

「わぁっ!?」

 

「?」

 

「どうした?さっさと着替えたほうが良いぞ?」

 

シャルルの叫びに二人は疑問を抱いたが、着替えを止めなかった。

 

「う、うん。着替えるからあっちに向いてて」

 

「?わかった」

 

「・・・・ああ(この反応の仕方、確定だな。今は胸にしまっておくか)」

 

一夏は疑問を感じず、鏡夜は何かを察したように向こう側を向いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、実戦形式の授業が始まった。

 

 

「雨宮、ISを纏っておけ。お前は全身装甲(フルスキン)だからな」

 

「分かりました」

 

千冬の指摘に従い、鏡夜はゆで卵を食べるとアマゾンドライバーを装着した。

 

「どこから取り出しているんだ?その卵は。それに授業中だぞ?」

 

「卵を食べないと装着できない不便さがあるので」

 

笑ってごまかすと、鏡夜はグリップを捻った。

 

 

 

ALPHA(アルファ)

 

「アマゾン…!」

 

BLOOD&WILD(ブラッド&ワイルド) WI(ワイ・)-WI(ワイ・)-WI(ワイ・)-WILD!(ワイルド!)

 

炎が上がり、鏡夜は冷静な傷だらけの(アマゾン)の姿となった。

 

 

「近くで見ると慣れんな、その姿は」

 

「傍から見れば化物ですからね」

 

その言葉には自虐的な意味も含まれていたが知られることはなかった。

 

「よし、今日は専用機持ちに戦闘を実戦してもらう。凰、オルコット!前に出ろ」

 

「な、何で私が!?」

 

「わたくしもですか!?」

 

「専用機持ちはすぐに実演を始められるからな、早く前に出ろ」

 

それでも選ばれた二人は不満を隠していなかった。

 

「お前ら少しはやる気を出せ、好いた男に良い所を見せたくないのか?」

 

千冬は二人を焚きつける言葉を言ったようで、急にやる気を出していた。

 

「やってやろうじゃないの!」

 

「わたくし、セシリア・オルコットに敵などいませんわ!」

 

なんだなんだ?ものすごいやる気だぞ?今の二人。

 

「それで、相手はどちらに?鈴さんでも構いませんが」

 

「言ったわね?返り討ちにしてやるわ!」

 

「慌てるな、馬鹿共。対戦相手は」

 

キィィィィン…!

 

「ん?この音、まさか・・・?」

 

「あ、ああああーっ!ど、どいてください~っ!」

 

「!間に合うか!?」

 

鏡夜(アルファ)は声がしたと同時に駆け出していた。

 

ドカーン!と派手な音がしたが、鏡夜(アルファ)はそれを受け止めていた。

 

「大丈夫ですか?」

 

「え?そ、その声は雨宮君ですか!?」

 

受け止めたものの正体はISを纏った山田先生だった。

 

「そうですよ、山田先生はこの状態の俺を間近で見るのは初めてでしたね」

 

「ええ、あの時は怖いと思ってましたが。あの・・・そろそろ降ろしてくれませんか?」

 

「へ?」

 

よく見れば俺は山田先生をお姫様抱っこしている状態だった。

 

それに伴い、間の抜けた声と同時にレーザーが鏡夜(アルファ)の横顔を掠めていった。

 

「鏡・夜・さ・ん?いつまでそうしていますの?」

 

そのレーザーは笑顔のセシリアが放ったものだった。

 

「セ、セシリア…?」

 

鏡夜がセシリアに目を合わせたが、その笑顔は怒りが含まれてるのが明白だった。

 

「鏡~夜~!!あんたねぇ~!!」

 

「お、おい!鈴!待て!剣を連結させるな!死ぬって!!」

 

「うるさーい!死んで反省しろー!」

 

怒りに我を忘れ、鈴は連結された双天牙月(そうてんがげつ)を投擲してきた。

 

まずい!あれに当たったら、当たった場所が切り落とされる。

 

そう思っていた矢先、二発の銃弾が発射された音が響いた。

 

「今のは?」

 

鏡夜は驚いていたが、向かってきた武器を撃ち落とした人物はすぐ近くにいた。

 

「・・・・」

 

「山田先生が?」

 

「ええ」

 

お姫様抱っこされている状態で正確な射撃が出来るということは相当な実力者だという事だ。

 

「・・・すごい」

 

鏡夜は山田先生をゆっくり下ろすと同時に素直な言葉が漏れていた。

 

「山田先生はああ見えて元代表候補生だ、先ほどの射撃くらい造作もない」

 

「む、昔の話ですよ。候補生止まりでしたし」

 

山田先生は照れくさそうにしていたが、先ほどの射撃によって皆、見る目が変わっていた。

 

その後、鈴とセシリアが二対一で山田先生に挑んだが、完敗であった。

 

「くうう、このわたくしが・・・・」

 

「あ、アンタねぇ!衝撃砲の射線に誘導されてんのよ!」

 

「な!だいたい鈴さんは衝撃砲に頼りすぎです!」

 

「はあ!?アンタこそエネルギー切れが早いのにビット出しすぎよ!!」

 

山田先生との実習後、二人は互いに戦闘の欠点の言い合いをしていた。

 

「なんというか・・・・」

 

「コンビネーション最悪だな・・・あの二人」

 

鏡夜(アルファ)は腕組みしながら二人を見ており、一夏は呆れた様子で見ていた。

 

「諸君にも教員の実力が理解出来ただろう?以降は敬意をもって接するように」

 

その後、グループ別に分かれるよう千冬の指示があったが、男子の専用機持ちに集中していた。

 

「織斑君!」

 

「デュノア君!!」

 

「「「よろしくお願いしまーーーす!!」」」

 

「この馬鹿者共が!出席番号順に分かれろ!」

 

千冬の一言で皆はすぐに専用機持ちのもとへ分かれていった。

 

「あ、雨宮君…よろしくね?」

 

「ああ、そんなに怖がらないでくれ…って言っても無理はないな」

 

(アマゾン)の姿にほとんどの女子が怖がっていた。

 

全身装甲(フルスキン)だから仕方ない。そこだけは頼む」

 

「う、うん」

 

(アマゾン)の見た目とは裏腹にISの基本操作を丁寧に教えていた。

 

それによって女子の恐怖は和らぎ、少しずつ操作を教えてくれるよう頼み込む人も出ていた。

 

途中、遅れはあったが授業は無事に終わり、昼食の時間となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼食に屋上へ行かないかと一夏に誘われた為、そのまま俺は着いて行くことにした。

 

 

「屋上か、たまには悪くないな」

 

「うーん、気持ちいいー」

 

「だろ?そろそろ」

 

ガチャリと屋上のドアが開き、二人の人物がやってきた。

 

「みんな来てたのね」

 

「呼ばれて来たのですけれど、先に来ていたのですね」

 

一夏に呼ばれていたのか、鈴とセシリアも屋上にやってきた。

 

「僕も同席して良かったの?」

 

「当たり前だろ?なぁ、鏡夜兄」

 

「ああ、そうだな。食事は皆と食うほうがいい」

 

鏡夜は少しだけ笑みを見せてこたえた。

 

「さて、早く食事を済ませないと昼休みが終わるな」

 

「いっけね!」

 

鏡夜が促すと皆がそれぞれ食事をとり始めた。

 

「鏡夜さん」

 

「ん?なんだ?セシリア」

 

「その、鏡夜さんの為にお肉入りのサンドイッチを作りましたの、どうぞ」

 

「それはありがたいな、頂くよ」

 

「っ…!(作ってくれば良かった)」

 

鈴が睨んでいるが鏡夜は気にせずサンドイッチを口に運び、食べた。

 

「セシリア・・・・」

 

「はい?」

 

「材料を・・・ちゃんと・・・・みて・・・く・・れ」

 

それだけを言い終えて、鏡夜は一瞬だけ気を失った。

 

「あ、雨宮君!?」

 

「きょ、鏡夜!?」

 

「鏡夜兄ィ!?しっかりしてくれ!」

 

「え?え?どうなさいましたの!?」

 

鏡夜の様子に皆が心配したが鏡夜はすぐに目を覚ました。

 

「セシリア・・・作ってくれたのはありがたいが、今度は作る場面を見せてくれ」

 

「え?ええ!分かりましたわ!」

 

セシリアは嬉しそうに応えたが、その意図は伝わっていない様子だ。

 

 

その後は食事を終えて、授業も滞りなく終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、鏡夜に呼ばれ放課後のアリーナに皆が集まった。

 

「それで、話って何よ?」

 

「とても大切だとおっしゃっていましたわね」

 

「一体、何の話なんだよ?」

 

 

鏡夜は深呼吸をすると皆に向き直った。

 

 

「これから話すことは全部真実だ、嘘はない」

 

真剣な目つきに三人は気持ちを引き締めた。

 

 

「俺は人間じゃ無くなっている事は知ってるな?」

 

「ええ」

 

「ああ」

 

「存じておりますわ」

 

三人の返事を聞いた後に鏡夜はハッキリと喋り始めた。

 

「俺の身体はArmour(アーマー)細胞という細胞に置き換わってる」

 

Armour(アーマー)細胞?」

 

「なんだよ、それ」

 

「聞いた事ありませんわ」

 

鏡夜の話に三人は訳が分からず混乱していた。

 

Armour(アーマー)細胞はタンパク質を極端に求める細胞で、肉体強化なども含まれるんだ」

 

「一夏、あの日から一年間俺が帰って来なかったよな?」

 

「え?あ・・・中学の卒業式の時以降の!?」

 

「そうだ、あの日に俺は誰かに拉致されどこかの研究所でArmour(アーマー)細胞を投与され、実験体になっていた」

 

「なっ!!!!」

 

「なんですって!?」

 

「そ、そんな事を!?」

 

一夏は真実に驚き、鈴とセシリアは実験の事にそれぞれ驚愕していた。

 

「一年間実験体になってたが、ある人に救出されて特訓をしてもらって名前も変えてもらい、ここに来た」

 

「え?名前を変えた?で、ですが鏡夜さんの本当の名前は・・・」

 

織斑鏡夜(・・・・)・・・だ。養子として織斑家にいたんだよ」

 

「そうね、居た頃は一夏が鏡夜にベタベタしてたんだもの」

 

「いうなよ、鈴」

 

「名前を変えることで別人として生きようとしたが、学園に来てから一夏があまりに呼ぶおかげで一度キレたがな」

 

「うっ・・・・」

 

「まあいい。それと、俺のISは全身装甲(フルスキン)じゃない」

 

「「「なん((ですって))(だって)」」」」

 

鏡夜の言葉に三人はさらに驚愕した。

 

「俺のISは翼だけなんだよ」

 

「え、じゃあ・・・全身装甲(フルスキン)の姿って?」

 

「あれは俺の中のArmour(アーマー)細胞を活性化させてなった姿だ」

 

「活性化?もしや・・・あのベルトのようなものが」

 

「ああ、あれで活性化させて変身している」

 

鏡夜のISの秘密を知った三人は次々と質問を繰り返していた。

 

「これで分かっただろう?俺は化物だってことが」

 

「「「・・・」」」

 

三人は質問の後に黙っていたが、セシリアがツカツカと鏡夜へ歩み寄った。

 

近くまで来るとセシリアは鏡夜にパシンと平手打ちをした。

 

その目は涙を流しながらも怒りに満ちていた。

 

「何をおっしゃっておりますの!?貴方は!!」

 

「セシリア・・・」

 

「何が化物ですか!貴方が一夏さんに対して言い放った言葉は嘘だったのですか!?」

 

「だが、俺は」

 

「貴方は貴方の信念を貫いてください、歩み続ける鏡夜さんこそがわたくしの…」

 

言いかけてセシリアは口ごもってしまった。

 

「ありがとう、セシリア。この平手打ちは借りにしておく」

 

「いつか、返してください」

 

「ああ」

 

礼を言うとセシリアは鈴達のもとへ戻った。

 

「セシリアに見せ場を取られちゃったけど、私もセシリアと同じよ」

 

鈴はハッキリと言い始めた。

 

「例え化物だとしても、鏡夜は鏡夜よ!それでいいじゃない!自分を無下にするんじゃないわよ」

 

「鈴・・・」

 

ああ、そうか。俺は逃げてたんだな・・・。

 

こいつらの好意から目を背けて、勝手に自己解釈して逃げてたんだ。

 

「二人共、ありがとう」

 

「い、いえこれくらいは」

 

「真正面からお礼を言われると気恥ずかしいわね・・・」

 

 

 

<BGM・Armour Zone>

 

 

 

「さて、せっかくアリーナに来てるんだ。訓練してくか」

 

「鏡夜兄・・・」

 

「ん?」

 

一夏は真剣な目をして、鏡夜に話しかけた。

 

「もう一度、俺と戦ってくれ」

 

「その理由は?」

 

「俺、鏡夜兄に言われた事をずっと考えてたんだ。千冬姉と同じになって、本当に燥いでたんじゃないかって」

 

「否定されたけど、俺は俺の理想を貫きたいんだ!本気だという事を鏡夜兄に見せたい!」

 

一夏は視線を逸らさず、ずっと言葉を発し続けた。

 

「わかった、お前の本気の覚悟を受け止めてやる」

 

「鏡夜さん!?一夏さん!?」

 

「無駄よ、セシリア」

 

「鈴さん?」

 

二人の戦いを止めようとしたセシリアを鈴が止めていた。

 

「あの二人が、ああなっちゃったら止められないのよ。本気でぶつかり合うから」

 

鈴は懐かしそうに、それでいて楽しそうな顔をしていた。

 

 

隠していた卵を飲み、鏡夜はアマゾンドライバーを装着した。

 

「うおあああああああ!アマゾンッ!!」

 

OMEGA(オメガ)

 

EVOLU(エボリュー)-E-(・エ・)EVOLUTION(エボリューション)

 

「ウアアアアアア!!!」

 

「来い!白式!!」

 

一夏も自身のISを展開し、雪片を構えた。

 

「再びあの二人が戦うなんて・・・」

 

「私達が入り込む余地はないわ、見守りましょ?」

 

二人はアリーナ中心から離れると戦いを見守った。

 

「行くぞ!鏡夜兄!!うおおおおおお!!」

 

「コイ・・・イチカ!ウガアアアアア!!」

 

一夏は突進し、鏡夜(オメガ)は真っ向勝負を受けるため走り出した。

 

「鏡夜兄ィィィィィィ!!!!!!!」

 

「ウオアアアアア!!イチカァァァ!!」

 

観客は二人、戦うのも二人。

 

互いの想いをぶつけ合う戦いが始まった。




次回!Armour IS Zone

「私と戦え!織斑一夏!」

「戦う理由がない」

「なぜ、貴女のような方が!」

「ラウラ・・・お前だけは骨までクッテヤル!」

第六話 怒り~Anger~
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。