路地裏で女神と出会うのは間違っているだろうか   作:ユキシア

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Three19話

街のホテルの休憩室(ラウンジ)を貸し切って、【ロキ・ファミリア】と【アグライア・ファミリア】はそれぞれの主神を交えて戦争遊戯(ウォーゲーム)の詳細を決める打ち合わせに足を運んだ。

【ロキ・ファミリア】では主神ロキと団長であるフィン。二人に対面するように椅子に座っているのはアグライアとセシシャだった。

「ミクロ・イヤロスはどうしたんだい?」

この場にいるのがミクロではないことに、フィンはセシシャに尋ねるとセシシャは優雅に一礼して挨拶する。

「お初にお目にかかりますわ、神ロキならび【勇者(ブレイバー)】、フィン・ディムナ様。私の名前はセシシャ・エドゥアルド。商人兼冒険者を務め、【アグライア・ファミリア】では主に経理を担当しておりますの。今回、我等の団長は外せれない急用ができましたので代わりに私がこの場を預からせて頂いた所存です」

「急用……………?」

「はい。自由奔放、唯我独尊に突き進む傍若無人の団長が多忙の私に強引に押し付けるほどの急用に参りましたわ」

「そ、そうか……………」

笑顔だが、額に青筋を浮かばせて淡々と言葉に毒を吐くセシシャにフィンは少し引きながら頷いた。

ミクロは異端児(ゼノス)の方を優先して、つい数時間前に任せたとだけ告げてベル達と共にダンジョンに向かった。

詳しい事情も何も知らされずに、強引に今回の打ち合わせを押し付けたセシシャは帰ったら山のようにある仕事をしなければならないと思うと、頭が痛い。

「そんなら始めようか? うちとアグたんとこのゲームの内容を」

「そうね。唯一決まっているのは勝負形式は……………」

「せや。【ファミリア】全員での『総力戦』や」

戦争遊戯(ウォーゲーム)の詳細が決まっていく。

 

 

 

 

 

 

 

一方ミクロは異端児(ゼノス)である竜女(ヴィーヴル)をリド達のところに案内する為にベル達を引き連れてダンジョンに来ていた。

ベル達と春姫も含めたパーティで先導するミクロ達は既に18階層に来ていた。

「リリ、お前にこれを渡しておく」

「え? リリにですか…………?」

18階層で休憩を取っていた際にミクロがリリに腕輪(ブレスレット)を手渡す。

「リリ、お前は自分に冒険者としての才能はないと思い、サポーターとして活動しているとベル達から聞いた」

「――――――ッ! は、はい、リリは」

「それは間違ってる。リリ、お前は自分を侮りすぎだ」

「……………それはどういう意味ですか?」

「お前が【ソーマ・ファミリア】で培った観察力と状況判断能力は非常に高い。それに小人族(パルゥム)亜人(デミ・ヒューマン)の中でも視覚能力に優れている種族だ。なら、それに合う役割(ポジション)は――――」

弓兵(アーチャー)……………ですか? しかし、リリの腕前はからっきりです。ティヒア様や他の皆様方のように弓矢を扱えません」

後衛職である弓兵(アーチャー)ならリリの能力を存分に使える役割(ポジション)だが、リリの腕前では上層では通じても中層、下層では通じなくなる。

Lv的にも、リリ自身の腕前自身も……………他の誰よりも劣る。

「誰も弓矢を使えとは言っていない」

「はい?」

予想外な返答に目を点にするリリは指された腕輪(ブレスレット)に視線を向ける。

「『アコーディ』。それがその魔道具(マジックアイテム)の名前」

「ア、アコーディ……………?」

聞き返す様にその名前を口にすると、腕輪(ブレスレット)がリリの声に反応して輝きを放つ。突然のことにリリは咄嗟に瞼を閉じ―――光が止んだ頃に目を開ける。

そこで今の自分にリリはあらん限り目を大きく見開いた。

「な、なんなんですか!? これは!?」

驚きの声を上げるリリに付近にいるベル達も思わず、そのリリの姿に驚きと困惑を隠せれないなかで、セシルだけは同情と哀れみの眼差しを向けていた。

リリはいつものフード付きのローブではなく、踊り子を連想させる露出の多い戦闘衣(バトル・クロス)に右腕には籠手を装備し、左腕には籠手としては一際大きい上に円筒がある妙な形をした籠手だった。

「リ、リリ……………」

「ベル様!? こちらを見ないでください!!」

「ご、ごめん!!」

アマゾネスのような格好となるリリにベルは思わず魅入ってしまうが、リリの叫びに慌てて眼を逸らす。

リオグは眼福とぼやいているが、セシルとスウラが強引にリリから視線を外させた。

「団長様!? なんなのですか!? この姿は!?」

魔道具(マジックアイテム)、『アコーディ』の能力装備。所有者の声に反応して起動すると同時に所有者の恰好を変化させる魔道具(マジックアイテム)

「そういうことをリリは聞いているのでありません!? どうしてこのような恰好をしなければならないのですか!?」

淡々と能力説明をするミクロだったが、リリが聞きたかったのはそちらではなかった。

「アイカがリリはこちらの方が似合うって言ったから」

「あの人はぁぁぁああああああああああああああああああああああッッ!!!?」

18階層に響く少女(リリ)の心の叫びに、地上にいるアイカは満面な笑顔で親指を立てている姿を幻視した。

「安心しろ、リリ。それは見た目に反して高い防御力を持っていて、様々な耐性付与も施している」

「どうしてそう無駄に高性能なんですか!? 団長様、正直に申し上げまして貴方様の頭はおかしいとリリは思います!!」

うんうんとリリの魂の叫びにセシル、リオグ、スウラは感心するようにリリの言葉に頷いていた。

ベル達にいたってはもはや苦笑するだけ。

しかし、そんな叫びも虚しく終えてミクロは説明を続ける。

「右手のは普通の籠手。左手にあるそれは空気を吸収し、凝縮して衝撃波を放つ。威力の加減はリリの意思で左右されて『散弾』、『貫通』、『連射』という機能があるけど、まぁ、物は試しだ」

数十(メドル)先にある木を指すミクロは試し撃ちにしろとリリに告げる。

しぶしぶと言った感じにリリは何もかも諦めた様子で構える。

すると、円筒に空気が吸収されているのがわかる。

今、とリリは発射すると、円筒から衝撃波が放出されて標的(ターゲット)である木に風穴を開ける。

その光景に呆然とするリリ達にミクロは口を開く。

「使いこなせばLv.1のリリでもパーティでなら下層までは通じると思う。後は頑張って訓練するのみ。あ、魔剣のように砕けることはないけど、それ自体が壊れたら使えないからそれには注意」

注意事項を促すミクロに啞然とするリリはぽつりと呟く。

「……………リリは、常識はなんなのか、真剣に考える必要があると思いました」

その言葉を聞いたセシルは悟った眼差しでリリの肩に優しく手を置いた。

「……………私、思うんだ。強い人に限って常識という言葉が程遠いって」

これまでに多くの冒険者を見て、強者達に鍛え上げて貰ったセシルは一種の悟りを身に付けていた。

ミクロから教わり、シャルロット、アルガナ、バーチェからも徹底的にしごかれているセシルは思い出すだけでよく死ななかったな、と自分自身に感心すると涙が出てくる。

地上に帰還したら真っ先に(アイカ)の胸の中で思いっきり泣こうとセシルは決めた。

「そろそろ行こうか。せっかくだからリリもそれを使いこなせれるように下層のモンスターと戦おう。多少危険な方が上達も速い」

リリの心の中でバキバキと何かが壊れる音が聞こえた。

それに察したのか、セシルはリリを後ろから優しく抱きしめた。

 

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