しずか酒   作:nowson

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ご無沙汰です。

今回の話はじゃがバター塩辛。

その名の通りじゃがバターに塩辛を乗せた物。
北海道の郷土料理のようなもので、簡単、安い、旨い三拍子揃った一品料理。

私、これがかなり好きで、つまみ作るの面倒な時は結構な頻度で作ります。





じゃがバター塩辛

 

 

「いつも通りの寄り道♪」

何やら歌を口ずさみながら、車を運転する一人の女性。

 

「家に帰るその前に……今日は何を食うか」

総武高校教師、平塚静の姿があった。

 

 

「ここの所、店屋物続きだから自炊としゃれ込むのも有りかもしれんが、中途半端な自炊は返って金がかかる……」

ここ最近の自分の食生活を振り返り、このままじゃいかんと思いつつ悩みに悩む静。

 

「まあ、これも花嫁修業と思えばいいか!私まだ若手だし!」

自分に言い聞かせるようなその言葉……自分を慰めつつ今日やることを決定する。

 

「そうと決まれば出発だな、スーパーに寄っていこう」

交差点でいつもと違う方向にウインカーを点滅させ、静は車を走らせた。

 

 

 

―某スーパー―

 

駐車場に車を止め、財布の残高を確認し車を降りキーをロック、そのまま店内へと向かう。

 

「とりあえず適当に見て回ろう、全てはそれからだ」

静はそのまま買い物カゴを手に取り店内をうろつくことにした。

 

 

 

(まず最初は肉だな!)

決めるが早いかすぐに食肉コーナーへ向かう。

 

(豚コマでいいな!どうせフライパンで炒めるだけだし)

思い立ったら即行動、お買い得品の豚コマ200gパックを目利きもせずカゴに放る。

 

 

(次はモヤシだな)

静の作る料理の中でも最もポピュラーな肉モヤシ炒め。

大量のモヤシ炒めの上にガッツリと肉炒めを乗せ、焼肉のタレをドバドバかけた物。これを出来立てアツアツの内に、キンキンに冷やしたビールと一緒にモグモググビグビとやっつけるのが彼女のスタイル。

 

(モヤシはいつも安いからありがたいな)

これもまた、賞味期限などを一切確認せずカゴの中に放る。

 

 

(おっと!焼肉のタレも残りわずかだったな!)

醤油やソース、スパイスに○○の素や焼肉のタレ等が置かれているコーナーに向かう。

 

 

「あったあった」

いつもの焼肉のタレをカゴに入れ次の目的の場所へ。

 

(そう言えば、カンカンカンカン晩餐館♪焼肉焼いても家焼くな♪てCMあったなぁ……買ったのエ○ラだけど)

静はカゴの中にある黄金の瓶を見る、どうやら辛口がお気に入りらしい。

 

 

 

「どうしようかな……」

そんな事を考えている静の近くで何やら悩む声、振り向いた先にいるのは自分の教え子である川崎沙希、スパイスコーナーで何やら悩んでいるようだ。

 

 

「おお川崎、君も買い物かね?」

「?ああ先生、まあそんなとこ」

沙希は偶然居合わせた静に対して、特に気にしたそぶりもなく、そっけなく返す。

 

「何か悩んでるのかね?」

「別に、先生には関係ないよ」

「関係ないかどうかは聞いてみないとわからないな、試しに言ってみたまえ」

彼女はイチ教師、なんだかんだで見過ごせないのだ。

 

「大したことじゃないんだけど……花椒どうしようかなと思って」

「ほ、花椒?」

それ何語?あまり聞くことのない単語に固まる静。

 

「……はぁ、中国の山椒の事、今日の家のメニューは麻婆豆腐なんだけど、ちょうど切らしてて買いに来たの、でもここに置いてないから普通の山椒でいいかなって悩んでて」

やっぱりわかってないじゃんと言わんばかりにため息をつき、静に説明する沙希。

 

「ま、麻婆豆腐って○美屋じゃないのか?」

「なんで○美屋使わなきゃならないのさ……業務用の豆板醤と甜麺醤に中華スープ買って作った方が全然安いじゃん」

「ま、まあそうだな(言ってる単語が理解できない)」

どちらが先生か分からない状態にタジタジの静。

 

(もしかして川崎は私より料理が上手いのか!?私は雪ノ下だけじゃなく、彼女にも負けてるのか?)

 

「時に川崎、君は料理が得意なのかね?」

やらなきゃいいものを、念のため事実確認をする静。

 

「別に、普通だと思うけど」

静の買い物かごの中をチラリと見る。

 

「……でも、先生よりは上手いと思う」

沙希はそう言いながら普通の山椒を手に取りかごに入れ、それじゃまたと手を軽く振り去って行った。

 

 

「……グスン」

心の中に往年の名曲、越冬つばめのBGMが流れる。

 

そのBGMを流しながらその場を後にする静だった。

 

 

 

―数分後―

 

(小娘如きにコケにされたままではおれん!ちゃんと自炊せねば)メラメラ

心の中に、某GガンダムのBGMが流れ闘志を燃やす静。

 

(私の持つレパートリーの中で作れるもの……それはカレー!!)

故人曰く思い立ったら吉日、静はカゴの中にカレールー、タマネギ、ニンジン、ジャガイモを追加していき、レジへと持っていく。

 

 

「ありがとうございました、またお越しくださいませ」

 

静はレジでさっさと会計を済まし車に乗り込み自宅へと向かった。

 

 

 

―自宅―

 

帰宅し、いつものスウェットに着替えキッチンに立ち調理開始、鍋に水を張り火をかけ、沸騰するまでの間に野菜を切り分ける。

 

「ピーラー使うの久しぶりだな」

明らかに使い込まれていない100均のピーラーを取出し、手に持つ。

 

「先ずは、ジャガイモからだな」

ぎこちない手つきで慎重に皮を剥く。

 

 

「次は貴様だ人参野郎!!人間みてぇなその名前、まったくふざけた野郎だぜ」むきむき

 

※彼女はまだシラフです。

 

 

「カレーはゴロゴロ野菜が良い、決して面倒だからというわけではない」

そう言葉にするとさきほど皮を剥いた野菜を豪快に乱切り……というより乱雑に人参とジャガイモを切る。

 

「問題はこいつだ、タマネギ……」

お世辞にも切れ味の良いとは言えない包丁、それで切ることにより細胞を押しつぶすように切る為、涙が出るような刺激がでてしまう。

 

「くそぅ!タマネギが目に沁みやがるぜ!」ウルウル

 

「よし終わった……後は肉をパックから出してと」

静はそういうと鍋の方に目をやる。

 

「ばっちり沸騰してるな!うりゃぁぁ!!」

切った食材をそのまま鍋にぶち込む静ちゃん……。

 

 

「火が通れば問題ない!!」

フライパンで炒めるという工程が面倒だったのか豪快に具材をぶち込んだ鍋をかき混ぜる。

 

 

―グツグツ煮込み数十分後―

 

「後はカレールーをぶち込んで完成だな」

ルーを別鍋にとりわけたスープに溶かし、少しずつ鍋に入れていく……なんて事をするわけもなく、ルーをバキバキ割ってドサーッと入れる。

 

 

―そして―

「うん旨い!私の料理も捨てたもんじゃないな!!」

味見をしすっかりご満悦。

 

「よし!早速食うぞ!!」

カレー皿を取出しジャーの前へと向かう……が。

 

「ご飯炊くの忘れてた……」

一人暮らしで店屋物ばかりに頼った生活をしていた静にとって、ご飯を炊くという習慣などあるはずもない。

しょんぼりと肩を落としながら、米を研ぎジャーにセットしスイッチオン!そんで深いため息を吐く。

 

 

「待ってる間暇だから何か食うか」

冷蔵庫を開け何かあるか確認する。

 

冷蔵庫の半分はビールとジョッキ、残りにバターやマーガリン、塩辛やチャンジャ、チューブの薬味があるくらい。

 

「いつもならある冷凍枝豆も昨日アニメ見ながら食べてしまったし、どうする?」

冷蔵庫だけではなくキッチン全体に何かないか確認し……

 

「じゃがいもか……バターもあるし、じゃがバターにするか!」

腹が減っては何とやら、空腹状態の静は我慢できず、ジャガイモを手に取り水で洗いラップに包んでレンジでチン。

 

「ふむ、バッチリだ!」

出来上がったふかし芋につまようじを刺し火の通りを確認する。

 

「あちち!」

ラップを熱々言いながら剥がし、包丁で四等分。

 

冷蔵庫を開け、切れてるバターを手に取り、それをジャガイモの上にかけてじゃがバター完成。

 

 

「そういえば北海道ではじゃがバターに塩辛乗せるんだっけ?」

何気なく先ほど冷蔵庫にあった塩辛を手に取る。

 

「げっ!賞味期限一昨日までではないか!今食わなくては不味い」

賞味期限が少々切れたくらいなら構わない、静は封を切りじゃがバターにドバっとかける。

 

「見た目はグロいな……心して食わねば!!」

 

箸で芋を軽く崩し、バターと塩辛が絡んだ部分を持ち上げる。

 

 

「ええい!女は度胸なんでも試してみるもんだ!!」パクッ

気合いと共にじゃがバター塩辛を口に運ぶ。

 

塩辛の濃厚で塩味の強い味わいとジャガイモのほっくりとした優しい味わい、そしてバターのコクが口の中で絶妙に調和し、それぞれの食材がお互いの持ち味を存分に高め合う。

 

 

「旨過ぎじゃないか!!だがコレはイカンぞ!!」

とすぐに冷蔵庫を開けビールとジョッキを準備する。

 

「酒を飲まずにはいられないじゃないか!!」トクトクトク グビグビグビ

舌に余韻が残るうちにビールを流し込む。

ただ塩辛を食べるのと違い、ほっくりとした芋の味わいとバターのコクというプラスアルファがビールにも対応したつまみへと進化させる。

 

「この、ほんのり熱が通った塩辛の歯ごたえも良いアクセントになってるな」

噛めば噛むほど味が出て、芋とバターが口の中でさらに絡み合う。

 

「じゃがいも、少量のバター、塩辛という安価な食材でこの旨さ」

じゃがバター塩辛をもぐもぐさせ、ビールで洗い流し、再びその旨味を飽きる事無く味わう。

 

「簡単に作れて、安く、旨いの三拍子……これはもう食のノーベル平和賞だな」

と意味不明な供述をしております。

 

 

―そして―

 

「いやー旨かった!!」

皿の残りまで舐めるような程綺麗に完食。

 

 

「こんな発見があるなら自炊も悪くないな!」ピィィィ

 

「おっご飯炊けたか」

カレー皿を再び手に取り、ご飯を装いルーをかける。

 

「うん、旨い旨い」モグモグ

シンプルな具材のシンプルなカレー、だがこれが旨い。

 

 

「自分で作ったつまみを味わい自分で作った飯を食う、こんな日も悪くはない」

 

「料理のレパートリーも一つ増えたし、今日は一つ上の女になった気分だな」モグモグ

 

今日も今日とて、ひとり身で一人自宅で独り言(5・7・5)を呟く静。

 

 

ご満悦な夜は静かに過ぎていく。




やっぱり、スポコンよりこっちのが書きやすいですな……。


今後も息抜き兼ねた不定期更新になりますがよろしくお願いします。
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