海岸の町   作:アイバユウ

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第140話

海岸の町の隣町医療センター

 

私はユウさんの病室にいた。麻酔が効いているのか彼は眠っていた。私はずっと彼の手を握っていた

 

「ユウさん」

 

どうしてこんなことになったのか考えていた。ネルフのせいなら私もう容赦ない。

でもわからない。ゼーレにいた頃に記録はマヤさんが消してくれたはず。マスターディスクは私は破壊した

もうどこにも存在しない。ならどうして。狙われる理由が私にあるとしか思いつかなった。

私は苦しみの中にいた。私のせいで大切な人が傷つくのを見たくないからこの町で静かに暮らしているのに

この町にいても、私は大切な人を傷つけてしまっているという現実に

 

「また、1人になるしかないの?」

 

そう、孤独にどこかで誰とも接触しないで生きていくことができれば人は傷つかないかもしれない

でも実際にそんな生活ができるわけではない。たとえ私が神様でも、今の私は出来損ないの神様なのだ

完全の神様ではない私が孤独に耐えきれるかどうかなんてわからない。

それにこの温かい生活を捨てるなんて到底できるとは思えなかった

 

「カオリ、今日は病院に泊まっても良いそうよ。私達の家に帰るのも良いしここで待っていても良いから」

 

「お母さん。今日はここで泊って待っているね。ユウさんにこれ以上何かあったら私が耐えられないから」

 

「愛しているのね」

 

「これが愛とか恋愛関係ならそうかもしれないけど、私にとっては分からないの」

 

お母さんはそのうちわかるわよと言うとまた明日のお昼ごろに迎えに来るからと言って出ていった

次に看護師さんが入ってきてユウさんの私物を持ってきてくれた。私は受け取ると悪いとは思ったけど中身を見てしまった

そこには1枚の手紙があった。ものすごく悪いとは思ったけど、もしかしたら撃たれたことと関係があるかもしれないという

ばかげた話だが、そちらにしか頭を持っていくことができなかった。私は内容を読み始めて表情を凍り付かせた

私の前で撃たれなければ、私とその両親を殺害すると記載されていたからだ

それを見てショックだった。私ではなくユウさんがターゲットになった

可能性は2つしかなかった。ネルフ、もしくはゼーレ。ユウさんが私の情報を流すのを拒んで殺されかけた可能性が

私のために命を懸けてくれたのかもしれない

 

「ユウさん、ごめんなさい」

 

私はその日の夜に決めたのだ。一度この町から離れようと。

このままここに居続ければいずれお父さんとお母さんにまで危害が加えられる

人が完璧に守れるわけがない。穴は必ず存在する。やられる前に逃げてやり返すだけだ

そして椅子から立ち上がろうとしたときにルミナさんが後ろから抱き着いてきた

 

「お願いだから。バカな事は考えないで。あなたはあの町で暮らす方がその方が守りやすいから、1人になろうなんて思わないで」

 

「でも現実は違います。殺されかけたんですよ。もう1度あるかもしれない。もう1度同じことがあったら私は耐えれません」

 

そう、1度目は耐えれても2度目は無理だ。きっと苦しんでしまって死を選ぶかもしれない。世界丸ごと

 

「そうね。でもここで逃げてしまったら敵の思うつぼよ。今は動かない方が良いわ」

 

「どうしてそう断言できるんですか」

 

「今回の犯行についてネルフはからんでいないわ。それとこんな話を聞きたくはないと思うけどあの渚カオルにゼーレサイドから接触があったそうよ」

 

その事に驚いて私は振り返ると

 

「大丈夫よ。彼は寝返ったりはしないわ。でも情報は集めるために潜入すると」

 

「私はそんなこと!」

 

望んでいないと大声を出してしまった。不幸中の幸いな事にここが個室で良かった。ユウさんはまだ眠っている

 

「彼は本気みたいよ。あなたへのせめてもの償いだと思っているんでしょ」

 

「私はもう彼らと関わる気なんて」

 

ゼーレがどんな組織だったのかはあの赤い海で真実を知った。彼らは自らの欲望のために最悪の地獄の扉を開けた

自らが信じる道が正しいと思い込んで自分勝手に進めたのだ。あれのどこが幸せな世界なのか

私は問えるものなら問うてみたい。なら1人を犠牲にして大勢が幸せになって良いのかと

それも最悪の絶望を与えておいて。自らの欲望のためにあれほど愚かで汚い事をしても平気なのかと

できる事ならもう2度関わりたくはない連中だ。私はどうしてすべて元の世界に戻してしまったのだろう

彼らだけ除外すればこんなことにはならなかったのかもしれない。でも神は公平でなければならない

差別はしてはならない。だからすべて元に戻したのだが。それでも完全にとは無理だった

それでも私のできる限りのことをした。それがこんな形で帰ってくるなんて

 

「私はどうしたら良いの。ユウさん」

 

私はそのままベットにもたれかかりながら眠ってしまった

翌朝目を覚ますとユウさんが私の髪を撫でていた

 

「カオリちゃん。ごめんね。心配かけて」

 

私は思わずユウさんに抱き着いてしまった。

すると肩の傷口にあたったため買いたそうな声を出したので私はとっさにごめんなさいと言って離れた

 

「ユウさんに何かあったら私」

 

「カオリちゃん。今回の件はごめんね。でもこれは僕が残してきた過去の汚点なんだ。こういう事が起きることは想定するべきだったのに怠った僕が悪いから」

 

「ユウさん。お願いですから、死なないでください。また1人ボッチになるのは好きじゃないので。私が1人になったらきっと」

 

するとユウさんは私を見捨てる薄情者に見えるのかなと頭を撫でてくれた

私は慰めてくれているユウさんの言葉を聞いて、ユウさんが薄情者に見えたら私はとってもひどい女ですねと返した

確かにその通りだ。私はひどい女だ。あの街で散々ひどい事をしてきたのだから

 

 

 

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