リド達『
「………」
ミクロは自室のベッドの上で寝転がっていた。
それはミクロがディラとの戦闘の後に目を覚ました時。
『ミクロ。貴方にはダンジョンに潜ることをしばらく禁止にするわ』
主神であるアグライアにそう言われたからだ。
『貴方は本当に強く、いいえ、強くなりすぎているの。普通の人では追いつけれない程の速さで強くなってしまった。そのおかげで短期間で私達はここまでこれたけど、貴方ばかりに負担を掛けさせるのは【ファミリア】として良くないの』
団長として団員達を引っ張って、仲間を死なせない為に
そうなれば万が一の時にミクロがいなくなれば【ファミリア】はあっという間に崩壊してしまう。
『貴方が悪いわけじゃないの。皆の為にも今は休みなさい。
アグライアにそう言われてミクロは鍛錬以外することがなくなった。
視線を机に向けるとそこには数冊の
その全てはフェルズが『
友達を助けただけと言ってもそれでは気持ちが収まらないとしつこく言われてミクロはしぶしぶそれを受け取った。
売る訳にもいかずにずっと机の上に放置にしている。
【アブソルシオン】を習得しているミクロに
なら、ダンジョンに潜っているリュー達か団員の誰かにでも読ませようと思いつつ寝返る。
することもないミクロは鍛錬でもしようと中庭に向かうと数人の男性団員が模擬戦を行っていた。
「あ、団長。どうしましたか?」
「暇だから鍛錬に来た」
休憩中の男性団員から声をかけられて答えると納得するように頷くとミクロは男性団員の首根っこを掴む。
「付き合って」
「え、ちょ、勘弁してくださいよ!?」
強制的にミクロの訓練に付き合わせられた男性団員に他は同情の眼差しを向ける。
団員達はミクロの訓練が普通のより
数十分後、全身がボロボロで地面にうつ伏せに横たわる男性団員ともう終わりかと首を傾げるミクロ。
「大丈夫?」
「もう……むり………」
その言葉を最後に気を失う男性団員は他の団員に担がれて部屋まで運ばれる。
「やり過ぎた?」
「あー、団長。一応言うけどやり過ぎ」
がくりと肩を落とすミクロに雰囲気が何だか変わったなと団員達は思った。
感情が顔に出るようになったというか明るくなったミクロの変化に団員達は頬を掻く。
団員達もミクロがダンジョンに行くことが禁止されていることを知っている。
きっと暇を持て合しているんだろうと思い気を遣う言葉でもかけようと思った時。
「なぁ、ちょっといいか?」
「ん、どうした?」
「いいから」
他の男性団員も集めて何かを話し合うと笑みを浮かべてミクロに話しかける。
「団長。団長は鍛錬以外にすることがないのですか?」
「ない。遊びもよくわからない」
その言葉を聞いて笑みを深ませる。
「団長。俺達が団長に遊びを教えてやります!」
胸を張って言う
「どんなこと?」
「ふふふ、男の遊びですぜ。団長」
ニヒルに笑みを浮かばせて語る。
「今日の夜に実行しましょう。それとここにいるメンバー以外にこの事は話すのはダメですよ!マジで!お願いしますから!特に副団長には!?」
「わかった。約束する」
必死に頼み込むリオグの言葉にミクロも頷いて約束する。
「よし!それと一つお願いがあるのですが」
「何?」
「俺達遊ぶ金がそんなにないので団長に出しては頂けないかなと」
「問題ない」
「シャッ!」
了承を得て拳を握り締めるリオグ。
ミクロも遊びを教わるのだからそれぐらいはしないとと思いリオグの頼みごとを聞いた。
「それじゃ、今日の夜に門の前に集合ですよ!」
「わかった」
了承してミクロはナイフを握り締める。
「それじゃ、夜まで暇だから模擬戦の相手して」
「え?」
数秒後には中庭から悲鳴が鳴り響いたのは言うまでもなかった。
深夜とも呼べる時間帯にミクロとリオグ達は門の前に集まる。
「なぁ、本当に大丈夫なのか?」
「大丈夫だって。団長だって年頃の男だぜ?興味があるに決まってる」
目的地に向かう途中で小声で話し合うリオグ達。
「前に副団長達に何をされたのか忘れたのか?」
前に女性団員達の入浴を覗こうとしたリオグ達はその時の恐怖で体を震わせる。
「も、問題ねえ。こっちには団長という強い味方がいるんだ」
基本的にミクロに甘い女性団員達。
ミクロがリオグ達を庇えば深く追及されることはないと踏んでの行動。
「なぁ、どこに向かっているんだ?」
「もうすぐですよ、団長」
都市南東部に向かって歩くミクロ達はある場所へと到着した。
南東のメインストリート寄りにある『歓楽街』へとたどり着いたミクロは突然の甘い匂いに鼻を摘まむ。
「変な臭い」
「香水ですよ。ここで今日俺達は遊びます」
アマゾネスを中心に多くの種族の女性が蠱惑的な笑みを浮かばせて男性を誘っている中でミクロはここで何をするのだろうと首を傾げる。
「ここで何をするんだ?」
「それは行ってみてのお楽しみですぜ?それより団長お金の方は?」
「持って来てる」
『リトス』からあらかじめ小分けにしている袋を一人ずつリオグ達に渡す。
「一人一〇〇万ヴァリスで足りる?」
ズシリと重く感じる袋の金貨の金額を言うミクロにリオグ達は絶句した。
「十分過ぎますよ……というかどんだけ金があるんですか?」
「あと三〇〇〇万ヴァリスはある」
貯まるに貯まっていき、前にフェルズが大金をミクロに渡してきたために気が付けばかなり集まっていたことにリオグ達が遊びに誘われるまで気付かなかった。
「団長。もっと遊びを覚えましょう」
「努力する」
真剣な眼差しでそう言われてミクロも努力するように頑張る。
「団長なら女性から声をかけてくるはずですから遊びに来たと言えば後は女性について行けば問題ありません」
「皆で遊ばないの?」
「それが男の遊びです。それじゃ、明日の朝に会いましょう!」
そう言ってリオグはどこかの店の中に入って行った。
「あー、団長も取りあえずは楽しめばいいと思いますよ。それじゃ、俺達も行きますね」
他の団員達もどこかに去って行き、ミクロは取りあえずは街中を歩くことにした。
ケイオス砂漠の文化圏に
取りあえずはリオグの言葉通りその辺りを適当に歩くことにした。
そう言えばこの辺りは【イシュタル・ファミリア】の
「ボク、どうしたのかな~?」
間延びしたのんびりするような声に振り返ると白い
「遊びに来た」
リオグの言葉通りにそう言うと女性は少し驚くような反応をするがすぐに笑みを浮かべる。
「それじゃ、お姉さんと遊ばないかな~?」
「わかった」
本当にリオグの言っていた通りに女性から声をかけられて腕に抱き着かれる。
「ふふ、それじゃあこっちだよ~」
近くの店の中に連れられて一室に案内される。
一つの大きなベッドと簡易シャワーがある部屋へと案内されたミクロ。
「ふふ。こういうところは初めてかな~?」
「うん」
素直に返答すると女性は楽し気に笑みを浮かべる。
「そういえばボクの名前は?私はアイカだよ~」
「ミクロ。ミクロ・イヤロス」
「あらあら、もしかして【アグライア・ファミリア】の団長さん?」
「うん」
名前を聞いてミクロが噂されている【アグライア・ファミリア】の団長だということに驚く。
「凄いね~。本当に子供のボクが団長なのね~」
微笑ましく頭を撫でるアイカにミクロは大人しく撫でられる。
「それじゃ、一応聞くけどお金はあるかな?」
「うん。これで足りる?」
『リトス』から一〇〇万ヴァリスの袋を見せるとアイカは絶句して一瞬呼吸が止まった。
「はぁー、ふぅー。うん、多すぎ」
深呼吸して代金分だけ取ると
「何で脱ぐの?」
「え?」
シャワーでも浴びるのかと思ってそう問いかけるとアイカは首を傾げてもしかしてと疑問を抱いてミクロの手を取って自分の胸に誘導させて触らせる。
「どうかな~?」
「柔らかい」
率直な言葉を述べるアイカは疑問が確信の方に傾き思い切って訊いた。
「ミクロ君はどうしてここに来たの~?」
「団員から男の遊びを教わる為。歩いていれば女性の方から声をかけられるから後は女性について行けばいいって言われた」
その言葉にアイカは確信した。
ミクロはこれからすることがまだ理解も出来ていないということに。
今も触っているにも関わらず反応も示さない辺りからまだミクロには早いと思い
「ミクロ君にはまだここは早かったみたいだね~」
「?」
「お話でもしようか~」
アイカの言葉に理解出来なかったミクロは首を傾げる。
その反応に微笑みながらベッドに座って話をすることにした。
他愛のない会話やダンジョンでの出来事など話したり、アイカはアイカでその話に聞いて微笑んだり、問いかけたりなどミクロにとって今までにない長い会話をアイカと行った。
「さっきから気になってんだんだけどね~。それは
藍色の指輪『リトス』を指すアイカにミクロは頷く。
「ある程度の物ならこれで収納できる」
「便利なんだね~」
荷物運びなどに楽だろうなと思いつつ会話を続けるとミクロはアイカに訊いた。
「アイカはここで働いているの?」
「売られた身としては一応ね~。借金が返せなくなっちゃってここに来ちゃったの~」
元々貧乏暮らしのアイカは抱えきれなくなった借金の返済に『歓楽街』に売られた。
その事をあははと笑いながら語るアイカ。
「『身請け』してくれる人がいればここから出れるけど~、ミクロ君してくれるかな~?」
『身請け』―――――歓楽街の独自の
そうすれば出金者は娼婦を歓楽街から落籍させることが出来る。
大金を出したミクロに冗談でそう言うとミクロは頷いた。
「わかった。どこに行けばいい?」
「え、えっとね~、イシュタル様のところに行けば」
「案内して」
抱えられて驚きながらイシュタルがいる『
案内された部屋に入ると
「アグライアのところの子供が突然何のようだい?」
突然やってきたにも関わらず平然と言葉を述べるイシュタルにミクロはアイカを下ろしてイシュタルに言う。
「アイカを『身請け』したい。金はこれぐらいで足りる?」
ドサとテーブルに置く金額にアイカは目を見開く。
「一〇〇〇万ヴァリスはある。足りないならまだ出せる」
『身請け』は娼婦の位にもよるが相場は二、三〇〇万ヴァリス。
その三倍以上の金額をイシュタルの前に置くがイシュタルは顔色変えることなく
「その子のどこが気に入ったんだ?」
「全部」
即答するミクロに視線を向けて嘘は言っていないことに気付いたイシュタルは笑みを浮かべる。
「いいだろう。好きにしな」
「ありがとう」
礼を言ってアイカを連れて帰ろうと踵を返すと待ちなとイシュタルに呼び止められる。
「【ドロフォノス】いや、ミクロ・イヤロス。私の【ファミリア】に来る気はないかい?」
「ない。俺はアグライアの眷属だ」
「そうか、気が向いたらまた来な」
きっぱりと断るミクロはアイカを連れて部屋を出ていく。
「ね、ねえ、本当に良かったの~?」
自分の『身請け』の為に一〇〇〇万ヴァリスを支払ったことに今も驚きを隠せれないアイカは思わず訊いてみてしまった。
「問題ない。金には困っていない」
まだまだ十分にある金を使ったところで痛くもなかった。
「アイカとの話は楽しかった。話し相手になってくれると嬉しい。ダメ?」
「えっとそれだけ、かな?」
「他に何かある?」
首を傾げて尋ねてくるミクロにアイカは本当にそれだけの理由で『身請け』したことに言葉が出なかった。
「そろそろ朝だから皆に会いに行こう。アイカ」
手を繋いで引っ張るミクロにアイカは微笑む。
「ふふ、行こうか~」
間延びした声でミクロについて行く。
再会したリオグ達にミクロはアイカを紹介すると男性団員達はミクロと自分達の器の大きさに違いに言葉が出なかった。