『魔法少女リリカルなのは』の外伝モノ    作:ヘチマール

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最近ウィザブレにハマってます。

それでは2話です。


第2章 Retry――再起―― (前編)

 「えっ、マジ……本当ですか?」

 「はい、申し訳ございません。ドクターには伝えておいたのですが……」

 少年――トンビの質問に受付嬢は丁寧に申し訳なさそうに答える。

 ここはコエルクス技術開発部カルナログ支部の受け付ロビーだ。

 「一応予定では夕方にお戻りになられるはずなのですが……」

 「ドクターですからね……」

 「はい……」

 トンビは先の事件で管理局に承諾され、コエルクスグループの管理に於かれることになったデバイス――エックスをある人物に届けに来たのだが、肝心のある人物がいないときた。まことにゆゆしき事態である。

 「じゃあ、待っているのもなんですし外まわってきます。もしドクターが帰ってきたら、『トンビ=マキネが例のモノを持ってきた』と伝えといてください。あと……できたら待っておいてもらってください」

 「わかりました!! わたし、こう見えてもバインド(拘束系魔法)は得意なんです!!」

 いったい何を行うつもりなんだ? この人は、と思いながらトンビは愛想笑いを浮かべながら「お願いします……」と返した。もしかしたら自分はとんでもないことをしでかしたんじゃないのかとも思った。

 

 

  第2章 Retry――再起――

 

 

 トンビは舗装された道を歩きながら右手に持つアタッシュケースに目をやる。なんの変哲もないパッチン錠で留められた黒塗りのアタッシュケースである。そしてこの中に――

 《トンビ、息苦しいので鞄を開けてもらえないでしょうか? 外の景色も満喫したいですし……》

 鞄が喋り出す、それもかなり人間臭い発言をする。

 「うるせーよ、つかあんまり喋んなよ。お前はポンコツだけど重要な荷物なんだ。いつ、どこで、誰が見てるかわからないんだ。危険要素は少ないほうが良いだろ」

 《そうですか。では進言いたしますが、この危険要素の塊であるわたくしをコエルクスの支部に置いてきた方が、より排除できると思うのですが、トンビ?》

 「うぐっ……」

 痛いところを突かれた、顔が如実にそのことを表す。そもそもそんな簡単で単純な考えが、彼の頭には浮かばなかったのである。

 「ほ、ほら、あれだよ!! 企業スパイとかいるかもしれないだろ? お前が盗まれる可能性だってあるわけだ。だけど、俺がこうして手に持っていれば盗まれる心配も、奪われる心配もないわけだ」

 “どうだ、最高のアイデアだろ”と云わんばかりの顔で、トンビはなんとか己の痛恨のミスを取り繕うとする。が、やはり機械であり、魔導師の最も親しい隣人であるインテリジェントデバイス(仮)であるランサーに、その策は通じない。

 《つまり……あなたは私がどんな危険にさらされても守れると?》

 「おうっ!!」

 《戦いのプロフェッショナル〈戦闘魔導師〉であるあなたが私を守ると?》

 「お、おう!!」

 《クラブアームにボコられ、吐しゃ物をまき散らし、終いには偶然手にした力でなんとか逆転し、挙句の果てにドヤ顔決めたあなたが、私を守ると!?》

 「お、お、おうとも!!」

 《ハッ》

 「ない鼻で笑いやがった!? というか何なんだよ、おまえ!?」

 エックスの淡々とした言葉の羅列からくどい言葉の羅列にトンビは抗議の悲鳴を上げ腕をバタつかせる。

 《いや……弱いじゃないですか、あなた》

 「な……なにぃ!?」

 《私を起動させていなければたぶん……いえ、絶対に殺されていましたよ》

 「ぐぬ……!!」

 言い切ったエックスに、トンビは何も言えなかった。事実、エックスの起動がなかった場合自分は確実にクラブアームの鋏の餌食になり、今頃は埋没した遺跡の底で強制的に土葬され、バクテリアに肉を喰われ、あられもないカルシウムの塊になっていただろう。そう思うと身震いしてしまう。

 《自覚なさい、自分が凡人の粋を出ていない戦士だということを……そして、まだ発展途上だということを》

 (……なんかいつの間にか説教されているんだけど、オレ)

 見栄を張るためにした発言からこんなことになるとは思わなかったトンビは多少温度が上がった頭が平熱になっていくのを感じた。

 《まあそんなところです。ところで周りを、少し見回したらどうですか?》

 「んあ……なんで?」

 エックスに促されるままトンビは周りを見渡す。

 太陽の陽が草花に降り注いでいる。ここはピクニックには最適の原っぱだ、近くに広い公園もある。そして今日は休日だ。家族連れ、カップルなどで賑わっている。では、そんな中で鞄に喋りかけている人間がいればどんな目で謂われるだろうか、言うまでもなく奇異の目である。

 「父さん、あのお兄ちゃん鞄に話しかけているよ?」

 「コラッ、人に指さしてはいけません」

 「は~い」

 父子だろうか、トンビを指さした青髪の少年は、同じく青髪の父親に注意され指をひっこめ無邪気な笑顔を浮かべる。

 「最近のアニメか特撮モノのごっこ遊びかしら?」

 「俺に聞くなよ。そういうのには疎いんだ」

 「あらあら、そうだったわね」

 薄い紫色の髪のポニーテールの女性とその隣の少々強面の男性もトンビのことを話題に談笑しながら歩いている。

 一方、トンビは彼らの会話が耳に入ったらしく顔が恥ずかしさの朱で染まっている。彼は11歳、まだ子供といえる歳だが独り言やごっこ遊びは卒業している歳でもある。故に彼らの言葉はこの少年の心の器を羞恥の念で満たすのには十分だった。

 《注目されてますね、トンビ。まぁ、まだ微笑ましいですよ》

 「――――――!!」

 エックスの止めの一撃!! トンビは恥ずかしのあまり逃げ出した。

 

 

 黒髪のだいぶ伸びたスポーツ刈りの少年がバレーボール位の大きさのボールを抱えている。少年の目には7メートルほど離れ、高棒のてっぺんに溶接された四角いリングが映っていた。

 少年は足に履いたローラーブーツを走らせジグザグに移動、途中の一時停止しボールが縦に弧を描くように投げ、それを追い落下地点へスピードを上げ走る。ボールが降下し始める。少年はそれを見計らい高く跳躍する。少年と落下地点の間が狭まる。ボールを掴み着地。そのまま体を回しリングに向かって投擲する。投げられたボールは緩やか弧を描き――リングの端に弾かれる。

 少年は苦虫をかみ潰した顔をし、舌打ちを鳴らす。

 「よぉ!! 未来のプロパワーボーラ!!」

 不意に声をかけられる。よく知っている声だ、あいつに違いないと思いながら振り向く。

 「トンビ!!」

  振り向けば、ライトグリーンの髪の勝気な顔をした少年が悠然と立っている。

 「おひさ~、シンイチ」

 少年たちは駆け寄って腕を組み合い、喜びの念を表す。

 「いつこっちに帰ってきたんだ?」

 「昨日だ。昨日」

 「連絡ぐらいしろよ~」

 「わりぃわりぃ」

 他愛もない会話で少年たちは盛り上がっていく、それほどまでにこの再会は喜ばしいことなのだ。

 《では……そろそろ私のことも紹介してもらえませんかね、トンビ?》

 業を煮やして、奴が口の無いその身から機械的な声を発し、存在を示す。

 「トンビ……今その鞄の中から声がしたような?」

 「ん? 俺は何も聞こえなかったぞ?」

 シンイチの言葉に、仮面のような笑顔でトンビは答える。その顔を見て、シンイチは多少身を引いた。

 《すっとぼけんなよ、クソガキ》

 「やっぱりなんか聞こえるよ!! ていうかそのケースからだよね!?」

 「キコエナイキコエナイ、アーアーキコエナイ」

 トンビは現実逃避をするため耳を塞ぎ虚ろな目になり、シンイチの声を無視する。

 《……》

 トンビの頭の上に魔法陣が出現する、お約束のパターンである。

 だが、そうなんども同じネタを受ける彼ではない。エックスと出会って今日までの間、マジカルヘッドホンサウンドエコーブレイク(ロット命名)通称M.H.S.E.Bの猛攻は通算77回ほどである。その苦い経験から彼は体で学び、脳で対策を建てた。

 「上っ!!」

 眉間に魔力光の光が奔る。

 「ピンポイントバリアー!!」

 頭上にヘッドホンが落ちてくるのを防ぐように障壁が発生。そして、トンビはすぐさまその場を跳躍し離脱する。

 《チッ》

 「ふっ……」

 「なんだよ……これ」

 打った音が響かない機械的な舌打ち、してやったぜという勝ち誇った微笑、呆れた声、今起きたことに三者三様の反応が返ってくる。

 「よっと、とと……おっ?」

 着地の際段差に足を取られ、一瞬無防備になる。この一瞬が彼の命運を別けることになる――主に断罪される方に。

 《Lock on Master. Work Chain bind !!》

 エックスが魔法を行使。トンビのお留守な足元に魔法陣が現れ数本の鎖を発射し、蛇の如く滑らかに巻きついてくる。正直見ていて嬉しくない光景である――シンイチが。

 「なっ!? ひぃ、くすぐったぃいい!! そこは……はゔ!?」

 急所を物理的に曲げられ、少年の声とは思えないほどの野太い叫び声を上げる。そうしている間にも鎖は上へ上へと巻き上がり、連続する大きな網目を体の中央に編んでいく。そして両手首両足首を縛り上げ、高台に吊るす――俗に亀甲縛り(タートルシェルボンテージ)の出来上がりである。

 「なにこれ!? スゲー恥ずかしぃーんだけど!! つか、身動き取れないし!?」

 鎖を解こうと暴れるが、宙ぶらりんとなり全ての運動エネルギーが八方向に拡散してしまい、エックスの采配しだいで、煮るなり焼くなりどうにでもなってしまう状況だ。

 《ついにワレワレ機械が人を支配し管理する時が来たのです!! さあ人間よ跪くがいい!! もっとも、お前達には跪く大地すらやらんがな……》

 「うわ……」

 アシモフもあの世で泣き叫ぶ発言に、シンイチはドン引きせざる得なかった。というか、なんだこいつらは? 久しぶりの再会なのに、いきなりコントをおっ始めて、身内すらも置いてけぼりにするこのグダグダ感を、自分は味わなければならないのだ。不満の言葉の群は喉の先まで登ってきている。しかし、ここはぐっと抑えて別の言葉を用いる。パワーボーラーの司令塔は常に冷静であれ、その格言に沿って。

 「トンビ……そのインテリジェントデバイスは?」

 「こいつ? こいつは前の仕事で回収したポンコ、うっ!!」

 どことはいわないがギチギチという音を発て絞まりが強くなり、顔が青ざめていく。

 《失礼、自己紹介が遅れました。私のネームはエックス。今後ともよろしくお願いします》

 「あ、ああ、これはどうも丁寧に、こちらこそよろしくお願いします」

 《よろしくお願いします。シンイチさん》

 シンイチはポリポリと顔を掻きながら言葉を口にする。

 「シンイチ『さん』だなんてむず痒いよ。シンイチでいいよ」

 《そうですか。それではシンイチ、今後ともよろしくお願いします》

 「こちらこそ、エックス」

 提案を呑んだエックスに、シンイチは改めて、明るい声を伴った笑顔で返礼をする。

 「……」

 ひたすら妬ましい眼差しを送り続けるトンビを無視して。

 《どうしました、トンビ? さっきから何か言いたげですか》

 「言いたいことがあるなら、さっさと言ったほうがいいよ?」

 「えっ、見てわかんない? 見てわかんないのお前ら?」

 やっと気づいた一機と一人に、トンビは芸術的な青筋を浮かべかつ沸騰寸前の口を走らせる。だが、彼らは眼を遭わせるような動作をして(実際に目を合わせているわけではないが)、『わからない』と言い放った。

 「お~まえらぁぁぁぁぁ!!」

 「落ちつけよ、トン――」

 「うるせぇぇ!! 黙れ!! シャラップ!!」

 沸点を一瞬で通過し、怒りはボルテージを一気に高め爆発する!!

 「というかなに!? お前ら何なの!? ふつう、こういう場合は両方の知り合いである俺を通して知り合うよね? そんで仲良くなるよね!? なのにお前らときたらっ!! 俺を無視して……あまつさえ、縛り上げたまま放置しやがって!! ていうか何だこの縛り方!? はじめてだよ!!」

 まるでセイフティの外れたマシンピストルのように口から不満混じりの小言をダラダラたらし続けるトンビ。それを見かねてエックスは一言告げる。

 《もとはといえば、あなたが無視したのがいけないんでしょう?》

 「うぐっ」

 《やられたらやり返されるのは常識。まして傭兵であるあなたがそれを心得てない――わけはないですよね?》

 「お、おう!!」

 《では、私もそれを解除しますし、あなたも今回のことを水に流してくれますよね?》

 「わかったよ!! 俺が悪かったよ!!」

 (うわ~うまい具合に丸め込まれているよ……)

 相手への指摘と己の譲歩を巧みに使い分け、なおかつ主導権を握るエックスの手腕にシンイチは苦笑する。

 「よっと。そうだシンイチ、飯食いに行こうぜ」

 「ん、べつにいいけど。今日、持ち合わせないよ」

 そう答えたシンイチを見返し、トンビは自分の懐を探り高らかにマネーカードを出す。

 「ジャンジャジャーン!! このまえの任務にて、賞金首共を捕縛したおかげで、トンビ君はお金持ちデース。というわけで、今日は俺のおごりだぁ!!」

 「マジでッ!?」

 「マジだともっ!!」

 シンイチの真偽を確かめる質問に、はつらつな様でトンビは返事をする。

 「そんじゃ、デパ屋のフードコートに行こうぜ」

 「OK!! たこ焼ってやつ食べようよ」

 「おう!!」

 トンビはエックスの鞄を持ちデパートへ行くため後ろを向いた。その際、一瞬だけシンイチが右ひじを押さえているのが視界に入った。

 

 

 

 




笑える文章を書ける人は本当に尊敬します!!

orz
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