博麗霊夢の保護者的感じの男   作:煉獄姫

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殴り込み

「今回はありがとうございました」

 

店主が三人に礼を言い、夜月は仕事の代金を受け取った。

 

「ほらお子様たち、今回の分け前だぞー」

 

そうして夜月は霊夢と魔理沙に仕事の代金を渡した。

ついてくることにさんざん文句を言っていた夜月だが、分け前をきちんと渡すあたり大人なのだろう。

 

「サンキュー!」

「泣いた甲斐があったわね」

「うるせぇ!」

 

二人はぎゃあぎゃあと騒がしくしているが、いつものことなのでスルーすることにした。

 

「俺はちょっと寄るところがあるからさき帰っとけ」

「なに?また慧音に呼ばれてるの?」

「そんなとこだ」

 

そういって夜月は二人に気をつけて帰れ、と言い残してどこかへ歩いて行った。

 

「なーんか怪しいわね・・・・」

「何がだ?」

「夜月が一人でなんかするときはいつもああやってそっけなくどっか行くのよ」

 

さすが何年も一緒に住んでいることもあってか夜月の癖などを理解している霊夢、その様子を見て魔理沙はクスクスと笑った。

 

「気になるなら確かめてみたらどうだ?」

「い、行かないわよめんどくさい!もう帰る!」

 

素直じゃないなぁ、と思いながら魔理沙は霊夢とともに博麗神社へと一足先に帰るのであった。

 

◆◆◆

 

矢筒組の組長、矢筒然十郎は自室でキセルを吹かしながら外を眺めていた。なんのことはない、歳をとってからの日課だった。もう彼には競い合う相手も、酒を飲み交わす相手もいないのだ。

道具屋の店主好蔵の父である八郎が死んで、いよいよ自分一人だけが生き残ってしまった。

 

「八郎よぉ、お前の頼みでも……こいつはジジイには堪えるぜ」

 

そう言ってため息をつきながら再びキセルを吹かした時だ、組の若い衆が突然部屋に入ってきたのは。

 

「おい……近頃の若造はお伺いも立てらんねぇのか?」

「すいません親父!ですがそれどころじゃないんです!カチコミです!」

「カチコミだぁ?どこの組だ」

 

矢筒組は幻想郷でもかなり大きいヤクザ組織、こんなところにカチコミ、即ち殴り込みに来る人間など正気の沙汰ではない。

 

「違うんです!一人の男なんです!」

「一人だと?馬鹿もいたもんだ、さっさとやっちまいな」

「それが……そいつ化物みたいに強いんです!!うちの組のもんが次々返り討ちにされて!」

 

たった一人で100を超える組員を返り討ちにするとは、もしかしたら人間ではないのかもしれない。だが、人間以外がここに何の用がある?そう考えるが、答えは出ない。いや、そんなものは必要ない。

 

(まあいい、ちょっとした暇つぶしだ)

 

久しぶりに戦える相手に出会えたことに笑いながら、然十郎はキセルを吹いた。

 

◆◆◆

 

「なんだてめぇは!」

 

そう言った組員を、何者かが掌底で吹き飛ばす。

それに怯んだ他の組員達はおずおずとその男を見つめた。

 

「この度、我が道具店をご利用いただきありがとうございます。今回足を運んだのは普段お世話になっているお礼として」

 

その男は黒い髪に青い目をしている男だった。

外見だけ見れば20そこらの青年だろう。しかし、明らかに雰囲気が普通の人間のそれとは違っていた。

 

「てめぇ、まさか妖怪か!!ぐはぁ!」

 

突っかかった若衆を蹴り飛ばし、踏みつけて男はこう言い放った。

 

「この夜月がお礼参りに上がりました」

 

夜月はニヤリと笑いながらそういった。

 

「粋のいい兄ちゃんだ、あんたぁ、妖怪かい?」

「何でもいいだろガングロの悪ガキ」

「ほぉ、ジジイに対してガキたぁ大きく出たもんだ」

 

然十郎は60歳を過ぎた老人、その然十郎に向かってガキとのたまう夜月、そういうあたり人間ではないのだろう。だが人間であろうとなかろうと関係ない、自分の縄張りを荒らしたものをタダでは返さない。それが極道というものだ。

 

「それで?妖怪がこんなチンケな髪に何の用だい」

「言っただろ?道具屋に頼まれたのさ、ここの組の連中が勝手な真似できないようにってな」

「良坊が?そんなわけあるか、あいつぁそんな事を頼むようなやつじゃぁねぇ」

「頼んだんだよ、自分の店を守るために、この組ごと潰せってよ」

 

然十郎は夜月の眼を見る。伊達に60年も人間をやっていないため彼にはわかる。夜月が嘘を言っていないことに。そして同時にふん、っと鼻を鳴らす。

 

「そうかい、まあ立ち話も何だ。上がって行きな」

「しかし叔父貴!!!」

「てめぇらは怪我人を永遠亭に連れて行きな」

「危険です叔父貴!」

「てめぇらいつから俺に意見できるようになった?ああ?」

 

ドスの利いた声と目つきに若衆たちは気圧され、その場には夜月と然十郎だけが残された。

 

「おいおい、若衆には優しくしてやれよ」

「悪いな、こちとらスパルタ教育なもんでよ」

「何がスパルタだよ、無理して外来語使ってんじゃねぇよ」

 

そう言うやり取りをしながら、夜月は然十郎の部屋へと招かれた。

その場には二人しかいない、組が竹藪の中にあるから余計かもしれないが、太陽の木漏れ日が差し込む。

こんな状況でなければ、昼寝が出来るような場所だった。

 

「いいとこ住んでるじゃねえか」

「金はあるんでなぁ」

「羨ましいねぇ、うちの貧乏神社とはえらい違いだ」

 

自分の神社の状態を笑いながら話して腰をかけ、然十郎はキセルに火を付けた。

 

「それで?なんであいつの店に嫌がらせするんだ?親父の代には仲良かったんだろ?」

 

討伐する前に、夜月はどうしても聴きたかった。

どうして父親の代は良好だった関係が息子の代になってこんなことになったのかを。

すると、然十郎はキセルを吹かしながら話を始めた。

 

「兄ちゃん、商売の経験あるかい?」

「いや?ねえよ」

「そうかい。商いっていうのはな、綺麗事だけじゃやっていけねぇんだ」

 

商売というものは他の店よりもより安く、より良い商品を売り、常連を付け、利潤を出すかが肝になってくる。

その為には人間が何を求めているかを調べ、他の店よりも早くその商品を仕入れなければならない。そして、評判というものも大事だ。

以下に商品が良くても、その店の評判が悪ければ人は寄りつかない。

そして何より、商人というのは他の店より自分の店が劣っていると感じると、嫉妬を抱くものだ。

 

「あの店はな、好坊の親父が若い頃に潰れそうになったのさ」

「またなんで?」

「人里には商業組合ってもうがあるのさ、そこは中々悪どくてね、客のことなんか二の次、自分たちの懐にカネを入れることしか興味のないカスばっかりの連中よぉ」

「なるほど、そこの組合にあいつの親父は入らなかったわけか」

 

ただでさえ老舗という事もあり売り上げが一番高かったあの道具屋は商業組合にとって邪魔な存在でしかなかった。

だからこそ、嫌がらせの対象を受けたのだ。

 

「店を荒らすのは当たり前、しまいにゃあいつの店の品を安く転売してやがったのさ。それを問い詰めても知らぬ存ぜぬ、幻想郷にそれを取り締まる法もねぇ、どうする事もできないのさ」

「町ぐるみなら尚更か」

 

夜月は、それが幻想郷の残酷なところだと改めて思う。

外の世界と違って、幻想郷には警官などいない。

妖の取り締まりは博麗の巫女の霊夢であったり妖怪の賢者の八雲紫が行っているが、そういう一眼ではわからない人間のいざこざは全く取り締まられていないのだ。

 

「それでも八郎は耐えてた、だが………ついに我慢の限界がきた。さりゃ大事な息子を傷つけられりゃそうなるだろうさ」

「何されたんだよ」

「攫われて痛めつけられたのさ、それ以来……あいつはあんな気弱な性格になっちまった」

 

つくづくゴミの様な連中だなと、夜月は改めて反吐が出そうになった。そこまで耐えていた八郎も大切な息子がなんのいわれもない暴力を振るわれれば、我慢の限界が来るだろう。

 

「そして、ついにあいつは鬼になったのさ。鬼になったあいつは早かった。その時この組の若頭だった俺に依頼して商業組合の店を片っ端から潰し始めたわけよ」

「なるほど、商人も戦争してるわけか」

「もちろんよ、下手をすりゃ侍よりも酷い戦争かもしれねぇ」

 

自分の店というのは商人にとって自分の命の次、もしくは命よりも大切なものだ。それを潰し合うことがどれほどのことか、夜月には分からない。

 

「だからこそ、好坊みたいなやつには向かないのさ。あいつは優し過ぎる」

「だから辞めさせようと嫌がらせを続けてたわけか」

「俺の嫌がらせに耐えられない様じゃ、商人の世界じゃやっていけねぇ、それに……約束したしな」

「あいつの親父とか」

 

前代店主、八郎は死の間際に親友であった然十郎にこう告げた。

あいつがもし、店を護る強さが無ければお前が潰して、あいつに普通の人生を歩ませてやってくれと。

八郎は歴代続いてきた店よりも、好蔵の幸せを願ったのだ。

自分の様に辛い経験をするくらいなら、店を潰して他の道を見つけて欲しいと。

 

「俺が潰せば、俺に潰されたって店を畳む大義名分が出来るわけよ」

「お前に対して中々酷なこと頼むなぁ八郎の旦那も」

「違いねぇや」

 

ははは、と乾いた笑みを浮かべる然十郎。

 

「さて、長話もここまでにしようや兄ちゃん」

「そうだなぁ……………」

 

その瞬間、然十郎は刀を鞘から居合の如く抜き、その刀身は夜月の首をとらえた。しかし、その刀身は夜月の首を傷つけることはなく、夜月の腕に防がれた。

二人の攻防は長い時を有するものだと思われていたが、それは一瞬で片がついた。

然十郎の首には、どこからか出現させた黒い刀身の刀が突き付けられていた。

 

「分からねぇな、どうして俺の首を取られねぇ」

「別に、そんなことする理由もねぇからな」

 

夜月は、理由によっては然十郎を斬ろうと考えていた。

しかし全ての理由を聞いた時、斬る意味は無くなったのだ。

 

「その代わり、お前にやってもらいたいことがある」

 

夜月がその内容を伝えると、然十郎は怪訝な顔をした。

 

「ふざけんな、今更どのツラ下げて言い出せば良いんだ」

「人間死ぬ気でやればなんでもできるっていうじゃねえか」

 

夜月は頭を掻きながら去り際に言った。

 

「だから死んだ気になって、あいつの所に行ってやんな。あいつも、それを望んでるよ」

 

もう、好蔵は充分強くなった。

店を護るために、父親の親友である自分を斬る依頼をできるほどに。

だから今度は自分が答える版だ。

生い先短い人生でどれほど一緒に居てやれるかはわからないが、

せめてその日までは、共に歩いていけるだろう。

 

 

◆◆◆

 

「ねえ夜月、そういえばあの道具屋とヤクザ和解したらしいわよ?」

「へぇ、そうかい」

 

数日後、博麗神社で昼寝をしている夜月に霊夢がそんなことを言い出した。然十郎の矢筒組は道具屋の用心棒をしているらしい。

 

「矢筒組がケツ持ち(用心棒)やってりゃ大丈夫だろ」

「でもなんで急に和解したのかしら?」

「さあなぁ〜〜興味もねぇや」

 

ふぁー、とあくびをして昼寝を再開する夜月を見ながら、霊夢は何かが分かったかの様に微笑見ながらお茶をすすった。全くこいつも素直じゃないなと思いながら。

 

「今日も平和ね、幻想郷は」

 

こうして二人の日常は、続いていく。

 




次は紅魔郷の内容に入れたら良いなぁと考えてます
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