ゼロから始まる転生者達   作:wisterina

6 / 13
第六話「小さな不思議は、大きなことへ」

みつるside

 なのはちゃん達と友達になってから数日がたった。あの日の放課後、ちょっと変な選択を迫られたとしみつくんとその制裁?をしたつぐみちくんとも友達になった。たった数時間で友達が5人もできた。

 あの日から、僕もなのはちゃん達と混じり共に談笑したり、ゲームをしたり、時にはケンカもしたり――といっても、主になのはちゃんとアリサちゃんもしくは、としみつくんとつぐみちくんがしているけど。

 こんなことは、今までなかった。こんな幸せで良いのだろうか。だけど、僕が持っている魔法の力。もし、僕のせいで悪い奴らに狙われたりでもしたら、みんなが不幸になる。そうだ、この日常を壊させないためにも僕は強くなるんだ。

「将来か~」

 なのはちゃんがそう呟いた。今は昼休みでまた屋上に来ている。さすがに6人となると場所を取りすぎるため、小さく固まって膝の上にお弁当箱を乗せて食べている。

 さっき呟いたことって、前の授業のことかな。たしか社会の時間で将来の夢について先生が話していたんだっけ。将来なりたい職業を探しなさいと言われても、歴史や社会情勢については、興味はあるんだけど、将来のことなんて考えてなかったな。授業の最後に配られた将来の夢にも、適当に歴史家って書いちゃったし。

「みんなは将来のこと決まっているの?」

「うちはお父さんもお母さんも会社経営で、勉強してちゃんと跡を継がなきゃ、ぐらいだけど」

「私は、機械系が好きだから、工学系で専門職がいいなぁって思っているけど」

「俺は、ひくま屋の二代目だな」

「単純明快かつ、お前に最も適した職業をよく答えられました」

 ……どうもつぐみちくんは、としみつくんに対してよく皮肉めいたことをいうなぁ。としみつくんは、皮肉だと受け止めてないことが多いけど。

「そりゃそうだぜ。で、そういうつぐはどうなんだよ」

「俺は……人助けができる職に就きたいから警官か消防士あたりかな。母さんも看護士をやっているから自然とな。みつるは、どうなんだ。」

「ぼ、僕はまだ、よくわからないなぁ」

 将来のこととかまだ考えていなかったなあ。だけど他の4人は目標が決まっていてすごいなぁ。

「でもなのはは喫茶『翠屋』の、みつるは定食屋『冨士』の二代目じゃないの」

 ああそういえばお母さんが買ってくるケーキのお店の『翠屋』って名前だったけ。あれ、なのはちゃんのお店だったんだ。あそこのケーキとっても美味しくて、他の量販店のケーキはもう食べられなくなったよ。

 しかし、家の定食屋の跡継か。家の定食屋は、技量もさることながら、お父さんの取って来る山菜料理が自慢だ。けど、今までお父さんが僕に山菜の取り方とか、料理の仕方なんて教わらなかったから、お父さんは僕を後継にしたいのかわからないしな。僕もそこまで家の店に愛着があるわけでもないし。

「うん。それも将来の一つでもあるんだけど…やりたい事は何か他にあるような気がするんだけど、まだそれが何なのかはっきりしないんだ」

「ぼ、僕もなのはちゃんと、同じ気持ちだな。そ、そんな特に、秀でたことも、ないし……」

「わたしも、取り柄って言うものもないし」

 将来も取り柄もないコンビが結成され、揃ってため息をついた。

「このっ、バカチン!」

 アリサちゃんがなのはちゃんに、お弁当の中にあった白身魚にかける用の輪切りレモンを投げつけた。

「自分からそういうことを言うんじゃないの」

「そうだよ。二人にしかできないこときっとあるよ」

 すずかちゃんもフォローに入った。

「大体、なのはは理数系が、みつるは文系の特に社会がこのあたしより良いじゃないの」

 あーそういえばこの間のテストでアリサちゃん一つミスをして99点だったっけ。その時の僕の点数は満点だったけど。

「それで取り柄がないってどの口が言うの!」

「いてててて」

「痛い痛い」

 アリサちゃんが、僕の右ほほとなのはちゃんの左ほほを同時に引っ張る。ゆっくりと引っ張り上げていく頬が歯ぐきから引きはがすように伸びていく。じんわりと痛みが口を伝う。

「にゃ、にゃって、僕。理数系ときゅいじゃないし」

「わたしぃも、文系にぎゃてだし」

「「体育もにぎゃてだし」」

「あ、ハモッた」

 すずかちゃん、そんなことで驚かないで助けて。頬が瘤取り爺さんの瘤のようになっちゃうよ。

「まだ言うか~」

「とにかくアリサ、二人の頬を解放してやれよ」

「そうだよ。二人の口が伸びちまったら、八百屋の天敵のハムスターみたいになるじゃねぇか」

 としみつくん、そういう問題かい? あと、それはねずみの間違いだよね。ハムスターが町中でうろちょろするなんて、アニメでしか見たことないよ。……あれっ何のアニメだっけ?

 

つぐみちside

「今日のすずかドッジボールすごかったよね」

「あ、あれは、す、すごいってレ、レベルじゃ」 

「お、じゃあ俺達こっちだから4人とも塾がんばれよ」

「じゃ、じゃあね」

「また明日」

 辺りがだいぶ赤身に染まるほど日も落ちてきた放課後、俺、なのは、すずか、アリサは同じ塾に通っているためここでみつる・としと別れた。今日は、アリサの提案で近道を通ることになっているのだが。

「こっち、こっち。ここを通ると近道よ」

 アリサが示した先の近道は、日の明かりが遮られ、道ももはや獣道と言っても差し支えないほど木々で覆われ管理がされていないことが明らかだった。

 ……なんか出そうな道だな。いや、お化けとかじゃなくて不審者のほうだからな。べ、別にお化けとか幽霊とか怖くないしな。こっちには、魔法があるしこれがあればどんな奴だって。……自分で思うのもなんだが、俺って意地っ張りな性格なのだろうか。

「なにしてんのよつぐ。置いて行くわよ」

「ま、待ってくれよアリサ。」

 しばらく、俺達が林道の中間まで歩いてきたがやはり少し薄暗くなってきたな。

《た――て》

「何か聞こえなかったか?」

「何が?」

 すずかが首をかしげる。バカな、俺にしか聞こえないだと。まさか、本物の……背中がゾクリと小刻みに震えた。俺が思っている奴に魔法が効くか分からない。

「わたし聞こえたよ。声みたいな」

 どうやらなのはも聞こえてたみたいだ。どうやら俺が思っていた奴とは違う可能性が出てきた。少し安心して、強張っていた体が少し緩む。

「別に」

「聞こえなかったかな」

 アリサとすずかには、聞こえてなかったらしい。俺となのはは、あたりを探ってみたが誰もいる気配がなかった。

《―すけ―!》

 また聞こえた! 俺の横にいたなのはが、何かを察知したかのように駆け出した。

「なのは!」

「なのはちゃん」

「どこに行くんだなのは!」

 俺は、なのはの背中を追いかけた。恐らく、さっきの声が聞こえた方へ走ったのだろう。後の二人は、さっきの声がまたも聞こえてなかったのか、なのはが行く方向が分からないらしい。

「たぶん。こっちの方から!」

 林道を駆け抜けると、道の真ん中にフェレットが横たわっていた。だがそのフェレットは、毛が逆立ち、体は泥まみれでボロボロの状態だった。猫か大型動物にやられたような状態だった。

「生きているのか?」

 するとフェレットが、ヒクヒクと体を小さく動かした。どうやら生きていることはわかった。

「ど、どうしよう。とにかく動物病院へ運ばなきゃ」

「このあたりに動物病院なんてあったか?」

「どうしたのよ2人とも」

 遅れてきた二人も合流した。

「アリサちゃん、すずかちゃん。フェレットが倒れていて。すぐに動物病院に運ばないと」

「待って家に電話してみる」

 すずかが、自分の携帯電話を開き何処かへ電話をかけた。俺がボロボロのフェレットを両手で抱える。すると、なにか違和感を感んじた。こいつの身体の状態は、さっき見た通りだ、けど、なんだこの感じは? どこだ、たぶんついさっき感じたような……

 

 しばらくして、獣医さんに診てもらったら、怪我は大したことはなかったがかなり弱っているそうだ。しばらくは、あの獣医さんが診てもらうことになった。

 他の三人は、安心しきった様子であったが、俺があのフェレットに感じた違和感は、決して拭えなかった。塾の授業中も、そして家へ帰る時も。

 俺の家は、マンションの十階にあり、入る為には鍵とパスワードを入力しなければ正面玄関に入れない仕組みである。パスワードを打ち込み、玄関が開くとその先にあるエレベーターに乗り込み、またさっきの事を考えた。

 林道で聞いたあの声。そういえばあのフェレットを見つけた後、もうあの声は聞こえなくなっていたな。あの声、なのはも聞こえていたのだから幻聴ではないはずだ。では、俺となのはだけがどうして聞こえたのか? ……まさかあれは魔法の類では? ……いやそれだとなのはが魔導師ということになる。だが、なのはが魔導師だなんて聞いたこともない。そもそも親にも会ったが剣術がうまい普通の人だ。魔導師ではない。くそっ魔法の知識があんまりないからわからないな。なんなんだあのフェレットは……

 目まぐるしくあれこれ考えるうちに、エレベーターは目的の階に着いたことを機械音声で知らせた。

「ただいま」

 俺は、自宅のマンションの一室に帰宅する。中は明かりもなく、真っ暗で誰もいない様子だった。

「今日も母さんは夜勤か」

 俺の母さん、(ひじり)は病院で看護士をしていて家にいることは稀である。父さんは俺が生まれる前に別れたらしい。そして、母方の祖父であるあの訓練を施した爺さんは、去年の5月に他界した。

 あの厳しい訓練も無くなったのは、正直安堵した。だがその代わりに、家は常に誰もいなくて、夜は俺一人だけになったのだ。

 リビングのテレビを点け、帰りがけにコンビニで買ってきた弁当を電子レンジに入れスイッチを入れた。すると、ブルブルと音を発しながら携帯電話が小刻みに震えた。

「ん? メールか」

 ケータイを開けて、宛先人を見てみるとなのはだった。その内容は、家族からあのフェレットを飼ってもいいとの許しがでたようで、明日学校の帰りに迎えに行くそうだ。

 …………あのフェレットがなのはの家に、不安だ。もしかしたらあの声の主が、あの得体も知れないフェレットかもしれないのに…………ならば、なのはがあのフェレットを引き取りに行く前に俺が、正体を突き止めなければ。

 しかし、朝一番で行くとなると、かなり早起きしないといけないな。俺の家は、あのフェレットがいる動物病院まで結構距離がある。なのはの場合は、結構近いからそれも相まって飼うことが決まったのだろう。

 自分が身につけているデバイスをじっと見つめる。爺さんは常に隠すようにと言われたが、あのフェレットがなにか悪い事をするようなことがあれば、このデバイス――ウィンザーを使ってでもなのはを、みんなを守ってやらなければ――

 それは、あまりにも突然の事だった。自分のデバイスが暗闇で見えなくなってしまっていたのだ。辺りを見回すと、照明はおろか、テレビや冷蔵庫の光まで暗黒に飲み込まれていた。

「て、停電?」

 おいおい、なんで停電なんか、そんな電力使っていないはずなのに……そうだ弁当! 突然の暗闇に、まだ目が慣れず、何度か壁にぶつかりながらも、命の生命線である電子レンジを開ける。電子レンジも停電の影響でスイッチが入らなかったが、幸運なことに弁当はちょうど良い温かさで出来上がっていた。

 電子レンジの右隣にある冷蔵庫を開けてみると、中の電気もつかず冷気も発生していなかった。もはや冷蔵庫はただの白い箱と化してしまった。……まあそんなに食べ物が入ってなかったから大丈夫かな。だめになったら捨てるしかないが。

 さすがに、明かりがない場所で食べるのは、少々危険だと考え、月の光が差し込んでくるベランダへ、弁当と冷蔵庫にあったペットボトルのお茶を持って移動した。ベランダから外を見てみると、隣の部屋の住民もベランダから出ていた。よく見ると隣の部屋も明かりがもれてない様子だった。どうやらこのマンション全体で停電が起きたらしい。

「うわ~何軒か電気消えている」

 しかしなんで急に停電なんか。……ふと空を見上げたら、雲一つない空を綺麗な満月が存在感を現わしていた。

「いい月だなぁ」

 時期外れの月見をして弁当を食べた。とにかく、明日は早起きしよう。目ざまし時計は、電池式だから停電の影響はないだろうし。

 

 

第六話「小さな不思議は、大きなことへ」 完

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。