力のない
冒険者と
ミクロ達は
「なかなか割のいい
一枚の羊皮紙を手に取りながらぼやくティヒア。
「内容にも気を付けないとこちらが痛い目にみます」
忠告するリューの言葉通りに
だから、内容やそれに見合う報酬以外にも
また、
上層は大抵の【ファミリア】や冒険者達にもこなせてしまう為、それより下の中層からの
「『ヘルハンドの牙×一〇、求む』。報酬は他と比べると少し低い」
何枚の羊皮紙を眺めながら慎重に
「しかし、どうしてまた
どういう心境の変化なのかわからない二人は今も
「【ファミリア】が結成してから約一年半が経ったのに団員はたったの三人。まだ【ファミリア】の名前が知れ渡っていない」
大抵は有名な派閥である【ロキ・ファミリア】や【フレイヤ・ファミリア】を始めとした多少なり名が知れ渡っている【ファミリア】を選ぶ。
好き好んで零細や名の知らない【ファミリア】を選んだりはしない。
最速でLv.2になったミクロの名は一時都市全体に知れ渡っているにも関わらず誰一人【アグライア・ファミリア】に入団する者は現れなかった。
「【ファミリア】の名を上げて行けば入団してくる奴が出てくるかもしれない。だからまずは今までにしてこなかった
「ミクロはどうして【ファミリア】の名を上げるのですか?」
「……ナァーザの為?」
借金を背負ってしまった【ミアハ・ファミリア】。
その団員であるナァーザを助ける為にミクロは
「それもあるけどそれだけじゃない。名を上げて、団員が増えればアグライアが喜んでくれると思う。家族を作る為にアグライアは下界に降りてきたから」
家族を作ってこの世界を共に堪能する。
アグライアと始めて出会った時に言っていた言葉。
「こんな薄汚い俺を拾ってくれたアグライアに俺は感謝していると思う。それに俺はアグライアの最初の眷属。主神の望みを叶えてあげたい」
その言葉に一驚するリューとティヒア。
ミクロ自身も最近までそんなことを考えたことがなかった。
だけど、ナァーザとの一件以来、そう思えるようになっていた。
まだ確かな決意も気持ちもわからない。
だけど、拾ってくれたアグライアに報いたいのは本当だった。
「では、いい
「私は別の掲示板に貼り出されている所を見て来るわ」
一驚して、微笑みながら先ほどよりも真剣に依頼書を見まわすリューとティヒア。
「だから何べんも言わせるんじゃねえよ!?」
掲示板に貼り出されている
「【リル・ファミリア】が俺達の武器を奪って行ったんだよ!あいつらがモンスターを引き連れてきたせいで俺達は武器を奪われただけじゃなく仲間が一人殺されたんだ!」
「モンスターを引き連れてきたのは【リル・ファミリア】の連中で間違いねえんだ!調べたらすぐにわかる!」
「ギルドの方からも調査してくれよ!?」
【リル・ファミリア】に糾弾を求める冒険者達。
「おやおや~、俺達の【ファミリア】の名前が聞こえましたね~」
その冒険者達の背後からやってきた
「変な言いがかりは止してくだいさいよ。俺達は何にもしてはいませんぜ?」
「てめぇ……ッ!よくもぬけぬけと!」
下卑な笑みを浮かばせる一人の青年に冒険者は胸ぐらを掴むが青年は笑みを浮かばせたまま。
「おー、怖い怖い。そんなにも俺達を疑うのでしたら今からでもどうぞ我が【ファミリア】を調べてくださって結構ですよ?俺達はここを一歩も動きませんから」
笑みを浮かばせる青年に対して悔しそうに歯を食い縛る冒険者は乱暴にその手を離してギルドの職員に言った。
「聞いたろ?今からこいつらの【ファミリア】を調べてくれ」
「は、はい」
奥へと走って行くギルドの職員。
冒険者は青年を睨み付ける。
「万が一に俺達の装備が見つかった時は覚悟しとけよ」
「ええ、肝に銘じておきましょう」
余裕の笑みを浮かばせたまま了承する青年に冒険者は苛立ちながらその場を去って行った。
騒めくギルド内にミクロ達は冷静に冒険者達を見ていた。
「見つからないだろうな」
ぼそりとミクロはそう言った。
あれほどの余裕の笑みを浮かばせている青年を見てミクロは見つかることは万が一もないと思った。
隣にいるリューも訝しむように青年とその後ろに控えている冒険者達を見ていた。
五人組のパーティ。
恐らくパーティにリーダーであろう先ほどの
その後ろには男性の
「ミクロはどう思います?」
隣にいるミクロに声をかける。
「見つからないだろう。それだけの余裕があるように見える」
青年の笑みを見て断言したミクロは近くにいたギルドの職員に【リル・ファミリア】のことについて尋ねた。
【リル・ファミリア】。
派閥の
その団長を務める
どこにでもある普通の【ファミリア】だったが最近は変な噂が流れていた。
ダンジョンで他の【ファミリア】の武具や
ギルドは一度は訴えに応じて【リル・ファミリア】の
既に売られたと推測して調べたが足取り一つ見つかることはなかった。
故に証拠不十分とみなされ、ギルドは【リル・ファミリア】に
「……」
ギルドの職員からの情報を聞いたミクロは考えながらリュー達のところに戻る。
奪われた物が
隠すには難しい武器までもどうやって隠しているかが気になったがまだ自分達が被害が出る前に【リル・ファミリア】の情報が聞けただけでも僥倖だと思った。
「ミクロ。これはどう?内容も報酬もいいと思うけど」
一応警戒はしておこうと思っているとティヒアが持ってきた依頼書を見てその
「特に問題はありませんでしたね」
何事もなく
叫び声が聞こえた方に走るミクロ達はその場所へと到着するとそこには血塗れで倒れている男性冒険者達の中心に立っている一人の女性、
倒れている男性冒険者の血を浴びたかのように赤い髪をした女性は睨み付けるようにミクロ達を睨んだ。
「あんたらもこいつらのお仲間か………?」
明らかな敵意を持って女性はミクロ達に襲いかかって来た。
「だったらさっさとくたばりな!」
襲いかかってくる
躱しながらミクロは気付いた。
この
「ミクロ!」
木刀を持って戦おうとするリューを手で制してミクロは目の前の
「
更に激しい拳と蹴りが襲いかかってくるがミクロはそれを冷静に捌く。
確かに速い攻撃だと思ったミクロだが、普段から模擬戦で戦っているリューの方が速く、重い攻撃を何度も見て、喰らっている。
それに比べたら目の前にいる
「チッ!少しは攻撃してきたらどうなんだ!?」
捌くばかりで攻撃をしてこないミクロに腹を立てて舌打ちをしながら拳があと少しでミクロの頬に当たると直前にミクロはそれを躱して自分の頬が当たるところに袋を投げた。
そして、
「~~~~~~~~~~ッッ!?!?!?」
袋から溢れ出た突然の悪臭に
「ミ、ミクロ……」
その悪臭に後ろにいるリュー達も被害が及んだ。
特に
「こんな狭い路地裏で
しかめ顔で注意するリュー。
「大丈夫。すぐに臭いは消えるように改良した物だから」
モンスターとの
鋭い五感を持っている獣人の
「とりあえず彼女を連れてここを去りましょう」
「わかった」
急いでこの場から離れるミクロ達は