海岸の町   作:アイバユウ

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第12話

 

「チルドレンが撃たれたにしては報道管制、情報操作がいつもより厳しい。まるで事件そのものを隠匿しているかのように」

 

「さらに僕が意識を取り戻してから誰にも会わせようともしない。僕の口から犯人の名が漏れるのを阻止するかのように」

 

「監察局は犯人が誰なのかを知っているが、なにかの事情でそれを隠匿する事にした。」

 

「違いますか。国連直属ネルフ監察局、局長の蒼崎さん」

 

私は少年の推理力に驚きの声を上げそうになった。説得は困難だとは思っていたがこれほどとは思いもよらなかったからだ。

多少の事実は引き出されるのはやむをえないと考えていたが、そう簡単ではなかった

 

「仮に君の言うとおりこちらが隠蔽工作をしているとしたとして、いったい何の得があるのかね」

 

「事実が漏れれば、いずれ別の真相が漏れる。それを防ぐために工作を行ったのでは」

 

彼は私の言葉にまるで答えを用意しているかのようにすらすらと反論した。それもほぼ正解に近い答えで。

真相がもれることは世界の破滅を意味する。それは彼女の護衛を担当しているルミナから聞いたことがあった

なぜ漏れただけでそうなるのかと聞き返したとき、想像もできなかった言葉が帰ってきた。それを聞いたとき背筋が凍りついた。

数ヵ月後にとある事実がそれを証明したのだ。ただ、その代償はあまりにも高くついてしまった。

 

数万人という被害者を出すという結果に

それ以後、彼女には徹底的な警護がつけられ、あの町に入居、また通る車などはすべて監視されている。

 

「監察局は水川カオリがサードチルドレンであり碇シンジの生まれ変わりであることを知っている。違いますか」

 

私は彼との対話が本当の悲劇へのスタートではないかと思ってしまった

 

 

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私がようやく目を覚ました頃には夕日が見えていた。この時は今が何日で何時なのかは特に気にならなかった、が

いつまでもじっとしていても仕方がないので、布団から起き上がると玄関近くにある洗面所にいった。

そこにあった鏡に映った自分の顔を見た私は、本当は誰なのだろうかと、そんな思いを感じた

碇シンジとして何も残っていない自分。記憶の中にしかそれはないのだ。

私は本当に碇シンジだったのか、なぜあのときのことをきちんと覚えていないのだろう

そんないくつもの疑問がわいてきた。水川カオリとして生きてきた自分。碇シンジとして生きてきた自分。

そしてこの世界の神様として存在する自分。三人の自分が存在するなかで本当の自分はいったい誰なのだろう。

そこまで考えて私はその思考を片隅に追いやった。

 

「今はまだいいんだ。私は水川カオリなんだから」

 

そう、今はまだ自分は碇シンジでもない。世界の神様でもない。この町で生活する水川カオリである事には変わりないのだ

私は今はそう納得した。

 

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カオリが旅館へ戻った翌日、テレビ・新聞の記事にはネルフチルドレン暗殺未遂の記事が飾られていた。

ニュースでも犯人についての討論がされていたが、どれもこれも他国による戦略的な価値を狙った暗殺ではないか。

ネルフに恨みを持つものの犯行などと意見を述べるものばかりだった。

どれもこれもネルフ監察局の発表を鵜呑みにしているものであった。真実のかけらもないものばかりの

カオリがロビーに来ると団体の宿泊客が出発ようで多くの人が集まっていた。

彼女はため息をつくとテレビが見えるソファーに座りつまらなさそうに番組を見ていた。

 

『やはり、戦時下のネルフの対応のまずさが出てきたのではないのでしょうか』

 

『戦死者を低く発表していたという報道もあるようですし』

 

『エヴァを独り占めしていることに反発したのでは』

 

今までもネルフを狙ったテロ、暗殺があったこともあり大衆にも今回もそうだろうという空気が流れ始めた。

人々にとってもはやネルフはそれほど重要視されるようなものではなかった

使徒という正体不明の生物が侵攻することがなくなった今においては組織は重要視されるものではない

国連でも最近になってネルフの予算の一部縮小案が提出されたが、常任理事国であるアメリカが拒否権行使により廃案になった

ただ、未だにセカンドインパクトの復興が遅れている各国にとっていまや必要とされていないネルフに予算は出せないと。

国連分担金の拠出拒否を行った国はすでに2桁を超えている

世界が未だに安定していないという事がそれによって証明されている。

 

 

 

どれほど自然が回復しようと人々がそれを壊すならばその再生に果たして意味があるのだろうか。

国家という概念だけではどうする事もできない問題を1つの国が、1つの組織が妨害することは最良の選択なのだろうか

彼女は討論番組を見ながら彼女自身は気づいていなかったのかもしれないが呟いていた

 

『世界はやがて復讐する。それに気づいたときはもう遅いのだ』

 

そう呟いていた。

 

 

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病室内で話し合いを行っていた私は少し疲れた表情で病院を後にした

渚カオルとの話し合いは、彼自身が彼女の重要性に関して知っていた事もあり隠蔽が完了した。

ただ、それは彼女自身の秘密を知っているものが増えたに過ぎない

そしてネルフ自身も彼女の事を知っている事を私は話し合いを知った

 

『ネルフは彼女の件を調べています。僕達が彼女のいる旅館にいく前にそういう少女がいると話を聞きましたから』

 

この情報に私は内心では焦りが出始めた。

今まで監察局の最高極秘事項として処理してきた事がネルフによって露呈しようとしている

もし彼女に何かの事態が発生した場合、その後の混乱をおそらく・・・・・

 

 

 

かつて彼女に危害が加えられた際、同時に世界各地で火山活動の活発化、地震の多発、プレートの急激の変動が確認された

現在は小康状態までに落ち着いているが、未だに各地に爪あとが残っている。

アメリカでは火山が爆発し1つの都市を飲み込んでいる。日本は地震による被害はなかったが天候悪化などの影響があった

最も被害が大きかったのはヨーロッパだ。ヨーロッパで今まで火山活動が確認されてこなかった山で、火山爆発が発生した

直接の被害者だけで10万人。間接的な被害者も含めれば100万人以上に膨れ上がる未曾有の大災害であった。

現在でも復興作業が行われ、火山は休息する事もなく未だに活動を続けていた。

爆発の可能性も残ってはいるが、月日が経ち、マグマの水位が下がり警戒レベルは引き下げられている

 

 

 

だからこそ、彼女の警備にはいくらでも出さなくてはならなくなった。

もはやあの大災害を起こすことだけはあってはならないのだ

 

 

 

 

 

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