路地裏で女神と出会うのは間違っているだろうか   作:ユキシア

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New21話

レフィーヤがミクロの下で訓練を受けて三日目。

魔導士である自分がどうして模擬戦をしなければならないのか理解も納得も出来なかった。

今もその気持ちは変わらない。

それでも強くなる為に今はミクロを信じて言われた通りにセシルと模擬戦をしている。

「ヤッ!」

「キャッ!?」

振るう大鎌を慌てて回避するレフィーヤにセシルは連撃。

前衛職だけあって魔導士とはいえ同じLv.なのに手も足もでない。

「ふくっ!」

大鎌の柄で腹部を直撃されて吹き飛ばされる。

吹き飛ばされたレフィーヤは腹部を押さえて痛みに耐えながらも立ち上がる。

「まだ、戦えます!」

既に体はボロボロで所々血も垂れている。

それでもレフィーヤは諦めなかった。

その瞳から戦意の炎が微塵も消えることはない。

「行くよ!」

その気持ちを無駄にしない為にも同じ宿敵(ライバル)としてセシルは突貫する。

ぶつかり合う二人に対してその近くでミクロもティオナとティオネの二人と模擬戦をしながら横目で二人の様子を観察していた。

「よそ見するなー!!」

「問題ない」

怒りながら大双刃(ウルガ)を振り回すティオナの攻撃を回避しながら問題ないと答えるミクロにティオネの湾短刀(ククリナイフ)が迫る。

しかし、その攻撃もミクロはナイフで防ぐ。

「いい加減当たりなさいよ!?」

「それでは訓練にならない」

怒鳴るティオネに正論を言うミクロにティオネは舌打ちする。

二人の身体は既にいくつかの損傷(ダメージ)はあるがミクロはいまだに無傷。

二人がかりでも傷を負わせることができないことに二人は軽く自信が無くなりそうだった。

自分が強いというわけではないが、それなりの自信がある二人はミクロの前ではその自信が持てない。

自分達よりもLv.が上なのは知っている。

強いことも知っているからこそミクロと訓練をしている。

それでもこれほどまで強いとは予想外だった。

戦えば戦う程その実力がわかってしまう。

だからこそ二人は。

「「絶対に倒す!!」」

強敵(ミクロ)を倒すべき更に攻撃に苛烈さが増す。

もはや殺す勢いで迫ってくる二人の攻撃をミクロは正面から受け止める。

ミクロ自身ももっと強くなる為に。

そうして三日目の訓練を終えた。

「ありがとうございました!」

「ミクロ!次はあたしが勝つからね!」

「うっさい、バカティオナ!」

地上に戻ってその場でレフィーヤ達と別れるとミクロ達も自分達の本拠(ホーム)に帰還しようと足を進めているとその足は突然止まる。

「あ……」

「おい、眼帯野郎」

目の前に現れたのはベートは鋭い視線をミクロに向ける。

「何か用?」

「今から俺と戦え」

「戦う理由がない」

即答するミクロの胸ぐらをベートは掴み上げて表情を怒りで歪ませながらミクロを睨む。

「てめえになくても俺にはあんだよ」

「い、いきなり何をするんですか!?お師匠様は疲れているんです!」

「うるせぇ、てめえはに用はねえ」

ぎろりと鋭い視線をセシルに向ける。

「だいたいこいつのどこが疲れてやがる。大して疲労もしてねえだろう」

ベートのその言葉は正しかった。

ミクロはそこまで疲れてはいない。

ミクロのスキル【前向生存(ヴィーヴァ)】により訓練が終えてからすぐに回復に向かっている。

それとエスレアとの訓練により短時間で回復する術もミクロは身に着けている。

「……わかった。セシル、先の本拠(ホーム)に帰っていてくれ」

「は、はい」

師であるミクロの言葉に従い先に本拠(ホーム)帰るセシルの後姿を見た後ミクロは先ほどまで訓練に使っていた『ルーム』に再び足を運ぶ。

対面するように向かい合う二人は互いに距離を取って構えると先にベートが動いた。

『敏捷』に秀でた狼人(ウェアウルフ)が得意とする高速戦闘からの足技を使うベートにミクロは危な気もなく回避する。

接近するベートは鎌のような上段蹴り放つがそれは空振りに終わるとそこから軸足を変えて回し蹴りを放つがミクロはそれも回避する。

「舐めてんのか!?」

回避ばかりで攻撃をしてこないミクロにモンスターを超える殺気を放つベートにミクロは淡々と答える。

「別に」

淡々と無感情に放たれたその言葉にベートは速度を上げた。

お前なんか眼中にないと言外に告げられたベートは怒りで歯を噛み締める。

ミクロの瞳にはベートは映っていない。

その瞳がベートは気に入らなかった。

ベートにとってミクロは気に食わない存在だった。

アイズに勝ったその実力は認めてはいる。

同じ派閥の自分よりも親しいことに苛立ちと嫉妬を感じていないと言えば嘘になる。

自分よりも強者であることも認めている。

それなのにどうして自分より弱い奴を構うのか理解できなかった。

強者は強者でいなければならない。

強者は弱者を見下さなければ誰がそれをする。

弱者に構えばそいつはどうやって身の程を弁える?

どうやってあがき始めればいい。

強者の振る舞いをしないミクロにベートは虫唾が走った。

「気に入らねえんだよ!!」

嵐のように繰り出される蹴りと一緒に苛立ちの言葉を出す。

「………」

ベートの攻撃を回避しながらミクロはベートの目を見ていた。

苛立ちと殺意に満ちたその目からは強い意志が見えた。

何かまではわからないが、一つだけわかることがあった。

それはベルのように強くなりたい。

いや、強くなることに飢えた獣と例えてもおかしくはない。

なら、その気持ちを受け止めて全力でベートを叩くことにした。

「ガッ!」

ベートの攻撃を躱して懐に潜り込み腹部に一撃入れるとそこから流れるように肘で太股を攻撃して機動力を阻害すると横腹、背面、尻尾を掴んで地面に叩きつける。

「クソ……がっ!!」

すぐに起き上がって攻撃するベートに対してミクロは今度は正面からそれを受け止めた。

その程度の攻撃は通用しないといわんばかりの異常な耐久力。

ミクロは拳を握ってベートを顎を攻撃する。

顎を攻撃されて打ち上げられたベートは一瞬意識が飛びそうになるが意地と根性で意識を繋ぎとめて天井に足をつけて加速してミクロ目掛けて垂直に突貫する。

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!」

重力を加えて加速するベートは哮り声を引き連れて左脚に渾身の力を込める。

白銀の蹴撃がミクロに直撃した。

ズドンという重い打撃音が『ルーム』に響き渡る。

ベートが持てる渾身の蹴撃がミクロに炸裂した。

「な……ッ!」

だが、上には上が存在する。

「痛かった」

ミクロはベートの渾身の蹴撃を腕一本で受け止めた。

ミクロの足場は僅かにへこんでひび割れているが、そんなことはベートにはどうでもよかった。

「クソが……ッ」

圧倒的実力差の前に自虐的に笑った。

これが自分とミクロの実力差。

現実を叩きつけられたベートにミクロは容赦しない。

ベートの脚を掴んでそのまま地面に叩きつけて倒れているベートの腹部に一撃入れる。

「ガハッ!」

衝撃を逃がすことも逸らすこともできないLv.6の拳を喰らったベートの肺から空気が出ていく。

倒れたベートを見てミクロは本拠(ホーム)に帰還すべく地上を目指すと後ろから立ち上がる音が聞こえた。

「さっさと回復したほうがいい」

振り返ることなくミクロはそう告げる。

ミクロの攻撃でベートの骨は何本も折れている。

その状態でもベートは立ち上がってミクロに睨み続ける。

「俺は……てめえが気に入らねえ……ッ!」

見下すこともせず、ただ作業のように敵を倒すミクロにベートは告げる。

「俺はてめえを超える……!てめえを見下せるぐらいに俺は強くなる……ッ!!覚えとけ!ミクロ!!」

強さに飢えた狼の咆哮。

強者(ミクロ)を喰らいつく為にその爪と牙を磨き続ける。

自身の誇りと意地にかけて自分自身にその誓いを立てる。

ミクロよりも強くなると。

「待ってる。ベート」

自分のところまで這い上がってこいと言外に告げてミクロはその場を離れていく。

 

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