ゼロから始まる転生者達   作:wisterina

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プロローグ
第一話 「転生と決意その一」


 病院の夜は、死者も眠るほど静かな夜か、或いはこれから死者となる者が最期の生命の叫びをあげる夜かだ。今夜は、後者だった。

「先生、患者の容態が急に」

 -苦しい、苦しいよう-

 それまで一定の数値を保っていた心電図が、刻々とその数値が削り減り、繋がっている少年の命の灯を無情にも表していた。

 患者の急変に駆けつけた医師と看護士が、患者に酸素マスクの装着と移動の準備をする。

「くそ、今まで安定していたのに、なぜ急に! まさか、副作用で?! 」

 -息 が、でき  ない-

 マスクの装着にはそれほどの時間がかからなかったが、患者の移動の準備に手間取った。患者の所有物である本やDVDがベッドの上に散乱していて、それらをどかすのに時間を要した。

「早く手術室へ」

 耄碌し、視界がかすむようになった少年は、彼が手に持っていた『リリカルなのは』という題の本が自分の手から滑り落ちることを薄れゆく意識の中で感じ取る。

 -目が 霞ん  で  き  た-

 -死  ぬ  の  か  な  ぼ  く  ? -

 -も   う   す  こ  し   -

 

 

 

 

 

 

 - 生きたかった -

 

 

 

 眼を開けてみるとそこは、なにもなく真っ暗な場所だった。

「ここは? 僕どうなったの? 」

 次の瞬間、光が差し込んできた。

「汝は、何を望むか。今を新たに生きるか、ここで無と化すか、別の次元へ行くか」と光は、僕に語りかけた。

 どういう……ことだろう? 少し錯乱した。とりあえず僕がどうなったか光に聞いてみた。

「あの僕どうなったんですか?」

「汝は死んだのだ。死の因は汝の病の悪化だ」

 実感が無かった。そうださっきまで息もできないほど苦しかったのに、今はそれが無い。夢なのか、いや夢にしては意識がはっきりしすぎてる。視界は自由に左右上下に動く、手も自由に動く…………手が、ない。

 手があった所には五本指もその甲もないにも関わらず、僕の意思で開いたり閉じたりと動かせる感覚がある。不思議と言うにはあまりにも程遠く、恐怖を感じた。 

 まるで、本に書いてあった幽体離脱の現象のように……僕はここである結論に至った。僕は死んだのだ。魂だけになったんだ。

 そうしたことに気づくと走馬灯が駆け巡った。僕は、生まれつき病弱で、学校にも行けず、ずっと病院で本とテレビが友人みたいな生活を送っていた。ようやく新薬の投与で安定

 なのに、17歳になる前で、死んでしまうなんて。退院してやりたいことがあったのに。涙がこみ上げてきたが体が無いので涙がでなかった。

「汝に聞く、汝は今を新たに生きるか、ここで無と化すか、別の次元へ行くか」

 また光が僕に問いかけてきた。別の次元……?

「汝は、新たに生を受け、転生するか。ここで未練なく無と化すか。別の次元へいき、生を受け、転生するか。同じ世界へ転生する時は前世の記憶はなくなるが、別次元へいくとある程度の記憶しか残らぬが」

「あの、別次元ってもしかしてアニメの世界へいけますか? 」

「うむ」

 光は短い言葉で返した。これは、肯定と捉えていいんだよね。転生か、本やアニメしかそういう物に触れてないしなぁ。そうだ、この機会だ、僕が求める世界を生きてみよう。

 転生先のこと考えると、それまでの後悔や無念さが嘘のように消え去り、アニメや本の世界を思い出しながら思考する。

 あんまり争いが無いほうがいいなぁ。でも大河ドラマや『坂の上の雲』みたいな古い時代は戦争に巻き込まれるから嫌だな。

 あ、でも病院生活ばっかりだったから体動かしたいし『Dog Days』とか『キャプテン翼』とかのスポーツものとか。

 ああでも、あんまり暗い話の世界は嫌だな。『レ・ミゼラブル』とか病気とは違う意味で胸が苦しかったし。

「では、改めて聞く。汝は何を望むか。」

 う~んと、じゃあ。ふと、僕が最期に読んでいた本の題名がふと頭に浮かんだ。

「リリカルなのはの世界へ行きたいです。」

 リリなのの世界なら原作介入しなければ危ないことはないし、十分普通に暮らせる。そう、健康で友達と一緒に遊べる理想の生活を。

「うむ、よかろう汝が望むその世界へ転生させよう」

「あ、魔力とかチート能力とかなしでお願いします。普通の生活を十分に送れるだけ結構ですので」

 チート能力とか魔力とか原作に介入しないなら要らないし、過ぎたる力は身を滅ぼすことになるからね。

「それは不可能だ」

「へェ?」

「生まれてくる者の能力は天命である。余が操作できるものではない」

 それって、次に生まれてくるときの能力は運しだいってこと? その時もまた病気持ちの可能性も……

「やだよ! もう病気は嫌だ! お願い、病気持ちだけは!! 」

「汝の身は汝が守るのだ。では新たな生を」

「ちょ、ちょっとま…………」

 今生最期の嘆願を言い終わる前に、全身の力が抜けた。そして先ほどまで話していた光が消え去り、再び暗黒の世となった。

 

 

 

 …………ん?

 目覚めてみるとそこは和室だった。五畳半の広さでちゃぶ台があった。僕の体の上にはタオルケットが掛けられていた。ここは、僕の家……なのかな? 

 目覚めたばかりで、地に足がつかず自分という存在が本当にあるのかそれ自体不安だった。とにかく、鏡を見つけるために出入り口と思われる襖を開けた。まっすぐの廊下と左手には階段があり、その階段を降りていった。

 トイレに行けば鏡があるはずなのに、と階段を下りるときに思った。だが自分の体は、トイレへ行くよりも下へ降りていくほうが良いと動いたのだった。

 階段を下りるとそこは居間だった。横長ソファーにダイニングキッチン、テーブルとごくごく普通の家庭にある家具がきれいに配置されていた。

 ソファーの横のテーブルに縦長の調度品があったので取ってみるとそれは鏡であった。自分も顔を映してみると、やや長いツーブロックに少々大きい鼻、

 眼は黒目と子供にしては整ったほうの顔であった。僕は前世の顔を探ってみた…たぶん、たぶんだがこの顔と同じだと思う。

 僕は転生をしたということは知っている、しかし前世の記憶なんかほとんどと言っても過言ではないほど記憶にない。付け加えて言うと、ここはどんな世界ということも知らない。当然出てくるキャラも。

 ふと鏡を見て似ると、きらりと光る髪の毛があった。その毛の房を見てみると、黒髪の中に違う毛があった。レモンイエローの毛であった。

 すると、後ろのドアが開くと女性が赤ん坊を抱えて入ってきた。赤ん坊は、まだ そして、女性の方は明るいレモンイエローの髪で

「はいはい、オムツが気持ち悪いのね。今取り替えるから。あら満今起きたの? 」

「あ、お母さん。おはよう」

 -お母さん-僕はそう言った。そうこの人は僕の母である。たしかに身体的に見ればさっき見た髪と同じレモンイエローの髪で親子と思える。それでも僕は、何の疑いも無くお母さんと言った。

 おそらく本能的に僕の母であると刷り込まれているんだ。まあ、小さい子がひとりで生活とか無理があるしね。そして『満』これが僕の名前だ。

「おはようって、もう夕方よ」「びえ~ん」「はいはい待っててね育、今オムツを取り替えますからね」

 育、髪の色が母さんと同じレモンイエロー、僕の弟であろう。母さんは、片手で器用に毛布をフローリングの上に敷き、育のオムツを替え始める。、

 父さんは、どこにいるんだろう? とにかく家族構成を探らないと、どこかに写真たてとかないかな。と、椅子に腰かけるあたりを見回す。テーブルの上を見てみると

 運良く近くに写真たてがあった。その写真には、母さんと母さんに抱かれた育。そして黒髪で30代ぐらいの無精ひげが生えた男性――僕のお父さんであろう。そして、僕が写っていた。どうやら僕の家族は、4人家族で両親は健在であるようだ。

 ようやく家族構成も自分の姿も分かり、気が落ち着き、写真たてから眼を離してみる。写真たての左横に、五角形の形をして中央に丸い突起物が付いているカードがあった。それに触れてみようとした。

「満、それに触ってみたいの?」

 唐突に、母さんの顔がにゅっと覗かせた。もうオムツの替えが終わったようで、毛布の上で育が親指をしゃぶりながらお母さんの方をじっと見ていた。僕はその奇妙なカードに、触れてみたい興味があったので、「うん」と返事した。

「じゃあ落とさないように気をつけてね。でも満に動かせるほどの魔力があるかしら? 」

 魔力? どういうことだろう? カードを手に取ってみると、何の変哲もなかったカードが突然、綺麗な赤色の線を浮かび上がり真ん中の突起物が光った。

〈Hallow.What do you name? 〉

 へぇ?え、え? カードが喋った?! え、え~と、何て言えばいいんだろう。

「名前を言うのよ」

 名前? しまった! 満って名前しかしかわからない、名字がまだわからないよ。どうすればいいんだ? 母さんに僕の名字はなんだっけ、って聞くのも変だし。

冨士ヶ崎満(ふじがさきみつる)です。って言うのよ。」

 母さんが、助け舟を出してくれた。僕は、舞台の上で挨拶するかのように、初めて自分の名前をカードに向かって声を出した。 

冨士ヶ崎満(ふじがさきみつる)です」

〈All right my master〉

「まあ、満は私の魔力を受け継いでいるのね」

 魔力?どういう意味なのだろう。そもそもこのカードはいったいなんだろうか。

「満、お母さんはね魔導師っていう、魔法使いなの。でこれはデバイスといって魔法の発動をサポートする機械でもあり相棒でもあるの。お母さんはこれを作る技師だったの。このデバイスは私が最後に作ったものだけど、満に渡すわ。」

 母さんはそのデバイスを僕の右手に渡すと、手をギュッと握った。

「この子の名前はエイド。みんなを助けるという意味よ。満とエイドの二人でみんなを助けて、心を満たすように魔法を使ってね」

 魔法で……みんなを助ける。

「そうだ、満の魔力を測らないと、エイド、満の魔力はどのくらいなの?」

〈OK.Measure〉

 エイドから乳白色の光線が照らされた。魔力と言う言葉とは裏腹に、機械的なスキャニングを行うのは奇妙だった。しかし、僕の心には見たことも実感もない魔力と言う存在が自分の中にあることにドキドキしていた。僕の魔力っていったいいくらなのかなぁ。

〈Finish.My master is magical rank C〉

 淡々とした口調でエイドはそう告げた。Cって大きいのかな少ないのかなあ?

「Cランクかぁ。お母さんも19歳ぐらいでそのくらいだったからねぇ。まあ、AAAとかSだったりしたら驚くけれど。でもCはいいほうよ武装局員の隊員ぐらいの力があるから」

「う、うん。」

 う~ん、まあまあ強いってことは、わかったけれど比較対象の武装局員ってなんだろう? あまりにも用語が増えてきて少し混乱してきた。

「あら、わかり難かった? まあ5歳児が全部理解するのは難しいからね。あと、魔法を使うときは人がいない時とかでこっそりやってね。面倒なことになるから、お母さんとのやくそくよ。」

 はっと、お母さんが僕に何か約束したみたいだ。えーとたしか人前で魔法は使わないってことだよね。

「うん。やくそくする」

 母さんが右小指を差し出して「この世界で約束するときは指切するのよ」といったので、僕も同じく小指を出して指切りをした。

 母さんとのやくそくを終えた時、ハッと気づく。待てよ、魔法をこっそり使いなさいと言うことは、その反対の事をするやつもいるんじゃないのか?!

 僕は転生者だ。もしかしたら、魔法で悪さをする人が出てきて巻き込まれるかもしれない……

「ねぇお母さん。」

「ん? なに満?」

 マットの上で転がって遊んでいた育を抱いていた母さんを僕は呼びとめた。

「僕に魔法を教えて」

 母さんは、顎を左手に添えながら少し思案した。

「そうね。やくそくしたもの、ちゃんと魔法を教えなきゃね。いいわよ。けど、お母さんそんなに魔法はうまくなけどいいかしら」

「うん、大丈夫」

 明日か、明後日か、それとも数年後か分からない。いつ来るかわからない脅威に負けないように強くなろう。今度の世界では、若死にしないように。

 

 第一話 「転生と決意その一」終わり

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