『魔法少女リリカルなのは』の外伝モノ    作:ヘチマール

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第1章 Beginning――始動―― (エピローグ)

 第1章 Beginning――始動―― (エピローグ)

 

 

 「むっ、しくじったか」

 ジューヌは怪訝そうな声で呟いた。

 「あれほどお膳立てをしてやったのに……ヘタに欲をかくからだ。お前もそう思うだろ?」

 指輪が彼女の言葉に応えるように光る。

 「さて……いらぬ火の粉がかかる前にここを去るとするか」

 立ち上がり、コートかけのコートを取りアタッシュケースを手に取り、ジューヌはその場を後にした。

 

 

 数日後 宿屋コスモ

 

 「えっ、殺された!?」

 「そう。それも護送車に乗る直前に、銃弾で頭をパーンとな」

 談話室でジェフトとロットが話をしている。ジェフトは何やら驚いた顔をしている。

 ロットが言葉を続ける。

 「これで真相は闇の中ってわけだ」

 「やりきれないね」

 ジェフトは声を落として喋る。

 「今回の発掘、いろいろ利権が絡んでいたとはいえ、綺麗に終わらせたかったんだけどね。初めてだし」

 「まぁ、根元から金の話、サーキット建設の話が絡んでたんだ。仕方ねぇよ」

 「そんなもんかな?」

 「そんなもんだ」

 二人の間に沈黙が流れる。

 先の襲撃のあと、事故現場である『海底遺跡』は管理局に現場検証のため押さえられてしまい、発掘調査どころではなくなってしまった。そのせいで二人はすっかりやる気が失せてしまい、毎日のように談話室で駄弁っている。

 「先生~」

 「お食事をお持ちいたしましたよ」

 その沈黙を破るようにトンビとレベッカが顔を出す。レベッカは手に持っているトレイには出来立てほやほやの昼食、ホットドッグ、コンソメスープ、シーザーサラダが並べられている。

 「さあさあ、そんな辛気臭い顔してないで、私が腕を揮った料理を食べてくんさい」

 「腕を揮ったって、これ全部簡単なもんじゃねぇか」

 自慢げな顔のレベッカに、水を差すようにロットが言う。

 「シャラップ!! グダグダ言ってないでさっさと食べなさい!!」

 「オブっ!!」

 レベッカはロットの口に無理矢理ホットドッグをねじ込みロットを黙殺する。

 「トンビ、彼らの話は――」

 「聞いたよ。正直ビックリしてるよ……」

 トンビは声を暗くする。その顔にはやるせなさが見える。

 (あんまりいい気はしないよな)

 ジェフトは教え子の気持ちを察し、言葉を紡ぐ。

 「気に病むなよ、お前のミスではない」

 「もちろん、そのことは理解しているよ」

 《ミスといえば、遺跡の神殿は埋没してしまいましたよね》

 「うへぇ~それは言うなよ、ねぼすけ」

 急に機械的な音声が会話に入り傷を抉る。その主はトンビが先の件で見つけたレアアイテムことランサーXタイプであった。

 《エックス》

 「いや、ねぼすけだろ」

 《エックス!!》

 「ね・ぼ・す・け!!」

 お互い一歩も譲らないデッドヒートを繰り広げる。ちなみにランサーXタイプの愛称について言い争っている。本人は『エックス』と言い、トンビは『ねぼすけ』と言う。毎日のように繰り返されている言い争いである。

 「ん?」

 突如、素敵な音がしてトンビの頭上に、まるで天使の輪っかのように魔法陣が出現する。

 「何してんのお前?」

 《……………………》

 魔法陣から魔法で編まれたヘッドホンが生み出され、トンビの耳にすっぽりおさまる。

 「ねぇ、聞いてる? もしもし~」

 《………………スイッチオン》

 「おおおおおおおぉぉぉぉおおおお!!」

 エックスのコールと同時にヘッドホンから耳をぶっ飛ばす勢いでサウンドが流れる。トンビは絶叫しのたうち廻る。ちなみにこれも毎日のように繰り返されている。

 《学習しない人間ほどメンドクサイものはありませんね。プロフェッサーもそう思いません》

 「アハハ……お手柔らかにね」

 エックスの問いかけに微苦笑を耐えながらジェフトは答える。そして、思い出したかのようにエックスに質問を返す。

 「そうだ、君の処遇はどうなったんだい?」

 《コエルクス技術開発部の管理に置かれることになりました》

 「管理局じゃないのかい?」

 《ええ、そのようです》

 「……」

 疑問が生まれる。事件が起きたのは数日前、管理局からは簡易的な検査しか行われてない。エックスのようなケースの場合、通常なら管理局の念入りな検査のあと、安全なら発見者(今回の場合ならトンビが所属しているコエルクスグループ)に譲渡、危険なら管理局で保管される。今回は完全に後者だ。いくらコエルクスが次元世界有数の企業で、管理局と密接な関係があるからといって……

 (だからこそか……)

 ジェフトはそこまで考えて思考を打ち切る。考えるまでもなかった。そして、騒音を発生させている主――部屋でのたうち廻っているトンビを一瞥し、エックスに声をかける。

 「そこまでにしといてくれないかな」

 《了解しました》

 エックスがスイッチを切り、のたうち廻っていたトンビは四つん這いに、生まれたての仔馬のように手足を震わせながら立とうとしている。

 (まぁ、大丈夫か)と思いながらレベッカが持ってきたホットドッグを口に入れ、マスタードの量が、思いのほか多かったのでむせた。

 

 

 そして りゅう は おひめさま に おそいかかります

 おひめさま は きぬ を さくような こえ を あげます

 

 でも りゅう は とまりません

 つめ が おひめさま を ひきさこう と したとき

 

 あいだ に けんし が わって はいり りゅう を

 なげとばし ました そして おひめさま に こえ を

 

 かけます “だいじょうぶですか” と おひめさま は

 すぐに “だいじょうぶです” と へんじ を します

 

 けんし は えがお で “そうですか” と いい

 りゅう に むきかえり かまえ ます

 

 りゅう は くち を おおきく ひらき ひ の いき を

 はきます しかし それ に ものおじ せず けんし は

 

 かぜ を きるような はやさ で ちかづき その かぜ 

 を まとった こぶし で りゅう を いっとう の 

 

 もと うちたおし ました おひめさま は その すがた 

 に こころ を うたれ けんし の な を たずね ました

 

 “イングヴァルト” と かれ は なのり ました

 “あなたは” と けんし は いい おひめさま は――

 

 “パタン” と音を発て、トンビは絵本を閉じ棚に戻す。

 「時間だ、時間だ」と呟き、ボストンバッグを肩にかけ、お土産が入ったキャリーケースを引っ張り搭乗ゲートに急ぐ。

 (今回は学ぶことが多かったな)と【海底遺跡調査隊襲撃事件】と名付けられた今回の件を振り返り回想する。

 今回の件はあり大抵の言葉を用いれば、殺し合い、まさしくそれだった。今でも少し震える。もし、あのときエックスを見つけてなければ自分はこうして荷物検査のゲートに引っかかってなかっただろう。偶然が味方し、なんとか生き延びたのだ、この命軽んじてはならない。

 (……結局奴らの目的って何だったんだ?)

 思考を巡らすうちに疑問が生まれた。そう、クラブアーム達の目的は判らずじまいなのだ。何の目的があって、襲撃を行い、ジェフト達が開けられなかった神殿への大扉を開け――

 (なぜ奴らは開けることができた?)

 “開ける術を知っているからさ”

 トンビはクラブアームの言葉を思い出し、思考をフル回転させる。

 (術を知っている。どうやって知った? というかなぜ『開け方を知らなければ』ならないと知っている? あの大扉が見つかったのは、俺が来てすぐだぞ)

 ふつふつとわき出る疑問を追求し続け、ふたつの仮定に辿り着く。

 ひとつは――

 (あの遺跡に関する文献か何かを手に入れた……しっくりこないな)

 襲撃する理由が薄く、かつ方法に疑問を覚える。サディスティックな類の奴らだったから、あんな行動を取ったのかもしれない。専門家の意見でも聴いてみないとなんとも言えないので保留することにした。

 そして、もうひとつは――

 (誰かに依頼された。そして――)

 その依頼者が遺跡についての詳細を把握していた。

 「んなわけないか」

 《何がですが?》

 「ん……ああ、おもしろくない想像だよ。たいしたことじゃない」

 エックスの問いかけにトンビは苦笑しながら答える。やっぱり自分に推理は向いてないなと思い、先ほどの推理を頭から追い出す。

 《そうですか。それはそれとして、前を向いて歩いたほうが良いですよ》

 「え……おわッ!!」

 「おっとと!! とと……」

 トンビはエックスの言葉を受け前を向いたら、サングラスを掛けた女性とぶつかりそうになった。幸い女性が避けてくれたので衝突は免れたがバランスを崩し前に倒れそうになる。

 「っと、大丈夫かい?」

 「あ、はい」

 が、女性に手を掴まれ事なきことを得る。

 (キレーな女性(ひと)だな~)

 トンビはついつい見入ってしまう。白銀の髪、人形のように白い肌、サングラスを掛けてることから近隣世界の有名人だろうか、と考察を巡らせる。

 「では、失礼」

 「あっ、はい!!」

 サングラス越しからでもわかる綺麗な笑顔を残して女性は去って行った。トンビは見入って呆然と立ち尽くす。

 《突っ立ってるのは良いですけど、遅れますよ》

 「ああっと!! 早く行かないと輸送機が!!」

 エックスの声で正気を取り戻し、トンビはその場を後にした。

 

 

 女性は振り返ってトンビの走っていく姿を確認し、サングラスを取る。Ms.ジューヌであった。

 (あの少年が……まぁ何にせよ私のやることは変わらんさ)

 そう思い、彼女もその場を後にした。

 

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