ゼロから始まる転生者達   作:wisterina

11 / 13
第十一話「思いがけない出会い」

つぐみちside

〈―――〉

 もはや感じ慣れたというべきかジュエルシード気配を察し、目が覚めた。寝間着として着ていた浴衣のままでは、動きにくいので普段着に着替えた。ふと、隣で小さな寝息を立てて寝ているみつるを見ると、自分の頭の中でこれで良かったのかというジレンマが湧きでた。

 みつるには、手伝うな言っってしまったがこれでよかったのだろうか……確かになのはの言う通り一人でも多く仲間がいればもっと早く、負担をかけずにジュエルシードを封印出来るはずだ。みつるも本心では一緒に手伝いたいと思っていたんじゃないのか。それを言う前に、俺がそれへの道を閉ざしてしまったのでは……

 ……いや、いくら魔力を持っていたとしても俺となのはの二人でも回収に手間取るほどの代物だ。みつるが手伝うとして、もし何らかで大怪我でもしたらそれはみつるが手伝うのを止めなかった俺の責任だ。その責任を負う覚悟もないのは無責任だだから俺の判断は正しいんだ、と頭の中で繰り返し言い聞かせて頭を振った。

 さて、着替えを済ませたが、まだなのはから返事が来ない。みんなが起きないように念話でなのはを呼んだ。

《なのは起きているか?》

《うん。もう着替えは済んでいるよ》

 隣の部屋と繋がる襖に手を掛けようとした寸で手を止めた。そうだ、この部屋を出るためには、隣の女子部屋を通っていかなければならないんだ。女性陣が寝ている隣の部屋を、男子である俺が入ってしまってもよいのだろうかと戸惑いが生じた。

《大丈夫だよ。みんなぐっすりと眠っているから入ってきても大丈夫。》

 襖から、なのはが小さい声で呼びかけられて、その言葉を信じて襖を開けた。

 部屋の中では、アリサ、すずか、美由紀さんがぐっすりと寝て、桃子さんと忍さんはまだ不在だった。なのははというと、きちんと髪を結び服を着替えて終わりユーノを肩に乗せて、布団の上に立っていた。

 なのはが廊下へと通じる襖を開けると大丈夫だと手で合図するのを確認して、みんなを起こさないように廊下へと出た。音を立てずかつ早めに廊下を歩いている時、なのはが小さい声で俺に話しかけた。。

「ねぇつぐみち君……またあの子が来るのかなぁ」

 あの子……あの黒服の少女のことか。ジュエルシードを探していたしその可能性は大きい。

「実は、昼になのはに言い寄ってきた女の人がいたって聞いたよね。たぶんあの黒服の少女の関係者みたいなんだ……」

 なのはの肩に乗っていたユーノが口を開く。その表情は、どこか申し訳なさそうな顔をしていた。

「それで、仲間が増えたから止めるのか」

「うん。だから二人はもうここで」

 ユーノが次の言葉を言う前になのはが「待って」と口をはさんだ。

「ユーノ君。私ね、心のどこかで折れそうになって、みつる君にも頼ろうとしたの。だけど、つぐみち君が怒ってくれたおかげで、ジュエルシード集め、周りの人にご迷惑を掛けないようにやろうって決めたんだ」

 ユーノが「でも」と反論した。

「今までは、ユーノ君のお手伝いでやっていたけど、今はわたしの意思でやるんだってだから最後までやり遂げる」

「そうか、なら俺も終わりまでなのはの面倒みなきゃならないとな」

「もう。同い年なんだから年下のように言わないで」

 なのはが頬を膨らませて立腹しているが、頬を膨らます姿が逆にほほえましく感じてしまい少し和んでしまった。そこにあった警戒によって張りつめた空気がかすかに薄れた感じがした。

 旅館の玄関を出て、俺達はバリアジャケットに着替えた。ジュエルシードを感じた林道に向かって、走っていくと水が流れるような音が聞こえるようになると闇夜の林の中に淡い青の光が放たれた。

 水の音……たしか旅館の案内図に川と橋があったな。があったな。急いでその光が見えた場所まで行くと、この前の黒服の少女がジュエルシードを手にしていた。そしてその横には、まるで犬耳がのような赤色の髪で18歳ぐらいの女性が川に掛っている橋の手すりに足を組んで座っていた。

「あら、あら、あら子供は良い子でって言わなかったけ、それもお友達を連れて」

「ジュエルシードをどうするつもりだ!それは危険なものなんだ!」

「さあ~ねぇ答える理由が見つからないねぇ」

 ユーノの質問に女性ははぐらかした。

「それにあたしは親切に言ったはずだよ。良い子でないとガブッっていくよって」

 その言葉が終わると、女性は赤毛の大きな犬――いや狼というのが正しい――に変身した。

「あいつ、あの子の使い魔だ」

 狼の使い魔は、俺達二人に飛び掛ってきたが、ユーノが俺達の前に出てバリアを張り、使い魔の攻撃を防ぐ。

「二人ともあの子をお願い!僕はこの人を」

 ユーノが言葉を切り、魔方陣が現われユーノと使い魔が消えた。あの魔法陣の紋様は、転移魔法。ユーノは、あの黒服の少女と連携させないように使い魔と共に転移したのだろう。

「強制転移魔法、良い使い魔を持っている」

「ユーノ君は使い魔じゃない。大切な友達だよ」

「……で、どうするの」

「話し合いで何とかできるってことない?」

「私はジュエルシードを集めなければならない。そしてあなた達も同じ目的なら、私達はそれをかけて戦う敵同士になる」

 その言葉に、引っ掛かりを覚えた。目的も知らないで一方的に決めるのはおかしい。なにも分からないまま攻撃されるなんて―― 

 一瞬、目の前の風景が変化した。夕暮れと路地裏とあまりにも時も場所も異なる風景。突然の事で混乱して立ちくらんだが、頭を押さえて声を出した。

「そんなこと勝手に決めるなよ……互いの理由がなにか知らないくせに勝手に決めるな!」

「そうだよ、何も――互いの名前も言ってないのに分からないまま戦うなんてそんなのは嫌だ。私は高町なのは。だからあなたの名前を」

 俺達の訴えが届いたのか、少女は唇を動かそうとしたが、すぐにギュッとつぐんだ。

「たとえ話してもきっと……何も変わらない!」

 黒服の少女が素早く俺達の後ろへと回りこみ襲い掛かってきてかわそうとする。だが、相手の動きが早く電撃の刃が体に触れそうになる。ウィンザーから直射砲撃『Tornado rage』を放つ。直線上に放たれた砲撃は、突発的に放った為黒服の少女にかすりもしなかったが、放たれた砲撃の威力と同時に魔力変換によって発生した風に押されて俺の体は林の中へ吹きとんだ。

 自分の魔法によって吹き飛ばされた俺の体は、草が衝撃を和らげてくれたため太ももにかすり傷ができた程度で済んだ。あの電撃の刃をかわすために、砲撃魔法を放ったが勢いが強すぎたな。あれに触れると意識が飛ぶから苦手なんだよなと前に受けた電撃の感触を思い出しながら、服についた土と汚れを払いなのはを探した。

 先ほどから魔力弾やバリアがぶつかり合う音は聞こえるが、林の中では、戦闘の様子がない。そして、空を見上げると桜色と金色の二つの光の球がぶつかり合っていた。あの桜色の魔力の色は間違いなくなのはだ。戦闘は傍から見れば一進一退の様子だ。だがなのはは魔導師としてまだ技量が低い、拮抗が崩れる前に早く応援に行かないと、なのはが戦う戦場へ飛ぼうとしたその時だった。

「はっはー!! かかったぜ。奇襲成功!」

 突然、背後からの大声と奇襲と言う言葉に反応して、後退するように変更した。そしてさっき俺がいた場所に、プレートメイルを装着して灰色のマントを身につけた人物が銀色に煌いた刃を振り下ろしていた。俺は、ウィンザーを槍の状態に変形させて、あのまま静かに俺に襲い掛かればやれたものをわざわざ大声を出して奇襲だと発したバカな奴に対して槍を構えた。

 相手は「あれ? おっかしいな~」と抜けた声を出して顔を上げる。その人物は、何度も顔を合わせ、今日ここにいないはずの樋口としみつだった。

「うぇー!! つぐなんで、お前がここにいんだよ!」

 としが、俺に気づくや否や大音量の驚嘆の声を上げたため、思わず耳を塞いでしまった。

「それはこっちの台詞だ!何でお前が……」

「わりぃな、俺にだって秘密があるんでぃ。フェイトと約束したんだ! 口が裂けても言えねぇよ」

 としが空振りに終わった剣を鞘に戻しながら言った。フェイト? 約束? 

「約束? 何の約束だ? フェイトっていうのは、あの黒服の女の子の事か?」

 俺の発言に、としは片手で口を覆い面喰った様子を見せた。まあそうだ、自分で秘密って言いながら、さっそくバラしているし。

「何で……何でつぐが俺とフェイトの約束を知っているんだ!? つかなんでフェイトの名前知ってんだよ! まさかお前……超能力か!? そうなんだなそれ使ってんだな!」

 ……あきれ返って思わず口を開いてしまった。ここまでバカだとは思わなかった。いや、待てよ。そうだとしになら話を聞いてくれるはずだ。ジュエルシードが危険なものだって説明すれば、あの黒服の少女――フェイトと敵対することはないはずだ。

「ジュエルシードは、ユーノが見つけた物で危険な物だ。俺は、それを回収する手伝いをしている。なあとし、フェイトに事情を説明してくれ」

〈Rasanz Schlag〉

 俺がそう言い終える前に、としの剣から群青色の光が放たれた。すぐさまバリアを発生させ無傷で済んだが、魔力が強く、その威力にバリアを張った手の痺れがまだ治まらない。

〈良いのですか? ご友人のようですが……〉

「友達だからこそよ。つぐ、逆に俺から言うぜ。ここは引いてくれねぇか。俺、いくらなんでもお前とはチャンバラできねぇよ。頼むよ。野菜まけてやるからよ」

〈Breeze radiat〉

 あいつが喋っている間に、俺の魔力弾は発射の準備ができていた。そしてそのまま黄緑色の魔力弾六発をとしに向けて放った。

「ちょ、待て!?うわあぁぁ!」

 悲鳴と共に爆煙が上がったが六発ともとしにあの様子だと命中しているだろう。

「あっぶねー。俺を殺す気か!」

 としの声が、爆煙が上がったところとは別のところからしたので見回すと、木の枝にとしが乗っていた。目立った損傷が見当たらない、どうやら寸でのところで飛び上がって回避したようだ。

「先に攻撃してきたのはお前の方だろうが」

「お前は、何時もそうだ。もうここまできたら俺もソウシャしないぜ」

〈ソウシャではなく、容赦ではないでしょうか。こちらの言葉でいえばそれが正しいかと〉

 としのデバイスが突っ込みを入れた後、としが枝を揺らして飛び降りてきたと同時に、一気に俺の前にへと接近してきた。一メートルほど手前のところで、としが剣を左右交互に切り掛かってきた。ウィンザーの刃の部分で何度も防いできたが、としの切り返しが早くしかもその一撃一撃が重く、何度か防ぎきれずに手の甲やバリアジャケットが切り裂かれ、切り裂かれた所から少量ではあるが血が流れ出る。

 このままでは押し負けると察して、としの剣を防いだと同時に後方へ距離を置いてウィンザーの武器を鎌にへと変更した。

〈Scythe mood.Change.〉

「へぇ~お前のデバイス形変えられるんだ」

〈なかなか面白い機能ですね〉

「これでお前を倒し、話を聞いてもらうぞ」

〈Tornado rage stand by〉

 ウィンザーの槍の先端に、先ほどフェイトに向けてはなった砲撃魔法を込め、としに狙いを定めた。今度は外さないためにも一気に勝負を決めるためだ。

「そうはいかねぇ!」

〈Sezieren Sperrfeuer〉

 としも同じく、剣に魔力を貯めている。恐らく俺と同じ直射砲撃魔法あるいは射撃魔法のどちらかだ。さすがに砲撃をしてくる相手にそのまま突撃するとは思いたくない。あいつが、相当の防御か回避できるほどの速さを持っていなければの話であればだ。

 刹那。俺の砲撃魔法が発射されると、としも剣を幾度も振って群青の光の刃を飛ばした。互いの魔法がぶつかり合い、黄緑と群青の魔力色が混ざり合い紫に近い色の爆煙が広がる。発生した爆煙の威力に押され互いに後ろへと引きずった。

「へへ、やるなつぐ。ならもう一度」

「としみつ……君?」

「え?」

 としが空を見上げた。空には、なのはが驚きを隠せない表情で動きを止めていた。

「なのは、止まるな!」

 なのはに警告を発したがもう遅く、フェイトの鎌のデバイスがなのはの首の皮すれすれのところでフェイトは攻撃を止めた。

〈Put out〉

レイジングハートが今まで獲得したジュエルシードのひとつを出した。

「主人思いの良い子なんだね」

 フェイトはレイジングハートが出したジュエルシードを手にし、地上へと降りた。この戦いは負けだ……

「……待って!」

 なのはが地上に降り立ち、フェイトを呼び止めた。

「できることならもう私たちの前に現れないで。今度はもう止められないかもしれない」

「前に会ったときに聞けなかったけど。名前、あなたの名前を教えて」

「フェイト。フェイト・テスタロッサ」

 そう言い残すと、フェイトは飛び去って行った。辺りが静まり返ると、としの姿が見えないことに気づき辺りを見回すと俺となのは、そしていつの間にか戻ってきていたユーノ以外誰もいなかった。

「……なのは」

「なんで……なんで、としみつ君があの子と……」

 たしかにとしがフェイトと組んでいる理由が、結局聞けずじまいだ。だが、俺達には、昨日までの友が敵対することになるという事実に呆然とするしかなかった。 

 

第十一話「思いがけない出会い」 完

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。