『シャルロット、君が生きていたとは正直驚かされるが……君らしいと思う私もいる』
「久しぶりね、フェルズ」
「あの時はごめんなさいね、夫の目を欺くにはああするのが一番だったの」
フェルズに何も告げずに死んで実は生きていたと言うわけにもいかずにシャルロットは一度死んで今になって再開を果たしていた。
『まさかモンスターを魔石をヒントに肉体を入れ替える方法を取るとは………私も人の事は言えないが君も十分無茶苦茶だ』
「賢者が思いつかない方法を取れて私は満足よ」
肉を捨て骨の姿で永遠の命を手に入れたフェルズでさ肉体を捨て別の肉体へ入れ替える方法は思いつかなかったがその自由の発想力は間違いなくシャルロットと感じされてしまう。
『私がミクロ・イヤロスと接触し君の魔杖を渡すのも君の計算通りだったのか?』
「まさか、そこまで先のことを読める訳ないでしょう?」
微笑みながら否定の言葉を述べるシャルロットだが、フェルズは内心訝しみながらも取りあえずは頷いて応じる。
「それより貴方にお願いがあるのよ、フェルズ」
『再会早々いったい何を私に頼むつもりだ?君の性格は知っている私から言わせてもらえば今から君は無茶ぶりを私に押し付ける気がしてならないが?』
「ミクロにオラリオの外の景色を見せたいから外出許可をちょうだい。今日中に」
笑顔で無茶な懇願を言うシャルロットにフェルズは頭を押さえる。
ギルドは第一級冒険者を始めとした都市戦力の流出を何よりも恐れる。
一部の特例を除けば都市を好きに出入りできるものは皆無であり、【ファミリア】が外出許可を得ようとすれば煩雑な手続きが必要になる。
長い時は数日の時間を要する外出許可をシャルロットは今日中にと要求してきた。
『………私はギルドの権限を自由に使えるわけではない』
「建前があればいいんでしょう?そこを適当に見繕うことぐらい賢者様なら簡単でしょ?」
『君のその性格がミクロのそっくりに反映しなくてよかった……』
自由奔放の性格がミクロに反映していればきっと気苦労が多いだろう。
しかし、ミクロもあれこれを勝手に決めているところがあるのもきちんとシャルロットの遺伝子を受け継いでいる証拠。
ミクロもそれなりに自由奔放だ。
『…………わかった、何とかしてみせよう。君のその意見には私も賛成したい』
助けることが出来なかった償いではなくフェルズ自身のミクロに対する情として色々なものをミクロに見せてやりたいという気持ちはある。
ミクロの為にその無理難題をフェルズは受け持つ。
「ありがとう、フェルズ」
『構わないさ、それに私が折れるまで頼み続けるつもりだったのだろう?』
そういう頑固なところも慣れていると付け加えてフェルズはそこで通信を切るとシャルロットは不満そうに呟く。
「私ってそんなに頑固者……?」
オラリオの南西に位置する港街で距離は
オラリオにとっての海洋進出の要所である。
「ここに来るのも久しぶりね………」
フェルズの苦労により、外出許可を手に入れたシャルロットはミクロを連れて港街に足を踏み入れていた。
「………」
ミクロにとって初めてのオラリオの外の景色は言葉では表せれない。
独特な潮の香り、青い海の景色。
どれも見て感じたことのないミクロにとって初めての経験だった。
「ほら、行くわよ」
シャルロットに手を引かれながら港街を歩くミクロは出品してある鮮魚な蟹や海老など港街が海の香りで満ちていた。
道歩くところに漁師を見かけては別のところで見覚えのある商人を見つけたりなど交易や貿易もあるんだなと考える。
「取りあえずはまずは確認だけしておきましょう」
もちろんミクロ達は遊びできたわけではない。
港街にあるギルド支部で働いている支部長ルバート・ライアンには密輸疑いがある。
今回ミクロ達が
一応はギルドが納得できる仕事を言い渡してきたフェルズに感謝しつつシャルロットはまずは支部長に挨拶という観察をしようと向かう途中でミクロは見覚えのある人達と出会った。
「アイズ、ティオナ」
「ミクロ………」
「ミクロ!この間ぶり!」
【ロキ・ファミリア】であるアイズ達と偶然の遭遇をした。
「何で自分がここにおるん?」
「仕事」
ロキの質問に素っ気なく答えるとロキはミクロの隣にいるシャルロットに視線を向けて一瞬口元がにやけるがすぐに真剣な表情を浮かべた。
「……自分、何者や?」
「お初にお目にかかります、ロキ様。私はシャルル・イリヤと申します。この度は団長であるミクロととある件に関する調査を行う為に参りました」
シャルル・イリヤとさらりと偽名を告げるシャルロット。
「うちが言いたいのはお嬢ちゃんの名前やないで?つーかそれ偽名やろう?」
「はい、訳あって【アグライア・ファミリア】に匿って貰っている身ですので私の事はそうお呼びください」
あっさりと偽名を見破るロキに対してあっさりと白状して身の上を隠すシャルロット。
「何?あんたも食人花の調査に来たわけ?」
「違う。機密事項で内容は言えない」
下手に情報漏れを防ぐために知っているものは最小限にしなければならないミクロはそう返答する。
アイズ達【ロキ・ファミリア】はダンジョンの出入り口が他にあるかもしれないということで大汽水湖にダンジョン『下層』に通ずる穴に綻びがあるのか調べに来た。
そこを通して食人花を地上に排出しているかもしれないという小さな疑問を消す為に。
「必要なら手伝う」
それを聞いてミクロはアイズ達の仕事も手伝おうとする。
だが、シャルロットがミクロの襟首を掴む。
「ミクロ、私達は私達でやることがあるのだから自分の仕事を終えてからにしなさい。それでは【ロキ・ファミリア】の皆さん、失礼しますね」
「また」
アイズ達に一礼して去って行くミクロ達にアイズ達は困惑気味に苦笑する。
「誰だろう?レフィーヤ、あの子のこと知ってる?」
「い、いえ、私も初めてお会いしました」
「訳ありみたいな感じだったけど……まぁいいんじゃない?向こうも向こうですることがあるみたいだし、私達も私達のことをしましょう」
「そうやで!さぁうちについてき!ニョルズから聞いた穴場があるんや!」
漁業系の【ファミリア】の主神であるニョルズから聞いた穴場の情報をもとにアイズ達はメレンの漁港から南下し、街を離れた先にある
「さっきぶり」
「なんでや!!」
すると先ほど別れたミクロがそこにいた。
「ミクロ、貴方も早く………先ほどぶりです」
水着姿で影から姿を現したシャルロットは先ほど会った【ロキ・ファミリア】一同に挨拶する。
シャルロットが以前から知っていた穴場でミクロと二人きっりで泳ごうと思い仕事を放棄してこの浜辺にやってきたが予想外にロキ達までもやってきたことに溜息が出た。
さっかくの親子水入らずの時間がと嘆くシャルロット。
「………まぁ、かまわへん。さぁアイズたん達―――――――これを着るんやー!!」
時は着たとばかりにロキは
「えっと………」
だが、水着を手に持つが着ることに躊躇いがある。
「?」
この場に一人いる異性であるミクロに視線を向けられるがミクロはよくわからず首を傾げるとロキはミクロに憤慨する。
「おおい!【覇者】!どっかいけや!!自分がおるせいでアイズたん達が躊躇って水着を着れれんやろうが!!」
「何で?」
しかし羞恥心がわからないミクロにとってはどうして躊躇うのかわからない。
「そりゃ……ええっと、恥ずかしいやろう!?」
「何が?」
「男に肌を見られるのがや!?」
「肌?」
自身の皮膚を抓むミクロはこれのどこが見られて恥ずかしいのかよくわからない。
「…………自分、女が目の前で裸やったらどないする?」
「風呂の話?」
首を傾げて尋ねるミクロにロキは深く溜息が出た。
こいつ本当に男なのかという疑問さえ覚えた。
「ロキ様、ミクロは女性をそういう風には見ませんので問題はありません。むしろ【ファミリア】でもミクロのこういうところを改善しようと案が出ているぐらい愚鈍なのです」
ミクロは異性に関心を持っていない。
そのことにどうすればいいのかと密に団員達がアレコレと考えている。
「……ああもうええわ。みんなーそうことさかい気にする必要あらへんよ」
一連の話を聞いたアイズ達は少し微妙な気持ちになりながらも水着に着替えていく。
「ほら、ミクロはこっち」
ミクロもアイズ達とは違うところで水着に着替える。
全員が水着に着替えてロキが高らかに叫ぶ。
「さぁみんな、一旦仕事は忘れて存分に遊べっ!!海水浴ならぬ、湖水浴や!余計なものも交じっとるが………戦う乙女達の束の間の休息ー!!勿論ポロリもあるでぇええええええええええええええッ!!」
『ない!!』
「ぽろり?」
「それは知らなくていいの」
悪神の下心にアイズ達は赤面しながら一斉に言い返すとミクロはぽろりとは何かとシャルロットに尋ねるとシャルロットは諭すようにそう告げた。