白銀と紅の斬線を残してベルはモンスターを切り裂く。
「凄い…………」
ミクロから頂いたベルの
新しい武器の試し斬り、調整の為にベルは仲間達と共にダンジョンに訪れた。
そして、現れるモンスター相手に新しい武器の性能を試した。
「調子はどうだ? ベル」
「うん、凄い扱いやすよ……」
大刀を肩に担いで気軽に声をかけてくるヴェルフにベルはそう答えた。
今までベルはナイフと
手に馴染むようにしっくりとくる感覚、何年も使ってきたかのように手足のように扱える。
武器の切れ味も一切衰えることもなく、堅いモンスターの甲殻も簡単に切り裂く切れ味を持っている。
「これ、ヴェルフが作ったんだよね?」
「おう、つっても殆どが団長が仕上げたもんだから武器の形だけ仕上げたようなもんだから一端の
最後まで自分の手で作ることが出来なったことに少し不満があったが、そこは自分の力量不足のせいと無理矢理自分を納得させておく。
「二人とも伏せて!!」
「はぁ――うおっ!?」
「うわっ!?」
二人の頭上に大型の武器が高速回転をしながら過ぎ去り、その先にいるモンスターを両断していき、セシルの手元に戻ってくる。
「ごめん二人とも! 大丈夫!?」
「お、おう……」
「なんとか…………」
慌てて駆け付けるセシルに返答する二人はセシルが持っている大型武器『レシウス』に視線を向ける。
その重量に見合う大双刃の得物は投擲武器。
大きさと質量を誇る大双刃の刃がモンスターを容赦なく叩き切る。
「凄いな、二人の武器は…………」
「だな、流石は団長の最高傑作だ」
「団長様はどんどん規格外になられますね…………」
セシルの後からスウラ達がベル達の元にやってくる。
今日はいつものパーティメンバーでダンジョンに潜っているベル達は中層にいる。
武器の性能を確認してから下層に赴く予定だ。
「大丈夫かい? 二人とも」
「はい。僕は大丈夫です」
「俺も問題ねえ」
立ち上がる二人にこのパーティのリーダーを務めているスウラは頷く。
「それじゃ、一度18階層で休息を取ってから今日は19階層で少し試したら地上に戻るとしよう」
これからの予定を話すスウラに異論の声はなく、全員がそれに応じる。
移動を開始するベル達。その中でリオグが二人にからかいの声を投げる。
「にしても羨ましいぜ。そんなすげえ武器を貰えてよ~」
「え、えっと…………」
「冗談だ、冗談! 本気にすんな!」
戸惑うベルにリオグは気さくな態度で手を振るう。
「ベルやセシルみたいに専用の武器はねえけど、団長に言えば
リオグがベル達に見せたのは赤色の
「障壁を生み出す
「それじゃ、スウラさんも…………」
「ああ、俺も団長から借りてるよ」
スウラが見せるのは五指に嵌められている指輪。
「属性を付与できる
二人は自身が身に付けている
「団長がいる俺達の特権。団長に言えば色々な
「ちなみにリオグは一度、女性達の入浴を覗こうと透明になる
「おい、それを言うなよ!!」
微笑を浮かべながらそのことを語るスウラにリオグは憤り、セシルとリリがリオグを見る視線が冷たくなった。
因みにその事件がきっかけで女性達が入浴している時は見張りが立つようになった。
「色々あるんだな…………」
「そう言えばお師匠様の工房にもたくさんあったね…………」
「うん……」
「いったいどれほどお作りになられているのでしょうか…………?」
多種多様の
「おお、【アグライア・ファミリア】じゃねえか! ちょうどいい、お前等も手伝え!」
屈強な冒険者が18階層に訪れるベル達にそう言った。
訳を訊くと、19階層で
名の通り火炎攻撃を行う鳥型のモンスターを18階層まで進出するとリヴィラの街にまで被害が出る恐れもある。
報酬と火の耐性を持つ
その中でベルは『
セシル達と別れて、順調にこなしていくベルは気が付けば一人になり、どことも知れない迷路の一角に立ちつくし、途方に暮れていた、まさにその時だった。
人影らしきものを視界の奥に捉えたのは。
片足を引きずり、何かから逃れるように迷宮の植物が生い茂る物陰へと身を隠す。
ベルは負傷した同業者かと慌てて駆け寄ると、直前になって様子がおかしいことに気付き、警戒を払って物陰に近寄った。
そして―――。
「モンスター…………『ヴィーヴル』?」
目の前の存在に、愕然とする。
青白い肌に、少女のような華奢や四肢を持った人型のモンスター。第三の目を沸騰させる額の紅石を見て。かろうじて竜種『ヴィーヴル』であることを察した。
本来ならヴィーヴルは人型の上半身と蛇に酷似した下半身を持つはずが、眼前にいる彼女はモンスターかどうか疑う程に人間の姿に酷似している。
「……、…………!」
眼前で立ちつくすベルを見上げながら、両腕を抱き締めた体をがたがたと震わせている。
モンスターであることを忘れたように怯え、人間のように恐怖をあらわにしている。
動揺するベルは目の前の光景がともて信じられなかった。
モンスターは人類の敵。そして『怪物』。
本能のままに牙を剥き、襲いかかってくる絶対の殺戮者。凶悪な破壊衝動の塊に理性や感情が介在する隙間もない。
その筈なのに、モンスターに対する闘争本能が欠片も湧いてこない。
刃を突き立てることに抵抗を覚える。
「ぅ、ぁ…………!」
「!」
ベルを恐れて距離を取ろうとする
立ちつくしたまま、怯える
直後、ばさりと、と。
ファイヤーバードは瞳を血走らせて、宙に浮遊しながら狙いを
燃え盛る炎が、
『――――ゲェッ!?』
ベルは
思わず、飛び出してしまったことに項垂れる。
しかし、立ち竦む彼女を見て、足が動いてしまった。
ベルは前髪を掴み、茫然とする
「――――大丈夫、怖くないよ」
片膝を突き、同じ目線で、眉を下げながら笑いかける。
とても間抜けなことをしている自覚はベルにもある。それでももう、ベルは彼女を放っておくことができなかった。
半ばヤケクソでベルは
「平気だよ、これは
「ぽー、しょん…………?」
―――――喋った。
何度目とも知れない、自分の常識が崩れる音が耳の奥から聞こえる。
「おい、ベル! 無事か!?」
「―――っ! リオグさん!?」
傷を治そうとした瞬間に通路からこちらに向かって走ってきているリオグにベルは咄嗟に
きっと、一人いなくなったベルを心配してここまでやってきたのだろうリオグはベルの無事な姿を見て安堵の息を漏らす。
「おう、無事でなりよりだ。…………そいつは誰だ?」
「えっと、その…………」
「どうした? 別にお前が女を庇って手籠めにしたってつっても驚きはしねえよ。団長でそんなもん慣れっこだ」
軽快に話するリオグは包まれている
――――終わった。
冒険者がモンスターを庇うなんて蛮行を流石の団長であるミクロも許しはしないだろう。
そんな不安を抱いていたベルにリオグは言う。
「なんだ、
「え?」
驚きもせずにごく自然に
「な、か……ま…………?」
「その様子だとまだ会っていないか、産まれたばかりか。ベル、こいつをつれて
「え、は、はい…………あの、リオグさん?」
「あー、お前の戸惑いも無理はねえわな。後で団長が説明してくれると思うから今はセシル達と合流するぞ」
「あ、はい」
戸惑いを隠しきれずにベルは