海岸の町   作:アイバユウ

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第137話

海岸の町 旅館の私の自室

 

私は缶コーヒーを飲みながら考え事をしていた。

別に大したことではないのだが、何となくあの手紙のことが頭から離れなかった

 

「どうしようかな?」

 

過去を忘れられないのは私も同じなのかもしれない

いつまでも『昔』のことにこだわっている。それは‥‥‥‥‥

 

『トントン』

 

「はい」

 

『カオリちゃん。少し良いかな』

 

ユウさんだった。私はすぐ行きますというと缶コーヒーを机の上においてドアのところに向かった

 

「何かありました?」

 

ドアを開けると少し神妙な表情をしたユウさんがたっていた

 

「ちょっとね。第三新東京市でトラブルがあったみたいでね。カオリちゃんの事で嵐が吹くかも」

 

「またですか?」

 

私は気持ちが折れそうになった。せっかく静かに暮らせると思ったのにまたトラブルだ

どうして私は静かに暮らせないのか頭が痛くなる。もう2度とあの街と関わることなどないと思っていたのに

 

「すみません。ご迷惑ばかりかけて」

 

「気にしないで。ただ警戒はしておいた方が良いから」

 

それじゃ、夕食の時にでも一緒に食べようねと彼は言うとその場を後にしていった

私がユウさんが自室に戻るところを見届けようとしたとき目の前の光景が信じられなかった

撃たれたのだ。ユウさんが。私は慌てて駆け寄るとすぐに狙撃は終わったが、肩に2発の弾丸をユウさんは受けていた

 

「う、うそですよね?ゆうさん。ユウさん!目を開けて!」

 

「か、カオリちゃん。無事、かな?」

 

「ユウさん!私は無事ですから。すぐに病院に!」

 

悲鳴を聞きつけて、お母さんとお父さんがきた。旅館の仲居さんもみんな集まってきた

 

「早く病院に!」

 

「わ、分かった。すぐ救急車を呼ぶ!」

 

お父さんは携帯電話で救急車を呼んだ。数分後すぐに駆けつけてきた救急車と救急隊によって

ユウさんは少し遠いが、隣町にある設備の整った病院に搬送されていった

 

「死なないで!」

 

「大丈夫だから。カオリちゃん」

 

ユウさんは痛みに耐えながらも私の頭を撫でてくれた。そして救急車で搬送されていった。

私はユウさんの部屋に行き、悪いとは思ったけど勝手に車のカギを持ち出すとそのあとを追いかけていった

隣町には大きな病院がある。重傷の人はそちらに搬送されるのだ。病院までは20分ほど

私にとってはものすごく長く感じられた。私は救急車の後ろをぴったりついていった。

病院につくと私は救急患者専用入り口の近くに車を止める

そして救急車から降ろされたユウさんと一緒に病院内に入っていった。

ユウさんは意識を失っていた。ストレッチャーの上で呼吸をしている事は確認できたが私の呼びかけに一切反応しなかった

そのまま手術室に運び込まれた。私は親族の待合室に通されて待たされることになった。

それから数分ぐらいしただろう。ルミナさんが慌ててやってきた

 

「カオリちゃん!無事!」

 

「ルミナさん!ユウさんが。ユウさんが死んじゃう!どうにかしてよ!」

 

私は泣きつくかのように抱き着いて訴えたがそんなことをしてもどうにもならない事は分かっていた

でも今は自分の感情をコントロールできる状態ではなかった

 

「落ち着いて。先生に状況を聞いてくるから」

 

ルミナさんは監察局のIDバッチを見せて状況を看護師さんに聞いてきた。

少し長く話した後、戻ってきた。

 

「カオリちゃん。命に別状はないから。意識を失っているのは麻酔を打ったためだって。だから大丈夫」

 

彼女は私をあやすかのように私を慰めてくれた。それからすぐにお母さんとお父さんがやってきた。

 

「ルミナさん」

 

「彼は一命は取り留めています。麻酔によって意識は失っていますが。薬が抜ければ大丈夫とのことです」

 

「そうですか」

 

お母さんとお父さんもほっとした表情を浮かべた。でも最悪だ。また私のせいだ。私のせいで大切な人が傷ついた

私にとっては何よりも耐え難いものだった。まさに悪夢だ

 

「どうしてこんなことに」

 

「その事は私が調べるから。必ず犯人を捕まえる。だから、カオリちゃんはここで彼を待っていてあげて」

 

ルミナさんはそう言うとお母さんとお父さんを連れて少し離れたところで話をした後病院を出ていった。

たぶん警察の捜査状況の確認だろうということはわかった。私はとりあえず安心した。命は無事だという事に

人の命ほどかけがえのない物はない。限りある命を大事に生きていかなければならないからだ。人は。私と違って

 

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