「電話をしてくるなんて、どうしました?」
電話をする声が聞こえる。歳は若く、青年と受け取れる。
「ん、ああ。大丈夫ですよ。聖堂教会への偽装工作はもう済みましたし。誰にも怪しまれずに動くことができます。」
明かりがない場所で声が響く。そこは地下室のような、密閉された空間だろうか。電気かランタンかは知らないが部屋が暗いのは部屋の主の趣味なのだろうか。
「ちゃんと行けますって。そうしろと言ったのはアンタでしょうが。」
この会話だけでは『アンタ』といわれた者のことは分からない。しかし、電話の主の性格なのか、『アンタ』という代名詞で相手を呼ぶということは親しい人物だと推測できる。具体的にいうと協力者以上親友以下、といったところだろう。
「え?そうじゃないって、何が違うんですか?」
どうやら話の論点がずれていたらしい。電話の主は聞き返す。
「ああ、そっちですか。そっちも大丈夫です。ちゃんと設置はできましたし、後は日数経過を待つだけです。それに、設置できていなかったら俺はここにいないですよ。」
何の話をしているかは分からない。話を理解できるならば、その者は一般人の域からは外れているだろう。
「だから大丈夫ですって。まったく、・・・さんは心配屋さんですね。」
今、電話の相手の名前を言った気がする。だが、なぜかわからないが、そのあいてのなまえはきこえなかった。
「え、出向の日付ですか?そうですね、来週当たりにはそちらに行けると思います。」
相手からの質問が変わったみたいだ。日時なんて口頭でなくてもこの時代、メールやら伝える方法はいくらでもあるというのに。いや、それならこの電話をかけてくることも、メールやらで代用できるのだが。わざわざ、『声』で伝えるということに必要性を相手は感じているのだろうか。どうやら本当に、相手は電話の主が言うとおり心配性のようだ。
「ええ、待っててください。って、だからその名で呼ばないでください。慣れてないじゃないんですよ。本番ついうっかり、なんてやめてください。俺のことは・・・・・・・か、『エミヤシロウ』で呼んでくださいよ。」
電話の主が自らの名を名乗った気がする。だが、またしてもききとれないぶぶんがあった。その単語に魔術的なプロテクトでもかけてるんだろうか。だがひとまずは分かった。
この電話の主の名前は『エミヤシロウ』だ。
「それじゃ切りますよ。悪いんですが、こっちも今忙しいんでね。出向に関わる書類、荷造り、挨拶とかやるべきことが溜まってるんです。詳しい打ち合わせは、そっちに着いてからでいいですよね。」
『エミヤシロウ』が電話を切ろうとする。しかし、
「え?着いてからじゃ遅い?別に、早いことが悪いわけじゃないですが、開催は1年も先なんですよ?」
相手はせっかちなのか、打ち合わせの日時の提案を呑まず、それよりも早い時間を要求しているようだ。
「分かりました。なら、明日。明日はどうですか。これが俺の最も早い空き時間です。」
相手の意見を尊重し、新たな時間を提示する。
「待ち合わせはいつもの喫茶店ですね。分かりました。じゃ、やることもあるんで切りますね。」
そういうと『エミヤシロウ』は電話を切った。最後に会う約束もしたし、これ以上電話をしている意味が無くなったのだろう。
「さて、『幻想郷』か・・・、いったいどんな奴らがいるんだろうな・・・。」
電話を切ったせいか、言葉遣いが少しゆるくなった。
口の両脇が吊り上った。分かりやすい悪役の笑いのように。
「まったく、オレを退屈させないでくれよ?悪いが、一応気分屋なもんなんでね。」
誰に対しての問いかけではない。この問いは『人』ではなく、彼がこれから訪れる『土地』へ向けての問いなのだから。何故このような投げかけをしたのかは分からない。だが、この者は常人とは少し違った感性を持っているらしい。普通は希望的な「退屈しなければいいな」などという言葉を発するはずだが、この者は「退屈させないでくれ」という土地を一種の人格として認識しているのではないかと誤認する言葉を発した。
「それじゃ、一応監督役になる予定だし。宣言くらいは出しておくか。」
宣言、それはここから1年先に行われる戦いに向けてのものだった。この宣言は戦いの始まりを意味するが、戦いに参加できるものはいまだ分からない。だから、この宣言は自分に向けてのものだった。
「マスター及び、サーヴァント諸君。君たちが誰かはまだオレは知らないし、まだ君たちはこの声を聴くことはできないが、ここに宣言する。」
「さあ、聖杯戦争を始めよう。」
注意:これは投稿ページ作成の時の気分で書いたものです。今後のプロット確定などで内容が変化することがありますのでご容赦ください。
いや、執筆とは難しいですね。勉強のためにもFate/stay nightやってこようかな・・・