アイズがミクロに再戦を申し込んでから数日後。
「すまないね。アイズの頼みを聞いて貰って」
「問題ない」
微笑を浮かべながら謝るフィンにミクロは何でもないように返答する。
「アイズばっかりずるーい!あたしもミクロと戦いたーい!!」
「バカティオナ。それだとアイズがリベンジできないでしょうが」
「ケッ。アイズがあんな眼帯野郎に負けるかよ」
「何を言っている、ベート。ミクロ・イヤロスは一度はアイズに勝っている。なら実力は本物だ」
「アイズさん!頑張ってください!!」
少し離れたところで【ロキ・ファミリア】がこれから行われるアイズとの戦いを見に来ていた。
「ミクロ。応援してます」
「気をつけてよね」
「ま、頑張りな」
「無茶はしないでよ」
「お師匠様!頑張ってください!!」
その近くにはリュー達がミクロに応援の言葉を送る。
ミクロ達がいる場所はダンジョン18階層。
本気で戦いたいというアイズの頼みを聞いて被害を最小限に収めるためにフィンは戦う場所をダンジョンにした。
仮にも第一級冒険者同士の戦闘。
万が一が起きても対応できるようにフィン達もいる。
「アイズはああ見えて負けず嫌いでね。君に負けてからもより鍛錬に励んでしまって大変だったよ」
その時の苦労を思い出すかのように溜息を吐く。
「でも、次に戦う時は君がアイズと同じLv.になるまで待っていたんだ。存分に戦ってあげてくれ」
「わかった」
「フィン。こっちも準備できた」
「わかった。じゃ、二人とも準備はいいかな?」
フィンの言葉に頷く二人を見て了承を得たフィンはルールを説明する。
「当然だけど殺すのは禁止するよ。それと、万が一危険だと判断したらそこで即中止とする。戦い方は特に制限はない。何か質問はあるかな?」
フィンの説明に二人は首を横に振って答える。
「それじゃ、二人とも構えて」
鞘から
互いの得物を確認してフィンは開戦を宣言した。
「始め!」
フィンの言葉と同時に二人は衝突し合う。
片手剣を振り下ろすアイズに対してミクロはナイフで片手剣を防いで梅椿で斬りかかる。
だが、アイズはそれを難なく回避してミクロに連撃を浴びさせる。
前回戦った時は見えなかったアイズの連撃。
しかし、【ランクアップ】してアイズと同じ領域、Lv.5になったことにより前回は防ぎ切れなかったアイズの連撃を全て防いだ。
「ッ!?」
それに驚いたのはアイズだった。
前にミクロに敗北してからアイズは更に剣技に磨きをかけたがミクロはそれを全て防いだ。
ミクロも強くなっている。
アイズはそう思わざるをえなかった。
ナイフと片手剣がぶつかって高い金属音が鳴り響き二人は互いに距離を取った。
「初手は互角か……」
離れた位置から二人を見ているリヴェリアがそう呟く。
「やっぱりミクロは強いね」
「アイズも強くなってる」
互いに強くなっていることを再確認する二人は得物を構えたまま動かない。
次の手を考えながらどう動くかを思案していた。
下手に動けばその時点で敗北に繋がるのはわかっていた。
だからこそ、下手に動くことが出来なかった。
睨み合うが続くなかで先に動いたのはミクロだった。
眼帯を取り外して嵌めている義眼を開眼する。
更には『ヴェロス』を発動させて光の弓を形成させて矢を放つ。
放たれる光の矢をアイズは回避して接近しようとするがミクロはアイズがどこを狙っているのか義眼を通して知ることが出来る。
狙いは『ヴェロス』の破壊だと瞬時に理解出来たミクロはアイズを近づけさせない為『散弾』をアイズに向かって一斉放射。
広範囲で放たれた光の矢を片手剣で防ぎつつ回避できたアイズだがミクロに近づくことが出来ない。
なら、と思いアイズは周辺の木々に姿を隠す。
斜辺物が多い木を利用して隙を見てミクロに接近を試みるアイズ。
それに対してミクロは数歩後ろに下がって光の弓を形成したままの状態にする。
ミクロが現在使っている『E』の義眼は今は使えない。
この義眼は対象者は使用者の視認できる範囲にいなければ何の効果も持たない。
離れている位置にいるリュー達なら可能だが、姿を隠している今のアイズには使えない。
右、左、前、背後。
周囲に意識を傾けるミクロにアイズは上空から奇襲を仕掛けた。
矢の速度は普通の弓矢と変わらないと把握しているアイズ。
なら、例え上空から攻撃を仕掛けても対処できる。
少し遅れてミクロはアイズが上空にいることを察知して矢を放つがアイズはそれを片手剣で斬り落とす。
まずは一撃といわんばかりに『ヴェロス』を斬った。
「え?」
そう思った時にはそこにミクロはいなかった。
「ここだ」
「――――――」
ぞくりっっ、と。
アイズは全身に悪寒が駆け巡る。
そのおかげか背後にいたミクロの一撃を片手剣で辛うじて防御することが出来た。
「―――――ッッ!?」
だが、ミクロの重い一撃にアイズは宙を飛んで後方にある木に叩きつけられた。
「うっっ!?」
ミクロは『スキアー』を使用してアイズが攻撃する瞬間に影に入ってアイズの攻撃を回避して背後に現れて殴り飛ばした。
ミクロの両腕には『イスクース』が装着されている。
不意を突かれた状態での一撃はアイズに確実なダメージを与えることが出来た。
「【這い上がる為の力と仲間を守る為の力。破壊した者の力を創造しよう】」
「っ!?」
だが、その程度で攻撃を緩めるつもりはミクロはなかった。
詠唱を唱え始めるミクロにアイズは駆け出す。
魔法の発動を防ぐためにミクロを攻撃するがミクロはアイズと武器を交えながらも詠唱を続けた。
「【礎となった者の力を我が手に】」
「並行詠唱!?」
攻撃、移動、防御、回避、詠唱。五つの行動を同時展開するミクロの姿に声を上げたのは【ロキ・ファミリア】の一員であるレフィーヤ・ウィリディスだった。
「【アブソルシオン】」
魔法を発動させてミクロは再び詠唱を唱える。
「【天に轟くは正義の天声。禍を齎す者に裁きの一撃を】」
同じ【ファミリア】の団員であるスィーラの詠唱を唱える。
「【鳴り響くは招雷の轟き。天より落ちて罪人を裁け】」
詠唱を終わらせるとミクロはアイズを撥ね退けて大きく後退すると『リトス』に収納している魔杖を取り出して魔法を発動させる。
「【フラーバ・エクエール】」
魔杖により強化された雷属性の魔法は一斉にアイズに襲いかかる。
回避困難な上に高威力の魔法に対してアイズは唇に詠唱を乗せた。
「【
アイズが使用できる唯一の魔法を発動させる。
「【エアリエル】」
瞬間、アイズは風を纏って全身に付与した風の力でアイズは魔法を回避した。
「行くよ」
魔法を発動して本気を出したアイズは疾風と化し、一瞬でミクロに接近した。
魔法により加速するアイズの連撃を後退しつつ魔杖で防ぐミクロ。
だが、暴風と化したアイズの剣に切り傷が生まれる。
神速を持って全てを切り裂くアイズの攻撃に対してミクロは偶然ってあるんだなと思っていた。
何故なら自分も同じ系統の魔法を持っているのだから。
「【駆け翔べ】」
超短文詠唱から唱えるミクロは魔法を発動する。
「【フルフォース】」
「っ!?」
白緑色の風を纏うミクロを見てアイズの表情は驚愕に包まれる。
「私と同じ……ッ!?」
自分と同じ
「行くぞ」
何故なら白緑色の風を纏ったミクロの方が動きが速く、攻撃も重くなったからだ。
「どうしてアイズさんと同じ魔法を!?」
衝突し合う二人を見てレフィーヤが声を荒げる。
「少々違います。ミクロの魔法は光と風。二つの属性を有する
「ふむ。先ほどの魔法や魔杖を見て、ミクロ・イヤロスは魔法を複数扱えるようだな」
ミクロの魔法を見て冷静にそう思いつつ噂以上の実力者だと思い知らされる。
接近戦でアイズと互角に渡り合えて尚且つ複数の魔法を扱える。
逸材と思わざるをえなかった。
「リヴェリア。結界を張ってくれ」
「何?」
二人の戦いを観戦するフィンが突然そう言い出した。
「親指が疼く。念には念を入れておきたい」
「わかった」
長年共に過ごしてきたリヴェリアはすぐに詠唱を唱え始める。
ミクロとアイズは観戦しているフィン達に気にも止めずに互いに風を纏ってぶつかり合って互いに似たようなことを考えていた。
「アイズ。そろそろ決着をつけよう」
「うん」
勝つ為には互いにそれしか手がなかった。
ミクロの攻撃に押されているアイズはこのままでは負けてしまうのは明白。
なら、次の一撃で自分の最大出力をミクロにぶつかるしか勝機がなかった。
ミクロはアイズを押していたがこのままでは魔法の反動がきてしまう。
そうなればあっという間に形勢は逆転してしまい負けてしまう。
なら、次の一撃で自分の全ての力を出すしか勝機がなかった。
互いに大きく距離を取って二人はもう一度詠唱を唱えた。
「【駆け翔べ】」
「【
二人は再び風を纏う。
「全開放」
「最大出力」
互いに周囲に影響を及ぼすほどの大嵐を発生させて必殺技を放つ。
「アルグ・フルウィンド」
「リル・ラファーガ」
閃光と神風が衝突した。