路地裏で女神と出会うのは間違っているだろうか   作:ユキシア

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New25話

『遠征』当日の朝。

ミクロは起床して装備を身に纏う。

今日から出発する【ロキ・ファミリア】との『遠征』に向けて十分に装備を整える。

まずは中央広場(セントラルパーク)で【ロキ・ファミリア】と合流する為にミクロは部屋を出て『遠征』に持って行く荷物の最終確認を団員達に取らせる。

「いよいよですね」

声をかけてくるリューを始めとする『遠征』メンバーは緊張、興奮している。

【アグライア・ファミリア】の主力メンバーも何度も武器の点検を行い、静かにやる気に溢れていた。

「ふーはーふーはー」

始めての『遠征』に何度も深呼吸をして緊張を誤魔化しているセシルの背中を撫でるアイカ。

「しっかりと稼いで来て下さいまし」

特に心配する素振りを見せずに稼いで来いと平然と告げるセシシャ。

「皆、必ず生きて帰って来なさい」

主神であるアグライアの見送りの言葉を聞いて『遠征』メンバーは出発する。

 

 

 

 

 

 

中央広場(セントラルパーク)に集まる【ロキ・ファミリア】と【アグライア・ファミリア】の主力メンバーと【ヘファイストス・ファミリア】。

三つの派閥がこれから向かうのは未到達階層の59階層。

「ミクロ……」

「ナァーザ、ミアハ」

中央広場(セントラルパーク)で集まっている中でナァーザ達がミクロに歩み寄って来た。

「気をつけてね………」

「くれぐれも無茶をするではないぞ?と言いたいがそれは無理であろう。これを持って行くといい」

ミアハはミクロに高等回復薬(ハイ・ポーション)を数本手渡す。

「お主が無事に帰ってくることを信じておる」

「全員生きて帰る。怪我したらナァーザに頼みに行くから問題ない」

「怪我をしないで帰ってきてね……」

怪我をする前提で話すミクロにナァーザは先に注意にするが長い付き合いのなかそれは不可能だと理解している。

帰りに大量の包帯を用意することを頭の片隅に入れておく。

今までに無茶をしないと約束してミクロはそれを守ったことはない。

ナァーザ達はミクロから離れ始める。

ミクロ以外でも似たような光景が広がっていた。

親交がある冒険者達が声をかけ、笑顔と共に劇励を送っている中でミクロは不意に思った。

朝からベルとリリの姿が見当たらないことに。

「―――――総員、これより『遠征』を開始する!」

間もなく、部隊の正面でフィンが声を張り上げた。

「階層に進むに当たって、今回も部隊を二つに分ける!最初に出る一班は僕とリヴェリアが、二班はガレスが指揮を執る!18階層で合流した後、そこから一気に50階層へ移動!僕等の目標は他でもない、未到達階層――――――59階層だ!」

フィンの言葉にこの場にいる誰もが耳朶を震わせる。

「君達は『古代』の英雄にも劣らない勇敢な戦士であり、冒険者だ!大いなる『未知』に挑戦し、富と名声を持ち帰る!!」

大通りから、広場の隅から、建物の窓から誰もがその行く末を見守っている。

「犠牲の上に成り立つ偽りの栄誉は要らない!!全員、この地上の光に誓ってもらう――――必ず生きて帰ると!!」

フィンは息を吸い込み―――――号令を放った。

「遠征隊、出発だ!!」

上空に関の声が響き渡る。

遠征が始まった。

 

 

 

 

 

進行する第一部隊―――先鋒隊にミクロ、リュー、セシルはフィン達と共に行動している。

進路上で発生しうるもしもの異常事態(イレギュラー)に対処するために主力戦力が集結し、ティヒアやリュコス達は第二部隊と共に行動している。

7階層まで進むアイズ達やミクロ達は注意しながらも談話ができる余裕があるのはここで何か起きても対処できるからだ。

「落ち着いて……私ならできる……お師匠様の訓練を受けてきた私ならできる………」

自己暗示をかけるセシルに【ロキ・ファミリア】は何とも言えない視線が向けられていたがそれを気にする余裕はセシルにはなかった。

時機に慣れるだろうと判断してミクロもリューも放置。

「誰か来る」

「……四人かな」

「あんだよ、噂をすれば何とかってやつか?」

遠くから聞こえた足音に反応したミクロにアイズ達も反応を示して差し掛かっている十字路の右手から、四名の冒険者達が取り乱した形相で接近してきた。

「なーんか、やけに慌てているね。声かけてみる?」

「止めなさい、ダンジョン内では他所のパーティに基本不干渉よ」

「ねえっ、どうしたのー!」

「……馬鹿たれ」

ティオネの制止を無視したティオナの声が冒険者に響く。

驚いた冒険者達は今更ながらアイズ達の存在に気付いたのか、慌てて目の前で足を止めた。

「な、何だお前っ?って………っ!?ア、【大切断(アマゾン)】!?」

「ティオナ・ヒリュテぇっ!?」

「ていうか【ロキ・ファミリア】!?え、遠征!?」

素性を察した冒険者達は途端に尻込みし始める。

「は、【覇者】!?」

「ひっ!どうして【覇者】までもいるの!?」

ミクロの存在にも気付いた冒険者達はティオナ以上に恐怖された。

冒険者達の言葉を聞いたティオナは仲間を見つけたかのような目でミクロを見ていた。

ベートは嘲笑と侮蔑交じりで何をやっていたのかと問うた。

「………ミノタウロスが、いたんだ」

「……あぁ?」

「だからっ、ミノタウロスだよ!この上層で大剣を持ったミノタウロスが白髪のガキを襲っていたんだよ!!」

「「「っ!?」」」

その言葉を聞いたミクロ達は目を見開いた。

「どこだ?」

瞬時に動いたミクロが冒険者の胸ぐらを掴んで問いただす。

「どこで見た。言え」

「9、9階層」

そこまで聞いたミクロは駆け出すとそれに続くようにアイズも駆け出した。

「ミクロ!」

「お師匠様!」

「アイズ!?」

「何やってんだ、お前等!」

駆け出す二人にリュー達も追いかけるように動き出した。

駆け出す二人は真偽を確かめる暇もなく、ひたすらに地面を蹴りつけて加速する。

遭遇(エンカウント)するモンスターをすれ違いざまに斬り伏せて走行は一切緩めない。

瞬く間に9階層まで踏破するとその階層は静寂していた。

その静寂の中で遥か彼方から猛牛の遠吠えが響いてきた。

その遠吠えに交えて人の悲鳴も聞こえた。

「ベル……!」

覚えのある声に反応したミクロはアイズと共に遠吠えが聞こえた方に疾走すると血まみれの小人族(パルゥム)であるリリが現れた。

「リリ」

「団長様……どうか、ベル様を……」

「わかってる。場所は?」

言われるまでもなく即答するミクロにリリはギルドで公開されている地図情報(マップ・データ)を訊く。

「正規ルートッ、E-16の、広間(ルーム)……!」

そこまで聞いてミクロはリリを抱えて走り出す。

そして、目標である地帯(エリア)直前の広間(ルーム)に突入したところで――――。

「止まれ」

一声が投じられた。

広大な長方形の空間。モンスターも同業者も存在しない場所で、彼は一人、立っていた。

「【猛者】。またお前か……」

静かにその名を告げるミクロはリリをその場で寝かせて武器を構える。

路地裏の時と同様にその道を阻もうとするオッタル。

「あの時の雪辱を返させてもらう」

大剣をその手に持つオッタルにミクロはアイズに視線を向ける。

「アイズ。【猛者】は俺が」

そこまで聞いたアイズは無言で頷いて《デスぺレート》を抜き放つ。

「【駆け翔べ】!」

「【目覚めよ(テンペスト)】!」

ミクロに合わせるようにアイズも魔法を発動する。

相手は都市最強の冒険者。その横を抜けるのは至難の業。

二人は風をその身に纏ってオッタルに迫る。

迫りくる二人にオッタルは大剣を両手に持ち二人相手に攻防を繰り出す。

ミクロとアイズの魔法を付与させた怒涛の攻めに対してもオッタルの鉄壁の防御は崩せない。

「アイズ!」

「っ!?」

「―――っ!!」

オッタルに攻撃をしている最中にミクロはアイズを上空に蹴り上げた。

オッタルの頭上を越えたアイズはミクロに蹴られた痛みに耐えながら天井を蹴ってオッタルを抜けた。

敵味方の不意を突いてのミクロのやり方にオッタルは頬を歪めた。

追いかけようにもここでそのような隙を見せれば致命打になることをオッタルは察している。

目の前にいるミクロはそれほどまでに注意しなければならない相手なのだから。

アイズをベルの下に送る作戦は成功したミクロは一度オッタルから距離を取る。

「今度こそ答えろ。お前の主神はどうしてベルを狙う?」

「………」

ミクロの問いに無言で答えるオッタル。

答える気はないのか、守備義務のかはわからない。

ただ一つ言えることはオッタルの主神であるフレイヤはベルを狙っている事だけ。

沈黙が続く中でオッタルは口を開いた。

「……あの方は望んでおられる。あの者の成長を」

「余計なお世話だ。ベルは成長している」

オッタルの言葉にミクロは答える。

「ベルは冒険者。お前達が余計なことをする必要はない」

ミクロは嵌めている魔道具(マジックアイテム)、『レイ』を発動させる。

体中に電撃が迸るミクロにオッタルは警戒を強いる。

前回はオッタルを退けることができたミクロだが、同じ手はオッタルに通用しないことはミクロも重々承知している。

だからこそ、その上を行く。

「【駆け翔べ】」

更に詠唱を口に乗せるミクロは再度魔法を発動させる。

「【フルフォース】」

全開放。

この階層全体に光を与え、ミクロを中心に暴風は巻き起こる。

バチバチと暴風の中心にいるミクロの身体には電撃が迸っている中でミクロはオッタルを見据える。

「これ以上俺の家族(ファミリア)に手を出すならお前もお前の主神も容赦しない」

その瞬間、ミクロは姿を消した。

「っ!?」

ミクロが消えた瞬間にオッタルは大剣でミクロの攻撃を防いだが吹き飛ばされた。

魔法と魔道具(マジックアイテム)の重ね技を使用してオッタルの身体能力を上回る。

「主神に伝えろ。ベルに二度と手を出すな、と」

脚に力を入れてミクロは新しい必殺技を叫ぶ。

「アストラ・スィエラ」

放たれる極大の閃光。

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!」

迫りくる閃光にオッタルは全神経をその攻撃を防ぐのに集中させる。

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」

猛る声を上げてミクロの必殺技を防ぐオッタル。

咆哮を上げて攻撃の手を緩めないミクロ。

二人を中心にダンジョンが崩壊を始める。

地面が、壁が、天井が崩壊する中で二人は互いを睨み合う。

刹那の攻防の中で二人は弾けた。

互いがダンジョンの壁に深く突き刺さる程に叩きつけられたが二人は互いを見据えたまますぐに武器を構える。

全身から血を流して、体中の骨が軋めくなかで二人はただ目の前の敵へ意識を向ける。

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