路地裏で女神と出会うのは間違っているだろうか   作:ユキシア

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第36話

【ランクアップ】を果たしてミクロ達はしっかりと準備と装備を整えて『遠征』を行っていた。

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!』

現在30階層で高さ五M(メドル)はある紅色の肉食恐竜『ブラッドサウルス』の群れと交戦していた。

「リュコスは右側。俺は左側。リューは詠唱を開始。ティヒア達は俺達の援護」

ブラッサウルスと戦いながら指示を飛ばすと全員が頷いて応える。

「【今は遠き森の空。無窮の夜天に鏤む無限の星々愚かな我が声に応じ、今一度星の加護を。汝を見捨てし者に光の慈悲を】」

リューの足元から空色の魔法円(マジックサークル)が展開されて更には通常より速く詠唱を唱える。

Lv.5に【ランクアップ】した時にリューは新たなスキル『妖精疾駆(フェアリースルア)』を発現していた。

詠唱の高速化を可能とするそのスキルは誰よりも速く力を発揮したいリューの想いから発現した。

「こっちもまだまだ行くよ!」

リュコスは更に加速してブラッドサウルスに攻撃する。

その脚にはミクロが作製したメタルブーツがある。

『イスクース』類似の魔道具(マジックアイテム)『スケロス』。

所有者の脚力を上げる魔道具(マジックアイテム)で元々敏捷に秀でていたリュコスの動きは更に速く、強くなる。

元々リュコスは魔道具(マジックアイテム)に頼るつもりなんてなかった。

自分の力のみで戦うつもりでいた。

だが、セツラとの一件以来自分の不甲斐無さを感じたリュコスは仲間を守る為に魔道具(マジックアイテム)にも頼ることにした。

ミクロが仲間が死ぬことがもう二度とないように。

「全員構えて!」

「はい!」

弓を番えるティヒアの言葉にパルフェ達は杖を構える。

「放って!」

放たれたティヒアの矢には雷属性が付与されていた。

そして、パルフェ達も様々な属性の魔法を放った。

放たれた矢と魔法に直撃したブラッドサウルスは悲鳴のような雄たけびを上げる。

「流石はミクロが作った魔道具(マジックアイテム)ね」

Lv.2の自分が30階層のブラッドサウルスを怯ませることが出来たことにミクロの魔道具(マジックアイテム)の凄さに改めて驚く。

「本当ね……」

パルフェに至ってはもう苦笑すら浮かべていない。

ティヒア達はそれぞれ持っている魔道具(マジックアイテム)に視線を向ける。

「本当にこれで属性付与できるなんてね」

指に嵌めている五つの指輪を見るティヒア。

ミクロが作製した魔道具(マジックアイテム)『アヌルス』。

指輪一つに一つの属性が宿る魔道具(マジックアイテム)でそれを武器に付与することが出来る。

「ミクロの発想力には本当に驚くことばかりね」

「素直にそう思います」

驚嘆するパルフェ達も自分達が持っている柄の部分に竜種の彫刻、その身体には七つの宝玉がはめ込まれている杖を見る。

パルフェ達が持っている杖の魔道具(マジックアイテム)『ヴァルシェー』。

一言で表すなら魔法が使えない者でも魔法が使える魔道具(マジックアイテム)

杖にあらかじめ魔力を蓄積、送ることで決められている魔法を放つことが出来る。

送る魔力やイメージによって威力は左右されると回数制限、使用範囲が狭いことが難点とミクロはパルフェ達に注意を促していたがそれのどこか難点なんだろうとパルフェは思ったが口には出さなかった。

「これで私も戦える……」

杖を強く握りしめるパルフェはそのことに歓喜した。

今までは収納魔法も持っていたこともあり、サポーターとしてミクロ達と行動を共にしていたが、【シヴァ・ファミリア】の奇襲の際に恩人であるミクロが死んでしまったことに酷く悔やんだ。

顔には出さないがティヒアも同様にその事に酷く後悔して一人で遅くまで自己鍛錬をするようになっていることをパルフェ達は知っている。

「【来たれ、さすらう風、流浪の旅人。空を渡り荒野を駆け、何物よりも疾く走れ。星屑の光を宿し敵を討て】」

「リュコス。後退」

リューの詠唱が終えたと同時に後退する二人にリューは魔法を発動した。

「【ルミノス・ウィンド】」

緑風を纏った無数の大光玉はブラッドサウルスを群れに降り注ぎ全滅させた。

放たれたリューの魔法によってミクロ達の前にはモンスターの影はなかった。

「サポーターは魔石とドロップアイテムの回収。終わり次第地上へ帰還する」

目標到達である30階層までたどり着いたミクロ達はこれ以上の深追いをしないで数日ぶりの地上に帰還することにした。

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!』

「だ、団長!?」

戦いが終えたミクロ達に一体のブラッドサウルスが現れた。

先ほどまでミクロ達が戦っていたものではなく戦闘終了後にたまたま近くにいたブラッドサウルスがミクロ達に襲いかかって来た。

動こうとするリュー達をミクロは制した。

「俺が倒す」

そしてミクロは詠唱を唱えた。

「【這い上がる為の力と仲間を守る為の力。破壊した者の力を創造しよう】」

それは前に出会った父親であるへレスが置いていった魔導書(グリモア)より手に入れたミクロの新たな魔法。

「【礎となった者の力を我が手に】」

ミクロは力を望んだ。

仲間を守る力を。

いずれ戦う【シヴァ・ファミリア】を倒す為の力を。

へレスのところまで這い上がる為の力を。

「【アブソルシオン】」

魔法を発動してミクロは再び詠唱を唱えた。

「【我が身は先陣を切り、我が槍は破壊を統べる】」

それはかつて戦い、ミクロに敗北したセツラの魔法。

「【ディストロル・ツィーネ】」

ミクロの手元に現れたのは一本の黒い槍。

その槍で襲いかかってくるブラッドサウルスを両断し、瞬殺した。

もう周囲にモンスターがいないことを確認して魔法を解除する。

魔法のスロットは最高三つと決められている。

だが、ミクロが手に入れたその魔法はその常識を壊した。

新たに手に入れたミクロの魔法【アブソルシオン】。

打倒した相手から魔法を吸収することが出来る。

それによりミクロはセツラの魔法を使えるようになった。

詠唱把握と打倒、二つ分の詠唱時間と精神力(マインド)の消費という行使条件があったがそれを条件にあらゆる魔法を行使できるという反則技(レアマジック)

今以上に強くなる為の魔法をミクロは手に入れた。

「遠征終了」

こうして無事に『遠征』が終えたミクロ達は地上に帰還して本拠(ホーム)である『夕焼けの城(イリオウディシス)』に帰って来た。

「ただいま」

「お帰りなさい。全員無事に帰って来れてなりよりだわ」

ミクロ達を出迎えの言葉を送るアグライア。

「後で報告書と一緒に今回の遠征の成果を話す」

「わかったわ。貴方も少しは休みなさいよ」

「わかった」

頷くミクロは気付いていたんだなと思った。

ミクロは今回の『遠征』の為に多くの魔道具(マジックアイテム)を作製していた為、殆ど寝ていない。

『遠征』の時ではある程度は寝てはいたがしっかりと休んだというわけでもない。

その事に気付いているアグライアは特に注意することなくただ休むことだけを告げた。

『遠征』での荷物を片付けてミクロは真っ先に執務室に足を運び報告書を書く。

執務机に座って早速今回の『遠征』の報告書を書き始める。

「失礼しますわ」

ノックして執務室に入って来たセシシャ。

「遠征お疲れ様ですわ。成果はありまして?」

「ああ、明日の魔石やドロップアイテムの換金を頼む」

魔石の換金及びドロップアイテムの交渉は商人兼冒険者であるセシシャに一任している。

「わかっておりますわ。私にお任せを。あ、これは前回の交渉の結果と次回の交渉相手の資料ですわ。お目通しを」

「わかった」

セシシャから受け取った資料を見てミクロは頷く。

セシシャがこの【ファミリア】に入ってきたおかげで【ファミリア】の資金が二割増加している。

今回も交渉の結果はこちらの利益が多く得られているのもセシシャの手腕のおかげ。

そして、次回の交渉相手の資料を見てミクロはまたかと呟く。

それは魔道具(マジックアイテム)の売買。

【ディアンケヒト・ファミリア】との『戦争遊戯(ウォーゲーム)』が終えて数ヶ月も経つにも関わらず今も魔道具(マジックアイテム)の交渉を行おうとする商人は腐るほどいる。

「ミクロ。やはりそろそろ魔道具(マジックアイテム)の売買にも視野を入れておくべきですわ。一部の商人に売買を認めてその利益を私達が得るのも一つの手ですわよ」

ミクロが魔道具(マジックアイテム)の売買を拒むのは悪用をされないようにするためである。

ミクロが作製する魔道具(マジックアイテム)はどれも強力な為万が一のことも考慮しなければならないがセシシャの言う通り限界が近いかもしれない。

「あ、そうだ」

その時ミクロは閃いた。

(ホルスター)から取り出した義眼の魔道具(マジックアイテム)『シリーズ・クローツ』。

「これの売買なら認めると商人たちに言ってくれ」

それをセシシャに渡す。

「冒険者をすれば目を失う奴もいるはずだ。なら、医療系の【ファミリア】にも興味を示すことも出来るし、能力付きなら商人にだってそれなりの価値は見出せる」

なによりこれならそこまで悪用される心配はない。

安全面も考慮したこの魔道具(マジックアイテム)ならミクロは売買を認めた。

「なるほど。確かに需要はありそうですわ。わかりましたわ。次の交渉でそれなりの利益を毟り取って参りますわ」

「任せた。後これはセシシャに」

ミクロはセシシャに『ヴァルシェー』を手渡す。

「魔力は既に蓄積している。これを護身用に持っていたほうがいい」

「ええ、感謝いたしますわ。それでは私はこれで」

執務室を出ていくセシシャを見てミクロはもう一度報告書を書き始める。

今回の遠征で犠牲者はでなかったが、道具(アイテム)回復薬(ポーション)の消費は激しかった事と個人的には魔道具(マジックアイテム)の改善点がいくつかあった

そう思いながら報告書を書いているとノック音が聞こえてミクロは大丈夫と返答。

「団長。遠征お疲れ様です」

「ありがとう。他の団員達に何か変わりは?」

「いえ、いつもと変わらず何人かは到達階層を増やしたそうです」

「わかった。報告ありがとう」

「失礼します」

ミクロ達が『遠征』に行っている間に他の団員達の変化を知らせに来た団員に労いの言葉を送る。

他の団員達も順調に強くなってきていると考えながら羽ペンを動かす。

「団長!」

「どうした?」

すると、勢いよく執務室の扉を開けて入って来た男性団員達は真面目な顔でミクロに詰め寄った。

「団長!あんたに一つ頼みがある!?」

「攻撃、防御、移動系の魔道具(マジックアイテム)以外の魔道具(マジックアイテム)なら貸すけど?」

自分に何かを頼むと言ったらそれしか思いつかなかった。

だが、魔道具(マジックアイテム)に過信しないようにミクロは幹部を除く『遠征』の時以外の魔道具(マジックアイテム)の貸出はミクロの許可を取ることにしている。

「団長!あんたは透明化できる魔道具(マジックアイテム)はあるか!?」

「ある」

「俺達に貸してくれ!」

まだ試作段階で実証が終えていないが装備者を透明化する魔道具(マジックアイテム)をミクロは作製していた。

「何に使うんだ?」

じっと見つめるように見るミクロに男性団員は言葉を詰まらせる。

「ダ、ダンジョンでのモンスターの遭遇(エンカウント)を下げて安全に探索ができるようにさ!」

「そ、そうだ。その為に俺達に貸してほしい!」

「………」

嘘だな。とミクロは思った。

「わかった。後で俺の部屋にこい」

だけど、仲間を疑うのもよくないとついでに実証するにはいい機会と判断してミクロは貸すことにした。

「シャッ!」

歓喜する男性団員達は実は邪な気持ちで一杯だった。

【アグライア・ファミリア】は女性の方が圧倒的に多い【ファミリア】でその上美女美少女ばかり。

なら女性団員達の入浴を覗くしかないという気持ちでミクロにそのために必要な魔道具(マジックアイテム)を借りにきていた。

透明化できれば覗き放題。

ミクロを騙したことに多少の罪悪感はあったが普段から女性に囲まれているなら少しぐらいはこちらもいい思いがしたいという欲望がそれを上回った。

その後、ミクロは報告書を書き終えてそれをアグライアに提出して成果を話してから男性団員達に透明化になるフード付きのローブを渡す。

「団長、あんたも来るか?」

ダンジョンに?と思ったがミクロはそれを断った。

アグライアから休むように言われている為ミクロは一足早く休むことにした。

誰よりも速く就寝したミクロは突然の悲鳴に起き上がって悲鳴が聞こえた浴室に駆けつけるとそこにはタオルで体を隠しているリューや女性団員達とボロボロで床に転がっている男性団員達。

「何があった?」

「あ、団長!こいつら覗きです!」

フールがタオルで体を隠しながら倒れている男性団員達を指す。

「覗き?何を?」

浴室にはほぼ毎日入っているし、コレといって何か特別な物がある訳でもない。

それなのにいったい何を覗いていたのかミクロにはわからなかった。

「私達をです!」

何を覗いたかフールが答えるがそれを聞いてミクロはますますわからなかった。

「フール達の何を覗いたんだ?」

率直な言葉を言うミクロに女性団員達はやや呆れ気味にああ、団長はこういう人だったなとぼやいた。

「ミクロ。取りあえず貴方は疲れているでしょうからもう休みなさい。この者達の処罰は私達でつけます」

リューはミクロにそう告げて男性団員達が身に着けているフードを渡す。

「これはもう彼等には渡さないように」

「わかった」

「だ、団長……助け………」

そこで途絶える声。

ミクロは大人しく部屋へ戻り寝ることにした。

その後も多少は悲鳴が聞こえたが特に気にすることなくミクロは眠りについた。

次の日の朝。居室(リビング)で逆さづりになっている男性団員達からフードの実証を聞いて視線や気配までは隠すことはできないことが判明した。

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