ゼロから始まる転生者達   作:wisterina

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第九話「もう一人の魔導師との戦闘」

つぐみちside

 手入れの行き届いた庭にある街道のような石畳の上を歩き続け、目的の屋敷の玄関前まで到着すると恭也さんがインターフォンを押す。しばらくすると、扉が開き月村家のメイド、ノエルさんが俺たちに挨拶して、屋敷を案内した。

 案内された部屋では、既にすずかとアリサそしてすずかのお姉さんである忍さんがお茶を戴いて、優雅にお茶を味わっていた。すずかが、俺達が到着した事に気づき、立ちあがった。

「みんな、いらっしゃい」

「すずかちゃんこんにちは」

 みつるが、前に出て強張った面持ちですずかにあいさつした。いつも会っているはずなのに、こういう上流階級の雰囲気に気圧されたのか深々とお辞儀をしている姿にどこかおかしく感じ、頬が緩んだ。

「きょ、今日はお、お、お招きありがとうございます」

「そんなに硬くならないでもいいよみつる君」

「すずか、今日はありがとな」

「つぐみち君もいらっしゃい。あれ? としみつ君は?」

「今日は来られないってメールが」

 なのはからそう告げられると、すずかは、「そうなんだ」と残念そうな顔をした。

 確かに珍しい。あいつはみんなが遊びに行くと言ったらお菓子のおまけのように必ずついてくる。あいつが来られない理由は、店の手伝いか他のクラスメイトととの約束が被ったぐらいしか思いつかないが、

 恭也さんは、忍さんと共に別室へ移動し、テラスには今日来ていないつぐを除く、いつものメンバーだけとなった。

 改めて、案内されて入ったテラスを見てみると、太陽の光がまぶしくない程度に差し込み活けられた花々を美しく輝かせ、その中央に白色の円形テーブルとイスが並べられている。そのテーブルの下には五・六匹の猫が寝転がっている。もはや花と猫の部屋と言っても納得できるような所だ。さすがお嬢様のお屋敷だと魔法持ち以外は一般庶民である自分が感慨深く感じるほどの部屋であった。

 テラスには、既に追加の椅子が並べられてみんな座っていたが、みつるだけは床に跪いて、ネコの手を握ったりお腹をさすったりと戯れていた。

「にしてもユーノの時といい、みつるは動物好きね」

「う、うん好きだよ。うちペットだめだからこういう時でしか動物触れないからね」

 なのはとみつるは同じ飲食店経営なのに、ペット禁止なのか……そういえば、今日ユーノを一緒に連れてきたはずだが、あいつはどこにいるんだろう。

「キゅー」

「だめだよアイ」

 アイと呼ばれた猫は、テーブルの下でユーノを首輪につけている鈴をチリンチリンと鳴らしながら追いかけまわしていた。すずかとなのはが二匹を捕まえようとしたが、両方とも素早く簡単に捕まえられなかった。

「お待たせしまし、たぁー!」

 タイミングが悪い事に、入ってきたメイドのファリンさんの足元でユーノ君とアイがクルクルと追いかけっこを展開した。ファリンさんは、二匹を踏むまいと避けていたが、お茶とお菓子を銀のトレイで運んで入ってきたためバランスがとりにくい状況だった。

 そしてついに足を滑らせ、ファリンさんがお茶もろとも倒れそうになったが、咄嗟に俺とすずかが、寸での支えたので大事には至らなかった。しかし、茶はひっくり返りお菓子も台無しとなってしまった。

「ふぇ~。すずかちゃん、みなさんごめんなさい」

「いいんだよファリン」

「また私がお茶菓子を持っていきますので、みなさんは、場所を移して待っててください」

 

 荷物を持って、ファリンさんが新たに庭に設置してくれたテーブルとイスは、即席でありながらも綺麗にセッティングされていることもありオープンテラスのような気品さがあふれていた。しかし、そんな雰囲気とは裏腹に、俺達はさっきのテラスでしたことと変わらないことをしていた。

「こら、みんなアイをいじめちゃだめ」

 さっきユーノを追いかけまわしていたアイが他の猫に手を頭にのせていて、すずかがそれを払っていた。傍から見るとほほえましい光景だが、アイの様子から見るとどうも嫌がっているように見えなくもない。

「にしてもホントねこ天国だね~すずかちゃんの家」

「うん。でも、里親が決まっている子がいるからお別れしないといけない子もいるけど…………でも。子猫達が大きくなっていくのは嬉しいよ」

 すずかの家の猫は、買った猫だけでなく、捨て猫も何匹かいる。大きくなれば管理も大変だから猫を引き取る人物だって現れるだろう。だがさっきの沈黙で、どこか淋しさがあることがあることが見て取れる。

「すずかちゃんて、ねこさん達のお母さんなんだね」

 ふいに、みつるが放った言葉にすずかは戸惑いを見せたが、すぐにまんざらでない表情を見せた。

「え?! そう……見えるかなぁ」

「僕にはそう見えるけど」

「あたしも、すずかはお母さんっぽく見えるわ」

 アリサの援護射撃もあり、完全に陥落した。

「もうみんなして……私がこの子達のお母さんか」

《―――》

 この感じ、ジュエルシードか! ジュエルシードを感じた方向を見ると、庭の奥の林が見えた。俺は、念話でなのはに席をはずす口実を頼むと伝えた。なのはは小さく頷いた。

「ユーノ君がどこか行っちゃって……ちょっと探してくる」

「一緒に探そうか?」

「だいじょうぶだ。俺が一緒に行くから」

 俺となのはが、席を立ちそのまま林に入っていく。

 林に入ると、ジュエルシードの気配がだんだんと強く感じてきた。

「二人ともちょっと待ってて」

 ユーノが術式を地面に展開すると、辺りの景色の色素が薄く変化した。ユーノ曰く、この結界は外の世界とは別の世界になっているからここで暴れても外の世界に影響はなく、魔力を持った人間でしか入れないとのことだ。便利だなと言いたい反面、そういうものは早く出してほしいと言いたかった。

「本当は、初めからこれを展開したかったのですが、まだ僕の魔力がこれを出すまで回復できてなくて。ごめんなさい」

「大丈夫だよユーノ君。今は、ジュエルシードを探すのが先だよ」

 二人と一匹で辺りを捜索すると、ニャーニャーと猫の鳴き声が聞こえた。声がした方向がある草かげをのぞいてみる。そこには、まるで黒ヒョウのような生物が向こう側にいる子猫を睨みつけていた。あの黒ヒョウ、もしかして、ジュエルシードで!

 ふと、足元になにか触れたのを感じ、それを拾ってみると、首輪だったものがちぎれたもので、それについていた鈴がチリンと小さく鳴った。よく見てみると『アイ』という文字が書かれていた。

「おいおい。もしかしてあれ、子猫のアイかよ。とにかく早く封印しないと」

「そうだね。このままだと、すずかちゃんが困っちゃうし」

 ふと疑問を感じた。なぜアイだけでなくあの猫までこの結界内に入れたのだろうか? 猫に魔力があるのかと仮説を立てていたその時だった。アイが子猫に飛びかかった。

 その時、金髪を黒のリボンで長いツインテールに結んだ少女が子猫の前に立ち、瞬時にバリアを張って子猫を守った。あまりに突然のことだったので、目を瞬いた。その時には、少女は黒一色に統一されたバリアジャケットと同じく黒の斧状のデバイスを持っていた。

 アイは標的を金髪の少女に変更し、背にコウモリを思わせるような翼を生やした。獲物を狙うハンターとなったアイは、背中の翼を使って少女に襲いかかる。その姿は、跳ぶではなく飛ぶという表現が正しいと思える速さだった。しかし、少女はそれよりも素早くかわした。

「ディバインバスター!」

 後方から桜色の光線が放たれ、アイに直撃した。俺はふと我に返った。アイの変貌よりも、突然現れた少女の戦闘に見入ってしまい自分がなすべきことを忘れてしまっていた。俺が、バリアジャケットに着替えた時には、なのはは封印の準備に取り掛かっていた。

「ジュエルシード、封印!」

 だが、アイにはまだ抵抗する力が残っていた。なのはの封印から抜け出し、翼で空へと舞い上がった。

「ジュエルシード、封印!」

 しかし、空中であの少女が待ち構え、デバイスを両刃の鎌を彷彿させるような形に変化させ、金色の刃でアイを真っ二つに切った。

 なのはが先行して空へ飛び、それから遅れて俺が空へと舞う。空中では、少女はまだジュエルシードが回収されておらず、それを挟む形でにらみ合った。

「お前、何者だ……」

〈Scythe form Set up〉

 金髪の少女は、無言でデバイスを再び鎌状の形に変形させた。それは、静かな宣戦布告ととれる構えだった。

「待って、戦うつもりはないの。お話がしたいだけなの。あなたも魔導師なのとか、ジュエルシードをなんで探しているのとか」

 なのはは、そう答えたが、相手は全く意にも介さずデバイスを構えたままだ。

〈Ark Saber〉

 少女は、なのはに視点を向け金色の刃を飛ばし、なのはに刃がぶつかり爆発したが、とっさに防御をしていたようで無傷だった。だが、その防御の隙をつき女の子は、なのはの目の前にまで接近していた。

「させるかっ!」

 とっさに少女の攻撃を受け止め、奇妙なことに鎌と鎌のデバイスが交差する形となった。

「お前もジュエルシードを探しているのか……何が目的だ! 言え!」

「……答えても、意味はない」

 少女はデバイスを引き、後方から金色の魔力弾を放出した。その魔力弾は表現するなら電撃をまとった矢であった。それが体に触れた瞬間に全身に電流が流れ、次に矢状の魔力弾による肉を打ち抜かれたような傷みが脳に伝わる。俺自身のバリアジャケットが防御を重視していない形状を取っているためか、痛みが大きく感じ全身の力が抜け落ちる。

「つぐみち君!」

 なのはの叫び声が聞こえたのを最後に、俺の体は林の中へと落下していった。

 ぼんやりとした意識の中で、声が聞こえる。こんなこと以前にもあったような記憶がある。いつだったけ、あれはたしか路地裏で……あいつが、俺を助けた後に……

「つぐみちくん! 起きて! 目を開けて!」

 まだ視界がぼんやりとなりながらも目を開けると、そこにいたのはなのは……ではなかった。黒髪の中にレモンイエローが混じった髪、どこかおどおどとした顔、両腕にはさっきアイに襲われていた子猫を抱えている。みつるだった。思いがけない人物が目の前にいたことに、ぼやけていた眼をくわっと開いた。

「ど、どうして。おまえが!?」

 爆発音が聞こえ空を見上げると、少女が金色の魔力弾を生成し、バリアジャケットが黒く焦げて満身創痍状態のなのはに向けて放たれようとしていた。

〈Photon lancer.Fire〉

「させるかよ!」

 林から一気に飛び上がり、なのはの前に立とうとしたが、魔力弾は速く、もうなのはに到達しそうな勢いだった。

「エイド、プロテクション!!」

 なのはの前に、眩しいほどの紅色の魔力光が魔法防御が展開され魔力弾を打ち消し、少女は一瞬何が起きたかと目を見張った。俺は、間髪いれずに金髪の女の子をバインドして動きを止めた。

「っ、しまった!」

「なのは、今だ!」

「う、うん」

〈Divine buster Stand by〉

 なのはは、デバイスを変形させ先端に魔力を溜め込み。

「ディバイン……バスター!!」

 桜色の砲撃が少女に直撃し、俺とは入れ替わりに林の中へと落ちていく。その時一瞬見えたが、少女は俺のバインドを破り防御をしていたのが見えた。なのはが、空中に浮いていたジュエルシードを取ると、急いで少女が落ちて行った所へと急行した。金髪の少女はバリアジャケットを解除していた。

「ごめんね、バルディッシュ」

 女の子は不利と判断したのか退却しようとした。

「待って!あなたの名前を教えてくれる?」

 なのはが少女を呼び止めた。だが、少女は、沈黙を保ったまま振り向かない。

「あなたが何をしたいのか、何が目的なのかわからない。けど、せめて名前だけでも教えて」

 結局、少女は無言のまま飛び去った。

「なのは、つぐ大丈夫!?」

 草むらからユーノが現れた。

「ああ、まだ痺れがあるが動ける」

「ユーノ君。わたしも大丈夫。だけどあの子は……」

「うん。あの子も魔導師だ。それもかなり訓練を積んだ。だけどさっきの魔法防御はいったい誰が」

 ふと、草葉を踏む音が聞こえて、全員が振り向くと二匹の猫を抱えた黒とレモンイエローが混じった特徴的な髪の人物が走り抜けていくのを見た。なのはが口を開く。

「あれって、みつる君……だよね」

 

「なのは、遅かったじゃない。後でアイ達を探しにいったみつるよりも遅れるなんてそんな遠くに行ったの?」

 庭に戻ると、開口一番にアリサが出迎えた。すずかは、俺達が戻るないいなやファリンさんに新しいお茶を出すように指示していた。ここまでならいつもの風景だったはずだ。しかし、さっきまで、俺達の様子を見ていたみつるは、不気味なほどに膝に猫を抱えながらイスに座って沈黙を保っていた。

 なのはがユーノをテーブルの上に座らせると、みつるはユーノを目を細めじっと睨みつけた。

「み、みつる君、どうしたの?」

 なのはが尋ねてきた。その時、ユーノから念話が入ってきた。

《ごめん。さっき彼に僕がなのは達と話していた所を見られちゃったみたい》

《いや、その前にみつるは俺達が戦っている姿も見ている。どうしようか》

「え、えっとユ、ユーノ君が怪我していないかなぁと思って」

 みつるは、その場を取り繕うように誤魔化した。とにかく、今は少し都合が悪い。また、日を改めてみつると話をするか。

 

第九話「もう一人の魔導師との戦闘」 完

 

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