路地裏で女神と出会うのは間違っているだろうか   作:ユキシア

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New20話

レフィーヤがミクロの下で訓練を受けている間、ベルはアイズの下で訓練を受けていた。

迷宮都市を囲う巨大壁の上で二人は戦っていた。

誰かに師事したことのないアイズは自分にとって教えやすい方法として鞘を持ってベルの相手をしていた。

戦いながらアイズはベルと戦って驚いた。

表情は変わらないが内心は予想以上にベルは戦えていた。

「やっ!」

振るう両刃短剣(バセラード)とナイフ。不意を突いての体術など。

基本を忠実に足を使い、重心をしっかりと捉えている為バランスが中々崩せない。

「……」

「あぐっ!」

鞘で隙ができたところを攻撃して一瞬怯むがそれでも耐えている方だ。

手加減が苦手なのはアイズ自身が良く知っている。

それでもベルが耐えて攻撃を続けれるのはきっとミクロによく鍛えられているのだと動きを見て気付いた。

ベルの動きはミクロに似ていたから戦ったことのあるアイズは見ただけですぐに理解することができた。

「はぁ……はぁ……」

「……休憩にしようか」

息を荒げるベルを見て休憩を始める。

座り込んで呼吸を整えているベルにアイズはどう指導すればいいのか悩まされる。

特に注意するところは防御がまだ下手と技と駆け引きが少し足りないところを除けばLv.1では上々だった。

これほどなら自分が教えることはないと思ったがアイズにとっては今回の件は良かったと思っている。

謝れなかったベルに謝ることが出来たのとベルの成長の秘密を見極めることができるかもしれない。

自分自身の為にと今度こそミクロに勝つ為に。

アイズは負けず嫌いだ。

ミクロに二度も敗戦しているアイズはそれが凄く悔しかった。

「………」

そこでアイズは不意に思った。

ミクロには弟子がいる。ということは師事したことがあるということ。

ベルの動きもミクロに似ているのなら普段はどのような訓練をしているのだろうかと気になった。

「……ミクロは普段どんな訓練をしてるの?」

ベルにそう尋ねるとベルは思い出しながら普段の訓練の内容をアイズに話す。

「えっと、基本的は模擬戦です。その前に素振りと筋トレをしています」

意外に普通の内容だったとアイズは思ったがそれは聞いた範囲だけであってその質がおかしいのだがベルはそれ以上口にしたくなかった。

思い出すだけで心が折れるから。

「アイズさんは団長と戦ったことがあるんですよね?」

「……うん、負けてるけど……次は勝ってみせる」

手をぎゅっと握るアイズのやる気がベルに伝わる。

「ミクロは前衛も後衛も出来るから戦いづらいけど、それを当たり前のように使いこなしているミクロは本当に凄い」

次に戦っても苦戦は必須。

今の自分がミクロにどこまで通じるかはわからないけど負けたくないという気持で一杯だった。

「……だ、団長のことはどう思っていますか?」

「……友達だよ?」

意図がわからないベルの質問に正直に答えるとベルは手を握る。

二人が恋人ではないことに安堵した。

二人とも基本的無表情や強いなどいった共通することが多かった為にもしかしたらという不安があったがそれは杞憂に終わった。

「……訓練の続き、しようか」

「は、はいっ!」

意識を切り替えて目の前のベルの動きに目を細める。

「行きます!」

ベルの訓練は再開した。

「ふべっ!」

「あ」

またしばらくの休息が必要になった。

 

 

 

 

 

 

ベルの訓練が終えたアイズは自分の本拠(ホーム)である『黄昏の館』に帰還して大食堂に足を運ぶ。

「あ、アイズ――――!!」

アイズの姿が視認できたティオナはアイズに向けて大きく手を振るとアイズはティオナに近づいて突然足を止めた。

「えっと、どうしたの?」

ティオナの隣にはテーブルに突っ伏しているレフィーヤの姿を見て狼狽える。

「………」

レフィーヤからは返事がない。

その隣にいるティオナが笑みを浮かばせながらレフィーヤの代わりに答えた。

「レフィーヤ、セシルと組み手してこうなったんだ」

「組み手……?」

「あたしもミクロと組み手したんだよ――!」

いいな、とアイズは思いつつどうして魔導士あるレフィーヤが組み手をしたのかわからなかった。

自分やティオナのような前衛なら組み手や模擬戦を行うのならわかるけど、魔導士であるレフィーヤは後衛であるため前衛とは役割が違う。

ティオナの恰好もよく見たら体中に切り傷や打撲跡がある。

ミクロとそれだけ激しい模擬戦を行ったことが窺える。

「………」

アイズは何故ミクロがレフィーヤに組み手をさせたのかはわからないがミクロならミクロなりの考えがあってそうしたのだろうと確信があった。

魔導士だから魔法の練習を行うとは限らない。

なら、どうすれば上手く教えられることができるのかアイズは自分なりに考える。

その光景を離れたところから見ていたフィンとリヴェリア。

「どうやらアイズには良い影響みたいだね」

「そうだな、しかし組み手か……ああ、そういうことか」

強くなること以外に悩むアイズの様子を見て安心するフィンにリヴェリアは何故ミクロがレフィーヤに組み手をさせているかその理由がわかった。

「今の二人にミクロはいい影響を与えてくれる。やれやれ、彼には頭が上がらないな」

苦笑気味に話すフィンにリヴェリアは微笑する。

 

 

 

 

 

 

 

 

訓練二日目の早朝の時間、アイズは普段の自分の訓練ではなく書庫に足を運んで本を取り、読んでは戻すを繰り返していた。

他人に師事したことのないアイズはない知恵を絞ってベルを鍛えている。

吞み込みの早いベルはアイズの指示に対しても愚直で正直。

教える立場の人間として最善を尽くそうと先人の知恵、本の力に頼ろうとしている。

「ア、アイズさん……」

「レフィーヤ…」

読んでは戻すを繰り返しているとレフィーヤが声をかけてきた。

「どうしたの?」

「え、えっと、勉強、そう魔法の勉強をしようと思いまして!」

訓練が始まる時間まで魔法の知識を得ようと書庫に足を運んでレフィーヤ。

「頑張ってるんだね」

「い、いえ!教わる身として当然のことをしているまでです!」

アイズに褒められて表情が緩むレフィーヤだが、本当は知識だけでも身に着けようとこうして朝早くから書庫に訪れた。

先日のセシルとの模擬戦にレフィーヤは納得ができない。

魔導士が接近戦を身に着けるという意味では正しいと思ってはいるが、これがどう『並行詠唱』を身につける訓練になるのかわからなかった。

「アイズさんはあの人間(ヒューマン)の方は、どうなっているんですか?」

「凄く真剣で、凄く頑張って、凄く真っ直ぐだったよ」

「……そうですか」

思ったことを言葉にして口にするアイズにレフィーヤは微笑んだ表情を崩さずに答えた。

心の中では何度もベルに激しい嫉妬を抱きながら。

ムムム…と唸るレフィーヤは閃いた。

アイズ達も自分達と同じところで訓練をすればいいのではないかと。

そうすればベルがアイズに失礼なことをしたらすぐにわかるし、頑張ればアイズに褒めて貰えるかもしれないと思いついた。

「あの――」

私達と一緒に訓練しては頂けませんか?と言おうとしたが言葉を途中で止める。

本当にそれでいいのかという疑問が脳裏に過ぎる。

「どうしたの?」

俯くレフィーヤにおずおずと声をかけるアイズ。

「……いえ、何でもありません」

アイズにいらない気を遣わせないようにいつものように応えるレフィーヤはアイズから離れる。

こんな自分はダメだと自分自身を戒める。

もっと強くならないといけない。

24階層の時の己の不甲斐無さが蘇るか中、同時にあの場で『並行詠唱』を会得していたら、という『もしも』を考える。

ミクロの訓練は今も納得はできない。

しかし、その実力は自分が憧憬するアイズよりも上回る。

憧憬するアイズよりも強いことに悔しいと思うし、昨日のような訓練で本当に『並行詠唱』を身に着けられるのかという不安はあるが今はミクロの訓練を信じるしかない。

強くなる為にミクロの教えに従う。

今よりも強くなる為に。

 

 

 

 

 

 

「今日もよろしくお願いします!」

「よろしく」

昨日と同じ『ルーム』に足を運ぶミクロ達に今日はティオナとティオネも来ていた。

「あんた、昨日いなかったと思ったらここにいたのね」

「まあね、レフィーヤが気になって!」

ミクロの後ろで雑談する二人。

「今日も模擬戦を行う。セシル、今日は武器を使ってもいい」

「はい」

大鎌を構えるセシルにレフィーヤは魔杖を構える。

「いくよ、レフィーヤ!」

「はい!」

二人の模擬戦が始めるのを確認してミクロも自分の訓練を始める。

「俺達も始めよう」

「うん!」

「組み手だからといって手を抜いたらぶっ飛ばすからね?」

ミクロもティオナ達を相手に模擬戦を開始する。

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