路地裏で女神と出会うのは間違っているだろうか   作:ユキシア

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New71話

風を纏う剣と槍の乱舞がレヴィスを襲う。

「チッ!!」

鋭い槍が真正面からレヴィスの胴体に風穴を空けるかのように突いてくるその槍をレヴィスは長剣で弾くが、その時にできる僅かな隙にアイズが斬りかかる。

傷を負う度に全身から蒸気――――『魔力』の粒子を発散させ、癒していくレヴィス。

出鱈目な治癒能力『自己再生』を目の当たりにする二人は一切の油断なく確実にレヴィスを刻み付けていく。

治癒能力といえど無限ではない。

なら少しずつ刻み、治癒能力の限界が迎えるまで二人は着実に仕留めにかかる。

戦闘能力が上昇しているレヴィス相手に下手に攻めればこちらがやられてしまう可能性もある。

こちらは二人、なら無理をして攻める必要もない。

無言で視線を交わしてアイズはミクロの背中に移動してミクロは突貫して穿つが、レヴィスは回避してミクロに長剣を向けるがそこにアイズが攻撃を仕掛けて防御を取らざる得ない。

防戦一方のレヴィスは少しずつではあるが確実に治癒能力が低下しつつあった。

ミクロ一人でさえ厄介なのにそこにアイズが加わることでより手強くなったが、それより懸念なのは二人の連携(コンビネーション)だった。

他派閥同士の癖にどうしてここまで完成度の高い連携(コンビネーション)が出来るのかレヴィスにはわからなかった。

視線だけで連携(コンビネーション)を成り立てるミクロとアイズは気が合う輩。

更には過去二度本気で戦い合って、共に遠征をした間柄。

互いがどう動けばいいのか大体でわかる。

レヴィスは内心で舌打ちして言葉で二人を揺さぶる。

「悠長に私と戦う余裕があるのか?この馬鹿げた迷宮はお前達を喰う怪物(モンスター)そのものだ。お前達の仲間は今頃どうなっているんだろうな?」

「――――っ」

その通りだ。

アイズの金の双眸が大きく見開く。

大切な仲間はこの人造迷宮(クノッソス)で分断されている。

悠長にしている時間はアイズ達にはなかった。

仲間の身を案じるアイズにミクロは槍を『リトス』に収納させてその代わりに魔杖を取り出す。

「アイズ、後は任せる」

「どういう……」

意味と尋ねる前にミクロは詠唱を口の乗せる。

「【閉ざされた世界に差し込む希望(ひかり)】」

足元に白色の魔法円(マジックサークル)が展開する。

聞き覚えのないその詠唱にアイズは驚愕に包まれる。

「させるかっ!」

「【心壊れし餓鬼を見捨てず、傍らに居てくれる心優しい妖精(エルフ)】」

迸る魔力から危険を察知したレヴィスは猛然とミクロへと斬りかかった。

「させない……!」

そこでアイズがレヴィスの行方を遮る。

「どけ!アリア!」

「【餓鬼の時は動き出す】」

ミクロの詠唱を止めようとするレヴィスとミクロを守ろうと剣を振るアイズ。

「【世界と真実を知り、我の運命は我が身に宿る神血(イコル)によって定められていた】」

派閥は違えど、ミクロは大切な友達。

「【我はそれを受け入れ、定められている運命を破壊すべく抗う運命を選択する】」

どういう魔法かはわからない。

だけど、友達(ミクロ)が皆を助けようとしていることはわかる。

「【慟哭に負う傷は惰弱と後悔】」

なら、そのミクロを守るのが自分だ。

「【努々忘れるな】」

共に遠征した時もミクロはアイズ達を守り、助けてくれた。

「【降り掛かる理不尽を破壊し、理不尽(りそう)を創り出す。その代償は涙と慟哭(うたごえ)を持って支払う】」

そのミクロが今も同じように助けようとしてくれている。

だからアイズも戦う。

大切な家族と友達を守る為に。

「【願望(わがまま)を現実に、理想を真実に創世する。壊した世界の理は我の理】」

詠唱が終わり、足元にある魔法円(マジックサークル)の輝きは増していく。

「【セオスティー・ウルギア】」

その魔法は発動したと同時に魔法円(マジックサークル)は砕け散る。

これにより、現時点の世界の(ルール)はミクロによって決められる。

「範囲内のこの迷宮クノッソスよ――――――――壊れろ」

発せられた(ルール)により、迷宮は形もなく崩壊した。

たった一言。

その一言で理不尽なまでに崩壊する人造迷宮(クノッソス)にミクロは力尽きて倒れる。

「ミクロッ!?」

叫ぶアイズはミクロの表情を見てすぐに察した。

深い疲労と汗を流すミクロは精神疲弊(マインドダウン)一歩手前だ。

ミクロの魔法、創世魔法は発動するだけでも膨大な精神力(マインド)を消費するだけでなく、(ルール)の内容によって精神力(マインド)の消費が決まる。

単純で簡易なものだったら消費は軽く、複雑で困難なものだったら激しい。

今回は範囲内にある人造迷宮(クノッソス)の崩壊。

単純だが、困難なその(ルール)はいくらミクロでも精神力(マインド)の消費は激しかった。

「どけ!」

「っ!?」

強引にアイズという壁を突破するレヴィスは弱っているミクロの息の根を確実に止めようと襲いかかる。

「【目覚めよ(テンペスト)】!!」

それを止めようとアイズは再び風を纏う。

朦朧とする意識のなかで襲いかかってくるレヴィスとそれを止めようとするアイズが視界に入るがミクロは動けない。

創世魔法を使えばレヴィスとの決着も容易だっただろう。

だけどそれ以上にミクロはティオナ達【ロキ・ファミリア】を助けたかった。

大切な友達がこんな迷宮で苦しまれているのを放っておけない。

敵を倒す事よりもミクロは友達とその仲間を助ける方を優先した。

「死ね!」

アイズの風も剣も強引に振りほどいてミクロに凶刃を突き付けるレヴィス。

だけど、ミクロに後悔はない。

「―――――『アリーゼ』!」

何故なら迷宮を壊せば必ず来てくれると信じていたからだ。

レヴィスの凶刃よりも速くリューが僅差でミクロに届いた。

「……本当に貴方は無茶をする」

「ごめん……」

呆れるように息を吐くリューは自身の胸に抱きかかえているミクロを一瞥して告げるとミクロは力なく謝る。

超硬金属(アダマンタイト)最硬金属(オリハルコン)の扉もなくなったその通路から疾風の速さで駆け付けたリューに続いて分断させられていた【ロキ・ファミリア】達が集う。

【ロキ・ファミリア】達を苦しめた理不尽な迷宮はミクロの理不尽(りそう)によって壊された。

「ミクロ!大丈夫!?」

「ティオナ……」

「全く、あんたは本当に無茶をするわね。でも、ありがとうね」

「ティオネ……」

駆け寄ってきてくれるアマゾネス姉妹にミクロは安堵するとリューが無理矢理ミクロの口に精神力回復薬(マインドポーション)をねじ込む。

「心配するこちらの身にもなってください……」

「……ごめん」

心配させてしまったことも含めてミクロはもう一度謝ると団員に抱えられているフィンを見てミクロはラウルの告げる。

「ラウル、フィンを斬った呪武具(カースウェポン)は壊した。もうフィンにかけられた呪いは解けてる」

「本当すか!?」

呪武具(カースウェポン)に込められた呪いをとくには解呪するかかけられた呪武具(カースウェポン)を破壊するしかない。

頷くミクロにラウル達は慌てて回復薬(ポーション)をフィンにかけると傷が消えていくが、失った血液までは戻らない。

血が足りないフィンと魔法の酷使で精神疲弊(マインドダウン)寸前の二人はこれ以上の戦闘の続行は不可能。

アイズ達は敵であるレヴィスを見据えた直後。

それは現れた。

視界一面を占領する鋼色の体皮。

太過ぎる強靭な四脚、雄々しくも捻じ曲がった巨大な双角、頭部から不気味な緑色に蝕まれる鋼色の体皮。

紛れもない牛の体型を象る総身の中で、唯一異物を上げるとしたら、それは額に当たる位置に存在する女の体だ。

不気味な嘲笑を貼り付けた、女体の上半身。

第一級冒険者はその怪物の姿に強い既視感を覚える中でアイズはその名を呼んだ。

「『精霊の分身(デミ・スピリット)』……!」

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