路地裏で女神と出会うのは間違っているだろうか   作:ユキシア

180 / 202
Three24話

ここで一つミクロ・イヤロスについて振り返ろう。

ミクロ・イヤロス。

幼少の頃から迷宮都市オラリオの路地裏で生活していた彼はゴミ箱をあさり腐りかけの食べ物を食べ、泥水を啜って生きる毎日を過ごしていた。

薄汚く、薄暗い路地裏で今日を生きるのに必死だった彼は血の気の多い冒険者のストレス発散の道具として暴力を振るわれる。

そんな日々を過ごす中で彼は自分の人生はこの路地裏で終わるのだろうと思っていた。

そこに女神アグライアと出会うまでは。

ミクロはアグライアと出会い、彼女から世界の美しさを教えてくれた。

絶望しかなかったミクロの光となってくれた。

それがアグライアとの出会い、そして【アグライア・ファミリア】の誕生である。

それからミクロはアグライアの眷属となり、彼の冒険が始まった。

アグライアの神友である【ミアハ・ファミリア】に所属しているナァーザと出会い、路地裏でミクロを道具のように暴力を振るっていた冒険者を痛めつけているところに【アストレア・ファミリア】に所属しているリューと出会う。

リューから様々なことを教わるミクロは仲間を殺されたことで復讐に走るリューを止めて、代わりに自分がその【ファミリア】を壊滅させた。

その際左眼を失ったがミクロは気にしていない。

リューは【アグライア・ファミリア】に改宗(コンバージョン)。新しい生活が始まる中でミクロは【ザリチュ・ファミリア】に所属しているティヒアと出会い、共にダンジョンで冒険する際、怪物の宴(モンスター・パーティ)が起きる。

それを乗り越えた矢先、今度は強化種のオークと遭遇(エンカウント)。ミクロは自分の持つ全てを用いて強化種のオークを打倒。

この時、ミクロは【ランクアップ】。最速記録を叩きつける。

魔導書(グリモア)を読んで魔法も獲得、『発展アビリティ』も加えて神々からミクロへ【隻眼の暗殺者(ドロフォノス)】という二つ名が与えられた。

それからもミクロはリューとティヒア。更に新たにリュコスを仲間に加えて冒険を続け、解散した【リル・ファミリア】に所属していたパルフェを仲間に加える。

Lv.3となったミクロは『神秘』の『発展アビリティ』を獲得する。

ミクロがLv.3となって【アグライア・ファミリア】の入団希望者が一気に増えた。

更には【ディアンケヒト・ファミリア】との戦争遊戯(ウォーゲーム)に勝利したミクロは新しい本拠(ホーム)を建てる。

それが『夕焼けの城(イリオウディシス)』。

増えた団員、新しい本拠(ホーム)。ミクロは新たな気持ちで冒険が始まるのだが。

【シヴァ・ファミリア】

最強の派閥であったゼウス・ヘラの【ファミリア】に滅ぼされた最悪の【ファミリア】。そして、ミクロの両親が所属していた【ファミリア】。

オラリオの破壊を目論んでいた【シヴァ・ファミリア】の脅威がミクロ達に降り注ぐ。

破壊に快楽を覚えた【シヴァ・ファミリア】にミクロはリュー達を人質に取られて命を落とすが、突如現れた魔法陣によって息を吹き返す。

そして【シヴァ・ファミリア】刺客を見事打ち倒してミクロはLv.4となった。

その後、ミクロは父親であるへレスと街中で遭遇。

その時、自分の存在がどういうものなのか、自分の母親のことについて知る。

ギルドから『強制任務(ミッション)』が下され、ミクロ達は24階層でフェルズと出会い、ミクロは自分は愛されていることを知り、涙を流す。

自分のことを受け入れつつミクロは冒険を続け、歓楽街でアイカを身請けし、その後、セシルを弟子にした。

この際ミクロの二つ名は【覇者】へと変わった。

順調に到達階層を増やしつつミクロはLv.5に到達する。

【ランクアップ】し、ミクロはアイズと再戦、勝利を収める。それからも弟子であるセシルを鍛えつつ【ファミリア】の為に貢献している時、ミクロの前に再び【シヴァ・ファミリア】が姿を現した。

【シヴァ・ファミリア】の中で最も優れた者達、『破壊の使者(ブレイクカード)』の一人、エスレアはミクロを鍛える目的で姿を現した。

家族(ファミリア)を守る為にミクロはそれを了承、エスレアの下で己を鍛えて、最後には自分を鍛えてくれたエスレアに勝利し、ついにLv.6へと到達した。

Lv.6となって冒険を続けるミクロの前に主神であるアグライアが勧誘した少年、ベル・クラネルと出会う。

兔のような印象を与えるベルはダンジョンに出会いを求める為に冒険者を目指していたらしい。

ミクロは団長として面倒をみつつ、セシルと共にベルも鍛える。

そこに【シヴァ・ファミリア】である破壊の使者(ブレイクカード)の一人ジエンと出会い、ミクロは己の運命に悩まされる。

そんなミクロを守る為にリューはジエンと戦い、ミクロの手助けもあって勝利することができた。

そのジエンは同じ破壊の使者(ブレイクカード)であるキュオに殺され、キュオもまたミクロの手によって永い眠りにつく。

【ロキ・ファミリア】との遠征から地上に帰還してすぐにミクロの前に死んだはずのシャルロットと出会い、涙を流した。

失った時間を取り戻すようにミクロは母親と一緒の時間を過ごすも、悲劇は起こった。

シャルロットの死という残酷な現実。

心がなかったミクロ。アグライアに拾われてその心ができたミクロに初めて負った傷は母親の死。

その傷を家族(ファミリア)が埋めてくれた。

ラキア王国の侵攻。その時、ミクロは自分の父親であるへレスと戦う。

戦争奴隷だったへレスはシャルロットと仲間達共に理不尽なこの世界を変える。その理想の為に戦い続けてきた。

犠牲を払いながらも、死んでいった仲間達の為に戦うへレス。

家族(ファミリア)の為に戦うミクロ。

二人は互いが背負う信念と覚悟をぶつけあい、最後はミクロが勝利した。

へレスは強い。理想の為ならばと家族さえ切り捨てようとした。

だができなかった。

家族を愛する想いだけは捨てることができなかったへレスはミクロに敗北して最後は自分の息子の手によってあの世にいるシャルロットと仲間達の元へ逝く。

そして、へレスを倒したミクロはオラリオでオッタルに続くLv.7へと到達した。

ミクロは過酷な運命からも逃げず、立ち向かい己を貫き通してきた。

彼を知る者なら誰もが彼をこう言うだろう。

彼は正真正銘の『英雄』だと。

生まれつき『英雄』としての『器』を持ち、その武勇は多くの人を惹き付ける。

僅か五年と少しの歳月で二大派閥から三大派閥まで登り詰めることができたのは紛れもない彼の実力。

彼なしに【アグライア・ファミリア】は成立しないだろう。

オラリオでもミクロを知らない者はいない。

故に神々は彼に新たな二つ名を授けることにした。

それは【ロキ・ファミリア】と【アグライア・ファミリア】の戦争遊戯(ウォーゲーム)の詳細を決める為に摩天楼施設『バベル』で緊急招集した神々の一人がそう提案してこの場にいる全ての神々がそれに同意した。

それともう二人、話題を集めている冒険者、ベル・クラネルとセシル・エルエスト。

その知名度・話題は流石にミクロよりは劣るも、ミクロの記録を塗り替えた世界最速兔(レコードホルダー)であり、前の【アポロン・ファミリア】の戦争遊戯(ウォーゲーム)で活躍したベルとミクロの弟子でかの【剣姫】と同じ一年で【ランクアップ】を果たした大鎌使い。

ベル同様に【アポロン・ファミリア】との戦争遊戯(ウォーゲーム)で活躍し、一躍その名を上げたセシル。

神会(ディナトゥス)で神々は彼等に新たな二つ名について盛り上がり、決めた。

神から賜った三人の新たな称号。

 

セシル・エルエスト。二つ名を【戦鎌の覇姫(ヴァイナ・リッパー)】。

 

ベル・クラネル。二つ名を【白雷の兔(レイト・ラビット)】。

 

そして―――

 

ミクロ・イヤロス。二つ名を【覇王(アルレウス)】。

 

神々から賜った新たな二つ名を知るのはもう少し先の話になる。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。