路地裏で女神と出会うのは間違っているだろうか   作:ユキシア

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New79話

北西のメインストリート、冒険者通りの路地にある人気のない酒場でミクロはフィンと会っていた。

「……すまない、ミクロ・イヤロス。君の言葉を信じて行動していれば」

対面するフィンは重い表情を浮かべてミクロに謝罪の言葉を述べた。

ミクロはフィンに油断するなと忠告したにも関わらずに自身の慢心のせいで犠牲者を出してしまった。

「それはもういい。それよりも今後の事についてだ」

重い表情をするフィンの心情を察してミクロは話題を切り替えて話を進める。

「ああ、そうだね。まずは互いに情報を交換をしよう」

互いに闇派閥(イヴィルス)に関する新たな情報を交換し合う二人。

互いに得た情報を交換し合うことでより鮮明に詳細に得た情報を確かにしていく。

「……ディックス・ペルディクスの先祖があの迷宮を築いていたのか」

あれほどの迷宮の真実を知ったフィンの表情は一層に強張る。

千年前から作り上げてきた人造迷宮(クノッソス)の秘密を知ったフィンは一度瞑目して静かに息を吐いた。

「これが人造迷宮(クノッソス)にある最硬金属(オリハルコン)の扉を開ける鍵だ」

赤い球体の魔道具(マジックアイテム)、正式名称は『ダイダロス・オーブ』。

最硬金属(オリハルコン)の扉を開閉できる唯一の鍵。

その鍵とダイダロスの系譜であるディックスがいるミクロ達はいつでも人造迷宮(クノッソス)を攻め入る準備は出来ている。

だけど、問題はある。

まず鍵は複数存在している。

ミクロ達が手に持つ鍵では全ての扉を自由に開閉できない。

闇派閥(イヴィルス)もディックスが既にミクロ達側にいることは承知しているだろう。

なら、まずはディックスを始末するはずだ。

そうすることで再び自身の優位性を取り戻そうとする。

だけどディックスは勘が鋭く、頭も切れる。

Lv.5の実力を持ち、万が一の為も備えてグラン達と共に行動している。

そう簡単にはディックス達を始末することは出来ない。

ミクロは現在問題である鍵の複製を行っている。

数を揃えて人造迷宮(クノッソス)に向かう準備と闇派閥(イヴィルス)と戦う為の戦力を揃えている。

「………ミクロ・イヤロス。君には何度も助けられてきた恩がある。その上で厚かましいことも恥知らずということも承知で頼む。その鍵を僕達に譲って欲しい」

『ダイダロス・オーブ』を譲って欲しいと大胆にも懇願する。

「仲間を殺された敵を取る為にも僕達に必要なのはその鍵だ」

その声音はいつにない語気の強さがあった。

細められているフィンの碧眼は自責と後悔以上に、再戦の念に燃えている。

「断る。少なくとも今のフィンにこれは渡せない」

だけどミクロは断った。

「昨日、ベートとアイズに会った。ベートが死んだ仲間に何か言って内輪揉めでも始めたのか?」

「………ああ」

ミクロの言葉を肯定するフィンにミクロの言葉は続いた。

「それならフィン、ベートを俺の【ファミリア】にくれ」

「!?」

あまりの唐突の勧誘行為にフィンは一驚されながらもその意図を尋ねる。

「いきなりだね、理由を聞いてもいいかい?」

「俺はベートの事を友達だと思ってる。友達(ベート)のことを俺はそれなりに理解しているし、しようと思ってる。だから【ロキ・ファミリア】がベートの事を嫌っているのなら俺が貰う」

あっさり過ぎるほど納得のいく言葉に瞳を細めるフィン。

なるほど、ミクロらしいとさえ感心すら抱いた。

「今の【アグライア・ファミリア】ならフィンやオッタルのところと大して遜色もない。俺を含めて多くの第一級冒険者だっている。強さを求めるベートにとっても問題ない環境だと自負している」

「……」

【アグライア・ファミリア】が結成されて五年と少し。

ミクロの言葉通り今の【アグライア・ファミリア】は二大派閥と呼ばれている自分達や【フレイヤ・ファミリア】と大して変わりはない。

そして、たった五年でここまで【ファミリア】を大きくできたのは目の前にいるミクロの実力があってこそだ。

多くの冒険者達を束ね、最近では自分達で壊滅させた多くの戦闘娼婦(バーベラ)達も迎え入れた。

【ファミリア】の実力を考慮しても少なくとも戦いたくない【ファミリア】だとフィン自身も思っている。

もし、戦争となれば少なくとも敗北するという可能性も十分にある。

闇派閥(イヴィルス)を潰すにはこちらも多くの実力者が必要だ。Lv.6であるベート程の実力者が来てくれれば心強い」

ミクロの瞳から力強い意志が見受けられる。

本気でベートを手に入れようと考えているだろうが。

「駄目だ。ベートは僕達の大切な仲間だ。ほいそれと渡すことはできないさ」

やんわりとフィンは断った。

渡すわけにも戦う訳にもいかない。

今の関係を続けなければ今後に支障が出てしまう。

見据える目の前のミクロにフィンは悟っている。

ミクロ・イヤロスは強い、だけどそれは決して個人の実力だけではない。

ミクロの背中を見てそれに応えようと団員達は奮闘して決意と強さを促す。

(間違いない……彼は『英雄』だ)

そうでなければここまで【ファミリア】を強くすることは出来ない。

『英雄』であるミクロに導かれて誰もがそんなミクロの背中について行く。

少なくとも【勇者(ブレイバー)】と呼ばれている自分以上に。

「……ミクロ・イヤロス。君はどうして闇派閥(イヴィルス)を潰そうと動いているんだい?そこに【シヴァ・ファミリア】が関わっているだけではないだろう?」

【アグライア・ファミリア】が結成されたのは約五年前。

『暗黒期』とまで呼ばれたオラリオに終止符が打たれた頃に結成された【ファミリア】に闇派閥(イヴィルス)とどういう関わり合いがあるのかわからない。

問いかけるフィンの問いにミクロは口を開いた。

「リューの為だ」

「【疾風】……?」

「リューは元【アストレア・ファミリア】の団員だ」

「そういうことか………」

ミクロの言葉にフィンは納得した。

【アストレア・ファミリア】、かつては神アストレアの派閥でオラリオの秩序安寧に尽力を尽くして闇派閥(イヴィルス)によって葬られた【ファミリア】。

「俺の問題もある。だけど、それ以上に俺はアリーゼ達を殺し、リューを復讐に走らせた闇派閥(イヴィルス)が許せない。アリーゼ達の為に、リューに幸せになって貰う為に俺は闇派閥(イヴィルス)を潰す」

どうしようもない餓鬼だった自分に様々なことを教えてくれたアリーゼ達。

そんなアリーゼ達を殺し、優しいリューを復讐に走らせた闇派閥(イヴィルス)がミクロは許せない。

アリーゼ達の敵を討っても何かが変わると言う訳ではない。

それでもこれ以上アリーゼ達のような犠牲者やリューのような人を生み出さない為にミクロは闇派閥(イヴィルス)を潰すことを決意した。

このことはリューはもちろん主神であるアグライアも知らない。

言ったらきっと怒られる。

「フィン、俺は本気でベートを家族(ファミリア)に迎え入れようと考えている。内輪揉めを早く解決させた方が良い」

「………ああ、善処するよ」

ミクロの真意に気付いたフィンは苦笑交えて頷く。

本気でベートを勧誘するつもりだけど今はしない。

これ以上内輪揉めを続けると言うのならベートを勧誘すると言外に告げるミクロの気遣いに感謝と本気でベートを勧誘しようとするミクロの積極性に不安が生じる。

帰ったらまずはラウル達の説得から始めないと、と思考を働かせるフィンにミクロは(ホルスター)から眼晶(オルクル)を取り出す。

「リュー、どうした?」

『大変です、ミクロ!都市中のアマゾネスが襲撃を受けてます!』

「「っ!?」」

眼晶(オルクル)から発せられた声に二人は一驚してミクロはすぐにリューに指示を出す。

「第一級冒険者達は個々で襲撃者を撃退!残りは固まって迎撃しろ!怪我をした者はパルフェのところへ行け!他に異常があれば俺に報告!」

『わかりました!』

「フィン」

「ああ、僕達も急ごう!」

突然の襲撃に冷静に指示を仰ぐと同時に二人は外へ駆け出して個別で動き出す。

ミクロは屋根上に登って『ヴェロス』を展開して屋根上から黒い装束を纏った暗殺者(アサシン)達を射抜く。

闇派閥(イヴィルス)に雇われた暗殺者(アサシン)か」

屋根上から確認できた暗殺者(アサシン)にミクロはすぐに判断できた。

殺戮を司る女神のもと汚れ仕事を引き受ける犯罪組織(ファミリア)は高額の金と引き換えに命を刈り取る。

闇の者達の手には不治の呪道具(カースウェポン)が握られてはいるがミクロは自分の【ファミリア】に対してそこまで心配はしてはいない。

敵の能力(ステイタス)はオラリオの冒険者と比べれば総じて低く最も高い者でもLv.3だ。

狙いは戦闘娼婦(バーベラ)達のようだが、アイシャ達には集団で行動するように事前に告げている。

そう簡単に殺されるような実力者でもないアイシャ達に万が一に呪いを受けたとしてもミクロは対呪詛(カース)用の秘薬を作っているし、パルフェの魔法もある。

それでも駄目なら自分の創世魔法でどうにでもなる。

リュー達も行動しているし、ここから狙撃していけば暗殺者(アサシン)の行動を阻害することも出来る。

「―――――っ」

そこでミクロは不意に昨日のアイシャの言葉を思い出した。

「レナ―――」

隠れ家にいると言っていた団員のレナはもし一人で行動しているとしたら。

ミクロはアイシャが言っていた隠れ家がどこにあるのかわからない。

だが、見当はつく。

レナは元戦闘娼婦(バーベラ)、なら歓楽街方面にその隠れ家がある可能性が高い。

まだそこにレナがいるとはわからないが今はその可能性に賭けるしかない。

「【駆け翔べ】」

そこからミクロの行動は速かった。

風を纏って急いで歓楽街方面に駆け出すミクロは急いでレナを探し出す。

するとミクロは地面に倒れている暗殺者(アサシン)を見つけてそれの先に視線を向けると広場の一角にレナを見つけた。

「いた」

暗殺者(アサシン)達に囲まれているレナを見つけたミクロはレナの前に着地する。

「団長……」

「後は任せろ」

一言告げてミクロは暗殺者(アサシン)達を一蹴する。

「うわつよ……」

自分が苦労した相手を一蹴したミクロの強さにレナは呆れ驚くがミクロは気にせずにレナの傷具合を確認する。

「致命傷はないが、本拠(ホーム)まで耐えれるか?」

「団長、お願い……ベート・ローガを助けてあげて………」

「ベート?」

どうしてここでベートが出てくるのか怪訝するとベートが広場に姿を現した。

「ミクロ………」

どうしてここにと言わんばかりな表情を浮かべるベートには切り傷が多く、右肩には裂傷があった。

「ベート・ローガ!よかった、無事だったんだ!私も運よく団長に助けて貰ったんだよ!」

ベートの無事に声を弾ませるレナはベートに近づくとベートはレナを力づくでどかせてミクロの胸ぐらを掴む。

「………」

「ベート・ローガ!どうしたの!?どうして怒ってるの!?ほら、私は平気だから怒らないであげて!」

表情を歪ませて怒りで毛が逆立つベートを宥めようと声をかけるレナだがまるで効果がない。

「何故………ッ」

言葉を遮ってベートは乱暴にミクロを投げて解放するとどこかに去ろうとする。

「ベート・ローガ……」

「雑魚が俺に近づくな」

殺意を込めた言葉で一蹴するベートはレナが追いつけない速さでどこかに消えていった。

「………………」

何故、お前は助けられる。

悲嘆にくれた顔で声でベートはミクロにそう言っていた。

 

 

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