路地裏で女神と出会うのは間違っているだろうか   作:ユキシア

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New36話

「全く、遠征帰りということを忘れていませんか?しっかりと体を休めなさい」

「……ごめん」

18階層の『夜』に天幕の中でミクロはリューに怒られていた。

遠征帰りだというのにアイズと模擬戦を行うぐらいならしっかりと体を労わるようにと怒られるミクロとは別にアイズも別の天幕でリヴェリアに怒られていた。

「貴方は本当に目が離せませんね」

呆れるように息を吐くリュー。

いつも自分の事を無視して無茶ばかりするミクロに心配するこちらの身にもなって欲しかった。

リューは膝を折ってその場に腰を下ろしてミクロの頭を自分の膝上に誘導する。

膝枕である。

「貴方がしっかり休むまでこうして見張っています。しっかり休みなさい」

「わかった」

リューに膝枕されながらミクロはすぐに寝息を立てながら眠りについた。

自分の膝上で眠っているミクロの髪を軽く触るリュー。

「入るよ……ってそいつ寝てんのかい」

「……リュコス、お静かに」

起こさないように静かにするようにリュコスに言葉を投じるリューにリュコスは頷き、リューの近くに腰を下ろす。

「あたしとティヒアは明日は下層で少し稼いでくる。少しでも強くならないとね」

経験値(エクセリア)と魔石とドロップアイテムを稼ぎに行く二人。

「こいつばっかり無茶させるわけにはいかないしね」

寝ているミクロを一瞥してぼやくリュコスの瞳は後悔が滲み出ていた。

どんな強い相手でもミクロはその後ろに守るべき対象がいるのなら例え自分の命を犠牲にしてでも守ろうとする。

ミクロはリュー達よりも頭一つ二つずば抜けている。

ミクロはその事を承知の上で自分が前へ出てリュー達を守ろうと奮闘するがリュー達がそれが嫌だった。

自分達が弱いせいでミクロを傷つけてしまうのが。

以前、自分達が人質に取られたせいでミクロは一度死んだ。

それ以来、リュー達はいつも以上に特訓を重ねているがミクロはその何倍もの速さで強くなっていく。

「こいつ自身も自分の命を軽く見ているところもあるしね」

家族(ファミリア)の為ならミクロは自分の命すら惜しくなかった。

今の家族(ファミリア)がミクロにとっての全てなのだから。

リュコスはそんなミクロに軽くデコピンをする。

しかし、デコピンしたリュコスの指が痛かった。

「リュー、あたしはさっさとあんたらがツガイになってくれた方が安心さ」

「な……何を突然……………!?」

唐突のツガイ発現にリューは耳まで真っ赤になる。

そんなリューに触れようとリュコスは手を伸ばすが弾かれる。

「ほら見な、あんたは生粋のエルフだ。それなのにこいつだけにはそこまでできるということは本当に心を開いている証拠さ。こいつだってガキの一人でもできたら少しでも生きようと考えるだろうしね」

リューは大分緩和してきてはいるが生粋のエルフ。

認めた者にしか接触は許さず、強い誇りと概念を持つ。

そのリューがミクロに関しては膝枕してもそれを振るい落とすような素振りすら見せない。

「あたしはこれでもあんたらには感謝してる。特に問題児だったあたしを受け入れてくれたこいつにはね」

都市外から来たリュコスは問題児として【ファミリア】を追い出されてミクロが【ファミリア】に勧誘というか強引に入れられた。

しかし、それでもそれが嬉しかった。

当たり前のように仲間と扱ってくれるミクロ達にリュコスは感謝している。

「まぁ、そういうことも考えてみな」

立ち上がって自身の天幕に戻るリュコスにリューは視線を下ろしてミクロを見る。

「子供…………」

自分はエルフでミクロは人間(ヒューマン)

二人の間で産まれてくる子供はハーフエルフということになる。

「……私は何を!?それはまだ早い………っ!」

まずは告白からだ。

誰もいない夜の森で、二人の永遠の愛を月に誓う。

「違う!?私は何を考えている………!?」

頭を抱えて悶々とするリューの膝上でミクロは眠りについたまま。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ~」

野営地から少し離れた場所でベルは黄昏ていた。

原因はミクロとアイズの二人の模擬戦を見てしまったからだ。

息が合う二人の模擬戦は楽しそうに踊っているようにも見えたベルはこれ以上ないほど二人はお似合いだった。

強さもLv.も一緒。

基本的無表情だというところも一緒で魔法も同系統。

共通点が多い二人に入り込める隙が自分にはあるのだろうかと悩み苦しむベルの口からまた溜息が出た。

「「はぁ~、ん?」」

自分ではない違う人の溜息に気付き顔を上げるとベルの近くでエルフの少女、レフィーヤもベル同様に溜息を吐いていた。

レフィーヤはベルを睨むがそれよりも落胆の方が強くまた溜息が出た。

レフィーヤもまたベルと同様に悩み苦しんでいる。

憧憬する人と師事を受けた人がこれ以上にないぐらいお似合いだった。

59階層との決着もミクロが自身の魔法をアイズに付与させることで魔法を強化させるという発想で勝利を掴んだ。

何もかも完璧な二人にどうすればいいのかレフィーヤにはわからなかった。

「どうしたの二人して?」

「……セシル」

「……セシルさん」

二人の様子を見てセシルが二人に歩み寄って来た。

二人は互いにアイズとミクロがお似合いで恋人同士になるのではないかという不安をセシルに相談するとセシルは首を横に振る。

「ないない。それはないって」

「ど、どうしてそう言い切れるのですか?」

「そ、そうだよ。もしかしたら………!?」

それはないと言い切ったセシルに問い詰める二人。

「アイズさんはわからないけどお師匠様的には友達と遊んだ感じだよ。そもそもお師匠様に恋愛感情があるかどうかも疑問だしね」

もしミクロに恋愛感情があればリュー達はもう少し苦労しないだろうと察している。

「それに他派閥だと付き合うこともできないでしょ?お師匠様は【ファミリア】の団長でアイズさんは幹部。その時点で付き合うのは無理だって」

「そ、それはそうですが………」

正論を言うセシルに言葉を濁らせる二人。

「わかったらそろそろ戻ろう?明日だってするこはあるんだから」

野営地に戻るように進言するセシル。

まだ毒妖蛆(ポイズン・ウェルミス)で苦しんでいる【ロキ・ファミリア】の看護や食料の調達などすることは多い。

「―――――――ッ!?」

野営地に戻ろうと踵を返そうとした瞬間、突然セシルの動きが止まった。

「セシル………?」

「静かに」

表情が険しくなるセシルに二人は戸惑う。

場数を踏んでいるレフィーヤはその表情に察してすぐに杖を手に持ち、ベルも慌てながらも両刃短剣(バセラード)と短剣を持つ。

「ど、どうしたんですか?」

「……何か来るよ」

大鎌を持つセシルは二人に警告すると二人は唾を飲み込んでセシルが注視している方向を見る。

セシルは臆病だ。

だからこそ警戒心が強く、危険なことにいち早く察知することが出来る。

ミクロの酷烈(スパルタ)にその臆病さは強く鋭くなり、危険なことにより機敏に察知できるようになった。

「…………」

セシルは全身から冷や汗が流れ落ちる。

明らかに自分達よりも遥か上をいく途轍もない何かが近づいてきている。

「へぇ~随分と警戒心が強いんだね」

感心の声と共に影から姿を現したのは犬人(シアンスロープ)の女性だった。

モンスターではなく同職の冒険者だと安堵したいがセシルはむしろ警戒心を強めた。

犬人(シアンスロープ)の瞳は以前にセシルが見たハーフエルフと同じ狂喜に満ちていた。

「【シヴァ・ファミリア】………」

師であるミクロを狙う最悪の【ファミリア】の一団。

「だ、誰ですか………?」

「お師匠様を狙う最悪の【ファミリア】だよ……」

簡潔にベルの問いに答えるセシルだが、状況が最悪だった。

相手は自分達よりも遥かに格上。

第一級冒険者がいないこの場でどう立ち向かえばいいのかわからない。

この中で足が速いベルに救援を呼ぶように頼んだとしても目の前にいる犬人(シアンスロープ)にとってはLv.2の脚力だなんてたかが知れている。

「最悪に関しては否定はしないけど……ふ~ん、ミクロの【ファミリア】の子が二人と【ロキ・ファミリア】の魔導士が一人か………」

観察するかのように見回す犬人(シアンスロープ)にベルは震える。

それも無理はない。

レフィーヤはそれなりの場数を踏んで人の悪意などに経験し、セシルも一度は経験はしたことがある。

モンスターの殺気とは違う人の悪意を受けるのはベルはこれが初めてだった。

「……この近くには私達、二つの上位派閥がいます」

「知ってるよ。ちょっと興味が湧いて見に来たら君達を見つけただけだからね」

脅しをかけるが全く応えない。

セシル達ぐらいどうとでもなると言外に告げられる。

逃げようとしても、助けを呼ぼうとしてもそうなる前に殺す事が犬人(シアンスロープ)は容易なこと。

「ちょうどいいや。ミクロに変わって君達がゲームに参加してよ」

「ゲーム……?」

「そう、命を懸けた軽いゲームだよ」

平然と告げる犬人(シアンスロープ)にベル達は恐怖で体が震える。

察したからだ。

断ればここで殺すという言葉の意味が。

「さぁ、こっちだよ」

踵を返して森の奥へ歩いて行く犬人(シアンスロープ)に拒否権がないセシル達はその後ろをついて行くしかない。

時間を稼げばミクロ達が気付いて探してくるかもしれない。

セシルは夜食ように取っておいた水晶飴(クリスタル・ドロップ)を手の中で砕いて気付かれないように地面にばらしていく。

即席の道標(アリアドネ)を記すセシル。

ベル達もセシルに続いて犬人(シアンスロープ)について行く。

森の奥へ進むと一つの集団と出くわした。

全身を覆い隠す様な大型のローブ、口元まで覆う頭巾と額当てにレフィーヤ見覚えがあった。

闇派閥(イヴィルス)……」

24階層食糧庫(パントリー)で交戦した一団である闇派閥(イヴィルス)の残党。

闇派閥(イヴィルス)の付近には食人花(ヴィオラス)までも。

ぎょっと目を見開くベル達。

「おい!」

目を見開くベル達の中で闇派閥(イヴィルス)の男性が犬人(シアンスロープ)に苛立ちの声を飛ばす。

「そいつらはなんだ!?どうしてここに連れて来た!?」

「ん~?暇だったからゲームを誘っただけだけど?」

その言葉に男性は憤慨する。

「ふざけるな!部外者の分際で我々の計画の邪魔――」

「うるさい」

言葉の途中で男の首は宙を舞った。

「こっちが協力してあげてるんだから文句ある奴は殺すよ?」

血飛沫が降り注ぐ中で犬人(シアンスロープ)は短剣についた血を舐める。

狂気に満ちた犬人(シアンスロープ)闇派閥(イヴィルス)は数歩後退して黙り込み、ベル達は今も今の光景に目が離せなかった。

人が人を殺すところを目撃してしまったベル達は嘔吐感を堪えるので必死だった。

「さぁ、ゲームの説明をしようか」

まるで何事もなかったかのように平然と進める犬人(シアンスロープ)

「ゲームは簡単。十分間で君達が私に一撃でも攻撃を当てることが出来たら君達の勝ち。負けたら殺すって簡単なゲーム。ああ、安心していいよ。私は攻撃しないし、回避も防御もしない」

私の代わりにと犬人(シアンスロープ)は指を鳴らすと食人花(ヴィオラス)はベル達の周囲を囲む。

「さぁ、武器を構えて命懸けて私を楽しませて。ゲームスタート」

パンと手を鳴らすと食人花(ヴィオラス)は一斉に襲いかかって来た。

「【ライトニングボルト】!!」

いち早く動いたのはベルだ。

得意の速攻魔法で食人花(ヴィオラス)を攻撃するが損傷(ダメージ)は与えたもののまだ動きは止まらない。

「ベル!こいつらの魔石は口の中顎奥!レフィーヤは詠唱を唱えて!」

「わかった!」

「はい!」

「私は本体を、ベルは触手をお願い。レフィーヤを守るよ!ベル!」

「うん!」

ミクロには及ばすとも自分なりに頭を働かせて二人に指示を飛ばすセシルは食人花(ヴィオラス)を大鎌で切り裂きながらレフィーヤ達を守る。

「【誇り高き戦士よ、森の射手隊よ。押し寄せる略奪者の前に弓を取れ。同胞の声に応じ、矢を番えよ】」

足元に展開される魔法円(マジックサークル)

『魔力』に反応する食人花(ヴィオラス)は一斉にレフィーヤに狙いを定める。

「【ライトニングボルト】!!」

「【天地廻天(ヴァリティタ)】!!」

雷の魔法の連射その数は十。

ベルの魔法は食人花(ヴィオラス)の触手を破壊してセシルの重力魔法で食人花(ヴィオラス)を重力の檻に閉じ込める。

だけど足りない。

それだけでは食人花(ヴィオラス)全ての動きを封じることは出来ず何体かはレフィーヤに向かっていく。

「レフィーヤ!?」

叫ぶセシル。

だが。

「【帯びよ炎、森の灯火。撃ち放て、妖精の火矢】」

レフィーヤは食人花(ヴィオラス)の攻撃を回避しながら詠唱を歌っていた。

ミクロの酷烈(スパルタ)の下で回避をしながら同時に詠唱を歌えるほど『並行詠唱』の技術を上げていた。

それを見た犬人(シアンスロープ)は感嘆の声が出た。

短文詠唱ではなく長文詠唱を歌いながら『魔力』という手綱を離さずに回避行動を取っているレフィーヤを見て相当仕込まれている事に気付く。

しかし、驚いているのはレフィーヤだけではない。

ベルの詠唱入らずの魔法の連射、脚力も目を見張るものがある。

セシルも大鎌の一撃は的確尚且つ激しい。食人花(ヴィオラス)を一撃で切り裂いているのを見て相当鍛えられていることがわかる。

正直、三分でも凌げたらいい方だと思っていたが予想以上の動きをするベル達に犬人(シアンスロープ)は感心した。

連携はまだ荒いところがあるがそれでもしっかりと全体を見据えて動き互いを助け合っている。

「【雨の如く降りそそぎ、蛮族どもを焼き払え】」

最後の詠唱文を唱え、魔力が爆発的に強まった。

「【ヒュゼレイド・ファラーリカ】!!」

夥しい火の雨が連発される。

火の雨は食人花(ヴィオラス)を焼き払い闇派閥(イヴィルス)までも被害を出す。

焼き払われる大地に土煙が舞うなかでベルは動いた。

犬人(シアンスロープ)に突貫するベルはミクロから譲り受けた呪武具(カースウェポン)『カタラ』を持って接近する。

かすり傷を受けただけでもそこから精神汚染は進むこの武器なら逃げる可能性が大きく上がる。

その可能性に賭けるベルは犬人(シアンスロープ)に斬りかかる。

食人花(ヴィオラス)

「ガッ……!?」

だが、横から姿を現した食人花(ヴィオラス)の触手を受けてしまったベルは何度も地面を跳ねる。

「ベル!?」

駆け寄って抱き上げるセシルは急いでベルの傷口に高等回復薬(ハイ・ポーション)をかける。

「思っていたより楽しめたよ。でも、一手足りなかったね。相手の次の手も考えなければダンジョンでは命とりだよ」

茂みから姿を現す食人花(ヴィオラス)の数は七。

制限時間は半分を切っているなかでレフィーヤは精神力(マインド)を使い果たして動くので精一杯。

セシルはまだ余裕はあるものの二人を守れるだけの力がない。

絶体絶命の状況のなかでリン、リンと(チャイム)の音が届いてくる。

ベルは立ち上がり、その右手には純白光の粒子を収束させていた。

「魔法……?いや、魔力は感じられないからスキル……?」

始めて見るその現象に犬人(シアンスロープ)は困惑と同時に危機感を感じて食人花(ヴィオラス)を自身の前に集めて盾代わりにする。

「僕は……男として二人を守る………ッ!」

男の意地にかけて守られるだけは嫌だったベルは【ランクアップ】と同時に発現したスキル【英雄願望(アルゴノゥト)】を使って蓄積(チャージ)を行う。

「ベル………」

立ち上がるベルの横顔はいつもの優しい男の子の顔ではなく覚悟を決めた男の顔だった。

二週間前のミノタウロスとの決闘を思い出させるその顔にセシルは茫然とベルに視線を向けていた。

歯を食い縛り、右手首を左手で掴む。

砲身を固定するベルは狙いを犬人(シアンスロープ)に定める。

一分間分の鐘音(サウンドベル)

そして、収束するベルの白光。

「【ライトニングボルト】!!」

「ッ!?」

先ほどまでの魔法とは桁外れの威力を示す純白の咆哮。

危機感を察知した犬人(シアンスロープ)は咄嗟に懐から水晶を取り出して地面に叩きつける。

消滅する食人花(ヴィオラス)に驚愕するセシル達。

勝ったと思ったのも束の間。

肝心の犬人(シアンスロープ)は結界に守られて無傷だった。

「『クリスターロ』……ッ!」

ミクロが作製している防御結界を展開する魔道具(マジックアイテム)

どうしてそれを敵が持っているのかわからないセシル。

「危ない危ない。シャルロットの水晶がなかったら流石に損傷(ダメージ)は免れなかったよ」

安堵する犬人(シアンスロープ)だが、ゲームはベル達の勝ち。

自分は防御しないという規則(ルール)を破ってしまったのだから本来ならここでベル達を逃がすつもりではあった。

「だけど、ちょっと危険だね」

先程の魔法、いや、スキルを見て犬人(シアンスロープ)はベルを危険因子と認めた。

いや、ベルだけではなくセシルもレフィーヤも含めて犬人(シアンスロープ)はここでベル達を排除することにした。

この三人は磨けば光り原石。

今はまだ脅威でなくても近い内に自分達の邪魔な存在になる可能性が浮上した。

ナイフを抜き放つ犬人(シアンスロープ)にセシル達は身体に鞭を打って立ち上がる。

例え勝てなくても一人でも多く助かるには戦うしかないと本能がそう訴えた。

「殺す前に名乗っておくね。私は【シヴァ・ファミリア】破壊の使者(ブレイクカード)の一人、【凶游犬(スマシェスト)】、キュオ・カーネ」

消えるキュオはベル達が反応できない速さでベルの背後に回る。

「ベル!?」

いち早く気づいたセシルは叫びベルは後ろから振り下ろされる凶器が視界に映る。

死ぬ――――。

ベルはそう悟った瞬間。

ギィィぃぃぃンと金属音が響き渡る。

「どういうつもり………?」

怪訝する表情で自身の攻撃を防いだ人物に問いかける。

「貴方は………!?」

驚愕の声を上げるレフィーヤ。

「何、ミクロに助けられた借りを返しに来ただけさ」

剣をその手に持つエルフはかつては破壊の快楽の呑まれ、【同胞殺し(エルフキラー)】とまで呼ばれた男性。

リューとの死闘から24階層で姿をくらましたエルフの名はジエン。

【シヴァ・ファミリア】所属の破壊の使者(ブレイクカード)の一人がベル達を助けにここに参上した。

「貴様の相手は私だ!」

破壊の悦びが消えた澄んだ瞳は真っ直ぐキュオに向けられる。

 


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