ゼロから始まる転生者達   作:wisterina

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第十二話「湯船での回想」

としみつside

 夜はもう十一時を回っていた。まだ母ちゃん達は起きていることだろう。ただ、正面から入るのは避けるべきでぇ。なにせ、二、三時間前に「宿題をするから邪魔すんなよ」と嘘を言ってこっそりと家を出たため、俺が夜中に家を出たことなど母ちゃん達は知らねぇからだ。

もし外に出たことがばれたら今まで何をしていたのか誤魔化さなければならねぇ。

 俺は、家の裏側に回って裏口を開け、物音を立てずに静かに家に入る。うちの家は古い木造住宅兼商店なので床に張られている板の軋む音がするのを防ぐためでぃ。しかし、自分の家ではあるがやっぱぼろいなぁと思ってしまう。

 裏口から忍び込んできてようやく二階に通じる階段が見えてきて忍び足を止める。ここからなら二階にある俺の部屋から下りてきたと思われても違和感がないだろう。そのまま俺の部屋に上がっても良かったのだが、来ているシャツが汗で張り付いて気持悪く感じたためそのまま風呂場へと向かった。

 風呂場の前の洗面台には、母ちゃんが用意してくれた着替えがあり、早く湯船につかりたい一心で一気に裸一貫になって風呂場に入る。湯船の湯はまだ温かく、先に体を洗って、湯船に浸かり汗を流した。しかし、今日流した汗は気持の良いものではなかった。今日戦った相手がなのはとつぐということに放心状態になり、今後どうすればいいのか頭の中が訳のわからない状態になっている。

「どうしてこんなことになっちまったんだろう」

 口を湯船の中にまで浸け、ぶくぶくと口から気泡を作りながらあの日、フェイトを助けた日の事を思い返す。

 

 そうあの日、俺が手にした魔法の力がどんな物かを試してみたくて、すずかの家でのお茶会をパスしたんだった。あの日は、初めて知った魔法の力を試してみたくて、海鳴公園の林の中でシュターから魔法を教わり、夢中になって魔法の訓練をし続けた。

 シュターを一振りすると放たれる群青色の魔法光に常にわくわくした。表現力に乏しいが、俺自身にこんな力があるということと、魔法の力に感激してた。そして気がつけば夕暮れになっていた。

「おっと、もう夕方じゃねぇか早く帰らねぇと」

〈では、ここまでにしましょう。本日の反省としては、剣の振り方はよろしいですが、魔力制御が荒すぎです。しかし、放出系統の魔法を放つことができるのは、上出来です〉

 帰ろうとしたその時に、フェイトと出会った。あの時のことは鮮明に覚えている。

 ふらふらと歩き、瞼が重くなっている姿は、明らかに――野菜不足か寝不足かの人の姿だった。そんな状態のそれも女の子を放っては、俺の信念がすたるために声をかけた。

「なあ、君。なんだかフラフラしているけど大丈夫か? 俺が君んちまで送っててやろうか?」

「…………触らないで」

 なにせ、初めて女の子から、親切を拒否されたショックが大きく、一言一句忘れようにも忘れられねぇ記憶になっていた。

 その直後だった。糸が切れたかのようにフェイトは、倒れてしまい、なし崩し的に俺がおぶって運ぶことになった。幸いにも、フェイトのデバイスのバルディッシュにフェイトの家へ案内してもらい、途中で出会ったアルフさんに事情を説明してフェイトの介抱を手伝ってもらった。

 にしても、アルフさんに手伝ってもらったのは助かった。なにせフェイトの住んでいるマンションは、隣の市にあった。隣の市は、海鳴公園から遠くはないが、アルフさんが担いでなければ到着するのが深夜になっていたかもしれねぇ。

 そして、フェイトが目覚めた後、フェイトが母ちゃんのために、こことは違う世界からジュエルシードを集めていると事情を知った上で、女の子が困っているのを放っておけなかったから、ジュエルシード集めを手伝うと約束した。

 あの時の自分の発言を思い出して、自分の頭に軽くゲンコツを二回ぶつけた。何やってたんだよあの時の俺。フェイトが戦った二人の魔導師の特徴を聞いておけば、なのはとつぐだと分かったんじゃねぇか。

 そして今日の夜だった。親の目を盗んで家を出て、目的地である海鳴温泉の林にてフェイトと合流していたが、まず第一声として挨拶のようにあることを言わなければならなかった。

「フェイト、ちゃんと飯は食っているか?」

 今から振り返っても、突拍子もない発言だと思う、だが、これには事情がある。アルフさんによるとフェイトは満足にご飯を食べていないようだ。だからその確認のために言った。

 しかし、当のフェイトは首を横に振っていた。

「いらない。そんな暇はない。それに私は」

 と、フェイトが次の言葉を発する前に。

「フェイト!」

「ふぇ!?」

 フェイトの口におにぎりを突っ込んだ。行きしなにコンビニで買った塩だけで具も何もないものだが、それでも何も食わないよりましだ。おにぎりが喉に詰まったようで、胸をトントンと叩いていてすぐさまコンビニで買ったお茶を渡した。

 お茶を流し込み、詰まっていたご飯が取れたようで、フェイトはホッとした表情を見せていた。

「どんなに辛くても、人間寝ることと食うことは欠かすなって親から教えられたんだ。フェイトも俺も同じ(おんなじ)人間だ、腹も減るし寝むたくなるそれ抜きは体に毒だ。なにせ俺達は、成長期だからな。でかくもなれねぇし美人なお姉さんにもなれねぇぜ」

「でも……」

 フェイトが、再び言い返す前に、フェイトの顔の前に小さなタッパーを突き出し、蓋を開けた。

「お漬物に、家から失敬してきた自家製のたくわん食えよ。塩分も大事だぜ」

「ありがとう、とし」

 フェイトが、たくわんを一切れつまんで、両手で食べる姿は、ハムスターが餌を食べる姿を彷彿させた。たぶん、フェイトのいた世界ではたくわんがないからと思うが、どうもそんな食べ方をするのは初めて見たため、今思い出してもかわいいというか微笑ましいしく感じた。

 ジュエルシードが見つかったという報告がアルフさんから届くと、フェイトからの提案で「また魔導師二人が来ると思うから、どちらか一方を引き付けるために草むらに隠れて奇襲する」という作戦に従い、草むらに潜んだ。

 草むらの陰でじっと息を殺すのは退屈と我慢の連続だった。待機し続け欠伸を音が漏れないように何度もしたが、魔法がぶつかり合う音がしてようやく目が冴えた。しかも、丁度俺が潜んでいる所の近くに人がいたからそいつが魔導師がと判断して気持ちが高ぶり思わず大声を出しちまった。

「はっはー!! かかったぜ。奇襲成功!」

 結局、俺の奇襲攻撃は空振りに鳴ったt子に気づき、そしてその相手がつぐだと言うことにも気付いてしまった。

 それに気づいた時、早くあいつを帰らせなきゃと考えた。あいつは、何度も口喧嘩するけど、友達だ。だから、わざと『Rasanz Schlag』を放って、このままだと戦いになるから引いてくれと警告したつもりなんだが。結局宣戦布告と受け止められちまって戦いになっちまった。

 だが、一番衝撃だったのは、なのはが向こうにいたことだ。

 だって、一番の幼馴染で初めての女の子の友人で恭也さんから信頼されていたのに、戦うことになるなんて。これじゃあまるで……裏切ったようじゃねぇか。休みが明けたらどうやってなのはとつぐに顔を合わせれるんだよ。つか、もう恭也さんとこで剣の練習もできねぇよ。

 自分の行いに、何度も腹が立ち、湯船に拳を叩きつける。だが、湯船は俺の拳に合わせてへこむもののすぐに元に戻り、お湯が飛び散る音が逆にむなしさを奏でる。それを繰り返しているうちに、風呂場の扉が叩かれた。

「としみつ、何時まで風呂に入ってんだい! 汗も泥もとっくに落ちたろ、あたしが入れないじゃないか。早く上がりな!」

「母ちゃん、もう出るからちょっと待っててくれ」

 母ちゃんからが風呂場の前から出るのを待ってから、急いで風呂を出て。風呂場で着替えるのも面倒で、着替えを持って二階の自分の部屋へと上がった。

 今後の事を考えるのがもう億劫となり、寝間着に着換えて布団を被り、目を閉じた。それでも、なのはとフェイトの二人の姿が瞼の裏から見えて眠りにつけなかった。

 

第十二話「湯船での回想」完

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