しずか酒   作:nowson

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一昨日は誤って別作品を投稿してしまい申し訳ありません。
間違って投稿してしまったから、早く正しいの投稿しなきゃと、帰宅後さっさとキッチンに立ち、お酒飲んでなめろう食いながら話を考えました。


今回こそ問題なくしずか酒です。






そんなわけで、今回の話は“なめろう”千葉の郷土料理であり、現在では鮨屋や居酒屋でも定番になっているこの料理。
わたくしも大好きで鯵以外でもカツオやサンマ、イワシなどその時の気分で作り酒のアテにしたり、シャリの上に乗せてがつがつやったりします。


前書き長くなるのもよろしくないので本編はいります。


鯵のなめろう

-千葉県某所-

とあるホテルで、ある夫婦の結婚式が行われていた

新郎新婦とも30代前半程だろう、どちらもこれから始まる結婚生活に思いを馳せているのか、自分たちの門出をたくさんの人たちに祝ってもらえてるからか、多分両方なのだろう。祝いに訪れた親戚や友人、職場の仲間に恩師など交友の深い人たちと、幸せいっぱいの面持でにこやかに談笑や余興を楽しんでいた。

 

 

結婚式も終わりに近づき、ブーケトスの番になり、親戚の女の子や新郎新婦の未婚の友人などが集まる。

 そんな中でひときわ目を引く女性の姿、170センチ後半と女性にしてはかなり長身とダイナミックなプロポーション、10人中10人が美人と言うだろう整った顔立ち……総武高校教師、平塚静(独身)である。

 

 

(このブーケトスは非常に難しい、20代前半ならノリで我先に~!!と出来るが今は30代、もしガチで狙いに行ったら「うわ!あの人本気すぎで怖っ!だから結婚できないんじゃ……」と陰口たたかれる事になる。とは言えこのブーケは欲しい!私だって幸せになりたい!結婚したい!!)

子供たちや同じく未婚の女性たちとポジショニングする中で、女としてのプライドと欲求の狭間で静は揺れていた。

 

 

「それでは!!いよいよ……ブーケトスです!!未婚の方は結婚の為に、子供たちは将来の為に……頑張ってゲットしましょう!!」

司会の男性が盛り上げる。

 

 

ブーケを持った新婦は一旦、後ろをチラッと見てから前を向き、きれいな放物線を描くようにブーケを放る。

 

 

(この放物線の軌道は私の方向だ!速度は足りないが手を伸ばせば届く)

チャンスだ!と静は手を伸ばそうとする。

 

 

(まて!私の前にいるのは子供じゃないか!!仮にこのまま取っても問題はないだろう……しかし、先ほどブーケ欲しい!と無邪気にはしゃいでいた子供を悲しませたくはない!!)

静の良心が一瞬の中で葛藤をみせる。

 

 

 

そして

 

 

 

(ダメだ……やはり私はイチ教師だ、子供の悲しむ顔なんて見たくない)

伸ばしかけた手を、愁いを込めた瞳と笑顔を浮かべ引っ込め、ブーケが女の子の手に吸い込まれるのを静は優しく眺めた。

 

 

 

 

―披露宴が終わり二次会―

 

 

二次会会場が禁煙ということもあり、静は喫煙所で煙草をふかしていた。

 

 

「静、今日は来てくれてありがとう!」

私服に着替えたのだろう新婦が静の元を訪れる。

 

 

「なあに、大学の同期のよしみだ、というか披露宴の時も同じ事を言ってたではないか。」

「そうなんだけど、嬉しかったからちゃんとお礼言いたくて。」

 

「それを言ったら私の方も呼んでくれてありがとうだな、同期の君の晴れ舞台に私も立ち会う事が出来て嬉しいよ。」

静は新婦の頭をポンポンと叩く。

 

 

「えへへ……。」

新婦は目を細め、その頭ポンポンを受け入れる。

 

 

「私さ、ブーケトス静を狙ったんだよ、届かなかったけど!」

「私を?」

「うん、静は私の親友だから!早く静の晴れ姿見たくて!」

「そうか、それなら期待に答えるよう頑張らなきゃな」

「うん!!静なら美人だしその気になればすぐだよ!!」

「ハハハ」

「じゃあ私皆のところに行ってくるね」

「おう、言ってきたまえ」

新婦は静に手を振ると二次会会場へと歩いて行った。

 

 

 

 

―二次会の帰り道―

 

 

「フフフ」

(美人だからすぐ出来る……か)

 

 

 

(それで出来たら苦労しないんだよ!!!!ワザとか!?あいつワザと言ったのか!?)

先ほどの言葉を反芻した静はマイナス方向に解釈し、やさぐれモード。

 

 

(結婚どころか彼氏だってできないのに……ああああああああああ!!!!!!!!)

彼女のダミープラグは暴走寸前。

 

 

(おまけに二次会会場の酒は不味いし、微妙なサラダや揚げ物ばかりだし。)

 

(せっかくおしゃれしてるし、今日は宿も取っている事だ、気分を変えて飲み直すか!)

ここから家までは地味に離れている、そのこともあり静は代行を使わず宿をとっていた。

 

(時間はかなり来てるが、やってる店はどこかにあるだろう、とりあえず店探しだ!!)

静は飲食店の立ち並ぶ街中へと足を向けた。

 

 

 

 

―数分後―

 

 

暖簾を下げている店が多い中、やっている店といえばフランチャイズ展開している店が多く、今回も例にもれずフランチャイズがほとんどだ。

 

 

(どうする?フランチャイズで妥協するか?いやしかし……)

早く飲み直したい、でもどうせだから別な店にしたい、静の心は揺れ動き、悩みながらひたすら途方もなく歩く。

 

 

「ん?」

行先も定めぬまま歩いた静の目の前にある暖簾。

 

「鮨屋か、盛り塩もしてるし良さげな店だな、営業時間は3時までか」

暖簾と店構えを細かく確認する静。

 

「この店、当たりくさいな!!」

ここはもう入るしかない、そう決断した静は暖簾をくぐる。

 

 

「いらしゃいませ!」

板前の威勢の良い声が響き渡る。

 

(板前が二人にお客が3人、時間が時間だから空いてるな)

静は店内をさらりと眺める。

 

 

(おっと!先ずはいつものアレしなくては!)

初めて入る店で静が必ず行うこと、人差し指を上にあげ少しハニカムような顔を作る“一人です”ジェスチャー。

 結婚式後で傷心中、これを怠ろうものならハートブレイクすること間違いない。そのジェスチャーを見た板前はこちらの席へどうぞとカウンターへ手を向ける。

 

 

「お飲み物は何にしましょう」

おしぼりを渡しながら板前が聞く

 

(どうする?見たところ日本酒と焼酎が豊富だな、ビールはラガーにドライ、エビスに黒、で生はラガーか……)

静は少し悩むしぐさを見せる。

 

(こう種類が多いと悩むな、とりあえず腰を据えてから攻めることにしよう)

 

 

「お茶ください」

 

 

 

「こちらのお客さんあがりね!」

「はい分かりました!」

板前は裏にいる店員に声をかける。

 

 

「あがり失礼します」

「ども!」

静の元にお茶が運ばれてくる、湯呑を上から眺めると濃い色のお茶が程よい量入っている

 

 

(見た所、底が見えないくらい濃いお茶、鮨屋特有の粉茶だな)

店の考えにもよるが鮨屋のお茶は、鮨という色々な味のネタを楽しむ特性上、口の中を洗いリフレッシュさせ次を味合う意味合いから基本的に濃い(ガリも同じ理由)。

 

静は出された粉茶を少し口に含み転がすように味わった後、それを飲み干す

 

(うん、いい感じにリフレッシュ出来た!早速だが攻めるとするか)

 

 

「すいません、今日は何がおススメですか?」

目利きがよくわからない静は、板前から直に情報をもらおうとする。

 

 

「そうですね、今日は釣り鯵入ってますよ」

振り向き水槽を見ながら板前が言う。

 

 

「釣り鯵?」

「うちの店、釣り好きなお客さん多くて釣った魚を持ち込んだり水槽に入れてったりするんですよ、おかげで千葉の地物の魚を安く仕入れること出来て助かってます」

「へぇぇ、そうなんですか」

情報を聞き出した上で静は少し考える。

 

 

(鯵を頼むのは確定として、どう頼むか……だな。素直に刺身にするか、握りにするか、タタキも捨てがたい!)

静が悩んでいると

 

「なめろうにしましょうか?」

「ああ!なめろういいですね!」

千葉の郷土料理でもあるなめろう、酒にも合うし何より旨い、静の心はなめろうに支配された。

 

「そのまま酒のあてにもできますし、うちではシャリの上に乗せた丼もできますよ」

「おお……」

(それはいい!先ほどからご飯も食べたい、魚も食べたい、酒飲みたいだったから助かる!!)

 

「じゃあ、丼でおねがいします」

「かしこまりました」

板前は水槽から鯵を取出し慣れた手つきで卸ていく。

その後漬け場へと鯵を持ってきて皮を剥ぎ、細かく切ったあとショウガ、大葉、ネギ、味噌と一緒に鯵の活けが楽しめる程度に粗さを残し叩く。続いて丼にシャリを装い、なめろうを乗せる。

 

 

「お待たせしました、なめろう丼です」

「ども!(キタキター!!)」

粒の立った光り輝くシャリの上に豪快に乗ったなめろう、鮮度を生かすためか、鯵の身が粗く残っている。

 

 

(辛抱たまらん!いただきます!!)

なめろうを箸でつまみ一口、鯵の旨味を味噌と薬味がガツンと口の中で一体となり、粗い鯵が適度な歯ごたえを残す。

 

 

(うまっ!そんで次はすし飯と一緒に!!)

今度はシャリの上になめろうを乗せ口に運ぶ、先ほどのガツンとくる味わいとシャリが混ざり合い、飽きの来ない味わい。

 

(これはいい!!簡単に平らげてしまいそうだ……が忘れてわいけないことが!!)

静は壁に書かれているメニューを眺める。

 

 

(まだ酒を頼んでいない、このままでは孤独のグルメになってしまう)

このSSはあくまでも“しずか酒”である。

 

 

(気分的にも今は日本酒に行きたいところ、幸いこの店はそれなりに酒を置いているから好きなの頼もう。えっと……田酒、亀吉、八海山、千寿、盛益……綾花?)

静の脳裏には先ほど祝った新婦の姿。

 

(まさか、同じ名前の日本酒があるなんてな、これも何かの縁だ綾花を頼むか)

静はクスリと笑い綾花を注文する。

 

 

 

 

 

 

「綾花お待たせしました」

店員が綾花を持ってきて注いでいく。

 

 

(これが綾花か、どんな味だろうな)

溢れないように、少し口をつけ口元に持っていきグイッと一口、日本酒特有の吟醸香、旨味、酸味、辛味が口の中にひろがっていく。

 

(米の味を最大限に生かした味わいだな、香りや酸味と旨味はバランスよく適度に抑えられている、なめろうとの相性も抜群だ)

 

 

「綾花となめろう、いいな……」

そうつぶやき、なめろう丼と綾花を楽しんでいた時だった。

 

 

「いらっしゃい!」

「ども~!」

聞き覚えのある声が店内に響く。

 

 

「あれ?静ちゃん何その恰好?どうしてここに?」

声の主は雪ノ下陽乃、静の元教え子である。

 

 

(静に飲みたい時にこれか……)

静は頭に手を当て少しため息をつく。

 

 

「友人の結婚式の帰りだ、それよりお前は学生の分際で鮨屋とはいい身分だな」

「いい身分だからね」

静の嫌味にケラケラ笑いながら彼女の隣に腰をかける。

 

 

「あっ!静ちゃんいいもの食べてる!すいませ~ん、私にも同じの下さい」

 

「かしこまりました。おおい!これよろしく!!」

板前は鯵の骨の乗った皿を裏に回す。

 

 

 

―そして―

 

「おっ来た来た!」

なめろう丼に綾花が運ばれてくる。

 

「すいません失礼します」

それとは別に、何か一皿運ばれてくる、静は何だこれと覗き込む。

 

「鯵骨の素揚げ?頼んでませんよ」

「ああ、うちでは1尾頼んだ方にはサービスでお出ししてるんですよ、ちょうどお二人で1尾分だったのでお出ししました」

「ああ、そうなんですか、ではありがたく」

ぺこりとお辞儀しそれを受け取る。

 

 

(鯵の骨せんべいか、軽く岩塩がかかってるな)

静は骨せんべいに、添えられた酢橘を絞り口に運ぶ。

サクッとした食感になめろうとはまた違う、鯵の強烈な旨味が静の舌にガツンと響き、岩塩と酢橘といったシンプルな味つけが鯵をさらに引き立てる。

 

 

「これは、旨いな!!」

「私と一緒で得したね」

「今はそういう事にしておこう」

私に感謝したまえな態度の陽乃に苦笑いしながら静が答える。

 

 

「それより静ちゃん」

「ん?」

「乾杯してないよ」

グラスを軽く持ち上げ、笑みを向ける。

 

「それもそうだな」

静もグラスを持ち上げる。

 

「何に乾杯する?」

 

「そうだな……」

静は少し考えるそぶりをし

 

 

「綾花に乾杯だな」

笑顔をみせそう答える。

 

「お酒に乾杯って、変なの。」

まあいいけどと笑って返す。

 

 

 

「「綾花に乾杯!!」」

 

 

たまには誰かと飲む酒も悪くない、そう思う静であった。




次回の更新は未定ですが、なるべく早く更新したいと思います。
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