路地裏で女神と出会うのは間違っているだろうか   作:ユキシア

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New04話

ベルの訓練が始まって早一週間が経過してベルは最低限の戦う為の実力がついてきた。

まだまだ粗削りだけど、愚直なまでに真っ直ぐに教わったことを身につけている。

「ベル。今日はダンジョンに潜るから」

そんなベルにミクロは新しい訓練を行うべく朝食の時のベルにそう言った。

「え、ダンジョンにですか?」

唐突にダンジョンに向かうように言われたベルは茫然としながらも聞き返すとミクロは頷いて応える。

「唐突だね~ミクロ君」

微笑みながらミクロに朝食を食べさせるアイカは微笑みながら視線をベルに向ける。

「ベル君も祈ってるよ~可愛い子と会えるといいね~」

「ア、アイカさん!!」

からかいの言葉にベルは声を高くはねさせる。

前にアイカに異性に出会いを求めているベルの願望というより欲望を見抜いたアイカは時折ベルをからかっている。

クスクスと小さく笑いながら可愛いベルの反応を楽しんでいる。

「……ベル」

その時、たまたま一緒にいたセシルは軽く肩を竦める。

冒険者にはそれぞれ冒険する理由がある。

だが、それが異性と出会う為に冒険者になるのなんてベルくらいなものだろう。

「僕がしたいのは運命の出会いがしたいんです!英雄譚に出てくるような!」

「それで~女の子をたくさん囲ってハーレムかな~?」

「ハ、ハーレムは男の浪漫なんです!男に生まれたら目指さなきゃいけないもので、昔の英雄達だって……」

頬を赤くしながら熱く語り出すベルにアイカは微笑みながら聞いて、セシルは呆れるように息を吐く。

ミクロは特に気にせず朝食を進める。

周囲にいる団員達も純粋なのにハーレムなど目指しているベルを微笑ましく見守っている。

ベルがどういう人かこの一週間でわかり始めてきた団員達はベルがハーレムなどを目指しているその原因はベルの話の中に出てくる祖父が原因だった。

そうでなければこんなちくはぐな人物にはなってはいないだろう。

だけど、そんなベルも非常に面白いので団員達は何も言わず暖かくベルを見守ることにしていた。

そして団員達はもう一つ、既にハーレムを作っているミクロをお手本にでもしたらいいのでは?と思っていたがそれを口に出すのは無粋と思い胸に留める。

「その時、祖父も言ってたんです。男が女の子と出会ってこそ本懐を遂げる、って。だから僕は………」

未だに熱弁を振るい続けているベルは後程、朝からそれも食堂でハーレムについて熱弁したことに羞恥心が迸り顔を真っ赤にして食堂から去って行った。

 

 

 

「うぅぅぅぅ………」

項垂れながらミクロと共にダンジョンに向かって歩いているベルはまだ朝の出来事を思い出すだけで恥ずかしかった。

「朝から僕はなんてことを……」

祖父から教わった男の浪漫であるハーレムを朝からそれも他の団員達もいる前で熱く語った。

正気になって周囲を見渡した時の団員達の生暖かい眼差しが嫌に心に響いた。

「ベル、行くぞ」

「は、はい!」

ミクロに手を引かれながらダンジョンに到着したベルは初めて来たダンジョンに視線をあちこちに動かす。

「ここがダンジョン……」

ベルにとってこれが始めてのダンジョン探索。

ミクロと共に奥に進んでいくと前方で歩いていたミクロが足を止めた。

「ベル。三〇(メドル)先にゴブリンが三体。あいつらを倒せ」

「え、いきなり三体同時ですが!?無理ですよ!?」

ゴブリンを倒してこいというミクロの言葉に首を横に激しく振るうベル。

いくらダンジョン最弱のモンスターといえどいきなり三体同時は無理。

「ダンジョンでは一対一なんてほぼない。今のベルならゴブリンを複数相手しても問題はない」

ダンジョンでは複数対一が基本的で一対一など本当に稀にしかない。

それに最低限とはいえ戦う為の実力を身に着けている今のベルでも少なくとも一、二階層のモンスター相手に出遅れることはないと踏んでいる。

「今までは一対一で訓練を行ってきたが今回からはダンジョンで複数対一に慣れてもらう。常に周囲に気を配ることを忘れるな」

小石を拾ってゴブリンに向かって投擲するとゴブリンはミクロ達の存在に気付いて向かってくるとベルは慌ててナイフと両刃短剣(バゼラード)を抜いた。

やってやるとはんばヤケクソになりながらも身構えるベル。

『ギィィ!』

「っ!?」

「……ベル?」

ゴブリンの雄叫びを聞いた時突然ベルの身体が震え始める。

足が震えて歯をガチガチ鳴らすベルは石になったかのように動かない。

迫ってくるゴブリンにミクロは鎖分銅を取り出してゴブリンたちを瞬殺するとベルはその場で尻もちをつく。

「ベル、どうした?」

「ご、ごめんなさい……」

どうしたのかと尋ねるミクロにベルは謝罪するとミクロに語った。

ベルは小さい頃にゴブリンに殺されかけたことがあった。

そのせいかゴブリンの声を聞いてその時のことを思い出して恐怖で体が動けなくなった。

「なるほど」

ベルの事情を聞いたミクロは小さく頷いた。

だけど、これからの事を考えればゴブリン程度倒せるようにならないといけない。

その為にはまずはベルのその心の傷(トラウマ)を克服させなければならない。

「ベル、俺達は家族だ。だから助け合うのは当然だと俺は思っている。でも、今のベルは誰も助けることも守ることもできない」

淡々と告げられるその言葉にベルの心に深く突き刺さる。

その通りだと自分でもそう思っているからだ。

ゴブリン一体も倒せれないで強くなんかなれない。

強くなければ誰も助けることも守ることも出来ない。

「俺は団長して俺個人として後ろに守るべき仲間がいるなら俺は全力で仲間を守る」

「……団長」

はっきりとそう言えるミクロにベルは羨ましかった。

それだけの実力を持っているミクロだから言えるその言葉。

ベルが持っていないものをミクロは全て持っている。

「でも、俺一人で出来る事なんて限られている。いくら強くても一人ではできないことがある。だけど、それを埋めてくれるのが仲間(ファミリア)だ」

ミクロは尻もちをついているベルに手を差し伸ばす。

「だからベル、早く強くなって俺や仲間を守って欲しい。そして一緒に冒険しよう。それまでは俺達でお前を守るから」

「僕が団長や皆を……」

「ああ、俺もまだまだだから一緒に頑張って強くなろう」

「はい!」

ベルは差し出されたミクロの手を握って立ち上がる。

そして、訓練は再開されて今度は二体のゴブリンが向かってきた。

「行きます……」

「頑張れ」

ナイフと両刃短剣(バゼラード)を構えるベルは一気に駆け出して一体のゴブリンを蹴り飛ばした。

『ギィィィ!?』

「フッ!」

爪で攻撃してくるゴブリンよりも早くベルが両刃短剣(バゼラード)でゴブリンの首を切り裂いて蹴り飛ばしたゴブリンに向かって跳躍してナイフで頭を突き刺す。

「や、やった……」

ゴブリンを倒せれたことに喜ぶベルは視線をミクロに向けるとミクロは頷く。

「よくやった」

「はい!」

嬉しそうに喜ぶベルにミクロも嬉しかった。

「これなら下の階層に進んでも問題ないな」

「……え?」

この先に進んでも問題がないことが知れて。

「こういうのはさっさと慣れた方がいいから」

さー、と顔の表情が青くなるベルの背後に瞬時に移動したミクロは首根っこを掴んで下の階層に向かう。

「セシルもこうやって強くなってきたから大丈夫。取りあえずは死ぬ直前まで頑張ってみようか」

首根っこを掴まれて引きずられていくベルは先程とは違う恐怖で体が動けなかった。

ああ、僕、今日死ぬんだ……。

悟りを得たかのように天井を見上げるベル。

それからしばらくしてダンジョン内で泣き叫びながらも生きる為に必死に武器を振るってモンスターを倒していくベルとそれを遠くから見守るミクロ。

動けなくなるまで戦い続けさせられたベルは本拠(ホーム)に帰還すると団員達から同情の眼差しが向けられていたがそれを気にする余裕はベルにはなかった。

そんなベルにミクロは告げる。

「明日も同じように訓練するから」

その言葉を聞いたベルは意識を手放した。

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